サラリーマンとビジネスパーソンの違い

久々の投稿です。

1月中旬から2月下旬まで、講演や研修、コンサルティングで各地を転々としていました。今週は久しぶりに東京で一週間過ごせるので、少し気持ちに余裕が出てきました。

業務改善やマネジメントから営業力強化まで、幅広いテーマで講義をしていますが、どんなテーマの時でも最近、毎回のようにしている話があります。

それは「サラリーマンとビジネスパーソンの違い」についてです。

 

*以下、男性に限定せず女性も含めた想定で記します。「サラリーパーソン」「サラリーウーマン」といった言葉は慣習的に用いられることはないため、「サラリーマン」という言葉にも女性を含んでいるものと捉えてください。なお、「ビジネスパーソン」は性別を問わない表現として、近年用いられています。

生活レベルは下げたくない

AI(人工知能)やRPA(業務効率化・自動化)といった情報処理・通信技術の進化、就業形態の柔軟化や人事制度見直しといった働き方改革など、昨今の労働環境をめぐるトレンドや課題の多くには、その背景に「少子高齢化に伴う、生産年齢人口の減少」という大きな課題が存在します。

働き手は減り続ける。でも、経済成長は維持・向上させたい。

企業であれ、自治体や国家であれ、たとえスケールは違っても、直面している状況と望む結果は、本質的には同じことだと言えるでしょう。

 

そして、これは個人の生活にも大きな影響を及ぼします。

  • 人口が減少しているのだから、生活の水準が下がっても仕方がない
  • 人口が減少しているのだから、社会の利便性が下がっても仕方がない

素直にそう思えるならば、状況を改善するために何かを変えたり、生み出したりする努力をする必要はないのかもしれません。

 

しかし、人は一度手に入れたものは失いたくないと思うものです。生活水準が今よりも下がったり、利便性が今よりも低下したりすることは、受け入れがたいというのが正直な気持ちではないかと思います。

  • 今と同等以上の、豊かで快適な生活をしたい
  • しかし、経済の源泉となる働き手は減る一方である
  • しがたって、働き手ひとりあたりが生み出す経済価値をもっと大きくすることで、経済を維持、向上させたい

これが、現代の事業経営や労働環境における、最も根本的な課題ではないかと思います。

労働の「質」を変える

物事のアウトプット(出力/結果)は、インプット(入力/原因)によって変わります。

経済的な豊かさはアウトプットであり、それを得るためには労働というインプットが必要になります。

 

労働人口が減少するということは、労働の「量」が減るということです。これはもはや避けようがありません。

労働量(インプット)が減少しても、経済的な豊かさ(アウトプット)を保とうするためには、量以外の部分でインプットを補強する必要があります。

すなわち、労働の「質」を向上させることで、「量」の減少分を補おうということです。この具体的な取組が、情報処理技術の活用や、働き方改革であるわけです。

 

しかし、それらの取組は、いずれも労働の「手段」や「仕組み」を整えているに過ぎないとも言えます。

もちろん、手段や仕組みも大切だし、より高いアウトプットをもたらすために効果的に作用することが期待されます。

しかし、労働の主体はあくまで「人間」です。どれだけ手段や仕組みを整えても、労働を行う張本人である人間が変わらなければ、労働の質を大きく変えることは難しいと言えるでしょう。

ビジネスパーソンは「結果」志向

労働において質を上げるということは、「能力」を上げることと言い換えることができます。

 

能力は「知識」「技術」「態度(意識)」の3つの側面から形成されます。

この中で最も労働の質を左右するのは「態度(意識)」です。どれだけ高い知識と技術を持っていても、そもそも仕事を意欲や気概がなければ、労働は生み出されないからです。

そして、この「態度(意識)」の差を分けるのが、働き手本人の「目的」です。つまり、「何のために働くのか」という認識の差が、労働の質を大きく左右するのです。

 

パフォーマンスの低い人は、インプットに焦点をあてています。つまり、仕事の目的は「労働」を提供することであり、報酬(賃金)は労働の結果として、当然のように得られるものだという認識を持っています。これが「サラリーマン」の思考パターンです。

しかし、労働そのものからは経済的な価値は生まれません。労働が適切に商品やサービスへと変換され、それが顧客に価値あるものとして認識されてはじめて、その対価として経済的な価値をもたらしてくれます。

どれだけ熱心に、時間をかけて働いたとしても、そこから商品やサービスが生み出され、そしてそれが顧客に受け入れられなければ、労働は一円の価値にも結びつかないのです。

 

パフォーマンスの高い人は、この本質を理解し、アウトプットに焦点をあてて仕事をします。
仕事の目的はアウトプット(顧客に受け入れられる価値)であり、労働はあくまでもその手段に過ぎない、ということを理解しています。

したがって、高いアウトプットを得られるならば、そのインプットはどのような形態や手段をであっても構わないと考えます。

労働の量には限界があります。「より高いアウトプットを得るためには、さらにどんな工夫や改善を図ることができるか」を常に考え、それを実行に移そうとする。これが「ビジネスパーソン」の思考パターンです。

 

インプットを目的とするか、アウトプットを目的とするか。

このたった一点の差が、仕事への臨み方や進め方を大きく隔てます。サラリーマンとビジネスパーソンは、仕事への意識や行動に、次の様な差が現れます。

サラリーマン

  • 言われたことしかやらない
  • 労働力を提供する
  • お金(生活)のために働く
  • 賃金は与えられるもの

ビジネスパーソン

  • 自分で考え、行動する
  • 新たな価値を生み出し、提供する
  • 自分と周囲の人々の幸せのために働く
  • 賃金は自分で稼ぐもの

 

「労働は手段であり、労働そのものから経済的な価値が生まれるわけではない」
「経済的な価値は、顧客に受け入れられて、はじめて生み出される」
「顧客に受け入れられる価値を生みだせるよう、労働の進め方を常に改善し続ける」

 

これがビジネスの本質であり、ビジネスパーソンの思考だと私は考えます。

そして、一人でも多くの働き手が、サラリーマン思考からビジネスパーソン思考へと変わっていくことが、きっと少子高齢化・人口減少という大きな社会課題に立ち向かう、強力なエネルギーへとなることでしょう。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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