人材育成
2025.4.11
目次
企業の持続的な成長を目指す上で
といった悩みは、多くの経営者や人事担当者の方が直面する共通の課題ではないでしょうか。
これらの現象は、単なる職場の雰囲気の問題として片付けられるものではありません。
その根底には従業員の「エンゲージメント」の低下という、企業の競争力や将来性に直結する深刻な問題が潜んでいる可能性があります。
エンゲージメントの低下は、生産性の伸び悩みやイノベーションの停滞、そして貴重な人材の流出といった経営リスクに繋がりかねないため、看過できない状況と言えます。
では、そもそも「エンゲージメント」とは何を指すのでしょうか。
エンゲージメントとは、従業員が所属する企業や自身の仕事に対して抱く「貢献したい」という自発的な意欲や、組織との精神的な繋がり、愛着心の強さを示す概念です。
単に会社に満足している状態(従業員満足度)とは異なり、従業員が組織の目標達成に向けて主体的に行動し、持てる力を最大限に発揮しようとする状態を意味します。
近年、投資家からも注目される「人的資本経営」の流れの中で、従業員を単なるコストではなく、価値創造の源泉たる「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことが企業価値向上に不可欠であるという認識が広がっています。この文脈において、従業員のエンゲージメント向上は、人的資本の価値を高めるための最重要課題の一つとして位置づけられているのです。
エンゲージメントを高めるためには、待遇改善や福利厚生の充実といった施策も考えられますが、それだけでは本質的な解決には至らないケースが多く見られます。
実は、従業員のエンゲージメント向上と「人材育成」には、非常に密接な関係があります。単に研修機会を提供するだけでは十分ではありません。「戦略的」な視点に基づいた人材育成アプローチこそが、従業員のエンゲージメントを効果的に高め、ひいては離職率の低下や生産性向上といった具体的な成果に繋がるのです。
この記事では、まずエンゲージメントが高い組織が持つ具体的なメリットをデータと共に解説します。次に、エンゲージメント向上に本当に「効く」人材育成の本質的なポイントを深掘りし、具体的な育成施策例や成功事例、そして効果測定と改善のサイクル(PDCA)について詳しくご紹介します。
貴社のエンゲージメント向上と持続的な成長を実現するための、人材育成戦略のヒントがきっと見つかるはずです。
貴社の状況に合わせた具体的なエンゲージメント向上策や、効果的な人材育成プログラムの導入をご検討の際は、ぜひ株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングにご相談ください。まずは、弊社のサービス内容が分かる資料をご覧になりませんか。個別のご相談や研修に関するお問い合わせは、下記より承ります。
従業員のエンゲージメントを高めることがなぜ重要視されるのでしょうか。
それは、エンゲージメントの高さが企業の業績や組織の健全性に直接的な好影響をもたらすことが、様々な調査研究によって明らかになっているからです。感覚的な話ではなく、具体的なデータがその効果を裏付けています。
まず注目すべきは、従業員エンゲージメントと企業業績や生産性との間にある強い相関関係です。
エンゲージメントが高い従業員は、自身の仕事に誇りと情熱を持ち、組織の目標達成に向けて自発的に貢献しようとします。このような主体的な働き方は、個人のパフォーマンス向上はもちろん、チーム全体の生産性を高める原動力となるでしょう。
実際に世界的な調査機関ギャラップ社の研究によれば、エンゲージメント・スコアが高い企業は、低い企業と比較して生産性が大幅に高い傾向が示されています。
また、厚生労働省の調査においても、働きがいを感じている従業員が多い企業ほど労働生産性が向上するという結果が報告されており、エンゲージメントが企業の収益性にもポジティブな影響を与えることがうかがえます。
イノベーションの創出においても、エンゲージメントの高い従業員が積極的に新しいアイデアを提案し、挑戦する土壌が生まれやすくなると考えられます。
エンゲージメント向上がもたらすもう一つの重要な効果は「人材の定着」です。優秀な人材の獲得競争が激化する現代において、従業員の離職は採用コストや教育コストの増大、組織力の低下を招く大きな経営リスクとなります。
この点においても、エンゲージメントの高さは非常に有効な対策となり得ます。複数の調査データが、従業員エンゲージメントの高い企業では離職率が有意に低いことを示しています。例えば、ギャラップ社の調査では、エンゲージメント・スコアが低い企業は高い企業に比べて離職率が31%から51%も高いという結果が出ています。
別の調査では、エンゲージメントの高い企業は低い企業と比較して離職率が59%も低いという報告もあります。日本国内においても、従業員エンゲージメント向上に積極的に取り組む企業の約7割で、従業員の定着率が80%以上を維持しているという調査結果があり、エンゲージメントが人材の流出を防ぐための鍵であることが明確に示されています。
ここで、「従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)」と「従業員エンゲージメント」の違いを明確にしておく必要があります。
両者は混同されがちですがその性質は異なります。
従業員満足度は、主に給与、福利厚生、労働時間、職場環境といった「働きやすさ」に対する従業員の満足感を示す指標です。もちろん、満足度を高めることも重要ですが、満足度が高いからといって、必ずしも従業員が積極的に組織に貢献しようとする意欲が高いとは限りません。「待遇には満足しているが、仕事への情熱は特にない」という状態も起こり得るのです。
一方、エンゲージメントは、「働きがい」や「組織への貢献意欲」といった、より能動的で主体的な関与を示す指標です。企業の持続的な成長のためには、単に不満がない状態(満足)を目指すだけでなく、従業員が自らの意思で組織の成功に貢献したいと感じる状態(エンゲージメント)を育むことが、より本質的なアプローチと言えるでしょう。エンゲージメントの高い組織こそが、変化の激しい時代を勝ち抜く競争力を備えているのです。
このように、従業員エンゲージメントの向上は、生産性向上、離職率低下、そして企業全体の競争力強化に直結する重要な経営戦略です。
貴社でもエンゲージメントの状態を把握し、向上させるための具体的な取り組みを始めてみませんか。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングでは、エンゲージメント診断から課題特定、具体的な施策立案までをサポートしています。
従業員エンゲージメントを高める上で、人材育成が重要な役割を果たすことは間違いありません。
しかし「研修さえ実施すればエンゲージメントは上がる」と考えるのは早計です。単発的なスキル研修や、目的が曖昧なOJTだけでは、従業員の心からの貢献意欲や組織への愛着を引き出すことは難しいでしょう。
真にエンゲージメント向上に繋がる人材育成とは、従業員一人ひとりの内面に働きかけ、「成長」「貢献」「自律」「承認」といった実感をもたらす、より本質的で戦略的なアプローチを指します。
ここでは、その具体的なポイントを詳しく見ていきましょう。
人は誰しも、自身の成長を実感できる環境に身を置くことで、仕事への意欲やモチベーションが高まります。エンゲージメント向上においても、従業員が「この会社で働き続けることで、自分は成長できる」と感じられることが極めて重要です。
そのためには、単に業務に必要なスキルを教えるだけでなく、個々のキャリア志向や目標達成に繋がる学びの機会を提供する必要があります。
OJT(On-the-Job Training)においては、日々の業務を通じた指導が、場当たり的ではなく、個々の従業員の育成目標に基づいて計画的に行われるべきです。
Off-JT(Off-the-Job Training)としての研修やセミナーも、従業員が自身の課題解決やスキルアップに必要だと納得できる内容であることが求められます。eラーニングなどを活用し、時間や場所を選ばずに学べる環境を整えることも有効でしょう。
さらに、資格取得支援や書籍購入補助といった自己啓発(SD: Self Development)への支援も、従業員の自律的な学びを後押しし、成長実感に繋がります。
重要なのはこれらの育成機会が、従業員自身の目標やキャリアプランと連動していることです。
従業員が自身の将来像を描き、会社の中でどのようにキャリアを築いていけるのか、その道筋が見えることもエンゲージメントを高める上で欠かせません。
企業は、従業員に対して多様なキャリアパスを示し、定期的なキャリア面談などを通じて、個々のキャリアプランニングを支援することが望まれます。
「この会社には自分の未来がある」という期待感は、日々の業務への意欲を高め、組織への定着を促す強い力となるでしょう。キャリアコンサルティングの視点を取り入れた支援は、従業員の長期的な活躍を支えます。
人は、自分の働きが誰かの役に立っている、組織の目標達成に貢献できていると感じることで、仕事への誇りや組織との一体感を深めます。
エンゲージメントの中核には、この「貢献意欲」が存在します。したがって、人材育成を通じて、従業員が自身の仕事の意義を理解し、組織への貢献を実感できるような働きかけが重要になります。
企業の経営理念やビジョンが、単なる額縁の中の言葉になっていないでしょうか。
従業員が企業の目指す方向性に共感し、それを「自分事」として捉えるためには、経営層からの継続的なメッセージ発信や、理念について語り合う対話の場が不可欠です。
研修プログラムの中に理念共有のセッションを組み込んだり、日々のコミュニケーションの中で理念と業務を結びつけたりする工夫が求められます。企業の存在意義を共有することが、従業員の貢献意欲の基盤となります。
自分の担当業務が、組織全体のどの部分を担い、最終的にどのような価値を生み出しているのか。この繋がりを従業員が理解し、実感できるようにすることも大切です。
目標管理制度(MBO)などを活用し、個人の目標と組織の目標の連動性を明確に示したり、チーム内や部署内で互いの貢献を称賛し合う文化を作ったりすることが有効です。「自分の仕事には意味がある」という感覚は、エンゲージメントを力強く支えます。
受け身で指示された業務をこなすだけでは、従業員のエンゲージメントは高まりません。
自らの意思で考え、判断し、行動できる「自律性」を発揮できる環境こそが、仕事への主体的な関与、すなわちエンゲージメントを育みます。人材育成においても、従業員の自律性を尊重し、引き出すアプローチが求められます。
変化が激しく予測困難な現代においては、トップダウンの指示だけでは対応できない場面が増えています。従業員一人ひとりが、組織の目標達成のために何をすべきかを自ら考え、行動できる「自律型人材」へと成長することが、企業の持続的な成長の鍵を握ります。
人材育成プログラムを通じて、課題設定能力や計画実行力といった、自律的に仕事を進めるために必要なスキルと考え方を体系的に身につけさせることが重要です。「自分で考えて仕事を進められる」という感覚は、大きなやりがいと責任感に繋がります。
自律性を育むためには、従業員が失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる「心理的安全性」の高い職場環境が不可欠です。その上で、従業員の能力や意欲に応じて適切な裁量権を与え、自ら判断し行動する機会を提供する「エンパワーメント(権限委譲)」を進めることが有効です。
もちろん、任せきりにするのではなく、挑戦を奨励し、たとえ失敗してもそこから学びを得られるようサポートする姿勢が重要となります。挑戦を通じて得られる経験は、何よりの成長の糧となり、エンゲージメントを強固なものにするでしょう。
人は誰でも他者から認められ尊重されていると感じることで、安心感や所属意識が高まります。職場においても同様で、上司や同僚から自分の努力や成果、存在そのものが認められているという実感は、エンゲージメントを支える重要な土台となります。日々のコミュニケーションや組織文化を通じて、承認のメッセージを伝えることが大切です。人材育成の場面でも、この「承認」の視点を忘れてはなりません。
定期的な1on1ミーティングなどを通じて、上司が部下の話に真摯に耳を傾け(傾聴)、具体的な行動や成果に対して適切なフィードバックを行うことは、部下の成長を促すとともに、「自分は気にかけてもらえている」という承認の実感を与えます。
フィードバックは、単なる評価ではなく、成長支援の視点で行われるべきです。建設的でタイムリーなフィードバックは、従業員の自己効力感を高め、エンゲージメント向上に繋がります。
日常的に、従業員同士がお互いの貢献や良い点を見つけ、称賛し、感謝を伝え合う文化を醸成することも非常に効果的です。社内SNSでの「いいね!」やサンクスカードの活用、朝礼での好事例共有など、様々な方法が考えられます。「自分の頑張りを見てくれている人がいる」「仲間から認められている」という感覚は、職場の一体感を高め、エンゲージメントを育む温かい土壌となるでしょう。
株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングでは、これまで述べてきたエンゲージメント向上に「効く」人材育成の本質を踏まえ、貴社の課題解決と持続的な成長を支援するソリューションを提供しています。
画一的なプログラムではなく、貴社の経営戦略、組織文化、そして従業員の皆様の状況を深く理解した上で、エンゲージメント向上という目標達成に最適な研修プログラムを完全オーダーメイドで設計・ご提供します。
経営コンサルティングとキャリアコンサルティング双方の知見を活かし、組織の成果向上と個人の成長・キャリア実現を両立させる視点でプログラムを構築します。特に、弊社の核となる「自律型人材育成」プログラムや「キャリアデザイン研修」は、従業員の主体性とエンゲージメントを直接的に高める効果が期待できます。
代表の小松をはじめとする経験豊富な講師陣が、情熱的かつ論理的な講義と、実践を重視した演習を通じて、受講者の深い理解と行動変容を促します。研修後のフォローアップ体制も整えており、学びが現場で活かされ、エンゲージメント向上という成果に結びつくまで伴走支援いたします。
エンゲージメント向上に繋がる本質的な人材育成にご関心をお持ちでしたら、ぜひ一度、株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングにご相談ください。まずは、どのようなアプローチが可能か、資料でご確認いただけます。
従業員のエンゲージメントを高めるためには「成長」「貢献」「自律」「承認」といった実感を育むことが重要であると述べました。
ここでは、これらの実感に繋がり、エンゲージメント向上に寄与する具体的な人材育成施策の例をいくつかご紹介します。自社の状況や目的に合わせて、これらの施策を戦略的に組み合わせることが効果的です。
OJT(On-the-Job Training)は、日常業務を通じて行われる最も基本的な育成手法ですが、その質がエンゲージメントに大きく影響します。効果的なOJTは、単なる業務の引き継ぎに留まりません。指導担当者が明確な育成目標を持ち、計画的に指導を進めることが重要です。
そして定期的なフィードバックを通じて、従業員の成長を具体的に伝え、できている点を承認し、改善点を共に考えるプロセスが、「成長している実感」と「認められている実感」を育みます。指導者任せにせず、組織としてOJTの質を高める仕組みづくりが求められます。
Off-JT(Off-the-Job Training)は、職場を離れて体系的な知識やスキルを学ぶ良い機会です。集合研修やeラーニングなど形態は様々ですが、エンゲージメント向上に繋げるためには、その目的を明確にし、学んだ内容をいかに実務で活かすかという視点が不可欠となります。
「なぜこの研修を受けるのか」が腹落ちしていれば、学習意欲は高まり、「成長実感」に繋がります。また、研修内容が現場の課題解決や目標達成に貢献するものであれば、「貢献実感」にも結びつくでしょう。
研修設計においては、実践への橋渡しを意識することが重要です。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングでは、貴社の課題に合わせたオーダーメイド研修や、質の高いeラーニングコンテンツを提供しています。
従業員が自らの意思で学び続ける自己啓発(SD: Self Development)は「自律性」と「成長実感」を育む上で非常に重要です。
企業としては、学習費用の補助、資格取得奨励制度、社内外の学習情報の提供、学習時間の確保への配慮などを通じて、従業員の主体的な学びを後押しする環境を整えることが求められます。
さらに重要なのは、学びを奨励し、知識やスキルの向上を評価する組織文化を醸成することです。「学び続ける人が尊重される」という風土が、従業員のエンゲージメントを高める土壌となります。
上司と部下が定期的に1対1で行う1on1ミーティングは、エンゲージメント向上に非常に有効な施策です。
業務の進捗確認だけでなく、部下のキャリア観や価値観、悩みなどに耳を傾け、対話を通じて成長を支援する場となります。質の高い1on1は、部下に「認められている実感」を与え、目標設定や課題解決のプロセスを通じて「成長実感」や「貢献実感」をもたらします。
個人の目標と組織の目標を結びつける重要なコミュニケーション機会と言えるでしょう。
直属の上司とは別に、年齢や経験の近い他部署の先輩社員などが相談役となるメンター制度も、特に若手社員のエンゲージメント向上に効果を発揮します。
業務上の直接的な利害関係がない「ナナメの関係」だからこそ、本音で悩みを相談できたり、客観的なアドバイスを得られたりします。
メンターからのサポートは、「認められている実感」に繋がり、多様な視点に触れることで「成長実感」も得やすくなります。組織内の円滑な人間関係構築にも寄与します。
従業員が自身のキャリアについて中長期的な視点で考え、将来の目標を設定する機会を提供することも、エンゲージメント維持・向上に繋がります。
定期的なキャリア面談の実施や、自己理解を深め、キャリアプランを描くためのキャリアデザイン研修は有効な手段です。
「この会社でどのようなキャリアを歩めるのか」を具体的にイメージできるよう支援することで、「成長実感」と将来への「貢献意欲」を高めることができます。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングでは、従業員のキャリア自律を支援するキャリアデザイン研修も提供しています。
従業員の現在の能力よりも少し難易度の高い業務や役割(ストレッチアサインメント)を意図的に与えることも、成長を促しエンゲージメントを高める有効な方法です。
困難な課題を乗り越える経験は、大きな「成長実感」と自信に繋がります。また、責任ある仕事を任されることは、「貢献実感」や「自律性」の向上にも寄与するでしょう。ただし、丸投げにならないよう、適切なサポート体制を整えることが重要です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの進化など、事業環境が急速に変化する現代においては、従業員が新たなスキルを習得する「リスキリング」の重要性が増しています。
企業が従業員のリスキリングを積極的に支援することは、変化への適応力を高め、将来にわたって活躍できるという安心感を与えます。これは「成長実感」に繋がるだけでなく、企業が未来に向けて投資している姿勢を示すことにもなり、組織への信頼感と「貢献意欲」を高める効果も期待できます。
これらの施策はあくまで一例です。貴社の状況や従業員のニーズに合わせて最適な組み合わせを考え、実行していくことが重要です。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングでは、これらの施策を効果的に組み合わせた人材育成体系の構築を支援しています。
エンゲージメント向上のための人材育成施策を実行したら、それで終わりではありません。
その施策が本当に効果を発揮しているのか、組織のエンゲージメントレベルはどのように変化しているのかを定期的に測定し、結果に基づいて改善を続けていくことが極めて重要です。
このPlan(計画)-Do(実行)-Check(評価)-Act(改善)のPDCAサイクルを回すことこそが、エンゲージメント向上と人材育成の取り組みを持続的かつ効果的なものにするための鍵となります。
PDCAサイクルの出発点となる「Check(評価)」つまり現状把握のために有効なツールが「エンゲージメントサーベイ」です。これは、従業員のエンゲージメント状態を定量的に測定するためのアンケート調査を指します。
サーベイを通じて、従業員が仕事や組織に対してどのような意識を持っているのか、どの要素に満足し、どの点に課題を感じているのかを客観的なデータとして把握することが可能になります。推測や感覚だけに頼るのではなく、データに基づいて現状を正確に理解することが、的確な打ち手を考えるための第一歩です。
エンゲージメントサーベイには、大きく分けて二つのタイプが存在します。
一つは、比較的短い間隔(毎週、毎月、四半期ごとなど)で、少ない質問数で行う「パルスサーベイ」です。変化をタイムリーに捉え、迅速な対応を取りたい場合に有効です。
もう一つは、年に1回程度、より多くの質問項目を用いて網羅的に調査する「年次調査(センサス)」です。組織全体の状況を詳細に把握し、長期的な傾向を見るのに適しています。
どちらのタイプが最適かは、企業の規模、目的、運用体制などによって異なります。自社の状況に合わせて適切なサーベイ方法を選択することが重要です。サーベイツールの選定や設問設計に迷う場合は、専門家への相談も有効な手段となります。
サーベイで得られたデータは、組織全体の平均値を見るだけでは不十分です。
より深い洞察を得るためには、データを様々な切り口で分析することが欠かせません。例えば、「階層別」(新入社員、中堅社員、管理職など)「部署別」「勤続年数別」「雇用形態別」といったセグメントで分析を行うことで、特定の層や部署でエンゲージメントが低い、あるいは特定の課題が顕著であるといった傾向が見えてきます。全社平均では見過ごされがちな課題を特定し、より的を絞った効果的な対策を検討することが可能になります。
サーベイ結果の分析によって明らかになった課題は、具体的な「Act(改善)」すなわち施策の実行や見直しに繋げなければ意味がありません。例えば、特定の部署で「成長実感」に関するスコアが低いことが分かれば、その部署のOJTのあり方を見直したり、キャリア開発支援を強化したりする必要があるかもしれません。
管理職層で「部下とのコミュニケーション」に課題が見られれば、管理職向けのコミュニケーション研修や1on1ミーティング導入支援を検討すべきでしょう。分析結果という客観的な根拠に基づいて人材育成計画を見直し、修正していくことで、施策の実効性を高めることができます。
改善策を実行した後も、定期的にエンゲージメントサーベイを実施し、施策の効果を測定し続けることが重要です。エンゲージメントレベルは向上したか、課題となっていた項目は改善されたかなどを継続的にモニタリングします。
エンゲージメント向上の取り組みは、一度行えば完了するものではありません。組織を取り巻く環境や従業員の意識は常に変化するため、PDCAサイクルを回し続け、状況に合わせて柔軟に施策をアップデートしていく姿勢が求められます。エンゲージメント向上は、終わりなき改善の旅なのです。
株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングでは、従業員のエンゲージメント状態を正確に把握するための「従業員エンゲージメント診断」サービスを提供しています。単に数値を測定するだけでなく、診断結果を詳細に分析し、貴社が抱える本質的な組織課題
を特定します。さらに、課題解決に向けた具体的な人材育成施策の立案や実行、組織活性化に向けたコンサルティングまで、PDCAサイクル全体をトータルでサポートいたします。エンゲージメント測定やその活用方法にお悩みの際は、ぜひ弊社にご相談ください。
エンゲージメント診断や、診断結果に基づく具体的な改善策について詳しく知りたい方は、以下の資料請求フォームより関連資料をご覧ください。
理論や手法だけでなく、実際に企業が人材育成を通じてどのように従業員エンゲージメントを高め、具体的な成果に繋げているのかを知ることは、自社の取り組みを考える上で大きなヒントになります。
ここでは、株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングが支援した事例や、様々な企業における成功事例をいくつかご紹介し、エンゲージメント向上に繋がる人材育成のポイントを探っていきましょう。
ある情報通信企業(G社)では次世代を担う管理職候補の中堅社員層に対し、リーダーシップやマネジメント能力の向上を目的とした育成プログラムを実施しました。
単に知識をインプットする研修に留まらず、約半年間にわたる実践期間を設け、受講者自身が毎週「取り組むべき課題」を設定し、その結果と内省をオンラインで報告するというサイクルを繰り返す仕組みを取り入れました。
この「目標設定・実践・報告・フィードバック」の継続的な反復を通じて、受講者は「やることを決め、決めたことをやり遂げる」というセルフマネジメント能力を飛躍的に向上させました。自分で考え行動する「自律性」が高まり、具体的な業務改善や目標達成といった成果も生まれ、次世代リーダーとしての自覚とエンゲージメントの向上が明確に見られました。
受講者からは「比類なき研修だった」「継続が力になった」といった声が寄せられ、実践と継続的な関与がいかに重要かを示す事例となりました。
若手社員の定着率の低さに悩んでいた建設関連企業(Y社)では、従来の技術指導中心の育成から、個々のキャリア形成支援に重点を置いたアプローチへと転換しました。
導入研修で自律的なキャリア構築の重要性を学んだ後、数ヶ月間の実践期間中に、講師が受講者一人ひとりと定期的に1on1ミーティングを実施しました。この個別面談を通じて、日々の業務の悩みから将来のキャリアプランまで、それぞれの状況や想いに寄り添いながら対話し、個別の目標設定と行動計画策定を丁寧に支援しました。
結果として、受講者の学習意欲が高まり、難関資格の取得といった目に見える「成長実感」に繋がっただけでなく、会社への信頼感や仕事への「貢献意欲」も向上し、課題であった離職率の低下にも貢献しました。一人ひとりに向き合う伴走型の支援が、若手社員のエンゲージメントを高めた好例です。
部門間の連携不足や業務プロセスの非効率さが課題となっていた別の情報通信企業(A社)では、中堅社員を対象に課題解決能力とリーダーシップ育成を目的としたプロジェクト型の研修プログラムを導入しました。
研修で問題解決プロセスを学んだ後、受講者が複数のチームを自主的に編成し、「新人育成の仕組み再構築」「部門間コミュニケーション活性化」といった実際の職場課題の解決に約半年間取り組みました。
チームで現状分析から解決策立案、実行計画策定、可能な範囲での実行と効果測定までを行う実践的なプロセスを通じて、参加者の主体性や周囲を巻き込む力、チームワークが大きく向上しました。自分たちの手で職場を良くしていくという「貢献実感」と、チームで目標に取り組む「一体感」が生まれ、組織全体のエンゲージメント向上と活性化に繋がりました。
ビジネスキャリア・コンサルティングの支援事例以外にも、多くの企業が人材育成を通じてエンゲージメント向上に成功しています。
例えば、NECでは、エンゲージメントに関するデータ分析の結果をマネジメント研修の内容に反映させることで、エンゲージメント割合を大幅に向上させました。
データに基づいた人材育成施策の改善が効果を発揮した事例です。また、旭化成では、独自のエンゲージメント調査「KSA」の結果に基づき、職場ごとの対話を促し、環境改善と社員の活力向上に繋げています。調査と対話による継続的な改善サイクルの重要性を示唆しています。
サイボウズでは、従業員の多様な働き方を支援する「選択型人事制度」の導入が、大幅な離職率改善に繋がりました。制度改革がエンゲージメント向上に貢献した代表例と言えるでしょう。
スターバックスコーヒージャパンでは、画一的なマニュアルに頼らず、企業の理念を深く理解し、従業員の自主性を尊重する育成方針が、高いエンゲージメントと顧客満足度を生み出しています。企業文化と育成方針の一貫性がエンゲージメントを育むことを示しています。
これらの事例からもわかるように、効果的な人材育成は、従業員のエンゲージメントを高め、ひいては企業の成長に大きく貢献します。
貴社においても、自社の課題に合わせた戦略的な人材育成に取り組むことで、同様の成果を目指すことが可能です。
株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングは、豊富な事例とノウハウに基づき、貴社に最適なエンゲージメント向上と人材育成のプランをご提案いたします。
本記事では、従業員エンゲージメントの重要性から、その向上の鍵を握る「戦略的な人材育成」の本質、具体的な施策例、測定と改善のプロセス、そして成功事例に至るまで、多角的に解説を進めてまいりました。
現代の厳しいビジネス環境において、従業員のエンゲージメント低下がもたらす生産性の伸び悩みや人材流出といったリスクは、もはや看過できない経営課題となっています。
重要なのは、従業員エンゲージメントが、単に高い給与や充実した福利厚生によって自動的に得られるものではないという点です。
エンゲージメントの根幹にあるのは、従業員自身の「成長している実感」「組織に貢献できている実感」「自律的に関われる実感」「認められている実感」といった、内面から湧き上がるポジティブな感情です。
これらは、企業が意図的に、そして戦略的に人材育成の機会を提供し、従業員一人ひとりと向き合うことで初めて育まれていくものなのです。つまり、エンゲージメントは企業側が主体的に「育む」べき対象と言えるでしょう。
戦略的な視点に基づいた人材育成への投資は、従業員のスキルアップに留まらず、エンゲージメント向上を通じて、データでも示された通り、離職率の低下や生産性の向上といった具体的な経営効果をもたらします。
それは短期的なコストではなく、企業の持続的な成長と競争優位性を築くための、極めて重要な「未来への投資」に他なりません。自社の現状を正確に把握し、課題に合わせた育成施策を計画的に実行し、その効果を測定しながら改善を続けるPDCAサイクルを回していくことが、エンゲージメント向上と企業成長を実現する王道です。
株式会社ビジネスキャリア・コンサルティングは、単なる研修の提供に留まらず、経営とキャリア開発双方の視点から、貴社が抱えるエンゲージメントや人材育成に関する本質的な課題解決をサポートいたします。
従業員エンゲージメント診断による現状分析から、貴社独自の状況に合わせたオーダーメイドの育成プログラム設計、経験豊富な講師による実践的な研修の実施、そして効果測定と改善提案まで、一貫したプロセスで貴社の取り組みに寄り添い、伴走支援をさせていただきます。
弊社では、従業員エンゲージメント診断、組織活性化コンサルティング、自律型人材育成研修、次世代リーダー育成、キャリアデザイン研修、各種ビジネススキル研修、eラーニング教材開発など、企業のエンゲージメント向上と人材育成に関する多様なニーズにお応えするサービスを提供しております。貴社の課題や目標に合わせて最適なソリューションをご提案いたします。
弊社のサービス内容や研修プログラムの詳細、導入事例などをまとめた資料をご用意しております。エンゲージメント向上や人材育成の具体的な進め方をご検討いただく上で、ぜひ参考にしてください。下記リンクよりお気軽にお申し込みいただけます。
「自社のエンゲージメント状況を診断してほしい」
「課題に合った研修プログラムを提案してほしい」
「費用について詳しく聞きたい」など、具体的なご相談やご質問がございましたら、
どうぞお気軽にお問い合わせください。