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人材育成

2025.10.24

なぜ、あの人は仕事ができないのに出世するのか

目立たないのに昇格していく人の正体

「成果を出していないように見えるのに、なぜあの人は評価され、昇格していくのか」と感じる場面はありませんか。

そういう方は、目に見える範囲だけを切り取れば、確かにそう映ることがありますが、目に見えないところで組織に不可欠な働きをしているケースが少なくありません。パフォーマンスの派手さよりも「組織にとって必要かどうか」が評価の軸になるのです。

仕事ができる人の典型像―反応が早い、話がうまい、資料が完璧―に当てはまらなくても、組織の歯車を噛み合わせる人は確実に存在します。そもそも、個人の能力の高さだけでなく、チームが滞りなく進むかどうかに貢献しているかが、組織にとっては重要です。だからこそ「組織にとって、いなくなると困る人」は静かに評価を積み上げるのです。

今回は、表に出にくいのに実は出世につながる「目立たない活躍」の中身をご説明します。「なぜか評価される人」の特徴を4つ挙げた上で、どのようにしてその評価を得ていくのかという具体策を解説いたします。自分は目立つタイプではないと感じている方ほど、実際の行動に落とし込める内容です。ぜひご覧ください。

出世は「優秀さ」よりも「必要性」で決まる

まず前提として、評価は「優秀かどうか」だけでは決まりません。極端な例ですが、「圧倒的に仕事ができるけれどもスタンドプレーで周囲との衝突を生む人」よりも、「目立たないけれども周囲を機能させる人」のほうが組織にとって価値が高いと言えます。組織においては、こうした「地味な活躍」が見過ごされがちです。

組織においては、表面的な成果だけでは測れない貢献があります。会議の温度感を整える、部署間の齟齬を調整する、担当者不明の雑務を回収する、情報を橋渡しする、適切な報告・連絡・相談で上司の意思決定を助ける。

こうした行為は評価シートには載りませんが、職場の摩擦を減らし、チームの成果を上げています。こうした人も評価されていくべきですし、それを評価できる上司も優秀だと言えるでしょう。

典型的な「仕事がデキる人」像に自分が当てはまらないと感じても、落胆する必要はありません。圧倒的な成果を上げられなくても、組織に必要とされる人になる道は存在します。以下、その代表的な4つの特徴をご説明します。

特徴1:人間関係の調整がうまい

一つ目の特徴は、人間関係の調整です。会議で誰かの発言が伝わらず空気が固まったとき、「今の趣旨は〇〇ということですよね」と要点を置き換えて場を救う人がいます。会議後に関係者へフォローを回し、「先ほどの主張はこういう背景ですよね」「うちの立場はこうなので、この落とし所はどうでしょう」と水面下で橋を架ける動きも同様です。

こうした働きは拍手喝采を浴びる場面ではありませんが、確実に摩擦を減らします。上司から見れば「この人がいると場が安定する」という安心感が積み上がり、代替の利きにくい存在へと評価が変わります。

人間関係の調整は、主張の勝敗を決めるのではなく、相手の意見を言語化して共有認識を作ることです。結果として、合意形成が早まり、組織のストレスが下がります。これは評価に値する「組織を安定させる力」だと言えます。

特徴2: 誰もやりたがらない仕事を拾う

次に、担当者が不明の仕事を自発的に回収する姿勢です。組織の中には「明確に誰の仕事とも呼べない」ような仕事がいろいろとあります。例えば、散らかった共有フォルダの整理、キャビネットの整理や消耗品の補充、システム不具合の情報を取りまとめ、会議運営の裏方、必要だけれど誰の持ち分でもない雑務の数々です。

「では私がやっておきます」と軽やかに拾う人がいると、全体の体感負荷が一段下がります。平時には目立ちませんが、その人が不在になると途端に歯車が軋み、後から重要性が露わになります。こうした「さり気ない基盤整備」が、組織の速度と品質を支えるのです。

もちろん、本務を疎かにせよという話ではありません。個人の成果と基盤整備が両立できることで、評価は安定します。少しの時間でできる雑務を先んじて片付ける、困りごとを一つに束ねて関係部署へ渡す―この積み重ねが「いなくなると困る人」を作り出すのです。

特徴3: 情報のハブになる

3つ目の特徴は「情報のハブになる」ことです。会社には、部署間での情報の行き来をスムーズにする「つなぎ役」のような存在がいます。たとえば、「開発部でこんな動きがあるらしい」「営業部で新しい施策が始まるそうだ」といった情報をキャッチし、それを他部署に共有して仕事に活かす人です。

このとき重要なのは、単なる噂話で終わらせないことです。聞いた情報を「どんな形で仕事に役立てられるか」という視点で使える人こそが、真の「情報のハブ」と言えます。営業部のトラブルを聞いた際に、「実は開発部で似たケースがあって、こう対処したらうまくいった」と助言できる人。そういう存在は、上司や同僚から「困ったときはあの人に聞けばいい」という信頼を集めます。

情報をつなぐ力は、周囲への関心から生まれます。自分の部署だけに閉じこもらず、他部署の動きや課題にもアンテナを立てておくこと。人を紹介したり、アイデアを橋渡ししたりといった「与える姿勢」を続けることで、自然と情報が自分に集まってきます。この循環をつくることが、社内で影響力を高める秘訣だと言えます。

特徴4:報告・連絡・相談が上手い

4つ目は報告・連絡・相談、いわゆる「ホウレンソウ」が上手な人です。最近は効率を重視するあまり、必要最低限の報告しかしない傾向が強まっています。ですが、あえて一手間かけて自分の意見や提案を添えられる人は、確実に評価されます。

例えば、「これをやりました」で終わらせず、「この点に課題があり、次はこう改善したいと思います」と添える。これだけで、単なる報告が「提案型の報告」に変わります。上司の目線では「しっかり考えて動いている」と感じられ、信頼につながります。

私はこの違いを「伝達」と「洞察」の差だと捉えています。成果を伝えるだけの人と、考えを添えて報告する人では、同じ業務量でも印象が大きく異なります。実際、周囲から見ると地味な人でも、上司からは「考えている人材」として映ることがあります。それが評価の判断につながるのです。

また、相談の仕方にもコツがあります。単に「どうすればいいですか?」と聞くのではなく、「自分はこう考えましたが、どう思われますか?」と自分の意見を添える。これだけで主体性が伝わり、同じ質問でも受け取られ方がまったく変わります。

出世する人が実践している4つの行動

ここからは、こうした特徴をもとに実際に職場で評価されるための具体的な行動を紹介します。地味に見えても確実に印象を良くする4つのポイントです。

①「御礼+一言」で印象を変える

まず大切なのは、メールやチャットでの「御礼+一言」です。単に「承知しました」「了解です」で終わらせず、「ありがとうございます」「とても助かります」「この資料、分かりやすいですね」と一言添えるだけで、受け取る側の印象は大きく変わります。

これは仕事の結果そのものではありませんが、人間関係を円滑にし、相手のモチベーションを上げる効果があります。人は感情で動く生き物です。感謝や称賛の一言が積み重なることで、周囲から「この人は感じがいい」「一緒に仕事をしたい」と思われるようになります。

また、他人の発言をフォローする力も同じです。誰かが少し言い過ぎたときに、「そういう視点も大切ですよね」とさりげなくフォローする。そんな一言が、場の雰囲気を穏やかに変え、信頼を築いていきます。

② 雑務や担当不明の仕事を自発的に拾う

次に、「誰がやるのか分からない仕事」を自ら拾う姿勢です。書類の整理やイベントの準備、備品の補充など、目立たない仕事は数多くあります。それを「私やっておきますね」と自然に引き受ける人は、確実に評価されます。

これは決して雑用を押しつけられているわけではありません。主体的に拾うことで、チーム全体の生産性を支え、上司の信頼を得ることができる行動です。優秀な人ほどこうした「誰も気づかない仕事」「他人が面倒がってやらない仕事」を進んで片付けています。

特に、成果を出す人がこの姿勢を持つと最強です。高い結果を出しつつ雑務もこなせる人は、周囲から「非の打ち所がない」と言われる存在になります。華やかさだけではなく地味な貢献が、評価の鍵を握るのです。

③ 他部署に関心を持ち、社内のハブになる

自分の仕事に集中するあまり、他部署はおろか同僚の動きすら知らない人もいますが、評価され、出世していく人は決まって社内全体を俯瞰しています。情報を集め、他部署の取り組みを理解しようとする姿勢が、社内のハブとして機能します。

少しの時間でも「今、そちらではどうなってますか?」と声をかけてみる。小さな交流が情報共有と信頼を生み、困ったときに助け合える関係をつくります。情報を与え、時に助言をし、必要な人を紹介する―そうした「与える動き」をしていると、やがて自然と情報が自分に集まってきます。

これは「与えた者に返ってくる」というシンプルな返報性の法則です。自分のためだけでなく、チーム全体の成果を意識することが、結果的に自分の評価を押し上げることにつながります。

④ 見せ方を工夫し、考える姿勢を示す

最後に大切なのは「見せ方」です。報告のときに、自分の考えを添えるだけで印象は一変します。「こう思います」「こう感じました」「こう改善してみたいです」と意見を足すだけで、受け取る側は当事者意識が高い人と感じます。

報告・連絡・相談という言葉がありますが、単なる事実伝達は「連絡」にすぎません。そこに意見を添えて初めて「報告」、質問を重ねることで「相談」になります。自分の意見を明確に持ち、それを言葉にできる人ほど、信頼されやすいのです。

最初は形式的でも構いません。意識して続けていくうちに、自分の中に「考える習慣」が根づきます。その結果、周囲からは「言われたことだけをやる人」ではなく、「自分の意思で動く人」として認識され、より大きな仕事を任されるようになるのです。

まとめ:派手さよりも「信頼」が出世を呼ぶ

ここまで見てきたように、「仕事ができるのに出世しない人」と「できないように見えるのに出世する人」の差は、スキルではなく信頼関係にあります。組織はチームで動く以上、個人の能力よりも「いなくなると困る人」を大切にする傾向があるのです。

人間関係を整え、雑務を拾い、情報をつなぎ、丁寧な報告を重ねる。この4つを続けていく人は、目立たなくても必ず評価されます。逆に、自己主張ばかりで周囲と調和しない人は、どれほど成果を出しても組織の信頼を得ることは難しいでしょう。

私は、出世とは「上に気に入られること」ではなく「周囲に必要とされること」だと考えています。表舞台で成果を出す人がいれば、裏で支える人もいる。その両方があって初めて組織は機能します。だからこそ、自分の立ち位置で貢献できることを一つずつ増やしていくことが、最も確実な成長の道です。

華やかに見えなくても、誠実に、丁寧に。そうした日々の積み重ねが、気づけば大きな信頼へと変わっていきます。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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