負の感情との向き合い方

ポジティブシンキングという罠

物事がうまくいく人の特徴の一つとして「ポジティブシンキング」が挙げられることがよくあります。

ひとことで言うと「物事を良いように捉えよう」という考え方です。

たとえ自分にとって不利な場面や困難な状況が現れたとしても、それを好機と捉えて前に向かっていくという心構えのことを意味します。

 

確かにこれは行動力を維持・向上させ、結果につなげる効果的な要素となります。

しかし、私の考えでは、ポジティブシンキングはあくまで「状況を好機と捉える」という「外部環境の捉え方の観点」です。

ポジティブシンキングを過大に解釈してしまうと、「自分の中にあるネガティブなものをすべてポジティブに捉える」ことだとして、

自分の中に生まれた否定的な感情(不安、不快、恐れ、孤独など)をもポジティブに変換しようとしてしまいます。

実際に私の周囲にも、「ポジティブシンキングは、何でもかんでも肯定的に捉えることだ」と思っている方がいます。

 

これはポジティブシンキングとは少し違う気がします。というか、ムリです。

あなたがもしポジティブシンキングを志し、それを「すべてをポジティブに捉えること」と解釈しているなら、それはかえってあなたを苦しめているかもしれません。

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確かに、自分の外側の環境を見る目は、ポジティブであるほど良いかもしれません。

しかし、自分の内側、つまり自分自身を見る目は、必ずしもポジティブである必要はありません。大事なことは「あるがまま」を見るということです。

自分の中に生まれた否定的な感情を、強制的に肯定的に捉えてようとすることは、その否定的な感情と向き合わずに目を背けるということです。

これは、現状から逃げているというだけで、何の解決にもなりません

 

いくらポジティブシンキングをしたからと言って、生まれてくる感情がすべて肯定的になるなんてことはありません。どんな人にだって、負の感情は生まれるものです。

あるとしたら、それは自分の気持ちをごまかしているだけです。別の言葉で言えば、自分の気持ちに「ウソをついている」ということになります。

誰だって、満員電車に乗れば不快だし、好きな人にフラれたら悲しいし、期待していた仕事が失敗したらガッカリするし、お金がなくなれば不安になるでしょう。

それはそれでいいのです。それがあなたですから。

そこから目を背ければ背けるほど、自分の本心と現実の世界がどんどん乖離していきます。

 

自分の本心にウソをつくことは、セルフイメージ(自己概念)を歪んで描くということです。

これが歪めば歪むほど、正しく現状分析をすることができなくなり、現実世界への対処力が弱まっていきます。自己実現力が低下するとも言えるでしょう。

 

感情に素直になることは、正しく自分を理解するためにとても重要なことです。

むしろ、負の感情こそに自分らしさが宿っています。

・何を不快に思うか
・何を不安に思うか
・何に寂しさを覚えるか
・何に悲しみを覚えるか

ここに、あなたの価値観を見つけるヒントが潜んでいます。「あなたがどう生きていきたいか」を描く手がかりになります。

自分の感情に素直になること。それが自分を正しく理解することにつながるのです。

 

ただし、負の感情を素直に受け止めることができたからと言って、それだけであなたの仕事や生活が好転するわけではありません。

その先の行動をどうするかで、あなたが自分の幸せを自力で掴むことができるかを問われることになります。

 

嘆きの中に天命がある

哲学博士であり実業家である出口光さんは、著祖『天命の暗号』(中経出版)の中で、

「嘆きの中に天命がある」

と述べています。

天命とは自分の人生における目的・使命・役割のことです。私が「ミッション」と表現しているものを指しています。

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出口さんによれば、「イヤだと思いながらも続けていることに、自分の天命を探るヒントがある」ということです。

イヤならやめれば良い
→それなのに、やめない
→やめない理由は何か?
→そこに、自分が為すべきことがあるからだ

こういう考え方です。これはなかなか面白く、確かにそうだなとも思いました。

 

良い部分にだけ焦点をあてていても、自分が何をなすべきかはなかなか見えてきません。

うまくいっていることは、そのままでも何の問題もないからです。改めて「自分はこれで良いのか」などと考える必要が、そもそもありません。

自分が何に負の感情を抱くのか。それを自覚し、その原因を探っていくことで、自分のミッションとビジョンが見えてきます

 

私は、キャリアのご相談をいただくお客様には、必ずライフラインチャートを描いていただくようにしています。

ライフラインチャートは、これまでの人生における感情の「波」を描くものです。

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成功体験や正の感情があれば上がり、失敗体験や負の感情があれば下がるように描きます。

人生山あり谷ありです。これまでの山と谷にはどんなものがあったのかを見つめ直すことで、自分自身をより正確に明確に理解できるようになります。

そして、その中でも山ではなく谷に注目します。つまり、失敗体験や負の感情の方をより深く分析していきます。

観点は

なぜそれは、あなたにとって谷なのか

ということです。

 

それを谷と位置づけるのは、あなた自身です。そこには、出来事を谷と捉える価値観や信条、感情の傾向などが潜んでいます。

自分にとってどうでもいいことであれば、そこに負の感情は起こりません。自分にとって大事だからこそ、好ましくない状況が現れた時に負の感情が生まれるのです。

 

例えば、仕事について悩んでいるのであれば、

・その会社のどこがイヤなのか
・その上司のどこがイヤなのか
・その職務内容のどこがイヤなのか

などを明確にしていくことで、自分にとって大事なものが見えてきます。これがあなたの価値観です。

 

これは何も仕事に限った話ではありません。恋愛も、家族の人間関係も、友人も、住環境も、すべて負の感情の背後に「本当に自分の望む姿」があります。

すべての問題解決は、内部・外部の環境分析からはじまるのです。

私自身、今の私の姿があるのは、人にだまされた経験、裏切られた経験、傷ついた経験などがあって、それらと向き合い、意味を見いだすことができたからだと思っています。

 

自分の負の感情から自分らしさを見つめ直し、そこから見える「あるべき姿」をミッションやビジョンとして自分の軸としていくことで、望む人生を送るための道が開けてくるのです。

 

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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