【図解】目的と目標の違い(その2)

前回、「目標と目的の違い」と「目標の選び方」についてお話いたしました。

第2回となる今回は、目標の設定の仕方について、もう少し詳しくお伝えいたします。

その1
その3

中間目標(近接目標)を設定する

高い目標を掲げると夢は膨らみますが、一方で心理的なハードルも高くなります。

夢からくる「情熱」が、ハードルの高さからくる「抵抗感」や「無力感」を下回った時、目標達成に対するエネルギーが低下します。

これを一般的に「モチベーションが下がった」と言います。

 

しかし、それは目標が高いからモチベーションが下がったのではありません。

目標が高いがためにプロセスが不透明で、目標地点に到達するイメージを描けないから動けなくなってしまうのです。

すなわち、モチベーションの低下は目標を達成させるプロセスの不明確さによるものだと言えます。

※目的そのものを見失ったり、目的が誤っていたことに気づいた場合にもモチベーションは低下しますが、今回は目標設定に限定して話を進めていきます。

 

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多くの場合、目標は現状から遠いほど抽象的になり、近いほど具体的になります。

人はみな

・現実味のない目標
・確実性の低い目標
・不透明で不明確な目標

には意欲が沸き起こりづらいです。達成できるイメージが描きにくいからです。

したがって、目標が高いほど(抽象的であるほど)意欲は減退しやすくなります。

 

また、目標達成までに要する時間が長い場合も、モチベーションは低くなりがちです。

期間が長くなるほど、達成に向けた行動を維持するのが困難に思えてくるからです。

 

これを逆に考えると、
具体的明確な目標
現実味がある目標
確実性の高い目標
短期間で到達できる目標

は、達成しやすい目標であると言えます。

いずれも、プロセスが簡潔で明確であり、達成できるイメージが描きやすいからです。

 

したがって、高い目標(あるいは長期間を要する目標)をクリアするためには、

・なるべく短期間で
・やるべきことが明確で
・手が届きそうな

目標を設定する必要があります。

 

ここで有効なのが「目標を細分化する」こと。すなわち、中間目標(近接目標)を設定することです。

 

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乗り越えられる高さに中間目標を設定する

中間目標をイメージしていただくため、ひとつ例を挙げてみます。

 

私の趣味のひとつにマラソンがあります。

はじめてフルマラソンを走ったのは、2年前の秋に開催された大阪マラソンですが、

その時点ではランニング経験は半年にも満たず、レースも10kmを1回経験したのみ。

ハーフマラソンの経験すらありませんでした。

 

ところが、「高倍率でどうせ当たらないから」と妻が冗談半分でペア申込をしたところ、

予想に反して当選してしまい、出場せざるを得なくなってしまいました。

 

当選が決まったのは開催の半年前。私は妻とともに、慌ててトレーニングを開催しました。

最終目標は42.195kmを完走することですが、その時点では10km走るのが精一杯。

それも、レースだから頑張れたものの、通常の練習では5~6kmがせいぜいでした。

 

ここからいきなり42kmを目指すのは、いくらなんでもハードルが高すぎます。

フルマラソンを走れる身体をつくるため、私は妻が立てた練習計画(コーチャーからの指導に基づき作成)に従って、

10km

15km

21km

30km

と段階的に練習のレベルを上げていき、本番1ヶ月前までには30kmのランニングを月に2回行うようになりました。

こうした長距離の練習は時間を要するので週末にしかできませんでしたが、走れる身体を作るためには間隔を空けないことも重要であったため、平日の晩も5~6kmの距離をスピードを上げて走るように努めました。

その甲斐があってか、はじめてのフルマラソンも無事に完走することができました。

写真 2014-10-26 14 59 30

 

高い目標であっても、目標を細かく刻んで階段を積み重ねていくことによって、

現時点から少し頑張れば達成できるレベルから、挑戦をはじめることができます。

その階段を一段ずつ登っていくことにより、高い目標にも着実に近づいて行くことができるのです。

 

このように細分化して小さくした目標を「ベビーステップ」と呼びます。

赤ちゃんでも乗り越えられる小さい階段という意味です。

目標を設定する際にには、過程を細かく刻んで、一段ずつ乗り越えられる高さに設計していくことがとても有効であると言えます。

 

目標は目的の線上にセットせよ

中間目標(ベビーステップ)を設計する上で重要なのは、「それぞれの目標を目的の線上にセットする」ことです。

目標が目的から外れたところに設定されていては、階段を何段登っていっても、最終的な目標に到達することは困難になってしまいます。

 

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こうして言葉にすると当たり前のことのように思えますが、知らず知らずのうちに意外とやってしまうものです。

目標を細分化していく過程で、中間目標をつなげた線が目的と同じ方向を向かなくなってしまい、本来の目的を見失ってしまうのです。

目標を達成するために導入した手段を遂行すること自体が目標と化してしまい、その目標を達成させることが目的にすり替わってしまうというのが、よくある例です。(これを「手段の目的化」と言います)

 

例えば、

・売上向上を図るため、新規開拓営業に対して報奨金を支払う制度を設けたところ、報奨金目当てで新規ばかり狙うようになって既存客のフォローが後回しになり、リピート客が減って結果的に総売上がダウンしてしまった。

・営業スキルを上げるため、各人の持つノウハウを共有する会議を定期的に開催するようにしたところ、会議で報告するネタ収集や資料作成に時間を取られるようになって、肝心の営業活動をする時間が減ってしまった。

・顧客情報の一元管理をするためにシステムを導入し、収集したすべての情報を入力するよう義務づけたところ、データ入力に時間が割かれるようになって、営業活動に出かけなくなってしまう。

などは、手段が目的化してしまった例です。

 

大目標の達成に至るプロセスを設計する際には、個別手段の運用や中間目標の設定が、本来の目的から外れていないかどうかを注意深く検証することが必要であり、

そのためには目的と最終目標を紙に書くなどして明文化し、定期的に確認することが重要になってくるのです。

 

以上、「目的と目標の違い」「目標の設定方法」について2回に分けてご紹介してきました。

次回は、この考え方をキャリアや人生の設計に応用する方法についてお話いたします。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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