長期的な「人生の目標」を見つけるために必要なこと

先週はメーカー企業での中堅社員研修でした。3日間連続の集合研修で、私とっても久しぶりの連泊出張。オンラインと異なり集合研修だと距離も近く、受講者お一人ずつと個別の話がしやすい上、3日間も接しているとさすがに顔と名前が一致してきます。

それぞれの業務内容や課題感も把握できるので、1日限りの研修に比べるとかなり具体的で実務的なアドバイスができます。効率を考えるとオンライン講座が優れていますが、効果性を考えるとやはり集合研修が良いですね。久々に濃密な時間、手応えを感じる仕事をさせていただきました。

さて、研修の最後日に、総仕上げとして数年先を見据えた長期的な目標を考えていただき、それをグループ内で発表いただく演習を行いました。中には、なかなか長期的な目標が思い浮かばず、3年後やそれ以降の目標を設定した他の受講者と比べて自信を失くしている方もいましたが、今すぐ長期的な目標が思いつかなくても別に構わないとお伝えしました。

長期的な課題や目標は、結果として「見えるようになる」ものです。長期目標が思い浮かばない時に、無理やり捻り出そうとしても良い目標は立てられません。その場合、まずは目の前の目標を立て、それをクリアすることが有効です。

小さな目標をクリアすることで、大きな目標が見えてくる

キャリアデザインの講座や自己啓発系の講座では、しばしば「人生の目標を立てよう」と言われます。確かに、実りある人生を送るためには、人生の目標を定め、そこに向けて職業経験や能力開発を計画的に進めていけるのが理想ではあります。とはいえ、必ずしも誰もが人生の目標を容易に立てられるわけではありません。

人生の目標どころか、10年後、5年後、3年後の目標ですら決めるのが難しいと思う方もいらっしゃることでしょう。将来の見通しなんて立たないし、今の生活を維持するだけでも精一杯。先のことなんて考えられない。こう思う方も少なくないでしょうし、それは決しておかしなことではありません。

かくいう私自身、34歳までは先のことなんて何も考えていませんでした。公私ともに充実した生活を送れていて、決して欲がないわけではないけど、これといって大きな不満があるわけではない。いまの生活がこのまま続けば良いのにと思っていたくらいです。

お金のことや結婚後の生活、趣味としてやっていたダンスをいつまで続けるかなどについては、少しは考えることがあったかもしれませんが、仕事でどんなことをやっていくかなど考えてもいませんでした。いま勤めている会社で、言い渡された人事発令に従って、与えられた仕事をする。それが定年まで続くものだと思っていましたし、よもや会社を辞めることなど考えもしませんでした。そんな自分が、コンサルタントに転身し、独立までしてしまうのだから人生はわからないものです。

転勤先の大阪から東京に戻り、人事部門から営業企画部門に戻るなど、環境の変化があって結果的に見えた道であるため、偶然といえば偶然かもしれません。とは言え、振り返ってみれば、何の唐突もなく突然見えた道かと言えば、決してそうではないような気もします。

必ずしも数年先を見据えていたわけではありませんが、目の前の仕事に対しては主体的に取り組んでいました。与えられた仕事とはいえ、直面する課題をどのように解決するかは自分なりに考え、自ら目標を立ててそれを一つひとつクリアしていったように思います。

コンサルになる前の私のキャリアは人事異動が多く、総務、人事、営業部門の統計・分析、販促企画、情報システム、物流など職務内容が転々と変わっていました。その都度新しいことを覚えなければならず、実務以外にも前提となる知識を勉強する必要がありました。慣れない仕事を成し遂げることに、多少なりとも努力をしてきたように思います。

そして、仕事における目標というのは、一度達成したらそれで終わりというものではありません。むしろ、達成するとより高い水準の別の目標が現れるものです。目標を一つひとつクリアしていくことで、視座が高くなり、物事を見る視野が広がっていくのです。

つまり、小さな目標達成を積み重ねることで、やがて大きな目標が見えるようになってくるのです。したがって、3年後、5年後、10年後といった長期視点での目標が立てられないという場合には、むしろ目の前の仕事や今の環境の中でできることを目標に掲げ、まずはその達成に集中してみることが有効です。それを何度も繰り返していくうちに、やがて成長した自分が、将来の目標を見つけてくれるようになることでしょう。

目標を立てるためには自己効力感が必要

小さな目標達成を積み重ねて、大きな目標を見つける。これができるためには、ひとつ条件があります。それは高い自己効力感を持っていることです。自己効力感とは、自分の能力に対する自己評価のことです。つまり、「自分ならできる」「なんとかなりそうだ」という感覚のことであり、これが高いことで物事に意欲的に挑戦できるようになります。

難易度の大小を問わず、何かしらの目標を立ててそれに挑むためには、「頑張ればできそうだ」という感触を持っていることが欠かせません。現実離れした目標や、現在の自分からは遠くかけ離れた目標では「どうせ無理だろう」と気持ちが負けてしまい、目標に挑む気力を失ってしまいます。

もちろん、容易に達成できる程度の目標では、努力や工夫が引き出せないという側面もあります。それは目標ではなく、ただの「予定」です。それをクリアしたからといって、経験としてその後に活かせたり、能力が向上したりすることは稀です。現在の自分から考えたら高いと思える水準にあるのが目標であり、それに挑むことで自分自身が変化、成長していくのです。

たとえ今すぐにはできなくても、目標に向かって努力を重ねることを前提とした上で、「最終的にはきっとできる」という自分自身への信頼があって、はじめて前向きに、意欲的に物事へ取り組むことができます。そのためにも、「自分ならばきっとできそうだ」という自己効力感が必要です。

小さな目標からスタートして、一つひとつクリアして達成体験を積み重ねていく。自分の力で何かを成し遂げたという体験が、自己効力感を高めていきます。そして、自己効力感が高くなることで、それまでの自分には見えなかった「次のステージ」が見えてくるようになるのです。

いま、目の前にある環境で「成し遂げたいこと」を決める

将来的に何を目指し、どこへ向かうのか。考えてもその答えが見つからない時には、まずは目の前の目標を立て、それを達成することに集中してみましょう。

自分がいま身を置いている環境の中で、自分にできることを探して、今よりもちょっとだけ上を目指す。小さな目標を立てて、まずはそれをクリアする。達成体験を積み重ねていくうちに、自分の器が少しずつ大きくなり、今までは見えなかったものが見えるようになります。そしてその先に、自分が生涯を通じて成し遂げたいこと、なりたい自分の姿が現れるのです。

人生は一日一日の積み重ねでできています。目の前の一日をどのように過ごすかによって、自分の将来が決まるのです。日々の仕事や生活の中で小さな目標を立て、それを一つひとつクリアしていくことで、やがて然るべきタイミングで、自分が本当にやりたいこと、なりたい姿が見えるようになることでしょう。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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