職場で部下やメンバーにどのように接すればよいか悩んだことはありませんか?
一律のやり方が通用しない場面も多く、「この人には指示が必要だけど、あの人には任せたほうがうまくいく」と感じることもあるでしょう。
そんな時に役立つのが、「状況適合型リーダーシップ理論(Situational Leadership Theory)」です。
これは、メンバーの「成熟度(能力と意欲)」に応じて、リーダーの関わり方を柔軟に変えるべきだとする考え方です。
指示型は、主に仕事の経験が浅く、まだ自信やスキルが十分でないメンバーに対して有効なスタイルです。
この段階では、本人のモチベーションはある程度あるものの、「どう動けばよいのか」がわかっていないケースが多いため、リーダーが具体的かつ詳細に業務の進め方を教える必要があります。
たとえば、次のような関わり方が該当します:
これはいわば“教える”リーダーシップです。納期、品質、手順、使用ツールなどを明確に伝え、本人の迷いをなくすことが第一です。
重要なのは、細かくても「型」をしっかり渡すこと。最初の成功体験を積ませることで、自信や実力を育てていく土台ができます。
コーチ型は、ある程度仕事に慣れてきたが、まだ不安定な段階にあるメンバーに対して効果的です。
この段階のメンバーは、自分でやれる気持ちはあるものの、判断に自信が持てなかったり、責任を負うことに戸惑いを感じていることがあります。
そのため、リーダーは単に「こうしなさい」と指示を出すだけでなく、なぜそうするのか、背景や目的を丁寧に説明しながら関わる必要があります。
また、メンバーの意見も積極的に聞き入れ、納得感を得ながら進めていくことが求められます。
具体的には:
このスタイルでは、指示と支援のバランスが鍵になります。
ただ命令するのではなく、相手を信頼し、意欲や理解を引き出しながらリーダーシップを発揮していく形です。
支援型は、業務遂行の能力はあるが、自信やモチベーションが下がっているメンバーに適したスタイルです。
このようなメンバーは、スキル面では問題がなくても、職場の人間関係、業務負荷、評価への不安などから、精神的に不安定になっていることがあります。
この段階では、仕事の内容そのものよりも、気持ちのケア、信頼関係の構築、意見の尊重といった関わりが重視されます。
リーダーは以下のような行動を意識します:
このスタイルでは、一緒に考え、支える姿勢が大切です。
業務の管理よりも、相手の感情や人間性を大切にした関わりを通して、再びやる気や主体性を引き出していきます。
委任型は、能力も意欲も高く、自立して仕事ができるメンバーに対して最も効果的なスタイルです。
この段階にあるメンバーに対して、細かく指示をしたり、頻繁に声をかけたりすると、かえってモチベーションを下げてしまうことがあります。
そのため、リーダーの役割は「指示すること」ではなく、環境を整え、信頼して任せることに変わります。
実際の言動としては:
このスタイルの鍵は、口出しせずに見守る信頼です。
ただし「放置」ではなく、必要なときにはすぐに支援できる体制を整えておくことも重要です。
まさに「任せて、支える」高度なリーダーシップの形といえるでしょう。
リーダーシップスタイル診断に回答し、あなたはどのスタイルの得点が高いかを確認してみましょう。
この理論の肝は、メンバーの状況に合わせてリーダーがスタイルを変えるという点です。
一貫性よりも柔軟性が重要で、「誰にでも同じように接すること」が必ずしもフェアではありません。ある人には詳細な指示が必要でも、別の人には任せたほうが力を発揮できる。
その違いを見極めて、最適な関わり方を選ぶのが、状況適合型リーダーの役割です。
リーダーシップに「正解」はありません。ただし、「相手の成長段階に応じて関わり方を変える」という視点は、どんなチームにも応用が利きます。
自分が今どのスタイルで接しているかを振り返りつつ、相手の状況に適したスタイルを意識してみる。それが、チーム全体の成果やメンバーの成長につながっていくはずです。