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2018.11.14
企業の経営層や幹部層とお話していて、たびたび話題にあがるテーマのひとつに「主体性」があります。
ビジネスのスピードが早い現代においては、上位職がメンバーの個々の行動に逐一介入するのは困難です。一人ひとりが自立した個人として仕事を遂行する、言わば「自分で考えて、自分で行動する」ことを求めているわけです。
こうした話は今にはじまったことではなく、何年も前からずっとありました。それに対して私も、メンバーに主体性がないのは個人の問題ではなく、職場の風土や環境、上司の指導力問題であると考えておりました。
失敗した時に叱責されるので、萎縮してチャレンジをしなくなる。自分の意見を問われない。意見を述べたとしても、それが汲み取られない。良かれと思ってやったとしても、余計なことをするなと怒られる・・・
人が主体性を失うのは職場環境や上司が原因であり、それが改善されば主体性を持って仕事ができるようになる。以前は私もそのように考えていましたし、もちろん、それも一面としてなお存在すると思います。
しかし、原因は必ずしもそれだけではなく、やはり個人の問題に起因するのではないかとも
最近考えるようになりました。
現場の声として聞く、主体性がないと言われる人たちの特徴には、次のようなものが挙げられます。
もし、これらが職場環境や上司の問題であれば、ほとんどの人が同じような態度や行動を取るはずです。
ところが詳しく伺ってみると、決して皆がそうなのではなく、責任をもって自分で仕事を進められる人と、何から何まで聞いている人が同じ職場に混在しているケースが多いようです。
また、必ずしもキャリアや年齢の問題でもありません。経験の浅い若手でも主体的、意欲的に仕事を進められる人もいれば、40歳を超えるようないい歳した人でも、いちいち他人の確認をとってきたり、判断を丸投げしたりするケースがあるようです。
こうなると、やはり個人の問題と言わざるを得ないように思います。
上記の人たちに共通しているのは、
の欠如です。
自分の仕事をあくまで「会社の仕事」として捉えている人にとっては、仕事は所詮「他人事」になります。
たまたま配属先が今の部署になり、たまたま割り振られたのが今の仕事である。そのように考えているので、そもそも「自分の意思で仕事をしている」という意識がありません。
設定されている目標は他人事。担当している案件も他人事。顧客との関係も他人事。そこに自分の意思や意欲がないので、自分で何かを調べたり、考えたり、決めたりしようとすることがないのです。
絶えず他人の意見を伺い、他人に判断を委ね、他人の指示や命令に従って、ただの「作業」として仕事を「こなす」。これが俗に言う「やらされ感」に基づく仕事です。主体性のなさは意思決定を避けようとする姿勢であり、その根本は当事者意識の欠如に起因します。
その逆に、成果を上げる人、自分で考えて行動する人は、当事者意識を持って仕事をしています。それが高い責任感、スピード感、誠実さ、高品質質の追求などの高いパフォーマンスに表れるのだと言えるでしょう。
主体性の有無は、意思決定に表れます。
意思決定というと、経営上の難しい判断を伴う高度な仕事のように聞こえますが、読んで字のごとく「自分の意思を決定する」ことです。難易度や影響度はどうであれ、自分で考えて決定することが意思決定なのです。
もちろん、組織で仕事をしている場合、何もかもを自分の一存で決められるケースは稀です。
多くの場合は、判断の影響が大きくなればなるほど、意思決定の権限は高い階層が持つことになるので、上司など組織の上部に最終決定を委ねなければなりません。
しかし、その場合でも、「どうしたら良いでしょうか」と判断を丸投げにするのと、「自分はこうしたいのですが、よろしいでしょうか」と承認を得ようとするのとでは、大きな差があります。
そして、自分で判断材料を集め、自分で考え、自分で結論を出すという姿勢で仕事をしている限り、たとえそれが一時的には偏った物の見方や不十分な検証で誤った判断であったとしても、トライ&エラーを繰り返す中で、決定の質は次第に向上していきます。
これが必然的に仕事の質とスピードを上げ、結果的により多くの仕事に対応できる力を養うことになります。仕事に主体性が求められるのは、自分で意思決定をしようとする姿勢が、結果的に高いパフォーマンスにつながるからなのです。
では、主体的に意思決定ができるようになるためには、どうすれば良いのでしょうか。
それには、
の2つが必要です。
「自分の決定に責任を持つ」というのは、「結果の原因は自分にある」と捉えるということです。言い換えれば、良くない結果が起きても他人のせいにしないことだと言えます。
何かうまくいかないことがあった時、「だって○○が××だから・・・」と言い訳し、自分以外に原因があると説明しようとすればするほど、周囲はその人が原因だと考えるようになります。
一方、「今回は判断を間違えた。次回は同じことを繰り返さないようにしたい」と潔く自分の責任を認め、改善に努めようとすれば、その時の結果は悪かったとしても、周囲はその人の仕事の取り組みを認め、次に期待しようとするものです。
まずは結果の責任は自分にあるという心構えを持つことです。そうすれば、自ずと「物事の決定は自分でくださなければならない」という思考パターンになります。
そして、意思決定の質を高めるためには、その訓練が必要です。ポイントは「限られた情報の中で、できる限り早く結論を出す」ことです。
意思決定を保留する理由として「まだ十分に情報を集められていないから」とされることがありますが、何かを決めるために必要な情報が100%集められることはビジネスの現場では稀だと言えるでしょう。結論を出すための材料集めに時間をかけすぎて、チャンスやタイミングを逃してしまうことはしばしば見受けられます。
仮に集められたとしても、それには膨大な時間を要します。情報収集は、ある一定の段階まで比較的早くできますが、それ以上を求めるとなると効率が悪くなっていきます。(収集に要する時間や労力がよりかかるようになります)
事の大小を問わず、何事においても、現段階で考えられる最善の案を「まず、決める」という訓練が必要です。棚上げ、先延ばしにせず、「まず、決める」ことを何度も繰り返すことで、判断や決定に要する質やスピードが次第に向上していきます。
結論を保留にして先延ばしにすることは、仕事の停滞を招くだけでなく、事態の悪化や機会の損失を招きます。その場、その場で決めていこうとする姿勢こそが主体性であり、それが仕事の量・質・スピードのすべてを向上させることになるのです。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。