セルフマネジメント
2026.2.28

目次
私たちは不思議なことに、人から言われたことは実行できるのに、自分がやりたいと決めたことはなかなか前に進められないものです。
上司からの指示や命令、お客様からの依頼は確実に遂行するのに、自分自身が「やりたい」と思っていることは、「時間がない」「余裕がない」という理由でずっと先送りや棚上げになってしまいます。数ヶ月、あるいは数年が経過しても、一歩も前に進んでいないということも少なくありません。
私がリーダー育成や管理職向けの研修を担当する際に常々申し上げているのは、「何を言うかではなく、誰が言うかによって人は動く」ということです。組織を率いるリーダーやマネージャーが、メンバーを動かしていくためには、まず「メンバーが信頼してくれるような人物」にならなければなりません。そして、その信頼を寄せてもらえる人とは、言っていることとやっていることが一致している「言行一致の人」なのです。
したがって、まずは自分を動かせるようにしなければ、他者を動かすことは難しいのです。自分が決めたこと、決めた通りにやる能力、すなわちセルフマネジメント能力が必要になってくるのです。
私の研修では、導入研修の後に行動計画を立て、数ヶ月かけて計画を実践した後、フォロー研修でその成果をご発表いただいています。しかし、実際の成果報告では、ほとんどが未達成という結果で終わります。一歩も前に進んでいない、まったくの未着手というケースも決して少なくありません。これでは、とても部下がついてくるリーダーにはなれません。
チームを率いる人物になるためにはもちろん、何か事を成し遂げるためには、自分がやると決めたことを決めた通りにやるセルフマネジメント能力が必要です。今回は、自分で決めたことができない3つの理由とその対策についてお話しいたします。

自分で決めたことができない第一の理由は、その目標が「建前」であって「本気」ではないということです。そう言うと、「いや、やりたいんだ。本気なんだ」とおっしゃるかもしれませんが、「本当にそうなのか」を何度も問い直してみていただきたいのです。
例えば、問題解決や業務効率化の研修でよく挙がる話題の一つに「業務の属人化解消」があります。特定の人にしかできない仕事がある状況では、その人が急に休んだり会社を辞めてしまったりした時に、その仕事が立ち行かなくなります。そのため、チームメンバーで共有して仕事を回せるようにしたいとおっしゃるわけです。
しかし、この課題に対しては、ほとんど前に進まないのが現実です。それは「そもそも本当に属人化を解消したいと思っているのか」という問題なのです。本音で考えてみた時、属人化していた方がむしろ楽ではないでしょうか。
他の人と仕事を共有するのは、非常に面倒なことです。仕事が属人化していれば、自分のことだけ考えていればよく、自分のペースでやれます。しかし、他の方と一緒に仕事を共有するとなると、作業状況を記録に残したり、作業手順書(マニュアル)を作ったり、他の人の仕事を覚えたりと、仕事が増えてしまいます。どれも面倒なことばかりです。
したがって、属人化を解消するためにやらなければいけないことを考えると、億劫になってくるのです。「属人化は良くないよね、なんとかしたいよね」と口で言っているだけで、実際には何もしたくないと、少なくとも無意識では思っているというのが多くの現実だと思います。
では、どうすれば良いのでしょうか。それは、もっと夢中になれる、本気になれる目標に変えれば良いのです。例えば、仕事の幅を広げたら評価を上げるとか、自分の仕事を後輩に引き渡したら昇進・昇格させるといったインセンティブがあれば、本気になれるはずです。
あるいは、AIを使って業務を自動化する実験台として、現在の仕事を題材に使うという形にしていけば、そのプロセスを楽しめるのではないでしょうか。後輩を育てることそのものに喜びを感じるのであれば、それを目標としても良いかもしれません。
なかなか前に踏み出せない理由の一つは、目標が建前で、それらしく言っているだけで、内心は本気でやろうとしていないものではないかということです。その場合、目標を別の「ワクワクするもの」に変えていくことが有効なのです。
これは年収の目標についても同じことが言えます。年収1,000万円が本当に必要だという理由が明確にあり、心の底からそう思っていれば、おそらくもうなっているはずです。現実として1,000万円になっていないということは、心底渇望する目標にまだなっていないのです。目標に対して本気になれるかどうかは、実際に行動に踏み出せるか踏み出せないかの大きな境目になります。
第二の方法は、「曖昧なイメージ」を「解像度の高い明確なイメージに変える」ことです。別の言葉で言えば、「抽象的な目標」を「具体的な目標」に変えるということになります。
到達地点が漠然としていると、何をしていいのか分かりません。どういう風になったらいいのか、何を成し遂げたいのかが明確であればあるほど、そこと今との差分がはっきりしてきますので、その差を埋めていくための行動に踏み出していけるようになります。
私の例でお話します。私は、当社の売上を1億円に到達させたいと考えています。しかし、ただ「1億円にしたい」と言っているだけでは、実際には今やっている仕事で精一杯で、それ以上なかなか前に進んでいきません。1億円の売上が当社で立っているというのはどういう状態なのか。この解像度を上げないと、やはりやるべきことが見えて来ないのです。
そこで私は、売上1億円が達成された時のイメージを、ほぼ丸1日かけて詳細に考える日を設けました。今の状況と比較して、1億円になった時には、何がどう違うのかを細かに考えるのです。何社とのお取引があり、年間で何本ぐらいの案件が走っていて、何人の仲間がいればこれができるのか。
そして、それだけの取引を創るためには、一体どれぐらいの会社にアプローチして営業活動をしていけばいいのか。そして、どれぐらいの頻度でセミナーをやり、ダウンロード資料をどれぐらい用意すれば、見込顧客を確保できるのか。これをすべて計算するのです。
実際のところ、やればやるほど、現場との乖離が明確になり、気が遠くなってきます。面白いもので、漠然としたイメージの方がまだ近そうな気がするのです。それを具体的にしていけばいくほど、どんどん遠のいていきます。道のりが途方もないということが見えてくるのです。しかし、その一方で、道のりは「はっきり」してくるのです。
具体化とは、シンプルに言うと「固有名詞と数字を入れる」ことです。上記の例だと、売上1億円が達成した際の取引リストを仮定で作成し、まず実際に今お付き合いがある会社様の名前を書き入れていきます。そして、残った空欄に具体的な名前を入れていけるように、「まずは営業活動をしなければならない」ことが明確になります。課題が明確になるほど、やるべきこともはっきりしてくるので、実際にそこに向かって動き出せるようになるのです。
加えて、そこに期限を入れていきます。売上1億円をいつまでに達成するのかを決め、そこから逆算していったら、もう今すぐ行動に踏み出さないと間に合わないことに気づきます。
危機感が上がるのです。それぐらい「明確さは力」なのです。人は、漠然と考えているものに対しては具体的に動けません。明確になっているものに対して、人は踏み出せるようになるのです。

第三の方法は、自分1人でやるのではなく、他の人を巻き込むことです。前述の通り、私たちは「人から言われたこと」は確実にやるのです。しかし、自分がやりたいことは、なかなか思うようにできません。やらなくても誰にも迷惑をかけないし、誰からも責められることもないからです。
だとすれば、その習性を逆に利用すれば良いのです。つまり、自分がやりたいことに他者を巻き込むことで、「他者のために」実行できるようになるのです。
例えば、私のYouTube投稿はまさにその典型例です。YouTubeをはじめた当初は、撮影、編集、サムネイル作成、アップロードなど、すべての作業を自分一人でやっていました。しかし、作業が大変で時間がかかりすぎるため、次第に面倒になり、投稿頻度がみるみる下がっていきました。最終的にはまったく撮影すらしなくなってしまったのです。
そこで、動画の編集やサムネイル作成、アップロードまでを他の方にお願いをするようにしました。私がやるのは撮影だけです。撮影した動画のデータを渡し、後はすべて代わりにやっていただくようにすることで、少なくとも撮影「だけ」はするように自分を仕向けたのです。
強制力を上げるため、お支払いする金額は月額で固定しています。事前に決めた本数の動画を撮影できても、できなくても同じ金額を払います。そのため、撮影をしなければ自分が損をすることになるのです。また、仮に撮影ができなくて、編集作業をしなくてもお代を払うとなると、お相手にも心苦しい思いをさせてしまうことになります。そうした痛みを回避するため、「何が何でも動画を撮る」という行動に向かっていくのです。
こうして、他の方を巻き込むことによって、自分自身を行動に駆り立てることができると理解できるようになり、それを加速させるために、私は去年の夏から月に1回コーチングを受けるようになりました。コーチとの会話を定期的に設けることで、自分にとっての課題が何なのか、優先順位をどうすべきなのかがクリアになり、次の1ヶ月を走り抜くための明確な計画が出来上がるのです。
また、別の例で言うと、ある時に参加した飲み会の席で「営業をしてくれる方が欲しいんだよね」とぼやいていたら、「では、私が営業をやりますよ」という方が現れてくださって、それまで停滞し、棚上げになっていた営業活動が一気に加速することになりました。これも、1人ではまずできなかったことです。
すべてのことを自分1人でやるのは無理です。自分がやりたいことを「チーム活動」に変えることによって、前に進める力を伸ばしていく。これこそが、「自分を動かせる人」の考え方ではないかと私は考えます。
今回は「やりたいことができない自分を変える3つの方法」についてお話しいたしました。
どれ一つ欠かせない要素です。この3つの条件を満たしていくことによって、今までずっと先送り、後回しにしていた「自分がやりたいと思っていること」が実現できるようになります。ぜひあなたも、この3つの方法を組み合わせて、一歩前へ進めてみてください。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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