時間管理という罠

ブログをご覧のみなさま、こんばんは。小松茂樹です。

前回、セルフマネジメント実践サイクルの1つ目のフェーズとして、セルフイメージの明確化と将来設計についてお話をしました。

今回は、2つ目のフェーズである「時間管理」について、お話をしていきます。

 

時間は管理できない

セルフイメージを明確にし、自分のミッションやビジョン、戦略や目標を定めたならば、次はそれを実現していくために具体的な計画を立てていくことになります。

この時に必要となってくるのが、時間の観点です。

「期限のない目標は達成されない」と言っても過言ではないくらい、目標達成における計画には時間の観点が必要です。

そして、「目標達成期限までの限られた時間をどのように使うのか」という「時間管理」を行っていくことになります。

 

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しかし、よくよく考えてみると、「時間管理」というのは非常におかしな言葉です。

時間というものは、24時間365日、誰にでも平等に与えられています。そして、有意義に過ごそうとも、無為に過ごそうとも、時間は日々刻々と流れていきます。

私たちは時間の流れを止めたり、遅らせたり、加速させたりすることはできません。時間を使わずに溜めておくこともできません。

 

時間は、私たちのコントロールの及ばない存在なのです。

 

したがって、厳密に言うと私たちは時間を「管理すること」はできません。

私たちにできることは、その時間の中で「どのような行動を取るかを選択する」という「行動管理」に過ぎないのです。

 

「時間管理」というと、あたかも私たちは時間を意のままに使えるかのような錯覚に陥ります。

時間を「資源」として捉える考え方もあります。

それを全面的に否定するわけではありませんが、時間を自分の意思でコントロールできない以上は、むしろ「制約」と捉えた方が認識としては正しいかもしれません。

一方で私たちは、自分の行動はコントロールすることができます。行動は私たちの「自由意志」に委ねられているのです。

「時間管理」とは「一定の時間の中における自分の行動を選択すること」と言うことができるでしょう。

 

パーキンソンの法則

ここで、時間管理を考える上で有効な、ひとつの理論をご紹介いたします。

イギリスの政治学者であるノースコート・パーキンソンが提唱した「パーキンソンの法則の第一法則」というもので、

仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する

というものです。

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たとえば、本来であれば30分で終わるはずの仕事も、1時間かかるだろうと思って行うと、しっかり1時間かかってしまうということです。

3日で終わるはずの仕事に1週間を割り当てたら、しっかり1週間かかってしまうということです。

つまり、仕事の目的・目標自体は何も変わらないのに、割り当てた時間の量によって、プロセスが長くなったり短くなったりしてしまうのです。

 

例えば、クローゼットの片付けをする際に、「1時間で完了させる」と思って取り組めば、整理はテキパキと進み、1時間前後で作業は完了することでしょう。

しかし、たとえ同じ分量であっても、「今日1日かけて行う」と思って取り組むと、残すか捨てるかの判断が長引いたり、途中で思い出に浸ってしまったり、収まりが悪い感じがしてはじめからやり直したりして、結局1日かかってしまうのです。

 

逆に言えば、これを逆手にとることで、完了までにかかる時間を短縮することができます。

2時間かかるはずの仕事を「1時間で終わらせる!」と取り組むことによって、実際に1時間前後で終わるようにすることができます。

3日かかるはずの仕事を「2日で終わらせる!」取り組むことによって、実際に2日で終わるようにすることができます。

 

なぜなら、私たちは期限までの時間から逆算して、プロセスを設計するからです。

時間が長ければそれ相応の、時間が短ければそれ相応のプロセスを設計し、作業を行います。プロセス自体が異なるから、それに必要な時間も異なってくるのです。

 

もちろん、これがすべてにおいて当てはまるというわけではありません。

3日かかるはずの仕事に1日しか割り当てなかった結果、著しく質が下がったり、未完成のまま終わってしまうこともあります。

あまりにも無理な設定を可能にするものではないので、時間の割り当てにはバランス感覚が必要です。

また、各工程にどれくらいの時間を要するかをシュミレーションするための、知識と想像力も求められます。

パーキンソンの法則を活用するにあたっては、「少しキツめのスケジューリングを心がける」というくらいの認識が適切かもしれません。

 

時間管理のマトリクス

もうひとつ、時間管理を考える上で有効な考え方として、「時間管理のマトリクス」をご紹介します。以前このブログでも取り上げたものです。

座標のX軸に「緊急度」、Y軸に「重要度」を取り、

・緊急かつ重要

・緊急ではないが重要

・緊急だが重要ではない

・緊急でも重要でもない

という4つの領域を設けて、

自分が日頃からやっている活動、およびやるべき活動が、この中のどこに位置付けられるかを分類するというものです。

時間管理マトリクス

 

この中で最も重要なのは、「緊急ではないが重要」という領域です。

ここには、

・成果を上げるための環境や仕組みを作る活動

・自分の人間性や能力を磨く活動

・人間関係を構築するための活動

といったものが分類されます。

 

これらは、決して「すぐにやらなければならない」と差し迫っているものではありません。

しかしどれも、やることで自分の仕事や人生を豊かにすることができます。

一方で、いつまでもやらないで放置していると、いずれ大きな痛手を被ることもあります。

企業においても、個人においても、高い成果や豊かな生活を手にしているケースは、この「緊急ではないが重要」の活動に十分な時間を割り当てています

「限られた時間の中で、どういった活動を選択するか」という「時間管理」において、この考え方は非常に有効になってくるのです。

 

上記の2点を踏まえて、月や週の単位でスケジュールを組んでいくのが、セルフマネジメントにおける「時間管理」です。

詳しくは本編で述べていきますが、時間管理とはスケジュールをガチガチに埋めて、1分1秒のムダなく時間を使うことではありません

自分にとって本当に大事なことに十分な時間を確保し、それ以外の活動をなるべく省力化することで、効果的で有益な時間の使い方を目指していくのです。

 

次回は「行動の定型化と習慣化」についてお話いたします。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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