時間管理
2025.9.19
目次
今回のテーマは、ワークライフバランスを保つための時間の使い方です。
問題解決の第一歩は現状分析です。ワークライフバランスを保つためには、まずは自分の時間の使い方を把握することが出発点になります。1週間の時間の使い方を記録してグラフにし、全体の時間配分を「見える化」しましょう。趣味や娯楽、生活の時間なども含めて、1日24時間すべての時間の使い方を可視化することが必要です。
企業で行われるタイムマネジメント研修では、しばしば「仕事の時間」だけを記録や分析の対象にすることが多いです。しかし、ワークライフバランスを整えるためには、私生活の時間も含めて、24時間すべてを分析の対象とすることが必要です。どれだけ仕事の内訳が優れていたとしても、労働時間の総量が多かったらワークライフバランスを保つのは困難だからです。
仕事の量は完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張するという「パーキンソン法則」により、労働に割り当てる時間に余力がある分だけ仕事は増えていきます。ワークライフバランスを保つためには、「仕事以外の時間」を計画的に充実させることにより、仕事の膨張を防ぐ必要があるのです。
そのためにも、まずは「自分の時間が何に使われているのか」を確認し、どこの時間を増やしたいのか、あるいは減らしたいのかを明確にすることが有効です。
ワークライフバランスは、誤解したイメージで捉えている方も少なくありません。公私ともに充実した生活を送るためには、まずワークライフバランスのイメージを変える必要があります。
ワークライフバランスは「work(仕事)」と「life(生活)」が天秤のように釣り合っているイメージではありません。そもそも考えてみれば、これはおかしなイメージです。仕事は生活の一部に過ぎません。一部が全体と釣り合うことはないのです。
ワークライフバランスとは、まず「life(生活)」があって、その一部の要素として「work(仕事)」があるという集合関係で捉えるイメージです。ここで重要なのは、仕事以外の生活がどれだけ充実しているかです。仕事以外の時間が充実していないと、仕事は簡単に膨張して空いた時間を侵食し、生活における割合を大きくしてしまいます。これがまさにパーキンソン法則です。
ワークライフバランスを保つ上で大切なのは、work(仕事)以外の領域をきちんと確保することです。趣味・娯楽・家族・運動・学習・睡眠など、仕事以外の時間を十分に確保することによって、仕事の膨張を防ぐことができます。
まずは、それぞれの活動の現在における配分が何%なのかをグラフで確認し、次に自分が望む理想の配分を設計します。理想が描ければ、どこを削り、どこを増やすのかという改善の方向性が見えてきます。
例えば、私のグラフはこのような形になります。
左側は2011年2月の私の時間の使い方です。コンサルタントになる前、健康食品の会社に勤務していた頃で、大阪本社の近くのワンルームマンションで一人暮らしをしていた頃です。
右側は、2025年2月の記録です。コンサルタントになり、独立・起業して4期目。妻や二人の子どもと、神戸で暮らしつつ、全国各地に出張で回る日々です。
14年前と現在の配分を並べると、生活環境や状況、役割の変化により同じ人間でも活動のバランスが明らかに変わることが分かります。まさに「生活は時間でできている」と言えるのです。
ワークライフバンランスを保つ上で重要なのは、仕事の時間の配分を改善する前に、生活全体のバランスを設計することです。全体の時間の中で、仕事の割合をどの程度に抑えるかが決まれば、後はその中に収まるように仕事を設計していけば良いのです。逆に、仕事の配分を決めないままでは、仕事は膨張し続け、いずれ他の領域を圧迫することになります。
なお、時間の使い方を集計する上では、「ダブルカウントルール」を用います。これは、同時に複数のことを行った場合や、1つの活動が2つ以上の意味を持つ場合に、両方ともその活動を時間として見做すというものです。
例えば、通勤電車で1時間本を読んだなら、それは「通勤1時間」かつ「学習1時間」と両方にカウントします。これを30分ずつに分ける必要はありません。1時間通勤に使ったことも、1時間の学習を行ったことも事実だからです。
あるいは、自分のパートナーと一緒に何かスポーツをした場合、それは「交際」と「運動」のどちらにもカウントすることができます。
つまり、物理的な時間は24時間でも、意味的には24時間以上の効果を得られるのです。私はこれを「一石二鳥時間」と呼んでいます。
このルールで集計すると、一般的に「仕事」の比率は25〜35%に収まるケースが多くなります。週休2日で働き、私生活で一石二鳥時間が生まれるという前提においては、仕事の割合は相対的に小さくなります。もしこの方法で仕事の割合が40%を超える場合は、働きすぎか、もしくは私生活が充実していない可能性が高いというシグナルになります。グラフが語るサインを、そのまま改善議題として扱うのがコツです。
全体の時間の使い方を把握したら、次に「仕事の時間」を切り出して、その内訳を可視化します。
ここで見たいのは、その仕事が果たすべき役割に直結した「本来業務」と、組織としての運営・管理上付随する「付帯業務」のバランスです。まず自分の職種における「本来業務」と「付帯業務」を見分ける軸をはっきりさせましょう。これは「時間をかけるべき仕事」か「かけるべきでない仕事」かの線引きでもあります。
私の場合、この線引きは明確です。本来業務は二つしかありません。ひとつ目は「請求書が書ける仕事」です。つまり今月の売上に直結する仕事です。ふたつ目は「未来の請求書を作る仕事」です。言い換えれば、将来の売上を生むための種まきです。YouTubeでの動画配信やブログ、noteの執筆、ダウンロード用のホワイトペーパー作成などがこれに当たります。やればやるほど、未来の見込顧客発掘や案件創出に繋がるため、ここは積極的に時間を投じる領域と言えます。
私にとっては、それ以外の仕事はすべて付帯業務です。メールやメッセージの対応、研修やセミナーの資料作成、経費精算などの会計処理は、必要ではあるけれど成果に直結する仕事ではありません。そのため、なるべく短く、効率的に済ますことを常に心がけています。
私は月の半分以上を研修やセミナーの登壇で過ごすため、日中は基本的に連絡が取れません。そのため、コミュニケーションの齟齬が起きないように、メールやメッセージを明確に記述することを心がけています。
例えば、取引先や協業者にあいまいなメールを送ってしまい、相手が捉え違いをしてしまった場合、夜に修正指示を出したとしても、その修正を確認できるのは翌日の晩になってしまいます。相手が夜遅くまで働いている相手でもない限り、コミュニケーションは1日1往復でしか進みません。
だからこそ、メールやメッセージは相手に伝えるべきことを的確に伝えるよう「一発で仕留める」ように書くことに注意を払っています。要件・条件・期限・依頼事項・想定質問の先回りまでをまとめ、質問されることがないようにしておくのです。
さらに、文面作成そのものの負担を減らすため、継続して取引している相手とはできる限り、メールではなくチャットツールを使用しています。ChatWork、Slack、Facebook messenger、LINEなどを使用し、定型的な挨拶文などを省略して要件だけを端的に遅れるようにしています。そして、スキマ時間に返信ができるようにしておくことで、こうした「付帯業務」に要する工数を極限まで削減するのです。
これは、単にメールの時間を短くするだけではなく、意思決定の速度を上げ、案件のリードタイムを短縮することにつながります。付帯業務の工数を削減することが、本来業務の効果を高める効果につながるのです。
極論を言えば、私はホワイトボード1つで講義を成立させることができます。しかし、受講者の学習効果を考えれば教材は必要です。だからこそ、「作り込みすぎない」ようにしています。ポイントは最初から「再利用」と「横展開」を前提に設計することです。
具体的には、一度作った教材は何度も使い回せる構造にし、個別のカスタマイズ要望には「有料対応」としてなるべく応じないようにします。資料を作成することが私の「本来業務」ではないからです。
すると、多くの案件は標準教材での実施に落ち着き、どうしても新規テーマが必要な場合だけ、制作コストを投じます。その上で、新規の制作物は単発案件では終わらせず、今後の講座ラインナップとして販売展開し、投入した労力を回収します。
これにより、一回あたりの仕込み時間が逓減し、講座一本あたりの労働生産性が上がります。資料作成は目的ではなく手段です。資料を作ることに時間をかけるのではなく、本番で「伝えること」に目的の主眼をおきます。こうした仕事の進め方によって、本来業務へ注力する体制を整えていくのです。
「時間をかけるべきもの」と「かけないべきもの」を明確に分けると、日々の行動が変わります。資料は短く、打ち合わせは要点のみ、メールは一撃で。こうした足場づくりが、本来業務の厚みを増し、ワークライフバランスの回復へつながっていきます。
ここまで見てきたように、ワークライフバランスを保つためには、まず自分の時間の使い方を視覚化し、現状を把握することが第一歩です。次に、仕事の内訳を「本来業務」と「付帯業務」に分け、時間をかけるべき領域に集中するように、自分の仕事をデザインしていきます。付帯業務は効率化や仕組みで可能な限り短縮し、浮いた時間を生活や未来の成果につながる活動に振り分けるのです。
時間は24時間しかありませんが、意味的には24時間以上の効果を生み出すことができます。通勤中の学習や、家族との時間を兼ねた運動など、ダブルカウントの発想を取り入れることで、時間の質を飛躍的に高めることができます。
仕事は放っておけば膨張します。しかし、生活全体の器を設計し、仕事の配分をコントロールすることで、仕事と生活の両立は可能になります。大切なのは「時間を奪われる」のではなく「時間を選び取る」という意識です。この視点を持つことが、持続可能で豊かなワークライフバランスを実現するための鍵となることでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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