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問題解決

2026.7.29

優秀な人は「切り口」を知っている | モレ・ダブりなく考える 4つの技術|MECE思考

はじめに

会議で活発に意見を出し合ったのに、後から見返すと同じような意見ばかりが並び、肝心の視点が抜け落ちていた。

このような経験をお持ちの方は、少なくないことでしょう。これは参加者の能力不足ではなく、「考える切り口」を持たないまま議論を始めてしまうことが原因です。

この記事では、物事を漏れなくダブりなく捉えるための思考法「MECE」と、実務で使える4つの切り口について解説いたします。企業研修やコンサルティングの現場で数多くの組織課題に向き合ってきた経験をもとに、明日から会議や分析にそのまま活用できる具体的な方法をお伝えします。

MECEとは何か|漏れなくダブりなく考える方法

なぜ会議の議論は成果につながらないのか

会議において「とにかく自由に意見を出してほしい」という進め方は一見活発に見えますが、実際には意見の重複が生じたり、重要な視点が抜け落ちたりすることが頻繁に起こります。

参加者が多くの意見を出したという事実だけでは、質の高い分析にはつながりません。重要なのは、どの角度から問題を切るかという「切り口」を事前に設けることです。

MECEの定義

MECEとは、Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの頭文字を取った言葉で、日本語では「モレなく、ダブりなく」と表現されます。問題解決に向けた意見が重複していたり、逆に大事な観点が抜け落ちていたりすると、そこから導き出された答えは実際の問題解決に結びつきにくいです。

解決策は実際に試してみなければ効果がわかりません。だからこそ、あらかじめ幅広いパターンを検討できる状態にしておくことが求められます。

切り口の粒度が細かすぎると漏れが生じる

例えば、「乗り物を挙げてください」というお題があるとします。飛行機、電車、自動車、三輪車、バイク、電動キックボード、スケートボード・・・といった形で個別に列挙していくと、キリがありません。必ずどこかに漏れが生じます。

これは、はじめから粒度が細かすぎることが原因です。まずは空用・海用・陸用といった大きな単位に分け、そこから徐々に細分化していくことで、元の全体像を保ったままモレの少ない分解が可能になります。

分類の軸が混在するとダブりが生じる

アンケートの属性欄に「男性・女性・子ども」という選択肢を用意するとします。その場合、未成年の方はどこに丸をつければよいのか迷ってしまいます。

これは、性別という軸と年齢という軸が混在しているために起こる現象です。性別(男性・女性)と年齢(成人・未成年)という2つの軸に分けて考えることで、どの回答者もいずれか一つに当てはまる形になり、重複のない整理が可能になります。

MECEを実現する4つの切り口

MECEを実践するための具体的な切り口として、以下の4つが挙げられます。それぞれの視点を状況に応じて使い分けることが、質の高い問題解決の鍵となります。

属性分解|意味のあるカテゴリーで種類分けする

属性分解は、意味のあるカテゴリー(分類)によって「いくつの種類に分けられるか」という視点で切り分ける方法です。最もオーソドックスな切り口といえます。

例えば、売上分析を行う際、地域別に東日本・西日本・海外と分けてみて、西日本と海外の数値が前年と大きく変わらないのであれば、東日本に問題が潜んでいる可能性が高いと判断できます。仮に地域別で違いが見られない場合は、商品別(商品A・商品B・商品C)や顧客層別といった別の切り口に変えることで、問題の所在を突き止めやすくなります。

企業の機能別に製造部・販売部・管理部と分けたり、役職別・年代別に分けたりする方法も属性分解の一種です。従業員満足度調査やエンゲージメント診断においても、属性別の点数比較としてよく用いる切り口です。

変数分解|数式の構造に分解する

変数分解は、数値の結果を掛け算や足し算・引き算の構造に分解する方法です。

最も代表的な例が「売上=客数×客単価」という分解です。客数はさらに「来店客数×購入率」に、客単価は「一品あたりの単価×購入点数」に分解することができます。理論上、どこかの要素に異変が生じているはずであり、「売上が下がっているのに客数も客単価も変わらない」という状態であれば、分析に矛盾があると気づくことができます。

他にも、「利益=売上-費用」という引き算による分解や、「生産性=付加価値÷投入資源」という割り算による分解も、変数分解の考え方に含まれます。生産性が低下している原因が、付加価値を生み出せていないことにあるのか、投入資源が過剰であることにあるのかを見極める際に有効です。

プロセス分解|時系列の流れで分解する

プロセス分解は、活動や業務をどのような順番で進めていくかという時系列の流れで分解する方法です。成果につながる仕事の流れを分析する際に用います。

例えば、営業活動であれば「認知→接触→提案→受注→アフターフォロー」という流れに分解できます。業績が悪化している場合、それぞれの工程の数値が前年と比べてどの程度低下しているかを分析することで、どこに手を入れるべきかが明確になります。

他には、採用活動においても「募集→選考→内定→入社→定着」という流れで捉えることができます。離職は会社が何をしても一定数発生してしまうものであるため、離職を防ぐことだけでなく、入社してもらう母数を増やすという視点も欠かせません。内定を出した後に辞退される割合など、各工程での離脱状況を他社比較や業界平均、前年実績と照らし合わせることで、優先的に手を打つべき工程が見えてきます。

対比分解|二つの視点で切り分ける

対比分解は、ある基準に基づいて二つの視点で切り分ける方法です。モレなくダブりなく物事を分けようとする際、最も手軽で分かりやすく、私が実務で頻繁に使っている切り口です。

例えば、事業環境を「内部環境・外部環境」に分けたり、顧客を「新規顧客・既存顧客」に分けたり、費用を「固定費・変動費」に分けたりする方法が代表例です。

適切な切り口がすぐに思い浮かばない場合は、まず一つの要素とそれ以外という形で二分してしまうことも有効です。私はこれを、ローランドさんの名言「世の中には2種類の人間しかいない。オレか、オレ以外だ」をもとに「ローランド方式」と呼んでいます。

例えば、離職の問題であれば、まず「給与の問題」と「それ以外」に分け、それ以外をさらに「上司との関係」と「それ以外」に分けていく、という形で段階的に絞り込んでいくことができます。

こうすることで、結果的に漏れもダブりもない形で、さまざまな切り口を積み上げていくことが可能になります。ロジカルシンキング研修においても、ロジックツリーを作成する際はこの二分法から始めることが多く、対になる言葉の組み合わせをいくつか持っておくと、即座に使える切り口として役立ちます。

MECEを使いこなす際のNGパターン

切り口を一つに決めつけてしまう

一つの切り口で分解してみて明確な違いが見えなかった場合、その切り口自体が適していない可能性があります。にもかかわらず、同じ切り口にこだわり続けると、本質的な原因にたどり着けません。ある切り口で結果が出なければ、別の切り口に変えて試してみるという柔軟性が重要です。

粒度をそろえずに分解してしまう

分解する際、一部の要素だけ細かく、一部だけ粗いままにしてしまうと、全体としての整合性が崩れ、モレやダブりが発生しやすくなります。常に元の全体像のサイズ感を保ちながら、段階的に分解していく意識が必要です。

分解すること自体を目的化してしまう

MECEはあくまで問題の本質を見極めるための手段です。分解すること自体が目的になってしまい、実際の問題解決につながらない分析に終始してしまうケースも見られます。キレイな分解をすることが目的ではありません。分解した結果、どこに違いや異変が見られるかを確認し、その先の原因分析や打ち手の検討にまでつなげることが重要です。

まとめ|MECEを武器に、質の高い問題解決を

会議やビジネスの現場で問題解決に取り組む際、意見の量を増やすことよりも、まず「どの切り口で考えるか」を明確にすることが成果への近道です。属性分解・変数分解・プロセス分解・対比分解という4つの切り口を状況に応じて使い分けることで、モレなくダブりなく物事を捉え、本質的な原因や課題にたどり着くことができます。

とはいえ、実際にどの切り口が有効かは、試してみなければ分からない部分も多くあります。一つの切り口で成果が出なければ、別の切り口に変えて検証を続ける。この地道な積み重ねこそが、質の高い意思決定を支える土台となります。

自社の会議や分析の場面で「なんとなく話し合っているが結論が出ない」という状態が続いているようであれば、一度、切り口そのものを見直してみることをおすすめします。属性・変数・プロセス・対比という4つの視点を意識するだけで、議論の質は大きく変わります。

そして、こうした思考の型は、知っているだけでは定着しません。実際の会議や自社のデータを題材に、繰り返し練習することで初めて現場で使える武器になります。当社では、ロジカルシンキングやMECEの考え方を軸に、企業研修やマネジメント体制構築のご支援を行っております。組織の意思決定の質を高めたいとお考えの際は、ぜひ研修サービスや著書もあわせてご覧いただければ幸いです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

小松 茂樹(こまつ しげき)

中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役社長。「デキる人を増やして社会をもっと快適にする」を理念に、人事・組織コンサルタントや研修講師として活動。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

著作『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜
著作『指示待ち人間からの解放〜自ら考えて行動する社員を増やす4つの柱と7つのステップ〜

登壇実績 862件、1,015日間(のべ受講者数17,334名)*2025年12月末現在

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