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マネジメント

2026.3.24

「言いたいことが言えない」上司が部下を劇的に変える3つの方法|心理的安全性を高める指示とフィードバック

心理的安全性をめぐる「言えない上司」の悩み

部下に気を遣いすぎて、毎日ヘトヘトになっているマネージャーの方は少なくないことでしょう。

「これを言ったらハラスメントになるのではないか」「嫌われてしまったらどうしよう」「やる気をなくされてしまったらどうしよう」という懸念から、言いたいことをグっと飲み込んでいる方も多いのではないでしょうか。

かつてはハラスメントという概念そのものが存在せず、上司が厳しく叱責することも、それを受け止めることも当然のこととされていました。

しかし、そのような時代を若手として経験してきた私たちが、いざ上司の立場になって部下に何かを伝えようとすると、「それはパワハラではないですか」「心理的安全性が下がります」と言われてしまう。非常に大きなストレスになっていることと思います。

しかし、安心してください。今回は、多くのマネージャーが抱えているこの悩みを解消するために、心理的安全性についての誤解を正し、部下が自ら考えて行動する自律型人材に育つための関わり方を解説してまいります。

よくある「心理的安全性」への誤解を解く

まず、心理的安全性の定義を確認しておきましょう。心理的安全性とは、「組織の中で他のメンバーが自分の発言を拒絶したりしないと確信できており、自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態」のことを指します。

この概念はもともとハーバードビジネススクールのエドモンドソン教授が約30年前に提唱したものですが、広く注目を集めるようになったのは2016年のことです。Googleが社内で実施した「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれる調査において、生産性の高いチームに共通する特徴を追求した結果、心理的安全性の高いチームがパフォーマンスや生産性が高く、離職率も低いことが明らかになりました。

この心理的安全性を一言で表現するならば、「本音で何でも言い合える空気」のことです。立場や役職に関係なく、チームのメンバー全員が「私はこう思います」「私はこうすべきだと思います」と率直に言い合える関係は、萎縮して言いたいことが言えない関係よりも、はるかに活発で創造的な仕事を生み出します。

ただし、ここで非常に多くの方が誤解されている点があります。心理的安全性を高めるということは、決してぬるい職場環境を作ることではありません。「何を言っても許される」という雰囲気のことだと勘違いされると、部下の言うことをすべて受け入れなければならないという誤った理解につながってしまいます。

プロスポーツに例えてみると分かりやすいでしょう。試合に勝つために「今日はこういう戦略で行こう」「こういうパス回しをしよう」とメンバー全員が思っていることを言い合える状態、これが健全な心理的安全性です。全員が本気で勝ちたいと思っているからこそ、それぞれの考えを真剣にぶつけ合えるのです。

一方で、もしそのチームの中に練習をさぼる選手や、やる気のない選手がいて、「厳しくしないでください、心理的安全性が低くなります」などと言い出したとしたら、そのような発言に耳を傾ける必要はないことは明白でしょう。チームの目的や目標に対して、明らかにマイナスな影響をもたらします。

つまり、心理的安全性の前提条件として、チームメンバー全員が当事者意識を持ち、成果を出したいと心から本気で思っていることが不可欠なのです。仕事をしたくない、サボりたい、頑張りたくないという態度に対しては、毅然として受け入れない姿勢が求められます。

受け入れるべきことと受け入れてはいけないことの線引きを明確にし、受け入れる必要のないことに対しては的確なフィードバックを返していくことが重要です。

「気遣いすぎる上司」と「健全な上司」の違い

ここで、上司の関わり方の悪い例と良い例を具体的に見比べてみましょう。

まず、上司が萎縮して部下に気を遣いすぎている場合の例です。「あの、佐藤くん、例の資料、まだかな?忙しいのは分かるんだけど、ちょっと急ぎなんだよね。無理しなくていいんだけど、なるべく早めに出してもらえるかな」と上司が伝えると、部下は「今ちょっと忙しいんですよ。あまりプレッシャーをかけられると効率が下がりますから」と返します。

それに対して上司は「そうか、ごめんね。無理しなくていいからね、なるべく早めに頼むね」と答えてしまう、このような対応です。

もちろん配慮は必要ですが、ここまで下手に出る必要はありません。このような対応を続けると、部下の側は「強気に出ていれば何を言っても大丈夫だ」と学習してしまい、どんどん無責任になっていきます。「やってもやらなくても大丈夫」「結局この上司が何とかしてくれる」と思われてしまうのです。

上司が我慢をすることは、心理的安全性を高めることにはまったくなりません。これが多くの方が誤解されている点です。

では、健全な関わり方はどのようなものでしょうか。同じ状況で「ちょっといいかな。例の資料、提出期限を過ぎているんだけど、状況を説明してもらえるかな」と問いかけます。

部下が「ちょっと忙しくて立て込んでいて…あまり言われるとプレッシャーが」と返してきたとしても、「忙しいのは分かる。ただ、確認しておきたいんだけど、うちのチームは心理的安全性を高めていこう、最高の結果を出すためにお互い言いたいことは何でも言っていこうという話をしてきた。だからこそ、仕事が遅れている理由や、助けが必要であれば率直に言ってほしい。

ただし、前提としてプロとしてやるべきことはやる、これが絶対条件だ。もし手が回らなくてその資料に着手できないというのであれば、どうやってそれを解消しようと思っているのか、君の意見を聞かせてほしい。こちらから助けが必要であれば、それも言ってくれていい。その資料をいち早く完成させるために、どういう手が取れるか一緒に考えてみよう」という姿勢で臨みます。

相手を否定するのではなく、しかし求める基準は決して下げない。高い基準の仕事を達成するために何をすべきかについて、お互いの意見をぶつけ合う関係性を築いていくことこそが、本当の意味での心理的安全性であり、健全なマネジメントです。

明日から使える3つのセリフ | 健全な心理的安全性を高める実践的アプローチ

では、健全に心理的安全性を高めていくために、実際に明日から使えるセリフを3つご紹介します。

1つ目は、「チームのために、あえて言わせてもらうね」というセリフです。個人的な感情や好みではなく、あくまでもチームの目的・目標を達成するためにこれを言っているのだということを明確に伝えます。こう言われると、相手としても反論のしようがありません。

個人的な意見ではなく、仕事の成果を果たすために必要なことを要求しているのですから、それは心理的安全性を下げることにはなりません。シンプルに上司としての指示・命令を出しているということになります。

2つ目は、「あなたはどうしたいですか?私はどうサポートすればいい?」というセリフです。相手にボールを投げ返し、当事者意識を持たせることが目的です。

言われたことだけをこなすという受け身の姿勢では、当事者意識は育まれません。当事者意識がなければ他責思考になり、その状態では心理的安全性が悪い方向に歪んでいきます。

「何を言っても許される」「何もしなくても大丈夫」というぬるい状態に陥らないよう、トラブルや遅れが生じた場合には「こうしなさい」と指示するのではなく、「どうやって改善・解消しますか?」と相手に考えさせます。それが難しそうであれば、「そのために私にできる支援は何ですか?」と続けて問いかけます。受け身の姿勢を許さず、自分の頭で考えることを自然に求めていく関わり方です。

3つ目は、「心理的安全性は、お互いの信頼と責任の上に成り立つんだ」というセリフです。「心理的安全性」という言葉が職場で馴染みにくい場合は、「良い関係性」と言い換えても構いません。要は、思ったことを率直に言ってもらって構わないけれど、そのためにはお互いの信頼と責任が必要だということを繰り返し伝えていくのです。

自分の意見が通る、自分の立場が守られるという権利は、果たすべき義務を果たしているからこそ得られるものです。権利と義務はワンセットであるということを、マネージャーとして一貫して伝え続けることが重要です。

前向きで建設的な意見、目標達成に必要な提案はどんどん出してもらい、それを積極的に受け入れる。一方で、仕事に対して否定的・消極的で、甘えや怠慢につながるようなことについては断固として受け入れない。この線引きを明確に保ち、基準を高め続けることで、職場の緩みや甘えが整理され、秩序ある仕事ができるチームが形成されていきます。

まとめ | 「優しさ」が部下の成長を止めることもある

今回は、「言いたいことが言えない上司が部下を劇的に変える3つの方法」についてお伝えしてまいりました。

最後までご覧いただいた方は、きっと部下思いの誠実なマネージャーの方ではないかと思います。しかし、その優しさが、場合によっては部下の成長を逆に止めてしまっていることもあります。

本音で何でも言い合える心理的安全性の高い状態は、生産性の向上、創造性の向上、離職率の低下といった多くのメリットをもたらします。しかしその前提として、メンバー全員が当事者意識を持ち、果たすべき義務をきちんと果たしているからこそ、自分の意見を言える権利があるのだという認識を共有することが欠かせません。

前向きで建設的な意見は積極的に受け入れ、否定的で消極的な甘えは毅然として受け入れない。この線引きを大切にしながら、今回ご紹介した3つのセリフを活用して、健全な心理的安全性を高めるアプローチをぜひ実践してみてください。メンバーが自ら考えて行動する、自立した強いチームが必ずつくれるようになります。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

小松 茂樹(こまつ しげき)

中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役社長。「デキる人を増やして社会をもっと快適にする」を理念に、人事・組織コンサルタントや研修講師として活動。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。登壇実績 862件、1,015日間(のべ受講者数17,334名)*2025年12月末現在

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