欲深くなりましょう

本日、某システム開発企業様でコミュニケーション研修の講師を担当させていただきました。

これで、今年度の講師としてのお仕事は終了。まだ年内は、来年度に向けて企画作成やお客様とのお打ち合わせが続きますが、ここ数週間出張や外出が詰まっていたので、ようやく一段落です。

 

振り返ってみると、今年は59日間、874名様の前で登壇の機会をいただきました。

コンサルタントとしての本格的な活動が今年からスタートしたこと、講師業以外にも調査・診断・業務分析などのお仕事があったことも考えると、初年度としてはとても充実した一年を過ごすことができました。機会をいただいたすべての方に、心から感謝です。

本日、38歳の誕生日を迎えました。こうして無事に、好きな仕事を好きなようにやらせていただいている生活が本当にありがたく、幸せなことだと痛感します。

 

いま、すべてのビジネスパーソンに問われているもの

来年の初旬に名古屋で生産性向上のセミナーを担当させていただくお話をいただき、いま準備を進めています。

政府の旗振りで「働き方改革」が叫ばれ、電通の事件を機に「ワークライフバランス」「長時間労働」を課題として取り上げる風潮が再燃しています。

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どれもこれも、今に始まった話ではなく、以前からずっとあった問題です。上記の問題へのアプローチ方法は、オフィス改革、IT導入、組織・制度設計、チームと業務のマネジメント、個人の能力開発と意識改革・・・など、とても多岐にわたります。

しかし、いずれにおいても、解決策となる手法はすでに世の中にいくらでも出回っています。

どうやったら生産性が上がるのか、どうやったら労働環境が改善されるのか。そんなことは、みなとっくにわかっているのではないかと思います。

 

結局のところ、もはや知識やノウハウの問題ではないのです。何をしたらいいのか、どうあるべきなのかは、誰の目にも明らかです。問題なのは、

何をすべきなかのかはわかっているのに、それを実行に移すことができない

ことなのです。

 

なぜ実行できないのか。

組織の構造の問題もあります。組織文化の問題もあります。マネジメントの問題もあります。働き方改革を進めながら、業績を維持・向上させることができるのかという不安に立ち向かう「勇気」の問題もあります。

しかし、どんな組織もすべて個人から成り立っています。問題を細分化して、さらに細分化して、行き着くところまで掘り下げていくと、最終的には個人の「自律性」の問題にたどり着くのではないか、と考えるに至りました。

自律性は「欲求」から生まれる

前回までの投稿で4回に渡って書いたモチベーションのスキル化シリーズは、

「モチベーションをスキル化するということは、自律した自分でいるということ」

と締めくくりました。

 

自律というのは「自分の状態を、自分が望ましい状態に保つ」ことですが、これは結果として得られるものであり、そうなるためには自律させるための行動が必要になります。

自律は「自分を律する」と書きます。私の解釈では、これを

やるべきことを自分で決め、自分でやると決めたことを、決めた通りに実行する

ことだと捉えています。

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もちろん簡単なことではありません。私自身、未熟だと思うこともたびたびあります。

物事に取り組むにあたっては、計画を立てることも大切ですが、その計画を実行に移すことはもっと大切で、尊く、そして困難を伴うものです。

完璧な計画を描くことはほぼ不可能に近いです。どれだけ万全を期して望んでも、予期せぬ出来事が壁となって計画の遂行を阻んできます。これを絶えず回避しようとするのは、現実的な戦略とは言えません。

 

問われるのは、予期せぬ出来事への対応力です。どんな障害が現れたとしても、計画の修正を繰り返しながら、当初の目的を完遂せんと挑戦をし続けるエネルギーが、何よりも必要です。

自律性というのは、挑戦し続けるためのエネルギーを生み出し、持続させる力ではないかと考えます。

そして、その源となるのは「欲求」です。

 


先日、あるお客様(部長クラスの方)と営業力の強化についてお話をさせていただいた際、

「最近の子はさ、欲がないんだよね。言われたとおりのことだけやって、それで十分だと思ってしまう。あれも、これも。もっと、もっとって気持ちが足りないんだよね。」

という話が出ました。

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一概に世代の問題だとは言えないと思いますし、果たしてベテランが皆こういうマインドを持っているかと言われると、甚だ疑問ではありますが、確かにパフォーマンスの高さを決める上で「欲求」は大きな要因となりうるだろうなと思いました。

 

人はみな、快楽を求め、痛みを回避しようとする習性があります。そして、人はみな報われる行動をとろうとします。

つまり、人が行動しない原因は、やることが快楽につながらないか、やったことが報われないだろうと考えているからです。

要するに、人の行動の原点となるものは、快楽や報酬(必ずしも金銭ではない)への「欲求」なのです。

 

欲求が低ければ、ほどほどで満足してしまいます。「これで十分だ」という水準に、簡単にたどり着いてしまいます。

ほどほどで満足してしまうから、壁が現れるとすぐにイヤになってしまいます。簡単に「もう十分だ」と思ってしまうから、それ以上は追い求めなくなります。

 

業務を円滑にし、生産性を上げ、労働時間を適正化して、ワークライフバランスを追求しようとするならば、組織を取り巻くいろいろな問題に立ち向かわねばなりません。

そのためには、参画する全員が、強い欲求を抱いている必要があります。

  • ムリ、ムラ、ムダを排除して、快適に仕事をしたい
  • 「作業」から解放され、結果に直結する仕事に集中したい
  • やる時は徹底してやり、休む時は思いきり休む働き方をしたい

みながそう思っていれば、極端な話、特に改まって何かしなくても自然になるべき姿になっていきます。人の心がひとつにまとまることは、それほどの力を持っています。

 

欲深いほど、基準が高くなります。諦めが悪いから、欲しい結果が得られるまで、しつこく何度でも挑戦しようとします。これが、壁を突き破ろうとするエネルギーにつながります。すなわち、「自律性」が生まれるのです。

 

趣味もなく、家庭に居場所もなく、早く帰る「理由」がないために、好んでダラダラ残業をしている人もいるとも言われています。そういう人がいる限り、「働き方改革」など夢のまた夢です。

「働き方改革」「ワークライフバランス」は仕事をないがしろにして私生活を優先することではありません。「バランス」ですから、仕事と私生活の両方の満足を追求することに目的があります。

それゆえ、これを実現するためには、普通にやっているよりも「はるかに優秀に」仕事を成し遂げる必要があります。より短時間で、今以上の結果を求めようとするのですから、「働き方改革」に取り組むというのは、とてもシビアな挑戦なのです。

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仕事への欲求、私生活への欲求がともに強くなければ実現できないことです。とても負荷がかかります。「やってみたけど、できませんでした。でも今日は帰ります」では困ってしまいます。「やると決めたからには、必ずやり遂げる」という強い自律性が求められるのです。

 

欲深くなりましょう

周囲に認められたい。お金が欲しい。いい家に住みたい。影響力を持ちたい。自由に仕事がしたい。自分の時間が欲しい・・・

自分の中にある素直な欲求を、恥じることなく、堂々認めていきましょう。そして、欲求の赴くままに懸命にやるべきことをやり続けましょう。

 

それが、強いエネルギーを生み出し、自律性を発揮し、高いパフォーマンスを上げ、不可能を可能する力になります。世の中のいろいろな問題が、解決していけるのではないかと思います。

私もまた、この一年をさらに貪欲に、いろいろなことに取り組んでいきます。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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