セルフマネジメント
2026.5.10

目次
最近なんだか悪いことが続いている。自分はついていない。あの人のせいでまた嫌な思いをした。
そのように感じることは、誰にでもあるものです。仕事でミスが重なったり、人間関係がうまくいかなかったりと、気が重くなってしまうことも決して珍しくはありません。
しかし、少し立ち止まって考えてみましょう。その「運の悪さ」は、もしかすると自分自身が引き寄せてしまっているのかもしれません。
そして、今からお伝えすることをやめるだけで、あなたの毎日は少しずつでも確実に変わり始めます。
「最近ついていない」「運が悪い」と感じている方は、ぜひ最後までお読みください。

「運の良し悪し」を語る上で、まず前提として知っておくべきことがあります。それは、私たちの意識の構造です。
私たちの意識は、大きく2つに分けることができます。自覚できてコントロールできる「顕在意識」と、自覚できない「潜在意識(無意識)」です。顕在意識が全体に占める割合はわずか4%に過ぎず、残りの96%は潜在意識が占めているといわれています。
心理学の分野でこの意識の構造を説明する際に、しばしば、海面から顔を出している氷山の一角が顕在意識であり、海面下に沈んでいる巨大な部分が潜在意識だという比喩が使われます。
私たちは普段この無意識の存在をほとんど自覚しませんが、実際には発言・選択・行動の大部分は無意識によって行われているのです。
無意識が働く例として、車の運転を考えてみましょう。
教習所に通っていた頃や、免許を取りたての頃は、エンジンをかけ、ブレーキを踏みながらギアをドライブに入れ、サイドブレーキを下ろし、ドアミラーを確認するといった、一つひとつの手順を意識的に確認しながら、おっかなびっくり運転していたはずです。これは4%の顕在意識で行っていた作業です。
しかし、運転を何度も繰り返すうちに、その記憶が無意識の中に蓄積されてパターン化され、やがて無意識が自動的に運転をこなすようになります。慣れたドライバーは、いちいち手順を確認しなくても体が勝手に動きます。これが無意識の力です。
無意識はこのように特定の行動を習慣化する力を持つ一方、本能的に命を守る働きもしています。道を歩いていて転びそうになった瞬間に手が出るのは、意識的に「手を出そう」と判断しているわけではなく、無意識が瞬時に体を動かしているのです。
また、言うつもりがなかったのについ余計なことを言ってしまい、後から後悔するというのも、無意識が本心を口に出させているからに他なりません。
このように、私たちの行動・選択・発言の96%は無意識によって行われています。そして、無意識には非常に重要な働きがあります。それは、「頭の中に思い描いたものを現実にしようとする」という力です。
頭の中に描く理想と目の前の現実が一致しない時、脳の中で「認知的不和」と呼ばれる不快感が生じます。無意識はこの不快感を解消するために、現実を頭の中に描いた理想に近づけようとします。
ここで注意が必要なのは、無意識は「良いこと」「悪いこと」の区別をしないという点です。理想として描くイメージが悪いものであれば、現実をそのイメージに合わせるように、悪い方向へと変えていってしまうのです。
シンプルに言えば、良いことをイメージすれば良い現実が現れ、悪いことを考えれば悪い現実が現れます。無意識はただ純粋に、思い描いたものを再現しようとするのです。
わざわざ悪いイメージを描いている人なんていないと思われるかもしれません。しかし、そもそも無意識で考えていることは自覚できないのです。顕在意識の中では、良くありたいと思っていても、マイナスの感情や記憶が多くなると、無意識は悪いことで埋め尽くされてしまうのです。
もし今あなたが「運の悪い状況」が続いているとすれば、それは無意識が運の悪い行動を引き寄せているからこそです。
ならば、自分にとって不都合な現実を作り出さないよう、不運を呼び寄せるような行動をやめてしまえばよいのです。
では、具体的に何をやめるべきなのか。3つのポイントを順にご紹介します。

1つ目は、他人の悪口をやめることです。
「そんなことは分かっている」と思われるかもしれませんが、これは思っている以上に深刻な問題です。
無意識は「他人」と「自分」を区別することができません。他人に向けた悪口も、すべて自分の耳で聞いています。そして他人と自分の区別がつかない無意識は、その悪口をすべて自分のことだと処理してしまうのです。
例えば、「あの人は本当に仕事ができない」「あの人はいつも自分勝手だ」という悪口を口にしたとします。無意識はこれを「仕事ができないのは自分だ」「自分勝手なのは自分だ」と捉えてしまいます。自分が発した言葉はすべて自分に向けられた言葉として認識され、その通りの人間になるように無意識の選択と行動が変わっていくのです。
悪口を言えば言うほど、どんどん自分自身を傷つけていくことになります。「自分はダメだ」「運が悪い」と言えば、ダメな自分、運の悪い自分をどんどん作り出してしまうのです。
では、どうすればいいのか。嫌いな人や苦手な人については、話題にしないことが最善の策です。無理に良いところを見つけようとしても、内心ではそう思っていないことを無意識は見抜いています。強制的にポジティブな言葉を言っても、あまり効果は期待できません。
であれば、その人について考えない、取り上げない、いないものとして扱う。これが最も有効なアプローチです。
どうしても愚痴を言わずにはいられないという場合は、一通り吐き出した後に、「では実際にどう改善できるか」「どうすればもっと良い状況にできるか」という方向へ話題を切り替えていきましょう。
少なくとも、その人について話したことの最後はプラスの言葉で締めくくるようにすることが大切です。物事を良くしたり改善したりするエネルギーはプラスですから、そのプラスのエネルギーが自分に向くようにしていくのです。
2つ目は、ネガティブな言葉と否定語をやめることです。自分が発する言葉は、無意識への指示や命令のようなものです。「どうせ私には無理だ」と言えば無理な現実が作られ、「私はダメな人間だ」と言えばダメな人間になっていきます。「もしかしたら失敗するかもしれない」と思えば、本当に失敗してしまいます。無意識は頭に描いたイメージを現実のものに変えていくのです。
例えば、朝職場に向かう際に「ああ、今日も仕事か。嫌だな」と言う人と、「さあ、今日も一日頑張ろう」と言う人では、同じ職場で同じ仕事をしていたとしても、パフォーマンスも、本人の幸福度も、充実感も変わってきます。言葉にはエネルギーがあり、悪い言葉には負のエネルギーが、良い言葉には正のエネルギーがあるからです。
さらに注意が必要なのは、無意識は否定語を処理できないという点です。
例えば「赤いリンゴを思い浮かべないでください」と言われたとき、頭の中に浮かぶのは赤いリンゴです。「〜しない」「〜でない」という否定語・打ち消し語は、無意識には届かず、その言葉通りのイメージをそのまま受け取ってしまうのです。
「廊下を走るな」と書かれた看板では、走るイメージが頭に浮かびます。「廊下を歩け」と書く方が効果的なのです。同様に「事故注意」という標識は事故のイメージを強化し、かえって危険を招きかねません。「安全運転」「スピードを落とせ」という表現の方が適切といえます。
対策として、日頃から「もっとポジティブな言い方はないか」を意識して、自分の語彙をプラスの言葉で埋めていくことが重要です。
例えば「疲れた」を「よく頑張った」に、「最悪だった」を「あとは良くなるだけ」に、「どうせ無理」を「やってみなければ分からない」に言い換えることができます。こうした小さな言葉の選び方の積み重ねが、無意識に蓄積されるエネルギーをプラスへと変えていきます。
最初は「なんだか嘘くさい」「スピリチュアルみたいで受け入れられない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、騙されたと思って試してみると、その効果を実感できるはずです。
言葉を変えることで人の幸福感が変わるという研究も存在しており、プラスの言葉を選ぶ習慣が確実に現実を変えていきます。

3つの中で最も強力な影響を持つのが、悪いイメージを思い描くことをやめることです。
無意識は頭の中に思い描いたものを現実で再現しようとしますが、言葉による説明よりもイメージの方がはるかに強力に作用します。デジタルの世界でも、テキスト情報と比べて写真やイラストの方が情報量が圧倒的に多いように、イメージは脳への影響力が非常に大きいのです。
例えば、大事なプレゼンが迫っているときに「失敗したらどうしよう」「人前で恥をかいたら嫌だ」という失敗のイメージを思い描けば描くほど、本当に失敗へと導かれていきます。それよりも、成功した自分の姿を思い描くことが重要です。最初は少し無理があると感じても、とにかく成功のイメージを描き続けることが大切です。
アスリートの世界では、このイメージトレーニングが非常に重要視されています。金メダリストや世界チャンピオンといった結果を出している選手ほど、イメージトレーニングに相当な時間をかけていると言われています。優勝している自分の姿を何度も何度も描き続け、「優勝以外のイメージが湧かない」というレベルまで徹底することで、本番でも力が発揮できるのです。
もちろん、これは単なる妄想とは異なります。理想と現実が乖離していれば、その差を埋めるために練習・努力をするという当然の行動が伴います。「これだけ努力して練習を積んだ自分が成功しない方がおかしい」という確信にたどり着いてこそ、本番での力発揮につながるのです。
このイメージの力は、トップアスリートだけに限った話ではありません。すべての人が同じ能力を持っています。
何かを始めるとき、何かに取り組むとき、あるいは寝る前のひとときに、うまくいっている自分の姿、ワクワクしている自分の姿、笑顔でいる自分の姿をイメージする習慣をつけていきましょう。そのイメージを持ち続けることで、無意識が「イメージを実現しよう」と現実を変えていってくれます。
「明日も嫌だな」と思いながら眠るのと、「明日も素晴らしい一日になる」と思いながら眠るのでは、朝起きた時のエネルギーからして違います。
嫌なことが続く人の特徴は、嫌なことに焦点を集中させてしまうことにあります。嫌なことを避けようとすると、かえって嫌なことへの焦点が強まり、そのイメージが強化されていきます。
嫌なことは考えもせず、良いことだけを考える。そうした習慣をつけることで、やがて嫌なことは視界に入らなくなり、気にならなくなっていくのです。
今回ご紹介した3つのこと(他人の悪口をやめる、ネガティブな言葉・否定語をやめる、悪いイメージを思い描くのをやめる)に共通しているのは、何かを新たに始めるのではなく、「やめるだけ」で実践できるという点です。特別なスキルを身につける必要も、お金をかける必要もありません。今この瞬間から始められることばかりです。
私たちの選択・行動・発言の96%は無意識によって行われています。その無意識の中にどのような情報が入っているかによって、私たちの現実は変わっていきます。心理学・脳科学のどの分野を深く学んでも、最終的にはこの無意識の力の大きさにたどり着くといわれています。
その無意識の力を、自分にとって不利なことのために使うのか、有利なことのために使うのか。それは日々の言葉の使い方とイメージの描き方によって大きく変わります。
悪口を言いたくなったらぐっとこらえ、別のものに焦点を当てる。どうしても言うのであれば最後はプラスで終わらせる。
悪い言葉が出そうになったらポジティブな言い方を探して、その言葉だけを口にする。寝る前に良いイメージを描く。そうした小さな変化の積み重ねが、大きな流れを作っていきます。
ぜひ良い習慣を身につけて、毎日を少しずつでも確実に明るく、幸せなものにしていきましょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役社長。「デキる人を増やして社会をもっと快適にする」を理念に、人事・組織コンサルタントや研修講師として活動。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。
著作『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜』
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