キャリア
2025.1.29
目次
独立や起業と聞くと、「自ら考えて行動できるなら、誰もが会社を飛び出して成功するのでは」と考える方がいるかもしれません。しかし、私は必ずしも全員が独立すべきだとは思っていません。実際には、組織に属してこそ活躍できる方もたくさんいますし、そのほうが合っているケースも多いのです。
私は現在、中小企業診断士として企業研修やコンサルティングを行っており、独立して4年目になります。ありがたいことに何とかうまくやれていますが、同じように独立した仲間を見ていると、成功する人もいれば組織に戻る人もいて、結果はさまざまだと実感しています。
ここでは、独立しようと考えるときに、少なくとも「このタイプに当てはまるなら会社に残ったほうがいいかもしれない」と思う5つの要素をお伝えします。
最初に挙げたいのは「夢だけを見ている」タイプです。ここで言う“夢”とは、ただ漠然と「独立すれば成功するに違いない」と信じ込むことで、自分が本当にどのくらいの価値を持っているのかを冷静に把握していない状態を指します。
独立すると、それまで会社の看板で得られていた信用がすべて外れ、まさに個人そのものの力で勝負しなければなりません。例え名の知れた大企業でなくても、勤務先が長い歴史を持っているだけで一定の信頼は得られていたものです。
しかし、独立すると創業1年目・2年目として扱われるため、「本当にこの人は仕事を任せられるのか」と疑われてしまいます。だからこそ、会社員のうちに圧倒的な成果を出すなどして「自分なら確かにやっていける」と思えるレベルまで実績を積み上げておくことが重要です。単なる夢だけで踏み出すのではなく、自分の市場価値をしっかり見極めることが独立の第一歩になります。
2つ目は「孤独に耐えられない」という点です。独立すると、同僚や上司、部下など常に近くにいてくれる仲間がいなくなります。相談したり雑談したりというちょっとしたコミュニケーションが当たり前ではなくなり、仕事は基本的に自分ひとりで進めなければなりません。
私自身は一人で作業するほうが集中できるタイプだったので問題ありませんでしたが、コロナ禍でリモートワークが増えたとき、多くの方が「一人だとやる気が出ない」「集中できない」と戸惑われていました。独立後は忘年会や新年会も自分で企画しない限りありませんし、社内での雑談のような気軽な交流が欲しければ、積極的に自分からネットワークを作りに行く必要があります。
こうした環境に強いストレスを感じる方は、会社という組織のなかで働くほうが向いているかもしれません。
3つ目は「営業が嫌だ」という方です。起業してすぐに最も困りがちなのが「お客様不足」であり、営業を避けては通れません。専門性は高いのに営業ができず、結果的に十分な顧客を獲得できないまま廃業してしまうケースを、私も目にしてきました。
そもそも営業とは、お客様をだましたり強引に買わせる行為ではありません。自社の商品やサービスを本当に「お客様のためになる」と信じ、堂々と提案することが営業の本質です。そのためには、「会社の信頼」「商品・サービスの価値」「それを提供する自分自身」の3つに自信がないと、心からおすすめできません。
独立すれば会社の看板が外れるので、その分、自分と自分が扱うサービスへの自信が不可欠になります。私は「自分が提供する研修サービスを導入してもらえれば、絶対に相手の役に立つ」と思っているので、まったく後ろめたさなく営業できます。ここが苦痛にしか感じられないのであれば、やはり独立は厳しいかもしれません。
4つ目は「お金の管理ができない」人です。会社員であれば、成果が出ていようがいまいが、ほぼ毎月一定額の給与が振り込まれます。しかし独立すると、売上と経費を差し引いた残りがそのまま自分の収入となり、しかもその売上は安定しません。
私の事業の場合は季節変動が大きく、4~6月と9~12月に売上が集中し、1~3月や夏場に落ちる傾向があります。好調なときには投資に回したくなる気持ちが強まりますが、使いすぎて次の閑散期に生活が苦しくなることのないよう、帳簿をしっかりつけて冷静に判断する必要があります。
こうした計画性がないと、売上が安定しない時期の資金繰りに四苦八苦することになります。浪費癖がある方や、計画的に貯金するのが苦手な方は、まずはお金の管理スキルを磨くところから始めるべきです。
最後に、「夢とビジョンがない」ことが、実は一番大きな問題だと思います。夢だけを見てはいけないと言いましたが、それでも「自分は何のためにこの事業をやるのか」という確固たる目的や理想は必要です。
お金そのものを稼ぐ行為はあくまで手段であって、事業において本来の目的は「お客様に価値を提供する」ことにあるはずです。ところがビジョンがないと、とにかく売上や利益を上げることばかりに集中してしまい、結果的にお客様も経営者自身も不幸になりがちです。長く事業を続けていくためには、どんな形で世の中を良くしたいのか、どんな理想を実現したいのかを心に抱き続ける必要があります。
私自身も「失われた30年から抜け出し、時間やお金、心に余裕のある社会をつくりたい」という想いを胸に、目の前の受講者一人一人に全力で向き合っています。そうしたビジョンの純粋さこそが、最終的に事業の軸になっていくのです。
以上が、独立を考えるときに「当てはまるなら会社に残ったほうがいい」と思う5つのポイントです。人には得意不得意や向き不向きがありますし、組織のなかでこそ十分に力が発揮できる方も多くいらっしゃいます。
もし独立を視野に入れるなら、まずはここで挙げた5つの要素に自分が当てはまらないかをチェックしてみることをおすすめします。そして、どこかに心当たりがあるなら、足りない部分を補う努力をしたうえで独立へ踏み出すのが良いと思います。会社に残る道もあれば、独立する道もある。
そのどちらが自分に合っているのかを考えることが大切ではないでしょうか。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
神戸・大阪で人材育成・社員教育をお考えの経営者、管理職、人事担当者の方々。下記よりお気軽にお問い合わせください。(全国対応・オンライン対応も可能です)