目標は数値化できれば達成できる

前回までの投稿で、目標達成を可能にする要因として「本気度」と「計画」についてお話してきました。

今回は残る一つである「数値化」について考えていきます。

目標にリアリティを与える

何かの目標を掲げて、それを達成しようとするならば、目標を数値化することが効果的です。

目標は数値化できれば達成しやすくなります。

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前回の「計画」でお話しましたが、人間の行動はまず頭の中で行われ、次いで現実世界で行われます。

数値化すると達成のイメージがより精密になるので、頭の中で行う段階で、イメージのリアリティが高くなります。それにより、現実世界での再現性も高まり、達成しやすくなるのです。

 

数値は目標達成のイメージを描く上で、それをよりハッキリとしたものにしてくれる強力なツールなのです。

 

数値化しないと現状が認識できない

身近なところで言うと、貯金やダイエットが良い例です。

貯金なら金額、ダイエットなら体重や体脂肪率が目標として設定する数値になります。

 

ただ漠然と貯金をしようと思っても、「最終的にいくら貯めたいのか」を描いていないと、

・毎月の支出をいくらまでに抑えなければならないのか
・収入をいくら上げなければならないのか

がわからず、具体的に何をするべきなのかがよくわからなくなります。

 

ただなんとなく「節約しよう」と思っても、目標が数字になっていないと、現状がうまくいっているのかいないのかがわかりません。

心がけていることが、節約になっているのか、いないのかの判断がつかないのです。

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ダイエットも然りです。体重や体脂肪率がいくつになったら「痩せた」と思えるのかを決めておかないと、今の自分の状態が「痩せているのか」「太っているのか」がわかりません。

あまり時間がたたないうちに「ま、いいか」となってしまいます。

 

数字は目標に力を与えてくれる存在なのです。

 

定性目標は目標なのか?

ここまで読まれて、「そんなの、当たり前のことじゃないか」と思われるかもしれません。

しかし、簡単にイメージがつき、かつ数値化もできる貯金やダイエットなどの目標ならいいのですが、中には容易に数値にできない目標もあります。

例えば、

・他人に優しくする
・いつも明るい人でいる
・意欲的に仕事に取り組む

などです。

これらは、どう数値に表せば良いのでしょうか?

 

このように、数値で表すことのできない目標を「定性目標」と言います。一方で、数値化できる目標は「定量目標」と言います。

上記の例はすべて、自分の態度や姿勢といった「実体のないもの」を改善する目標です。これは定性目標です。

 

企業の場合でも、

・顧客に愛される企業になる
・世界に影響力を与える事業を行う
・消費者に感動を与える商品を世に送り出す

などの目標が掲げられる場合があります。

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そして、こうした定性目標に対しては、多くの場合、

「心がける」
「意識する」

という対応が、目標達成に向けた行動として設定されます。

 

もちろん、心がけることは大事ですが、心がけや意識をを計測することはできません。

計測できないということは、現状が正確に把握できないということです。

 

これでは、目標に対して良い方向に向かっているのか、離れていってしまっているのか、まったく判断ができません。

何をもって「目標を達成した」と言えるのかがわからないのです。

これはもはや目標とは呼べない、とも言えるのではないでしょうか。

 

バカバカしいと思われるかもしれませんが、実際にこうした内容を「目標」として掲げているケースをよく目にすることがあります。

誤解を恐れずに言うと、これらは「目標」ではなく「ビジョン」です。

自分が望む姿を現してはいますが、それに向かって何をしたらいいのかがまったくわかりません。

 

ビジョンはビジョンとして大事なのですが、そのビジョンを達成するためには、もっと具体的な対応策を考える必要があります。それこそが「目標」です。

すなわち、定性目標は厳密には目標とは言えず、目標はすべて定量目標であることが望ましいのではないか、と思うのです。

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なんでもいいから、とにかく数値化してみる

では、具体的にどうやって定性目標を定量目標化するかを考えてみます。

 

例えば、私の場合ですが、昨年に「もっと周囲に感謝できる人間になる」という定性目標を立てました。

その時、自分には感謝の気持ちが欠けていると思い、「周囲のありがたみをしっかりと感じられる人でいよう」と考えたのです。

 

しかし、よくよく考えてみると、「他人に感謝できる人間であるかどうか」を客観的に判断する指標はありません。

日々、心がけたり、意識したりしたとしても、本当に「感謝できる人間になりつつあるか」を実感しようがないのです。

 

そこで、どうにかして「感謝」を数値で表すことができないかと考えた末、思いついたのは

「『ありがとう』と口にした回数を計測する」

ということでした。

 

そして、1日10人(ないし10回)、他人に対して「ありがとう」と告げることを行動目標とし、実際に「ありがとう」といった数を正の字で手帳に記録していきました。
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はじめのうちは、自分でもアホらしいと思いながらやっていましたが、やってみると毎日10をクリアしようとすると意外と大変です。

日によっては、あまり人と会話を交わさないこともあるので、普段通りにしていたら達成できないのです。

 

するとどうなるかというと、

何でもいいから、ありがとうと言える相手はいないか

と、周囲に感謝できることを探すようになったのです。

 

そして、一年間これを続けた結果、それ以前と比べて「ありがとう」と言う機会がはるかに増えました

 

例えば、外食やお茶をしてお店を出る時、「ごちそうさまでした」と言って出る方は多いと思いますが、私は「ありがとうございました」と言って出るようにします。

・料理や飲物を作っていただいてありがとう
・心休まる場所を提供してくれてありがとう
・大切な人と楽しい時間を過ごす空間を用意してくれてありがとう

など、いろいろな意味が込められています。

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他にも、

・メールをいただいたら「ありがとうございます」
・駅やビルや街で、清掃員の方を見かけたら「ありがとうございます」
・セミナーのお見送りの際には、一人一人に「ありがとうございます」

とにかく、日々の生活の中で「ありがとう」を連発します

時にはわざとらしくなってしまうこともありますが、それが自覚できれば、本心から「ありがとう」と言えるよう、それこそ「心がける」までです。それも自分にとっては発見です。

 

「そんなの、ただ言っているだけじゃないか?」と思われるかもしれませんが、「ありがとう」が簡単に言えるだけでも人間関係は確実に良好になります

自分が意識して言うようになって、意外と人は「ありがとう」と言わないものだという発見もありました。

 

数値目標を達成すると、それが自信になり、「感謝できる人になる」というビジョンに近づいたと、自分でも自然と思えます。

おそらく「1日10のありがとう」という行動目標を立てなかったら、なんとなく意識するものの、ビジョンに近づいたかどうかの実感は得られないまま終わったと思います。

 

なんでもいいから、数値にできることを考えて、やってみる

 

理想の自分に近づく上には、目標を数値で掲げることが、自分を変える力になってくれるのです。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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