ミッション・ステートメントは何のために書く?

前回の続きです。

興味と価値観から導き出されたゴールに役割を掛けあわせることで、いくつかの「人生の目的」を書き表すことができました。これらを紡ぎ合わせて、いよいよ使命(=人生の目的)の宣言文「ミッション・ステートメント」をまとめていきます。

ミッション・ステートメントをまとめる前に、ここで改めて、なぜそれが必要なのかを考えてみます。自分の人生に目的を持ち、それらを宣言文にまとめることにはどういった意味や効果があるのでしょうか。

人生は「選択」の積み重ね

このブログでは繰り返し書いていることですが、人生は無数の「選択」の積み重ねでできています。意識的に自分で選ぶこともありますが、無意識に選んでいることも数えきれないほどあります。影響力の小さなことや習慣化したことは特に、無意識に選んでいることが多いです。そして、私はこの無意識に選んでいることこそが、人生を大きく決定づけていると考えています。

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何かしらの行動を取る時、そこには意識/無意識での「決める」というプロセスが必ず含まれています。行動をとるということは、身体を動かす(その場から動かずとも、話すことも含まれる)ということ。人間が身体を動かすには脳から指示が伝達される必要があり、その指示伝達を行う前には、脳では何かしらの判断が生じています。

時に、瞬間的に決める(これが無意識での判断=直感です)こともありますが、それらも含め、人間は絶えず何かを「決める」という行為を繰り返しながら生きているのです。

そして、何かを「決める」際には、ほぼ必ずといっていいくらい別の選択肢が存在しています。ある一つの決定をすることは、考えられる別の選択肢を放棄するということです。すなわち、「決める」ことは「選ぶ」こととほぼ同義なのです。

3つの無意識な選択

意識的な選択を行う場合は、その選択肢を取る理由を理性的に考えます。何かを「やる」という選択はもちろん、何かを「やらない」という選択をする際にも、どの選択肢が一番自分にとってベストなのかを総合的に、論理的に考えて選びます。

しかし、それらは日々の選択のごく一部です。大部分の選択は無意識に、瞬間的に行われています

例えば、ダイエット中なのにお菓子を食べてしまう。今月はお金を使いすぎているのに、また新しい買い物をしてしまう。といったケースは「衝動的な選択」と言えるでしょう。これらは、現在の「感情」が選択に大きく影響しています。

また、朝起きてからテレビをつける。カーテンを開ける。歯を磨く。など、いちいち考えなくてもやっていることがあります。それらは「習慣化された選択」です。食事の後に歯を磨く際に、「今日は歯を磨こうかな。磨くのやめようかな」と考える方は少ないでしょう。それは歯を磨くという行為が習慣として自分の中に定着しているからです。

本屋に立ち寄って何気なく本を手に取る、といった場合はどうでしょうか。意識的に本を選ぶこともありますが、ズラリと並んでいる本の中から特定の一冊を選ぶ際に、特に意識せずに選んでいるケースがあります。それは、過去の経験から形成された自分の嗜好に基づいて、無意識で選んでいるのです。これらは「反射的な選択」です。

「習慣化した選択」と「反射的な選択」には、過去の経験が大きく影響しています。

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こうした瞬間的な選択は、過去の経験や現在の感情を判断材料として、無意識で半自動的に自分の中で行われています。しかし、過去の経験といっても、大きなものから小さなものまで数えきれないほどの出来事を、私たちは積み重ねて生きてきています。中には、似たような場面でありながら、まったく違う対応を取ってしまうこともしばしばあります。

なぜなら人間が何かを選ぶ際、そこには感情が大きく影響するからです。その時の気持ちのあり方次第で、まったく違う選択をとる場合が起こりうるのです。健康で気持ちが前向きな時は積極的な選択をし、不健康、睡眠不足、ショックな出来事の後、意識消沈などの状況下にあった場合、消極的な選択や自虐的な選択をとることがあります。

こうした現象がなぜ起きてしまうのか。それは、自分の中で判断基準が明確になっていないから。すなわち、自分自身がブレているからです。

感情をコントロールすることはできません。しかし、行動をコントロールすることはできます。思い描いたゴールの数々から人生の目的を導き出し、それを宣言文として文章に書き起こすことで、判断をする際の自分の拠りどころを持つすることができます。ミッション・ステートメントを繰り返し読み返し、何かを決める時、行動する時に何度も人生の目的に立ち返ることで、選択・判断のブレが次第に小さくなっていきます。

こうして「ブレない自分」を作り上げていくことで、自分の行動が目的に沿って一貫性を持つようになります。これが、思い描いた自分の姿を現実に呼び寄せる最大の方法です。なりたい自分になり、やりたいことをやる。そのためにミッション・ステートメントは必要となってくるのです。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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