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キャリア

2025.5.5

退職代行を使う前に考えてほしいこと

退職代行は便利。でも本当にそれでいい?

最近、退職代行を使う人がとても増えているそうです。自分に代わって、会社への退職の申し出や手続きをしてくれるので、「面倒なやり取りをしなくて済む」「嫌われずに辞められる」と考える人が多いのもよく分かります。

この記事を読んでいるあなたも、もしかすると「退職代行を使ったほうが楽かも」と思っているかもしれませんね。もちろん、私は「絶対に使うな」と言うつもりはありません。使った方がいいケースも確かにあります。

ただ、それでも本当にそれでいいのか?自分の言葉で伝えなくていいのか? そこだけは、ぜひ一度立ち止まって考えてほしいと思っています。

実際にあった、退職代行を使った新入社員の話

私は長年、新入社員研修を担当している会社があります。今年もそこで新入社員研修を担当したのですが、その人事の方から、去年入社した社員が辞めたという話を聞きました。当然、私は気になって「どうやって辞めたんですか?」と尋ねました。すると、人事の方はこう言いました。

「退職代行を使われたので、正直どういう理由で辞めたのか分からないんですよ」

この話を聞いたとき、私自身、とても複雑な気持ちになりました。10日以上も時間をかけて一緒に研修をしてきたので、思い入れもあります。きっと、直接一緒に働いてきた上司や同僚、そして人事担当者も、大きなショックを受けたはずです。

辞めるというだけでも寂しいものですが、さらに退職代行を使われたことで、「悲しい」を超えて「虚しい」という気持ちに変わっていくのです。

改めてお伝えします。 会社を辞めること自体を責めるつもりはありませんし、退職代行を使うことを完全に否定するつもりもありません。

 ただ、「それは本当に必要だったのか?」もう少しだけ、深く考えてほしかったなと思うのです。

退職代行が必要な場面も確かにある

退職代行がここまで広まった背景には、複数の理由があると考えられます。

一番大きいのは、ブラック企業やパワハラ体質の職場から自分を守るためです。たとえば、退職を申し出たら「家まで行くからな」と脅してくる上司がいたり、嫌がらせをされたり。

そんな場合、自分ひとりで辞める手続きなんてとてもできませんよね。こういう環境にいるなら、迷わず退職代行を使った方がいいと思います。

また、今は「環境の変化が激しい時代」とも言われています。ストレスで心の調子を崩してしまう人も増えていて、うつ病や適応障害になってしまうケースも珍しくありません。

精神的に追い詰められてしまったら、退職を自分で申し出ることすらとても大きな負担になります。そういうときは、退職代行を使うのも立派な選択です。

そして、もう一つ。最近の若い世代では「会社を辞める」ということに対するハードルが昔に比べて低くなっています。 「辞めたいな」「次行こうかな」と軽い気持ちで考える人も多くなり、SNSで退職代行の情報を見て、「あ、これ使えば楽じゃん」と気軽に使う人も増えています。

それでも「自分の口で伝える」意味を考えてみよう

ここまで読んでいただいた通り、退職代行を使った方がいい場面も確かにあります。 ですが、もし普通に話し合いができる会社で働いているなら、ぜひ一度、自分の言葉で退職を伝えることも考えてほしいのです。

理由はとてもシンプルです。 自分の口で伝えることは、あなた自身の成長にもつながるからです。 そして、後悔しないためにも大切な一歩になるからです。

退職代行を使うと生まれる3つの問題

ここからは、「退職代行を使った場合に生まれるリスク」についてお話ししていきます。退職代行を使うことで、あなたのキャリアにどんな影響があるのかを、ぜひ知っておいてください。まず、退職代行を使うことで起こる問題は、大きく3つあります。

1つ目は、こそこそ逃げる生き方になってしまうということ

退職代行を使って辞めると、会社側からは「本人が直接何も言わずに逃げた」と見られます。辞めた本人にとっては大したことではないかもしれません。でも、送り出す側にとっては、やはりショックが大きいのです。

「あの人は自分で責任を取れない人だったんだな」
「大事な場面で逃げてしまう人なんだな」

そんなふうに見られてしまいます。 そして今の時代、雇用が流動化しているので、数年後にどこかで元同僚や元上司に再会する可能性も十分あります。もしかすると、前の会社の人がお客様になることだってあるかもしれません。

そのときに、「代行を使って辞めた人だよね」と見られてしまったら・・・。信頼を取り戻すのは簡単ではありません。私自身は変な辞め方をしていないので、元の会社の人たちと普通に会って、今の仕事の話も堂々とできています。

でも、退職代行を使った場合、きっと顔を合わせるのが気まずくなり、逃げるような生き方になってしまうでしょう。 これが1つ目の問題です。

2つ目は、大事な場面で「自分で動けない人」になってしまうこと

退職という人生の大きな節目を、自分の口ではなく他人に任せてしまう。 この経験を一度してしまうと、「つらいこと、面倒なことがあったときに、自分で向き合わずに他人に任せる」という選択を取りやすくなってしまいます。

例えば、万引きの心理に似た話があります。 最初は怖かったのに、一度やるとハードルが下がり、次はもっと簡単にできてしまう。 そして、だんだん何も感じなくなっていく。 退職代行も似たようなもので、一度「面倒なことを他人に任せる」経験をしてしまうと、次も同じ選択を取りがちになるのです。

これからの人生で、大事な場面は何度も訪れます。 告白するとき、プロポーズするとき、転職の交渉をするとき。 そんなときに、自分の気持ちを自分の言葉で伝えられない人間になってしまったら、どうでしょうか。

勇気を出して自分で行動できる人と、他人に頼ってばかりの人では、成長スピードにも、成功できる可能性にも、圧倒的な差がつきます。 だからこそ、できる限り自分の意思で、しっかり行動できる力を養っておくことが大切なのです。

3つ目は、キャリアの幅が狭くなってしまうリスク

ここで、私自身の経験を少しお話しします。 私は新卒で人材派遣の会社に入社しました。最初に配属されたのは、飛び込み営業の部署でした。

これがかなりきつくて、毎週同じ会社に飛び込み訪問を繰り返す、精神的にもきつい仕事でした。 耐えきれず、入社して3ヶ月ほどたった頃に、1週間ほど休んでしまい、当時は本気で会社を辞めようと思いました。

人事に「もう会社を辞めたい」と申し出をしたところ、「辞めることはない。違う部署に異動しよう」と言ってもらい、デスクワークの部署に移ることができました。 そこで初めて、自分がパソコンを使ったデータ分析や資料作成に向いていることに気づきました。

もし、あのとき自分で相談もせずに「もう無理」と辞めてしまっていたら、自分の新しい適性に気づくチャンスを失っていたかもしれません。

キャリアとは、偶然の出会いによって広がることが多いのです。でも、すぐに辞めてしまったり、自分で環境を変える努力をせずに諦めてしまうと、その偶然のチャンスに出会うことができません。

特に20代・30代のうちは、できるだけたくさんの経験をして、「自分には何が向いているのか」を広げていくことがとても大事です。 退職代行を使ってすぐに辞めてしまうと、このチャンスを自ら狭めてしまうリスクがあるのです。

退職する前に「別の道」を考えてみる

ここまで読んでくださったあなたには、きっと伝わったと思います。 退職代行を使うことは簡単かもしれません。でも、それが本当に自分のためになるのかは、しっかり考えたほうが良いのです。

特に、ある程度規模の大きい会社に勤めている場合、今の仕事が合わないと感じたら、まずは会社の中で別の仕事をさせてもらえないか相談する、という方法もあります。実際、私自身も「営業がきつい」と感じたときに会社へ相談し、デスクワークに異動させてもらったことで、大きく道が開けました。

 このように、転職するよりもまず社内で活躍の場を変えるほうが、エネルギーも少なく、新しい可能性に出会える確率も高いのです。いきなり「辞める」と言わずに、まずは「今の会社で別のチャレンジができないか」を考えてみてください。

転職には思った以上にエネルギーがかかる

また、転職を繰り返すことで生まれるリスクについても触れておきます。転職するたびに、ゼロから人間関係を築き、会社のルールを覚え、場合によっては業界知識もイチから学び直さなければなりません。

 これは想像以上に大きな負担です。そして、頻繁な転職は履歴書にも影響します。「この人はすぐ辞めるのではないか」と採用担当者に思われ、選考に不利になるケースもあります。

もちろん、どうしても合わない環境からは離れるべきです。ですが、少しでも続けられる可能性があるなら、まずは今いる場所でできる限りの挑戦をしてみることをおすすめします。

転職を「逃げ場」ではなく、「ステップアップのための選択肢」として使えるようにするためにも、今いる会社での経験を大切にしてほしいのです。

自分の口で「伝える」ことが未来を変える

ここでもう一度、伝えたいことがあります。もし今、退職を考えているなら、できるだけ自分の言葉で伝える勇気を持ってください。もちろん、心身に大きな負担がかかっているときや、身の危険を感じるようなブラックな職場であれば、迷わず退職代行を使うべきです。

しかし、そうでないならば、たとえ緊張しても、不安があっても、自分で「辞めたいです」と伝えることに挑戦してほしいのです。なぜなら、それが将来のあなたの自信になるからです。

これからの人生でも、たくさんの大事な場面が訪れます。そのときに、「自分の言葉で伝える力」があるかないかは、とても大きな差になります。勇気を出して自分でけりをつける経験は、あなたの「生きる力」そのものを強くしてくれます。

それでも退職代行を使うか、自分で伝えるか

最後に、もう一度まとめます。退職代行を使った方がいいケースはあります。 たとえば、明らかにパワハラがある会社や、身の危険を感じる環境では、自分の身を守るために使ってください。

命や心の健康を守ることは最優先です。でも、普通に話し合える職場ならば、できる限り自分の言葉で辞意を伝えてほしいと思います。

それは、自分の成長のため。これからのキャリアをより広く、より豊かにしていくため。
そして、何より、未来の自分が誇れる選択をするためです。

退職はゴールではありません。新しいスタートです。 だからこそ、そのスタートを、自分自身の力で切ることが大切です。

このブログを読んで「それでも退職代行を使う」と決めたなら、それはそれでいいと思います。 でも、少しでも「やっぱり自分で伝えたい」と思ったなら、ぜひ勇気を出して一歩踏み出してみてください。

きっと、あなたの未来にとって、大きな意味のある経験になるはずです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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