時間管理
2025.9.25
目次
1日の時間の中で、集中できる時間とそうでない時間は明確に存在します。
多くの人が「昼食後に眠くなる」「夕方には集中力が途切れる」といった経験をしているのではないでしょうか。これは単なる気のせいではなく、人間の体に備わっているリズム、つまり「能率曲線」によって説明することができます。
能率曲線とは、1日の時間帯ごとに人間のパフォーマンスがどう変化するのかを示したものです。個人差はありますが、平均的に見れば一定の傾向があります。これを理解することで、集中すべき時間に重要な仕事を配置し、逆にパフォーマンスが落ちる時間帯には軽作業をあてるといった工夫が可能になります。
能率曲線で最もパフォーマンスが高まるのは午前11時前後です。
つまり、11時付近が1日の中で「作業が最も捗る時間帯」となるのです。私は10時から12時までの2時間を「ゴールデンゾーン」と呼んでいます。この時間に、1日の中で最も頭を使う仕事を入れるのが効果的です。
たとえば、企画書の設計や重要なプレゼンの準備、あるいは文章の執筆など、自分の能力を最大限に発揮したいタスクは、この時間帯に集中させるのが理想です。
ゴールデンゾーンを逃してしまうと、その日のうちに最高のコンディションで取り組むことが難しくなるため、スケジュール設計において非常に重要なポイントになります。逆に、この時間に重要度の低いミーティングや単純作業を入れてしまうのは大きな損失となります。
ゴールデンゾーンの後、午後に入ると一気にパフォーマンスが落ち込みます。
特に13時前後は最も集中力が低下する時間帯です。これは「血糖値が上がるから」と思われがちですが、実際には食事の有無にかかわらずリズムとして起こる現象です。いわゆる「サーカディアンリズム(体内時計)」によって、昼過ぎには自然に眠気が訪れるのです。
この時間帯には、どれだけ気合を入れても高い成果は望めません。
そのため、戦略的に「頭を使わない作業」をあてはめるのが効果的です。メールの整理や経費精算、ルーチンワークなどをここに配置すれば、効率を落とさず時間を消化できます。私がやっている講義や研修でも、午後に入ると参加者が集中できないため、意識的に「手を動かす」「声を出す」活動を取り入れることが多いのも、このリズムを考慮しているからです。
昼食後の低迷を抜けると、15時前後から再びパフォーマンスが高まります。
私は14時から16時の間を「シルバーゾーン」と呼んでいます。ゴールデンゾーンほどではありませんが、集中力が高まるので、1日の中で2番目に重要な仕事をここに入れると良いでしょう。
たとえば、そこそこ重要な会議や資料作成の仕上げ、顧客への提案準備など「ある程度の頭を使う業務」に向いています。午前中に仕込み、午後に仕上げるといった流れをつくることで、1日の全体的な効率が格段に上がります。この時間帯を意識するだけでも、仕事のクオリティは変わってくるでしょう。
ここまで説明してきたように、時間帯ごとの特徴を理解すれば、どの時間に何をやるべきかが見えてきます。しかし問題は、外部の予定によって自分のリズムを乱されることです。アポイントやミーティングが勝手に午後の眠い時間に入れられてしまうと、本来集中したかった時間が奪われてしまいます。
だからこそ、スケジュールの主導権を自分で握ることが大切です。もし、避けられないけど重要度の低い会議やあまり生産性の高くない打ち合わせがあるなら、あえて能率が低下する「デッドゾーン」に入れてしまうという方法もあります。どちらにせよ、集中できない時間帯であれば、そこで必要最低限の仕事をこなす方が合理的です。
能率曲線を理解するうえで、忘れてはならないのが「活動限界時間」です。
これは、起床してから何時間経つとパフォーマンスが急激に落ちるかという指標です。一般的に、人間の集中力や判断力は起床後14時間半を過ぎると低迷し、17時間を超えると極端に低下するといわれています。
たとえば朝6時に起きた場合、20時30分ごろから注意力はマイナスに傾き始めます。この段階になると、一生懸命仕事をしているつもりでもケアレスミスが増え、かえって作業効率が下がります。そして23時ごろ、つまり起床から17時間後には、酩酊状態に近いパフォーマンスしか発揮できなくなるのです。
この状態になると、たとえ「まだ仕事を進められる」と思っても、実際には成果が伴いません。むしろ余計なミスをして、翌日にやり直す手間が発生するなど、かえって非効率になります。
夜遅くに書いた文章や資料を翌朝に見返すと「こんなものは出せない」と感じることがあるのは、頭が正しく機能していなかった証拠です。
私も20代の頃は、会社に残って深夜まで仕事を続けることがよくありました。しかし、いま振り返れば、その多くが「無駄な時間」だったと痛感します。集中力が尽きている状態で作業を続けても、質は上がらず、むしろ体力を削って翌日に悪影響を及ぼすだけでした。
このように考えると、1日の中で仕事を効率よく進めるには「活動限界を超える前に切り上げる」という姿勢が不可欠です。つまり「今日はここまで」と決め、仕事を翌日に残すことを恐れないことが大切になります。人間の能率には限界があるため、どんなに頑張っても結果が出ない時間帯があると理解することが重要です。
逆に言えば、ゴールデンゾーンやシルバーゾーンに最も重要な業務を配置し、低迷する時間には単純作業や雑務を割り当てる。これだけで、1日の仕事の質と効率は大きく変わります。能率曲線を意識することは、働き方を改善するうえで最もシンプルで効果的な方法のひとつといえるでしょう。
1日の中で最高の集中状態を発揮できるのは午前10時から12時のゴールデンゾーンであり、次に重要なのは午後2時から4時のシルバーゾーンです。
逆に昼食後や夜遅くはパフォーマンスが著しく低下するため、単純作業や雑務をあてはめる方が合理的です。さらに起床から14時間半を超えると効率は急激に下がり、17時間を超えると泥酔した状態に近いほど非効率になることも理解する必要があります。
この事実を知ってスケジュールを設計すれば、同じ労働時間でも成果がまったく変わってきます。能率曲線は、効率的なスケジュールを立てるための羅針盤ともいえるものです。自分の体のリズムを無視するのではなく、うまく付き合う働き方を整えることこそが、長期的な成果と健康につながるでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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