時間管理
2025.9.22
目次
前回の記事で、ワークライフバランスを整えるためには、まず自分の時間の使い方を記録し、何に時間を費やしているかを見える状態にすることが必要だとご説明しました。今回は、その現状分析を踏まえて、どのように生活を改善するかについて解説いたします。
幸せな生活を送る上では、以下の6つを考慮することが必要です。
このうち「お金」については、時間の使い方によってワークライフバランスを整えることに直接つながらないため、残りの5つについて時間配分を考えていくことになります。
「仕事の量は完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」とするパーキンソン法則により、仕事の量はいくらでも増えていきます。労働時間を適切に保つためには、仕事以外の時間を計画的に設計することが欠かせません。
働きすぎていないか。逆に怠けすぎていないか。学習の時間は足りているか。娯楽や家族との時間が少なくないか。時間の使い方を記録し、その結果を分析することで、理想の時間配分と現状との差が見えてきます。目に見える形にすることで、増やすべき時間や削るべき時間の判断がしやすくなるのです。
仕事以外の領域を意図的に計画し、時間を確保しておかないと、パーキンソンの法則に従って仕事が持てる時間を食いつぶし、学習や余暇の時間を確保できないどころか、人間関係をも崩していってしまいます。
その上、体力が低下すれば、仕事のパフォーマンスまで落ちてしまうでしょう。だからこそ、より良い仕事をするためにも、生活全体の設計をしておくことが重要なのです。
6つの観点の中で最も注目をしておきたいのが「健康」です。健康はとても特徴的な性質を持っています。それは、状態によって重要度が大きく変化することです・
健康に問題がないときは、優先順位が低くなりがちです。つい昼食を抜いたり、睡眠を削って残業をしたりと、体に無理を強いてしまうことがあります。しかし、健康な時はそれでもやり過ごせてしまうのです。
しかし、ひとたび体調を大きく崩せば、健康は瞬時に最重要事項へと浮上します。その時点では治療が最優先となり、他のすべてが後回しになるのです。
そして、健康は悪化してから回復するまでに多大なコストや労力を要します。場合によっては、取り返しがつかなくなることもあるでしょう。したがって、「悪化してからでは遅い」と考え、健康なうちに予防をしていくことが必要です。その予防にも、時間の配分が必要なのです。
では、どのように健康を守るために時間を使っていくのか。そこで考えてみたいのが、日本人の主な死因です。癌、糖尿病、脳卒中、心臓病といったものが代表的ですが、これらには共通した性質があります。それは「生活習慣」によって、こうした病気が発症することです。
もちろん、遺伝によるケースもありますが、その割合は決して高くはありません。例えば癌の場合、遺伝由来の癌は全体の1割にも満たず、大抵の場合は生活習慣によって発症します。
そして、その生活習慣を形成するものの中心は「食事・運動・睡眠」の3つです。もちろん、喫煙や飲酒などの習慣もありますが、これらは個人差があります。万人に共通するのは食事・運動・睡眠であり、ここには時間の使い方が大きく影響するのです。
食事について重要なのは、食事の時間というよりも「時刻」です。もちろん、早食いをせず、時間をかけてゆっくり噛んで食べることも重要なのですが、それと併せて考えたいのが「何時に食事を摂っているか」です。特に、晩ご飯の食事の時刻は重要です。
例えば、23時に就寝する生活を送っているなら、普通の食事をとる最終時刻は20時です。揚げ物やアルコールを接種する場合は、19時がリミットになります。胃腸が消化に必要とする時間は通常で3時間、油物やアルコールが加われば4時間程度かかるからです。就寝直前に食事をすると、体を休めるはずの時間が消化に奪われ、翌朝のだるさにつながります。
もし21〜22時に帰宅して食事をとり、入浴してすぐに就寝するといった生活を続ければ、睡眠をとっているようでも実際には「身体が休まっていない」状態になってしまいます。かといって、就寝時刻を遅らせると寝不足になってしまいます。必然的に「早めに晩ご飯を食べる」しかないのです。
もちろん、食事の内容に関しても朝食の有無や三食の配分、栄養バランスなど論点は他にも多くあります。しかし、まず「時刻を整える」ことが、比較的容易に始められて、効果を実感しやすい対策です。体内時計に沿った食事のタイミングを意識するだけでも、翌日の疲労感は大きく変わることでしょう。
休息に必要とされる睡眠時間は、一般的に6〜8時間と言われます。中には3時間で十分とする説もありますが、ショートスリーパーは体質によるものとする説が多く、あまり鵜呑みにしないようにした方が良いでしょう。多くの人が真似できるものではありません。
ここで重要なのは、6〜8時間を確保する必要があるのは「睡眠時間」であって「就寝時間」ではないということです。多くの場合、入眠直後には寝つけない時間が生じます。この「寝つけない時間」は就寝時間ではありますが、睡眠時間ではありません。身体を休める効果は多少はあるものの、やはり実際に眠っているほどの回復効果は見込めません。いかにしてこの「寝付けない時間」を短くできるかがポイントです。
ぬるめの入浴で体温を温める、軽いストレッチで血流を整えるなど、入眠しやすい状態を整えることが大切です。筋トレなどの激しい運動はかえって覚醒してしまうので逆効果になります。また、白色光は覚醒を誘発しやすいため、夜はオレンジ色の照明にしたり、間接照明にしたりするなど、暗い状態に目を慣れさせておいた方が、眠りに入りやすくなります。
就床時間を7〜8時間、睡眠時間を6〜7時間ほど安定して確保できるようになると、翌日の集中力や気分がかなり安定するようになります。
睡眠時間を確保する習慣をつける上では、実際に睡眠時間を計測することも有効です。スマートフォンのアプリで睡眠時間を計測するツールなども多数存在しています。実際に計測し、就寝時間と睡眠時間にどれくらい差があるのかをデータで分析することで、睡眠の改善に向けた具体的な対策を考えることができるようになります。
食事や睡眠は、どんな人でも必ず取ります。生存に直結するからです。しかし、食事・運動・睡眠の中で、最も蔑ろにされるのが「運動」です。運動はまったくやらなくても、当面の間は表面的な影響は生じません。しかし、後回しにし続けることで、確実に生活習慣病への道を進んでいくことになってしまいます。
生活習慣病の予防に必要とされる運動量は「週3日以上、1回あたり30分以上の有酸素運動」とされています。これが理想的な基準ですが、現実的にこの条件を満たしている人は決して多くはないでしょう。特に、忙しい社会人にとっては非常にハードルが高く、とても無理と感じてしまう水準です。だからこそ、多くの方が生活習慣病にかかり、結果として日本の社会保障費が増大しているとも言えます。
私自身も、この基準を常に満たすのは難しいと感じています。そこで医師に相談したところ、最低ラインとして「週に56,000歩の歩行」に取り組むよう勧められました。1日平均にすると約8,000歩です。毎日コンスタントに8,000歩を歩くのが理想ですが、私の場合、出張や外出の日は容易にクリアできるものの、デスクワークの日はとても及びません。その場合でも、週に通算して56,000歩でも有効とのことでしたので、万歩計を常に持ち歩き、日々、歩数の確保に努めています。
例えば、エレベーターではなく階段を使う、一駅分余分に歩く、買い物のときに遠回りをするなど、日常生活の中で負荷を加えるようにしています。特に、階段は短時間で有酸素運動の効果が得られるため、運動不足を補う効果的な方法です。1日8,000歩を目指し、意図的に負荷をかける。もっと運動ができることに越したことはありませんが、無理なくできる水準を決めて、具体的な努力をしていくことは、多少なりとも予防に繋がっていきます。
ここまで食事・睡眠・運動の3つを見てきましたが、共通しているのは「事前に時間の枠を確保すること」です。意図的に健康増進の時間を取ろうとしないと、仕事や生活に圧迫されて、必要な時間の長さやタイミングを確保することが難しくなります。最初から予定に組み込むことで、健康のための時間が確保され、結果的に生活全体の質が向上するのです。
健康は、失ってからでは取り戻すのに膨大な時間と労力が必要になります。だからこそ、日常の時間設計の中で優先順位を高く置くことが重要です。食事の時刻を整える、睡眠の質を意識する、日常的に運動を意識する。どれも特別なことではなく、小さな積み重ねです。しかし、その積み重ねが将来の大きな差につながります。
健康を守るための時間の使い方は、単に「忙しい中で何とか工夫する」という発想では不十分です。最初から仕事や予定と同じように時間を確保し、生活習慣の柱として位置づけることが必要です。
食事では就寝時刻から逆算して摂取する時刻を決める。睡眠では就床時間と実際の睡眠時間を分けて考え、入眠環境を整える。運動では理想の基準を意識しつつ、最低ラインを確実にクリアできるよう歩数を測定する。こうした工夫は、無理のない範囲で続けることで大きな成果を生みます。
健康は当たり前のように存在している間は軽視されがちですが、失って初めてその価値に気づきます。だからこそ、今のうちから時間の使い方を見直し、未来の自分に投資することが大切です。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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