お問い合わせはこちら

生産性向上

2025.7.5

【ミスが繰り返される理由】同じミスを何度も繰り返す部下に絶対にやってはいけないこと

職場でよく聞く悩みの一つが「何度注意しても部下が同じミスを繰り返す」というものです。一度指摘すれば改善するかと思いきや、しばらくすると元通り。少し場面や状況が変わるだけでまた同じ失敗をする…。こうした場面に心当たりはないでしょうか。

最初は「もう少し注意深くやってほしい」「もっと意識を高く持って取り組んでほしい」と思う程度かもしれません。しかし、何度も同じことを繰り返されるうちに、「この人はレベルが低いのではないか」「能力に問題があるのではないか」と感じてしまうこともあります。

そうなると、上司としてはつい熱心に指導し、説明を繰り返し、場合によっては厳しく叱責するようになります。しかし、それでもミスはなくならない。むしろ状況は一向に改善せず、どんどん悪循環に陥っていく。こうした経験をされたことがある方も多いのではないでしょうか。

ですが、ここにはマネジメントの非常に重要な落とし穴が隠されています。多くの場合、同じミスを繰り返す原因は、部下個人の「意識」や「能力」だけにあるわけではないのです。むしろそれを個人の問題だと決めつけ、注意や指導ばかりを繰り返すことが、状況をさらに悪化させてしまうのです。

注意や叱責が逆効果になる理由

なぜ注意や叱責をしても状況が変わらないのでしょうか。それは、注意する・指導する・叱責するという行為自体が、「問題の原因は人にある」という考え方に基づいているからです。つまり、「ミスをするのはお前が意識が足りないからだ」「能力が低いからだ」と無意識に決めつけてしまっているわけです。

しかし現実には、問題のほとんどは構造に原因があります。どれだけ優秀な人であっても、悪い構造の中で仕事をすれば、必ず悪い結果が出ます。逆に、普通の人が良い構造の中で働けば、自然と良い結果が出るものです。

ごく稀に、悪い構造の中でも優秀な成果を出す人がいます。これは、本人が超優秀で、その悪い構造を自力でカバーしてしまうからです。しかしこれには再現性がありませんし、その人がいなくなった瞬間に業務が回らなくなる危険があります。

「優秀な人じゃないとできない仕事」になってしまえば、業務の属人化が進んでいきます。マネジメントの役割は、誰がやっても一定の成果が出る構造を作ることです。仕組みを整えず、注意や叱責ばかりしても、何も変わらないどころか逆効果になるのです。

絶対にやってはいけない「個人攻撃」

今回のテーマである「絶対にやってはいけないこと」とは、部下個人を責めることです。特に、その人の人格や能力を否定する発言は最悪です。例えば、「お前は頭が悪い」「全然考えていない」「レベルが低い」といった言葉です。これを言われた部下はどう思うでしょうか。自信を失い、モチベーションは下がり、最悪の場合その上司に対して敵意すら持つかもしれません。

一度「嫌いだ」と思った相手の言葉は、どれだけ正しいことを言っていても頭に入ってこなくなります。これでは指導どころか、完全に逆効果です。誤解しないでいただきたいのは、叱ること自体がいけないわけではありません。行動に対する指摘やフィードバックは必要です。問題なのは、人格や能力を否定する叱り方です。行動は変えられますが、人格や能力は簡単に変わりませんし、そもそも本人の責任ではないこともあるのです。

人を責めるのではなく「構造を変える」

問題の原因を「人」に求める限り、同じミスは永遠になくなりません。ではどうすればいいのか。それは「構造」を変えることです。良いマネジメントとは、普通の人がやっても一定の成果が出るように、仕事の仕組みや環境を整えることです。もちろん人材育成は大事ですし、人に原因があるケースもあります。しかし多くの場合、構造を変えることで、問題を防止することができるのです。

ここからは、具体的にどんな構造を整えていけばいいのか、6つの視点でお話していきます。

①目的の明確化

まず最初に整えるべきは「目的の明確化」です。「何をいつまでにどのレベルまで仕上げればいいのか」というゴールを、指示を出す側と受ける側で完全に一致させなければなりません。ここで多くの方が「そんなの当たり前だ」と思うでしょう。しかし実際には、これが驚くほどできていません。例えば「資料をまとめておいて」と言われても、何をどこまでやればいいのか、受け取る側は曖昧なことが多いのです。

言葉だけではイメージが共有しづらいので、完成形をビジュアルで示したり、数値で示したりすることが大切です。ここを具体的に詰めずに進めるから、部下は「一生懸命やったのに違った」という失敗を繰り返します。

②作業手順の標準化

次に重要なのが「作業手順の標準化・簡素化」です。ゴールだけ示して「自分なりに考えてやれ」と言われても、経験の浅い部下は判断に迷います。確かに「自律的に考えて動け」と言うのは大事ですが、それは標準的な正しいやり方を理解し、身につけた上での話です。

そもそも手順が存在しない状態で、未経験の部下に「考えてやれ」と言っても失敗するのは当然です。まずは適切な手順を整え、それに沿って仕事を進めてもらうこと。その中で判断や工夫が必要な部分だけを「自分で考えて動く」領域にしていくことが重要です。

③ルールの明確化

3つ目は「ルールの明確化」です。何をやって良くて、何をやってはいけないのか。このガイドラインが曖昧だと、部下は判断に困り、誤った方向に進んでしまいます。

「ルールに照らしてこれは正しいのかどうか」を部下自身が判断できるようにしておくこと。それが「自分で考えて動く」ための土台です。何も判断材料がない中で考えろと言われても、どう考えていいのか分からないのは当然です。このルールがあって初めて、組織として統一感のある動きが取れるようになります。

④使用するツールの選定と整備

4つ目は「使用するツールをきちんと決め、それを整備する」ということです。今の仕事は、ITやデジタルツールなしには成り立ちません。ツールをどう使うかで、仕事のスピードも質も大きく変わってしまいます。例えば、ある作業を手作業で時間をかけてやるのか、Excelマクロや専用ソフトを使って効率化するのかでは、全く結果が違います。にもかかわらず、職場によっては「やり方は各自に任せる」というスタンスのまま放置されていることがあります。これは非常に危険です。

例えば、木を切る仕事で、ノコギリを持たせるのかチェーンソーを持たせるのか。それを決めないまま「木を切っておいて」と言えば、当然人によってやり方も仕上がりもバラバラになります。しかも道具によっては時間も労力も何十倍も違います。だからこそ、「この仕事はこのツールで進める」ということを明確に決め、それを誰もが使えるように整備しておく必要があります。これが整うだけでも、作業ミスやムダな時間が大幅に減り、標準化されたやり方が自然に定着していきます。

⑤報告経路・形態・タイミングの明確化

そして5つ目が「報告の経路・形態・タイミングを明確に決める」ことです。多くのミスやトラブルは、この報告ルールが曖昧なせいで発見が遅れ、大事になってから発覚します。マネージャーとしては、「もっと早く言ってくれれば…」と思うかもしれません。しかし、部下からすれば「いつ、どのタイミングで、どの方法で報告すればいいのか」を明確に指示されていなければ、なかなか報告しづらいのです。

例えば「この工程が終わったタイミングで一度報告を入れる」「この状況になったら必ず相談する」というルールを決めておけば、部下も迷わず報告できます。報告手段も「チャットでOK」「資料を送ってくれればいい」「電話で連絡してほしい」と明確にしておくと、さらにスムーズです。

自分の予定や状況をあらかじめ共有しておくことも大切です。例えば、私の場合は平日の多くを企業研修で飛び回っており、日中に電話をいただいてもほぼ出られません。だから必ず「メールかチャットでお願いします」と伝えています。これをあらかじめ伝えずに「なんで電話で連絡してくるんだ」と怒るのは理不尽ですよね。報告経路とタイミングをはっきりさせるだけで、報告が速やかに届くようになり、途中で気づけるミスは確実に増えます。結果として大きな失敗を未然に防げるのです。

⑥適材適所(配置・採用・育成)

6つ目は「人の配置そのものも構造の一部だ」という視点です。どうしても既存のメンバーに注意を繰り返す方向にいきがちですが、そもそも「適材を適所に置く」というのはマネジメントにおける最も大事な構造設計です。

例えば会社がDXを進めようとするとき、既存メンバー全員に「ITを勉強して資格を取れ」と言っても難しい場合があります。そんな時はデジタルに強い人を新しく採用するのも一つの構造転換です。もしデジタル人材に、プロジェクトの推進面で懸念があるなら、既存メンバーの中でリーダーシップが強い人とペアにして進めるという選択肢もあります。

また、今いる人に足りないスキルがあるなら、仕事を任せながら育成し、それを補う構造を作っていくのも一つです。つまり「採用」と「育成」は構造を作る上での重要な2本柱なのです。これは決して人の問題を責める話ではなく、「その仕事に必要な能力をどうやって構造的に揃えるか」という視点です。人材配置、採用、育成もまた、れっきとしたマネジメント構造の一環です。

人のせいにしない職場は強い

ここまで6つの視点を挙げてきました。

  1. 目的の明確化
  2. 作業手順の標準化
  3. ルールの明確化
  4. ツールの整備
  5. 報告経路とタイミング
  6. 適材適所の配置・採用・育成

これらを構造としてしっかり作っていけば、同じミスを何度も繰り返すような状況は激減します。そもそも、普通の人が普通に仕事をしてもうまくいく仕組みにしておかないと、組織はいつまで経っても属人的なままです。これが整わない職場では、優秀な人が自力でカバーして何とか成り立つ状態になります。結果、その人が辞めたら業務は崩壊します。だからこそ「誰がやっても成果が出る仕組み」を作ることが、マネジメントの最大の仕事なのです。

そして、この視点を持つことで、部下への無意味な人格攻撃や過度な叱責がなくなります。むしろ部下と一緒に「どうすればミスが起きない仕組みにできるか」を考えるようになるので、自然と職場に心理的安全性も生まれます。

いま話題の「心理的安全性」とは、ただ単にメンバーを甘やかすことではなく、安心して意見を出し合い、構造を良くするために協力し合える職場のことです。その結果、強い組織が生まれ、メンバー同士の信頼関係も強固になっていきます。

最後に

今回は「同じミスを何度も繰り返す部下に絶対にやってはいけないこと」というテーマでお話ししました。

ミスや問題は、人のせいだけにしない。構造を変える視点を持つ。これを意識するだけで、職場の空気も、成果も大きく変わっていきます。

ぜひ、今の職場で起きていることを「人」ではなく「構造」の問題として見つめ直し、どこを改善できるか考えてみましょう。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

関連サービス

関連動画

神戸・大阪で人材育成・社員教育をお考えの経営者、管理職、人事担当者の方々。下記よりお気軽にお問い合わせください。(全国対応・オンライン対応も可能です)

弊社にご関心をお持ちいただき、ありがとうございます。お気軽にお問い合わせください。

TEL.
078-600-2761