問題解決
2026.2.24

目次
「経営のプロなのだから、自分で事業をやればいいのに」
コンサルタントに対して、このような疑問を持たれる方は少なくないでしょう。確かに、元コンサルタントや現役コンサルタントの中には、自ら事業を興し、成功させている方もいらっしゃいます。
しかし一方で、コンサルタントを名乗りながらも自身の事業がうまくいっていないという方も実際に存在します。経営のプロであるはずのコンサルタントが、なぜ自分の事業では失敗してしまうのか。今回は、その理由を3つの観点から解説いたします。この理由を理解することで、逆にコンサルタントの正しい活用方法も見えてくるはずです。
優秀なコンサルタントが事業を始めた途端に判断を誤ってしまう最大の理由は、客観性を失うことにあります。コンサルタントとして企業を支援している時は、完全に第三者の立場です。そのため、冷静に状況を見てデータを分析し、「この事業は撤退した方がよい」「ここは攻めるべきだ」「この計画は甘い」といった助言を的確に行うことができます。
しかし、自分が事業の当事者になった瞬間、感情が入り込んでしまうのです。「自分のアイデアは絶対にうまくいく」という根拠のない過信、「ここまで投資したのだから」という埋没コスト(サンクコスト)への執着、「コンサルタントを名乗っている以上、失敗したら恥ずかしい」という恐怖心などが、冷静な判断を失わせていきます。
顧客に提供するのと同じように、自分の事業の市場分析を行い、あまり良くない結果が出たとします。顧客に対してであれば「これは厳しいですね。やめた方がよいでしょう」と言えるはずです。しかし、自分のことになると、特にそれが自分のやりたいことであれば、「自分だったらうまくいくだろう」という根拠のない過信が生まれてしまいます。
実際に始めてうまくいかない時にも、「自分だったらこの状況は挽回できるのではないか」と考えてしまい、顧客からの厳しいフィードバックや意見も「この人は分かっていない」と冷静かつ肯定的に受け止められなくなってしまうのです。
コンサルタント時代には見えていたものが見えなくなり、コンサルタントとして関わっていれば感じるはずの黄色信号も感じなくなってしまいます。主観と客観は完全に別物であり、自分が当事者になると感情が入るため、この客観性を保つことが非常に難しくなります。本来持っているはずの能力が生かせなくなってしまうのです。
実際、私自身も月に1回コーチングを受けています。自分ではなかなか考えられないことや気づかないことは、第三者に指摘していただいたり、気づかせていただいたりしないと分からないからです。能力の高低の問題ではなく、自分を第三者的に見ることは極めて難しいのです。事業を進めていく上では、いかにしてこの客観性を担保していくかが重要になります。

そもそも、コンサルタントの役割とは何でしょうか。それは、客観的に分析して、顧客に助言をすることです。ここで重要なのは、「コンサルティングに必要な能力」と「事業を進める能力」は全く別物だということです。
コンサルタントに求められるのは、問題を分析する力、戦略を立案する力、論理的に考え説明する力などです。一方、事業を行う上で必要なのは、チームを率いるリーダーシップ、オペレーションを運営するためのマネジメント、自分で意思決定を下してリスクを背負う覚悟などです。分析をする力と実行する力は全く別物なのです。
これは医師に例えると分かりやすいです。医師は体調が悪い方の状態を分析して、有効な治療法を提示することができます。しかし、その医師自身が自分の健康管理を完璧に行っているかというと、必ずしもそうとは限りません。タバコを吸っている医師もいるでしょうし、運動をしない医師もいることでしょう。明らかに不健康そうな医師に「この人に言われて大丈夫なのか」と感じることもあるかもしれません。「必要なことを知っている」ということと、「それができる」ということはまったく違うのです。
コンサルタントも同じです。問題を見つけたり、分析したり、戦略を立てたり、計画を立てたりすることは得意であったとしても、実際に自分がマーケティングをする、顧客に営業をするということができるとは限りません。組織論は語れても、実際に自分がチームを運営することはできない可能性もあるのです。
コンサルタントはあくまでも助言のプロであって、実行のプロではありません。必要なことを知っているから、何をすればよいのかが分かるからといって、それが必ずしもできるとは限らないのです。
最も重要なポイントですが、知識だけでは事業は成功できません。事業を成功させるためには、商品・サービスに対する情熱が絶対に必要なのです。
コンサルタントは、戦略、理論、フレームワーク、成功事例などをたくさん知っています。中小企業診断士などの資格を持っている方やMBAで経営学修士を取得した方は、経営に必要な知識を十分に持っていることでしょう。しかし、それだけでは事業は成功できません。なぜなら、情熱がないからです。
事業を続けていくと、必ず壁にぶち当たります。それも1回や2回ではなく、常に壁にぶち当たるのです。売上が思うように伸びない、資金繰りが苦しい、競合が現れる、顧客から激しいクレームをいただく、信頼してきた仲間が離れていく、裏切られる。こうしたトラブルや苦難を乗り越えていくのは知識ではありません。情熱なのです。情熱から出てくるエネルギーがないと、前に進めないのです。
ある意味、ここがコンサルタントの限界です。コンサルタントは顧客の事業を分析して、「この市場には成長性があります」「このビジネスモデルは収益性が高いです」と判断し、論理的に説明することができます。しかし、それは頭で理解しているだけなのです。
頭で理解していることと、やりたいという思いは別物です。「これをやったらうまくいく」「これをやったら儲かる」と仮に分かっていたとしても、そこに進めないのです。なぜなら、「やりたい」と思わないからです。
私自身、なぜ人や組織のコンサルティングをしているかというと、そこにしか興味関心が湧かないからです。何か事業を起こして商品を作り、それを量産して販売して大きく儲けることを考えたこともありました。しかし、踏み出せませんでした。情熱を傾けられるものが見つからなかったのです。
もし「こういったものを作りたい」「こういうサービスを提供したい」というものが見えてきたら、おそらく私はやると思います。しかし残念ながら、それが見えないのです。私が関心を持てるのは、人間だけです。具体的に言えば、「ビジネスパーソンを優秀にしていくこと」なのです。ここに一番情熱が注げるから、人や組織のコンサルティング、その中でも特に研修事業に注力しているのです。それは、「私がやりたいこと」だからなのです。
私は、そこをきちんとわきまえているつもりですし、そうあり続けたいと思っています。いくら儲かりそうな話があったとしても、情熱をそそげるものでない限り、それは「自分にはできない」とブレーキを踏めているので、そこに踏み出したりしません。だからこそ、まだ大成功とは言えませんが、自分が好きなこと、情熱を注げることに注力して、ほどほどには成功しているわけです。
しかし、失敗するコンサルタントはここが分離できません。「このビジネスは儲かりそうだ」ということが頭で理解できていたとしても、それだけの理由で始めてしまうと、最初の苦難で嫌になってしまうのです。「やりたい」というエネルギーがないからです。そんな中途半端な覚悟や熱意では、やはり顧客に届きません。長期的に続けられないのです。知識があっても情熱がないと、前に進めない、続けられない。それが事業なのです。
私は、「デキる人を増やして社会をもっと快適にする」「働くすべての人に学びと成長の喜びを届ける」「人材育成が最良の事業投資である」ということを心の底から思っているから、この事業を続けられています。知識があっても情熱がないと事業は続けられない。これが、たとえ優秀なコンサルタントでも事業で失敗する最大の理由ではないかと思います。

ここまで聞くと、「では、コンサルタントなんていらないのではないか」と思われるかもしれません。しかし、先ほど申し上げたように、役割が違うのです。
コンサルタントが役に立たないという話をしたかったわけではありません。むしろ逆なのです。コンサルタントに自分で事業をさせたら、失敗するかもしれない。だからこそ、コンサルタントを「本来の役割」で活用していくのが正しいのです。
コンサルタントの役割は、客観的な助言者です。経営者の方々が、主観の中では気づかないことに気づいていただくような、アドバイスやフィードバックをご提供することです。自分で実行できるとは限らないけれど、「何をしたら良いのか」をお伝えすることはできます。それが顧客の知らないことであれば、やはりそれはそれで、役に立つのではないでしょうか。それこそが、コンサルタントの存在意義なのです。
ですから、コンサルタントを客観的な助言者として活用してください。すべてを任せるわけでもなく、代わりにやってもらうのでもありません。あくまでも冷静な分析と必要な知識を提供してくれる人として、生かしていくのです。事業を行うのは自分自身です。そう捉えていただくことによって、コンサルタントを自分が事業を進める上でのパートナーとして生かしていくことができるでしょう。
今回は、優秀なコンサルタントでも事業に失敗する理由を3つご紹介してまいりました。1つ目は主観と客観の違いです。どんな人でも当事者になると判断が鈍ります。2つ目は役割の違いです。コンサルタントは助言のプロであって、実行のプロではありません。そして、3つ目は商品・サービスへの情熱です。いくら知識があったとしても、その事業をやり続けられる情熱がないと、前に進めることはできません。
だからこそ、コンサルタントは客観的な助言者、支援者として活用していくべきなのです。自分で事業をしていないということは、必ずしも弱みではありません。むしろ、一歩引いた目から冷静に状況を見るという意味においては、強みになるかもしれません。ぜひあなたも、自分の事業を成長させるために、コンサルタントが持つ客観性をうまく活用していってください。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次世代リーダーや自律型人材を育成する仕組みづくりや社員教育をお考えの経営者、管理職、人事担当者の方々。下記よりお気軽にお問い合わせください。(全国対応・オンライン対応も可能です)