コミュニケーション能力を誤解していませんか?

お客様と社員教育や研修について話をしている中で、よく話題にあがるテーマのひとつに「コミュニケーション能力」があります。

 

しかし、この「コミュニケーション能力」という言葉は実にあいまいな言葉です。

「コミュニケーション能力」が何を意味しているのか。果たして、話し相手との間で、お互いに同じ意味として用いているのか。

よくよく確認しておかないと、認識がズレている・・・なんてこともあるかもしれません。

 

そもそも、「コミュニケーション能力」あるいは「コミュニケーション」に相当する言葉は日本語にはありません。

日本語の概念には「コミュニケーション」に相当する概念がないのです。(だからこそ、カタカナ語で用いられているわけですが・・・)

 

「コミュニケーション能力」という言葉は、一般的には「情報の伝達交流技術」という意味で用いられています。

もちろん、それは間違いではありません。しかし、それは「コミュニケーション能力」という言葉が持つ意味の一部に過ぎず、そのすべてというわけではないのです。

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コミュニケーション能力とは何か

私のコミュニケーションの師の一人に(社)日本パーソナルコミュニケーション協会理事・武蔵野学院大学准教授の吉井伯滎先生という方がいらっしゃいます。

吉井先生は研究を進めている中で、日本はおろか本場のアメリカにでさえ「コミュニケーション能力」を体系的に定義したモデルが存在しないことに気づき、コミュニケーションに関する理論を統合して次のようなモデルを描かれました。

 

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実は、「コミュニケーション能力」は

外的コミュニケーション能力
内的コミュニケーション能力

の2種類の能力から構成されているのです。

外的コミュニケーション能力

「外的コミュニケーション能力」とは「他人との意思疎通を図る能力」であり、次の3つの要素から構成されます。

1.マナー、礼儀・作法、挨拶

2.社会対応力・対人対応力

3.他者理解力

一般的に用いられている「情報の伝達交流」の能力は、ここでいう「2.社会対応力・対人対応力」のことを指しています。

 

しかし考えてみれば、「情報の伝達交流に長けていれば、コミュニケーション能力が高い」とは一概には言えないと思いませんか?

いくら会話が上手でも、失礼な態度、横柄な態度、品のない仕草などを取っていると、相手に対して良い印象を与えません。

また、話のやりとりの中で「相手は本当は何を言いたいのか?」「心の中ではどう思っているのか」を汲み取ることができれば、たとえ表面的には会話が成立していたとしても、それはコミュニケーションがちゃんと取れているとは言えないでしょう。

相手と真のコミュニケーションを取るためには、いわゆる「傾聴」のスキルを発揮して、相手の真意を理解する能力も問われることになります。

 

内的コミュニケーション能力

しかし、実はこの「外的コミュニケーション能力」以上に重要なのが「内的コミュニケーション能力」です。

これは「自分自身との対話能力」のことを意味し、

1.自己理解力

2.自己啓発力

3.自己実現力

という3つの要素から構成されています。

 

つまり「自分自身について理解し、自分自身を高めていくこと」もコミュニケーション能力の重要な側面なのです。

なぜこの能力が必要なのかと言うと、他人としっかりとしたコミュニケーションを図るためには、

自分と相手の違いを認め合う

ことが欠かせないからであり、そしてそのために「自分自身のことをしっかり理解する」ことが必要だからです。

 

コミュニケーションの本場であるアメリカでは、多数の異なる民族が入り乱れて社会が構成されています。

異なる民族が入り乱れているということは、一人ひとりの文化、宗教観、価値観などが違うことを意味します。つまり、考え方が根本的に違人たちが集まっているのです。

したがって、あらゆる場面で意見の衝突が生じます。

しかし、その衝突を解消しない限り、物事は先に進まなくなります。それは仕事においても、地域社会においても、あるいは家庭においても生じることです。

そこで彼らは、文化的、宗教的、民族的な違いを乗り越えて、話を建設的に進めるために、まず「お互いの違いを認め合う」ことが求められます。

お互いの違いを認め合い、その違いからくる意見や価値観の対立を解消していくことこそが、コミュニケーションの目的であるとも言えるかもしれません。

 

お互いの違いを認め合うためには、

・相手と自分の違いを知る

・相手のことを認める

・自分のことを認めてもらう

というプロセスを経る必要がありますが、そもそも、相手と自分の違いを知るためには、

・相手のことを知る

・自分のことを知る

という2点が前提条件としてクリアされていなければなりません。

 

「相手はどういう人間なのか」

「自分はどういう人間なのか」

この両方とも正確に理解していないことには、そこから生まれる「違い」を見つけることができません。

 

したがって、外的コミュニケーション能力の「他者理解力」を用いて相手を理解するとともに、内的コミュニケーション能力の「自己理解力」を用いて自分自身を理解することが必要になってきます。

 

さらには、相手と自分を理解するだけでは、両者の違いを見つけるだけで終わりです。

 

その見つけた違いを乗り越えて、相手と良好な人間関係を築くためには、

・「自己啓発力」を発揮して、自分自身を高める

・「自己実現力」を発揮して、「自分が理解している自分」を理想的な姿に近づけていく

ことが次のレベルとして大切な要素であり、これこそがコミュニケーションの上級者への道だと言えるでしょう。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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