セルフマネジメント
2024.12.28
目次
年度末が近づき、1年を振り返る時期となりました。日々の忙しさに追われていると、なかなか振り返りの時間を取ることが難しいのではないでしょうか。しかし、せっかく積み重ねてきた経験も、振り返りを行わなければ再現可能な能力には転換されません。
私自身、日々の振り返りとして1日1ページの手帳に、その日行ったことや学んだこと、考えたことを記録する習慣をつけています。ただし、それだけでは必ずしも十分とは言えません。
経験を自分の力に変えるためには、年単位で自分の行動を振り返り、日々の振り返りでは得られない気づきや発見を得ることが必要となってきます。
経験を力に変えていくためには、振り返りが非常に重要です。しかし、いくら色々な経験を積んだとしても、その経験を「しっぱなし」では再現可能な能力に転換することはできません。
そして、経験から学ぶための振り返りをする手順として有名なモデルに、デービッド・コルブの「経験学習サイクル」という考え方があります。次の4つのステップを踏むことで、経験からの学びを次に活かせるようになります。
このサイクルでは、まず何らかの経験を積んだ後、その経験を内省することから始まります。
ここで重要なのは、内省と反省は異なるということです。反省は、悪い結果が起きたものに対して、なぜそうなったのかという原因を分析し、2度とそうならないように次に向けた対策を講じることです。もちろん反省も必要ですが、これは悪い結果にしか着目しません。
一方、内省は良い結果・悪い結果に関わらず、結果だけでなくプロセスにも焦点を当て、その時に自分が考えたことや感じたことを思い返すことです。
思い返す過程の中で、教訓を作り出していきます。これを専門的には「抽象的概念化」と呼びます。つまり、個別の具体的な経験から得た学びを、情報量を少なくしていくことで一般法則化していきます。
「この系統のことをやると、こういう結果になる」
「こういうことをやると、うまくいく」
「こういうことをやると、失敗する」
といった形で、転用可能な形、再利用できる形にしていきます。
そうして得られた教訓に基づいて、また新たな実践を行います。すると、以前の経験に比べて、教訓に基づいて実践した分だけ意識的に行動でき、場合によってはより高いレベルのことができるようになります。
その結果、また新たな経験を得ることができ、そこからまた内省をして教訓を作り出すというサイクルがぐるぐると回っていくことで、経験したことを単なるやりっぱなしで終わらせることなく、自分の力に変えていくことができます。
経験学習サイクルを進めるにあたり、どのような経験を内省すればよいのか。具体的な3つの手順をご紹介します。
まずは今年度の印象的な出来事を書き出します。カレンダーを見返しながら、月ごとの出来事を思い出していくとよいでしょう。
次に、今年の経験を「Good」と「New」の観点から整理します。
・「Good」は今年度に達成できたことや、成功体験を表します。
・「New」は今年度に新たに挑戦したことや、初めての経験を表します。
さらに、経験を「智」「情」「意」という3つの観点から深く掘り下げていきます。
「智」は知性や能力を指し、今年新たに得た知識や身につけた能力について振り返ります。
「情」は感情面の振り返りです。嬉しかったこと、楽しかったこと、面白かったことなど、ポジティブな感情を中心に思い返します。
ただし、辛い経験や困難な経験も、それを乗り越えたことで得られた学びがあれば、重要な振り返りの対象となります。
人間は感情によって行動が動機づけられるため、この感情の振り返りは非常に重要です。
単に事実として「これができた、あれができなかった」という振り返りだけでは、次の行動へのエネルギーには繋がりにくいものです。感情に着目して振り返りを行うことで、自分自身に対する動機づけのポイントを理解できるようになっていきます。
「意」は今後の意思や方向性を考えるものです。
KPT(Keep・Problem・Try)の枠組みで整理します。
・Keep(継続)… 現在やっていることで、そのまま継続していきたいこと。
私の場合、1日15分程度の動画によるインプットや読書など、継続的な学習習慣がこれにあたります。
・Problem(改善)… 現在のやり方を改善して行っていくこと。
私の場合、SNS関連の活動効率化や、ホームページのメンテナンスなどが今年度の改善対象です。
・Try(挑戦)… 現時点ではできていないが、今後チャレンジしたいこと。
私の場合、動画系生成AIを活用したケーススタディ教材の開発などが来年度の挑戦事項です。
このように体系的に振り返ることで、単なる経験の棚卸しではなく、来年度の具体的な目標設定につなげることができます。重要なのは、この振り返りを年度内に終えることです。そうすることで、来年度を新たな気持ちで迎え、設定した目標に向かって歩み始めることができます。
経験は、振り返ることで初めて価値ある学びとなります。ただ経験を積むだけでなく、しっかりと内省し、教訓を引き出し、それを次の行動に活かしていく。この循環を作ることで、経験は確実に自分の力となっていきます。
年度末という節目に、ぜひ十分な時間を取って振り返りを行い、より充実した新年度を迎える準備を整えていきましょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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