リーダーシップ
2024.8.26
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人工知能(AI)技術の急速な発展によって、私たちの働き方は大きく変わりつつあります。定型的な作業やデータ処理などの業務は、すでにAIが担当するようになりはじめています。そのため、これからの時代に人間にとって重要な仕事の一つは「人間の相手をする」ことになるでしょう。データ処理や資料作成などの「コンピューターを相手とした仕事」ではなく、「人間を相手にした仕事」がますます重要性を増していくのです。
顧客や取引先への対応はもちろんのこと、上司、部下、同僚、他部門など社内の人間との関わりも、AIにはできない人間ならではの重要な仕事です。したがって、AI時代においても、これまで同様に(あるいはこれまで以上に)対人能力を磨いていくことが求められるでしょう。
「対人能力を磨く」と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「コミュニケーション能力」でしょう。確かに、コミュニケーション能力は重要であり、向上させることに越したことはありません。しかし、それがすべてではありません。
研修の受講者などに「コミュニケーション能力以外に、他にどんな対人能力が必要でしょうか?」と尋ねると、答えに詰まる方が多く見受けられます。中には「コミュニケーション能力以外にも対人能力ってあるのですか?」と尋ねる人もいるほどです。まるで、コミュニケーションが対人関係のすべてを解決してくれるかのように、「対人能力=コミュニケーション能力」と認識している人が多いのです。
コミュニケーション能力とは、情報の発信・受信・相互理解を通じて、お互いの思考や感情、意思を相互に伝達し、交流させるための能力です。言い換えれば「意思疎通を図る力」です。しかし、意思疎通だけでは、必ずしも対人関係のすべての問題は解決しません。
ビジネスとは、本質的には互いに行動変容を迫ることだと言えます。例えば、ルールを遵守してもらう、新しいことに挑戦してもらう、改善のアイデアを挙げてもらう、情報を提供してもらう、商品やサービスを購入してもらうなど、仕事のプロセスの多くは「相手を動かす」ことによって成立しているのです。
相手に動いてもらうためには、コミュニケーションをとって意思疎通を図るだけでは不十分です。わかりやすく伝えるプレゼンテーション能力、合意形成を図るファシリテーション能力、話の折り合いをつける折衝力や交渉力、調整力なども、仕事をする上で必要な対人能力です。相手に嫌われないようにするためのビジネスマナーも、対人能力の一つだと言えるでしょう。
そして、人を動かすという点では、コミュニケーション能力も含めここまでご紹介したいずれの能力よりも、もっと重要な対人能力があります。それが「リーダーシップ」です。
リーダーシップは管理職や監督職など職位のある人にだけ求められるものではありません。働くすべての人にとって必要な能力です。例えば
このように、リーダーシップは上から下だけでなく、下から上、あるいは横にも発揮されるのです。
リーダーシップは生まれ持った素質ではありません。訓練によって習得可能な「スキル」なのです。したがって、仕事力を高める上では、リーダーシップを「スキル」として磨くことができます。
極論を言えば、たとえコミュニケーション能力が低くても、リーダーシップが高ければ相手を動かすことができます。しかし、逆は成立しません。リーダーシップがなければ、たとえコミュニケーション能力が高くても、相手を動かせないのです。
世界有数のコンサルティングファームであるマッキンゼー社で長らく採用を担当されていた伊賀泰代さんは、著書『採用基準』の中で、コンサルタントを採用する際にリーダーシップの有無を最も重視していたと述べています。論理的思考能力や問題解決能力、経営知識やデータ分析能力よりも、リーダーシップが最優先事項だったのです。
これはコンサルティング業界に限った話ではありません。あらゆる業種や職種において、仕事を進めるためには必ず「相手を動かす」場面があり、リーダーシップの有無が仕事の成果、質やスピードに明らかに影響を与えます。
AI時代において活躍できる人を目指すならば、リーダーシップは決して譲ることのできない必須スキルです。リーダーシップは、AIには決して発揮することのできない「人間ならでは」の能力なのです。
人工知能が進化し、多くの業務を代替するようになっても、「人を動かす」というリーダーシップの本質は変わりません。むしろ、人間同士の関係性がより重要になる中で、リーダーシップの価値はさらに高まっていくでしょう。
AI時代を生き抜くためには、テクノロジーの進化に適応しつつ、人間ならではの能力を磨くことが求められます。その中でも、リーダーシップは最も重要な能力の一つであり、継続的に学び、実践し、向上させていく必要があるのです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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