人材育成
2026.1.23

目次
研修効果の測定方法について、特に新規のお客様や、日頃からあまり研修を実施されていない企業様から、しばしばご相談をいただきます。その背景は十分に理解できます。研修には相応の費用がかかりますし、投資対効果を明確にする必要があります。人事担当者や管理職の方々が会社の上層部に稟議をかける際には、「この研修には意味がある」「必要である」ということを説明しなければなりません。
効果検証に対する私の答えは常に一貫しています。それは、
「研修を行うのであれば、研修は対象者を絞り、少なくとも2日間、できれば3日間以上かけて実施し、途中に数ヶ月の期間を設けてください。そして、その期間中に中間課題として行動計画を立て、それを職場で実践していただき、フォロー研修としてその実践活動の成果報告会を行いましょう。」
というものです。
残念ながら、1日研修や半日研修を単発で行い、その効果を検証することは極めて困難です。もし単発の研修で効果検証を行おうとすれば、受講者の方々、そして何よりも事務局の方々に大きな負担をかけることになります。それを行うくらいであれば、研修を複数の日程でコースとして組んだ方が、効果を考えると理に適っていると考えています。
実際に私が実施している次世代リーダー育成研修や管理職研修は、年間で4〜5日程度をかけて行います。期間としては半年ほどになります。そして、最終回は必ず丸1日を成果発表会に充てます。受講者の方々が研修で学んだことをどのように職場で実践し、それがどのような成果につながったのかを、お一人ずつ発表していただきます。
それに対して受講者同士で質疑を行ったり、私からフィードバックのコメントをしたりして、研修の「効果」を検証していくのです。
今までで最も手厚かったのは、1年間で対象12名の方に対して年間10日間の研修を組むというものでした。これだけの時間をかければ、当然「効果」はあります。そして、どのような効果があったかもすべて説明できます。効果が検証できるように研修を作っていくのです。もちろん、相応の予算がかかりますので、全社員教育には向きません。幹部候補、あるいはすでに会社の中核を担っている方々に対して、集中的に実施するものです。
なぜ、この実施形態が研修効果の検証に最も適しているのか。そう考える理由が3つあります。

効果検証を行うのであれば、Before/Afterを明確にしなければなりません。つまり、「研修を実施する前(Before)」と「実施した後(After)」の状態を比較する必要があるということです。研修効果とは、その差のことを指します。
単発研修ではなぜ難しいのでしょうか。研修を1度だけ実施するということは、研修がAfterになるということです。それでは、研修を実施する前はどうだったのか。実施前(Before)の状態を何らかの方法で測定しなければなりません。
もちろん、能力テストや診断テストを事前に実施し、研修を行った後、そのスコアがどう上がったのかということで効果検証をすることは可能です。しかし、そこを見てもあまり意味がないのです。
なぜなら、研修は業績を上げる、生産性を上げる、つまり仕事のパフォーマンスを向上させるために行うものだからです。したがって、本来は研修を実施したことによって仕事が良くなったということを証明しなければなりません。知識を習得できた「だけ」では、研修の「効果」にならないのです。
ただし、実際にはこれはなかなか難しいです。研修の効果だけを抜き出すことが難しいからです。仕事の成果は、外部環境の変化、リーダーシップ、モチベーション、作業手順など、様々な要因によって変わってきます。研修実施の有無以外の要因をすべて固定するのは現実的に不可能だと言えるでしょう。
複数の日程を設けると何が良いかというと、研修を実施した時の状態をBeforeにできるからです。研修を実施し、学んだことを実践していただき、その実践がどうだったのかを発表していただきます。つまり、この研修の最終日が効果検証そのものになるのです。「こういうことを実施しました」「これはできました」「これはできませんでした」といったことを考えていくと、そうした成果を得たということが、まさに研修の効果になるのです。
職場で実践する活動のきっかけを1日の研修で作れるのであれば、最短で2日です。しかし、リーダー育成やマネージャー育成といった内容は、1日でインプットしきれるものではありません。結果的に、1ヶ月に1回、あるいは2ヶ月に1回程度のペースで、何回かに分けてインプットを行い、それを基にして自分がどういうことを実践していくのかを考え、実際に行動していただくという形態に持っていく。これが最も現実的ではないかと考えています。
仕事の成果は、意識と能力と行動の掛け算によって決まります。そして、能力は知識と経験の掛け算によって決まる、というのが私の考えです。別の言い方をすると、知識とはインプットであり、経験とはアウトプットです。つまり、能力はインプットをアウトプットすることによって開発されていくという考え方なのです。
研修は基本的にはインプットです。もちろん、研修の中で様々な演習を行って体験していただくことはありますが、それはあくまでも研修の場で模擬的に体験したことです。研修は仕事の成果を変えていくために行います。そのためには、実際の仕事の場面で学習内容を実践していただく必要があります。残念ながら、それは研修中には不可能です。
したがって、研修でインプットし、疑似的にアウトプットしたものを、本番環境で実際にアウトプットするという設計が必要なのです。よくあるセリフとして、研修が終わった後に「本日の学びを職場で実践してください」と言って締めくくることがあります。しかし、それきりになってしまったら、実際に実践したのかしていないのか確かめられません。しかも、それを実際に行動に移すという動機づけも弱いのです。
受講者ご本人が非常に意識が高く、セルフマネジメント能力が高い人たちばかりであれば良いのです。しかし、残念ながら人間はそれほど強くありません。忙しい中で、頭の中では研修で学んだことを実践しなければならないと分かっているのですが、それを行動に移せないのです。したがって、「行動に移す仕組み」まで合わせて設計しなければなりません。だから、最終回は成果報告会なのです。
研修が終わった後に、行動計画を立てます。学んだことを実際に、具体的に何を行うのか、それはどれくらいの期間をかけて、どのように実施して、何をもってそれを実施したと評価するのかを考えていただきます。やることを決めて、決めたことを実行する。これが「セルフマネジメントの基本」です。
発表会が待っていますから、「何もできませんでした」という報告は格好が悪くて避けたいです。したがって、何かしら実践しようとします。外発的動機づけでプレッシャーをかけていきながら、実際に行動していくうちに、だんだん手応えを感じたり、実施した効果を感じるようになって、それが面白くなり、内発的動機になって行動として定着していきます。これが「研修の効果」です。その仕掛けとして、こうした設計にする必要があるのです。

研修の効果検証という話になると、有名なフレームワークとして「カークパトリックモデル」があります。これは、研修効果を反応、学習、行動、結果という4つの段階で考えましょうという理論です。
研修の効果とは何か。それは当然、理想を言えば仕事の成果が上がることです。このモデルでいうと「結果」の部分に相当します。したがって、「研修を実施したから仕事の業績や生産性という結果が良くなりました」と立証ができれば、それに越したことはありません。
しかし、残念ながらそれは現実的には不可能です。相関関係は得られるかもしれませんが、因果関係は証明できません。なぜなら、仕事の結果には非常に多くの要因が絡んでいるからです。受講者の同僚や上司の影響、仕事の案件、経営層のトップマネジメント、外部環境など、様々なものが複合的に絡み合って「結果」が出てくるのです。
結果そのものはコントロールできません。私たちにコントロールできるのは、結果を生み出す「原因」だけなのです。したがって、研修の効果検証として「結果」を測定するというのは極めて非現実的なのです。
では逆に、最も容易な方法から見ていきましょう。最も難易度の低いものが、受講者の反応で測定するというものです。最も分かりやすいのが研修アンケートです。「本日の研修の満足度は?」「理解度は?」「業務に活用できますか?」などを5段階評価で尋ねたり、コメントをいただいたりします。
これは、受講者ご本人の満足度がどうだったのか、次の研修を実施するにあたってどこが良くて、どこを改善すべきなのかということを把握する上で必要です。したがって、実施しないよりは実施した方がはるかに良いです。
良いのですが、それは研修の「効果」ですか?という話なのです。受講者ご本人が楽しかった、面白かったというのは、研修の効果ではありません。受講者の満足度を高めるために研修を実施しているのではないからです。会社が費用を支払っているのですから、仕事の成果を上げてもらわなければならないのです。したがって、アンケートはあくまでも企画や運営の改善に向けた参考材料にしかなりません。
次の段階として、「学習」というものがあります。これは最も分かりやすいのが理解度テストです。研修で学んだことに対してテストを行うわけです。しかし、私は個人的に、これには何の意味もないと考えています。
なぜなら、理解度テストを実施するということは、研修を通じて「知識を得ましたか?」ということを確認しているだけなのです。理解度が高かったところで、それを職場で実践しなかったら、実際に能力として身につかないのです。
知識を身につけるだけではなく、実際に実践してもらわなければ意味がないのです。お勉強として、知識だけ積み上がっていく。しかし、その学んだことはまったく実践されない。仕事のやり方は一切変えずに、ご本人の知識レベルだけ上がった。それは研修の「効果」があったと言えるのでしょうか?という話です。
そこで、3番目の段階である「行動」に注目します。これが、研修後の「職場での実践」に相当します。学んだことを職場で実際に実践する。その結果が良かったか、悪かったかは別としても、「試しに実践してみた」「少しでも前に進めた」というのが、研修の「効果」なのです。なぜなら、それは研修という機会がなかったら実施しなかったことだからです。
会社の業績を良くしていく、生産性を上げていくなど、様々な課題がありますが、これを実現するにあたって実施しなければならないことは、ただ一つ、行動なのです。今までと同じことを同じようにやっていたら、今までと同じ結果しか出ません。研修を実施したことによって、「実際に何かをやった」ということが、何よりの成果です。
そして、そのプロセスと成果は、実際に実施したご本人から説明をしていただかないと分かりません。そこで、最終回でフォロー研修として、その成果報告会を行うのです。これも表面的に話すのではなく、きちんと背景や、その時に自分が思っていたこと、どういう意図で実施したのかなどを説明していただきます。つまり、内省を進めながら発表会を実施していただきますので、時間がかかるのです。
実際に、この成果発表会は短くても一人あたり20分、できれば30分程度を確保しています。ご本人の発表が10分から15分で、その後、他の受講者の方から質問をいただいて質疑を行い、その後、私からのコメントをします。1人30分であれば、1時間で2人です。発表会だけで研修が終わったとしても、7時間の研修で最大14人です。したがって、20人、30人、40人という単位では、この行動レベルの効果検証はできないのです。
以上、今回は「研修の効果をどのように測定すれば良いか」を解説しました。研修の効果を測定したいというお気持ちは非常によく分かります。しかし、結果は測定できませんし、反応や学習は研修の効果ではないのです。研修の目的は仕事の成果を上げていただくことなのです。
カークパトリックモデルの中で、仕事の成果を上げるのに直結するものは何かといえば「行動」でしかありません。そして、その行動を実際に職場で実践することによって、研修で学んだことと結びつき、それが能力として身についていきます。
研修を実施する前と後、これが比較できるようにしなければなりません。能力が上がったのであれば、その能力が上がったということを実際に行動で示してもらわなければなりません。保有能力は測定できません。発揮能力で見ていくしかないわけです。
こうしたことを複合的に考えていっても、やはり研修は1回で実施するのではなく、複数回にわたり、実践期間を設けて実施するのが理に適っているのです。
かといって、1日や半日の単発研修を実施する意味がないのかといえば、実施しないよりは実施した方が良いです。要は、効果検証にこだわるかどうかなのです。前提として、研修は「実施するもの」なのです。
研修は栄養補給です。OJTを実施して、後は自己啓発に委ねる。それは主食なのかもしれませんが、栄養バランスが悪いのです。目先の仕事だけ実施していたら、体系的に知識を得たり、他の人と話をしながら様々な啓発を受けていただいたりするのは難しいです。
したがって、研修を実施することによって、実務だけでは得られないような知識や気づきを与えていく。それは栄養補給です。「栄養補給を実施したら意味があるのか?」と考える人がいるでしょうか。意味があるに決まっています。そんなことを考える必要もなく、実施するのが当たり前なのです。
もちろん、その研修のレベルがどうだったのかを検証する必要はあります。どうせ研修を実施するのであれば、良いプログラムで実施した方が良い。良い講師で実施した方が良い。したがって、そのために反応を確認するというのは非常に意味があります。
しかし、あくまでも研修の「効果」は職場で実践的な行動に移すこと、それによって仕事の「やり方」や「あり方」を変えていくことです。ぜひ、効果のある研修を行うためにも、「学んだことを行動に移す」ことを意図した研修設計をしてみてください。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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