スキル・心構え
2026.1.12

目次
近年、生成AIの進化は目覚ましく、人間の代わりにどんどん仕事をこなすようになってきています。
その性能とスピードは日々向上しており、2026年もますますその発展は加速していくでしょう。定型的な仕事、パターン化された作業はどんどんAIに置き換わっていくことが予想されます。実際、私自身も仕事でふんだんにAIを活用しています。
すると、仕事の少なくとも表向きの成果、例えば資料の見た目や内容などが、一見すると誰が作ってもあまり大差がなくなってきます。著しくクオリティの低いものは世の中に出てこなくなりますので、誰がやった仕事であったとしても、そこそこに良いものになるという状況が起こるのです。
では、そこで何が差を際立たせていくのでしょうか。それはやはり「誰と一緒に仕事をしたいか」という点ではないかと思います。つまり、人間としての魅力、人間力が大きな差を際立たせていくことになります。この人間力、「この人と一緒に仕事をしたい」という感情はどこから読み取れるのかというと、それが「品格」なのです。

品格とは、肩書きや表向きの外見といった話ではありません。人としての態度や振る舞いに現れる「内面の質」のことです。内側から醸し出してくるその人の雰囲気や印象といったものがプラスに向いている時に、それを「品格」と呼ぶのだと私は捉えています。
例えば、相手を思いやるような振る舞い、丁寧な言葉遣い、落ち着いた判断をすること、約束を守るといった誠実さを見せること、相手に安心感を与えるような立ち振る舞いなどが挙げられます。こうしたものがコツコツと積み重なっていくことによって、その人の品格が作られていきます。それはつまり、「あの人は信頼できる」「あの人と一緒に仕事をしたい」という印象を相手に与えることになるわけです。
もちろん、持って生まれた才能も一部あるとは思います。生まれながらにして、別に本人が大して努力をしていなかったとしても、品がありそうな人というのは存在します。しかし、それだけではありません。やはり日頃から、仕事や生活の場面で他人に対してどういう風に接しているか、その自分の発言や行動といったものが積み重なって作られてくるものなのです。ある意味、品格も後天的に習得が可能な「スキル」なのです。
職場において品格が必要な理由は、大きく3つ挙げられます。
まず1つ目は、心理的安全性を高めるためです。組織の中で自分の発言を誰かが馬鹿にしたり否定したりすることを恐れることなく、自分が思っていることを立場や経験の差に関係なく、思った通りに言える状態を、「心理的安全性が高い」と言います。この心理的安全性を高めていくために、やはり品格のある言動というのは非常に大事になってきます。
『Think CIVILITY(シンク・シビリティ)』という本があります。副題が「礼儀正しさこそ最強の生存戦略である」というもので、一時期かなり話題になった本です。この本が言っていることは何かというと、「無礼な人は職場の生産性を下げる」という話なのです。言葉遣いが乱暴だったり、素っ気なかったり、相手に対しての思いやりや配慮がない。こういう人が多い職場だと、生産性と士気が下がっていきます。
逆に、取引先やお客様だけでなく、同僚や上司など会社の内側の人に対しても紳士的に、丁寧に接するということが、豊かな人間関係を育み、コミュニケーションが活発になって、色々なアイデアが出てくるようになり、生産性も上がっていって業績も上がっていくことに繋がる、ということを様々な研究を元にして説明している本なのです。
私自身もこの『Think CIVILITY』という本に何年も前にたまたま出会い、かなり一時期、研修の中でもしばしばこの話をしていました。それからしばらく話さなくなったのですが、ここ本当に数ヶ月、再びこれを引っ張り出して話をすることが増えてきました。それは上述の通り、AIが仕事を代替していく、みんながAIの力を借りながら仕事のスピードやクオリティをどんどん上げていって、表向きは差がつかなくなってくるからです。
中身があまりないようなものでも、それなりに格好がついたデザインや構成ができるようになったので、本物を見極める目というものを、私も含めてみんなが養っていかなければいけません。
では、その本物とは何なのかというと、結局それは突き詰めると「人間力」という話であり、その人間力が現れるのが「品格」なのです。品格を高めるために何をしていけばいいのかを突き詰めていくと、結局ここに帰ってくるのです。
色々な方に対して丁寧に接する、自分の気品を保つような立ち振る舞いや発言をしていく。それが自分自身の印象を上げていくことにも繋がりますし、何より自分自身も気持ちよくなります。相手に与える影響もプラスになっていきます。それがどんどん波及していって、良い職場になっていくし、結果も出てくるという話になってくるので、やはり品格は改めて大事だと思うわけです。
2つ目は、仕事の質を上げるためです。報告・連絡・相談を丁寧に、こまめに行う。ちゃんと当事者意識や責任感を持って、自分の意思で何かを決めていく。相手と交わした約束を守る、期限を守る―結局これらは、品格云々の前に、仕事の基本なのです。
つまり、品格を保つ行動をするということは、ビジネスマナーも含めて、仕事の基本として「当たり前のことを当たり前にやっていく」という話に結局行き着くのです。当然、仕事の質も上がりますし、その結果として業績も上がっていくわけです。
もちろん、多様なアイデアを出して、いろいろなことを試したり、大量行動することは大事です。しかし、量をこなすだけではなく、ある程度の量を保ちながらもその質を上げていく上では、品格ある言動が必要になります。
相手に対して丁寧に接していく。その積み重ねが、仕事の成果に付加価値をつけてくれる。もっと良いものにしてくれるという効果につながるのです。
3つ目は、組織の信頼・ブランドを上げるためです。やはり、素っ気なくて、ぶっきらぼうで、当たりがキツイ相手よりは、人に対して丁寧に、親切に、礼儀正しくある人の方が印象が良いわけです。
まず、自分が品格を高めていく。それに触発されて、組織の周りの方々が品格を高めていく。品格の高い人たちの集まりが、好ましい組織の文化やムードを作っていきます。それが外部の方々に接する時の態度になって現れます。
「この会社はいつも感じが良いよね」という印象になると、顧客満足度の向上にもつながりますし、案件の引き合いも増えていきます。
さらには、品がある、つまり高級感があると、価格競争に飲み込まれにくくなります。ラグジュアリーブランドが良い例ですが、高貴な印象のブランドは「高いのが当然」という印象になります。
品格を高く保つ、気品があるものを作っていくことは、それがブランドとなって、安易な価格競争に巻き込まれない状況を作り出します。「あそこは別格だから」みたいな感じになり、高い収益の取れる事業ができるようになっていくのです。
そういう意味では、単純にビジネスマナーや人間関係という話に限らず、品格を高めることがある意味、企業の競争戦略にもなるのではないかと思います。

では、品格を高めるためには何をしていけば良いのか。大きく4つのポイントがあります。
1つ目は、何と言っても「基本的なマナーを徹底する」ことです。挨拶、返事、時間を守る、丁寧な言葉遣い、相手を粗末に扱わない、相手に対して、親切丁寧に向き合う。やはりこれが基本中の基本です。マナーが土台となって品格を作っていきます。
人間の行動のほとんどは無意識です。相手に対して真摯に接することができるか、丁寧な言葉遣いができるか、正しい敬語を使えるかは、日頃の訓練ができているかどうかで現れます。自分の周りにいる人たちに対して乱暴な扱いをしていて、外部の人と接する時だけ丁寧にするなど、態度を切り替えようと思っても、「普段の自分」はやはり出てしまうものです。
万全な状態を整えるためには、やはり日頃から社内外問わず、誰とも分け隔てなく、丁寧に親切に接することが前提になってくるわけです。
2つ目は「相手の立場に立って考えることです。これは非常に重要です。人は一人ひとりみな違いますから、たとえ同じことを言ったとしても、その響き方は相手によって異なってきます。
例えば、自分と同じぐらいの世代の方で、しかもある程度関係ができている人であれば、あまり距離を置いたような接し方をするよりも、少々フランクに接したとしても、決して品格を損なうことではないでしょう。しかし、年齢が一回り二回り離れた若い方に対して普通に話しかけると、それ自体が圧力に映る可能性もあります。全然そんな気がなかったとしてもです。
したがって、自分が思っている以上に相手に対して丁寧に親切に接する、そういう配慮が必要になってきます。対等な関係であればそこまで考えなくても良いかもしれませんが、例えば「お金を払う側」「お金をいただく側」など、同じことを言ってもどちら側にいるかによって、言葉のニュアンスが変わる可能性があります。
自分と相手との関係性を考慮した上で、「この人にはどういう風に言ったら相手を傷つけないか」「もっとやる気にさせられるか、喜ばせられるか」ということを考えながら、発言や言葉遣いを選んでいく。これが配慮や思いやりです。それが相手に伝わり、「この人感じ良いな」「この人は信頼できるな」と好印象を抱いてもらえます。
3つ目は「感情のコントロール」です。個人的には、この中で一番大事なのはここではないかと考えます。
人間、やはり最も本性が出るのが、緊急事態、トラブルが起きた時、あるいは切羽詰まっている時です。何事もない時であれば、非常に落ち着いて、相手に対して親切丁寧に接することができる方でも、自分が次第に追い込まれてくると、発言が荒っぽくなったり、相手に対して攻撃的な物言いをするなど、その人の「素」が出てしまいます。
目指すべきは、「素」の状態でも、品格がある状態ではないかと思います。であれば、日常の色々な場面で、感情が昂ってきた時に、思ったことをそのまま言うのではなく、自分の感情をコントロールする努力をする。
たとえ怒りが込み上げてきたとしても、落ち着いた態度と言葉遣いで、冷静に振る舞う。すると、周囲から見た時に「この人すごいな」と、思われるわけです。
一呼吸して自分の感情を整える。アンガーマネジメントの考え方では、「怒りの感情が持続するのは6秒」と言われています。瞬間的に高ぶった感情に振り回されて、衝動的に何か物を言ったりすると、やはりそれが失言に繋がったり、相手を傷つけることに繋がったりしてしまいます。
後から冷静になった時に、「言わなきゃよかった」とならないようにするためには、日頃から、少し冷静さを保てなくなった時に、「えー。今の話なんですけど・・・」のような形で、クールダウンすることを習慣づける。この点は私も課題なので、今年特に注意深くやっていきたいと考えています。
4つ目は「自分の行動を振り返る」ことです。品格のある態度や行動を貫こうと思っても、それを意識だけでやろうとすると、次第に元に戻っていってしまいます。要するに忘れてしまうのです。
品格を高める努力を持続させるのであれば、「今日は品格のある振る舞いができたかどうか」といった問いを、1日30秒〜1分でいいので、振り返る時間を設けていくことが有効です。
私は、1日1ページの手帳にライフログとタスクリスト、日記を記載しています。今年は、私もこれを用いて「1日1品格」をやってみようかと考えています。自分が相手に対して配慮、思いやり、丁寧な言葉遣い、など品格ある言動を意識してやれたかどうか。これを毎日確かめていこうかなと思っています。
能力を身につけるためには、まず「意識的有能状態」という「気をつけていればできる」という体験を何度も繰り返していくことが有効です。それが習慣化してくると、「無意識的有能状態」という「意識しなくてもできる」状態になっていきます。
品格が滲み出るような人になるためには、まずは意識的に品格のある行動や発言をしていくことが必要で、やると決めたことを、決めた通りできているかどうかを毎日確認していかないと、なかなか定着していきません。
ツールは手帳でも、アプリでも何でも構わないのですが、1日1回「今日は品格のある人でいられただろうか」を振り返る習慣を身につけていく。「嘘から出た真」と言いますが、たとえ今はそうではなかったとしても、望ましい行動や発言を繰り返していくと、その積み重ねがやがて「本当の自分」になっていくものです。
AIの進化により、仕事の成果はおそらく昔よりも個人差がなくなっていくことでしょう。2年前はまだ、研修会場でChatGPTの話をしても「使ったことないです」という方が多かったですが、今ではもう会場の7〜8割の方が使用していると回答します。仕事で使っているという方も明らかに増えてきています。確実に浸透してきているのを感じます。
文章を書いたり直したり、情報収集したりといった基本的な使い方だけではなく、もっと高度なプロンプトを書いて、部下に仕事を委ねるが如くAIを使いこなすという人が着実に増えていきます。世の中にとってこれ自体は良いことで、仕事のアウトプット、成果のクオリティはどんどん平均的なレベルが上がっていくことが考えられます。
そうすると、やはり「誰と仕事をするか」というのが問われる時代に向かっていくと考えられます。皆がAIを使って「それっぽいもの」を作れるようになってくると、そこに「どういう思いがあって、誰の考え方に基づいてやっているのか」で差が出てくることになります。
個人が輝く時代、すなわち個人の個性が仕事の成果や評価、報酬に影響を与えるような時代に、私は向かっていくと思います。2026年、共に品格の向上に挑戦する1年にしていきましょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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