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日記

2025.5.9

経営コンサルタントを10年やって思うこと

2025年5月7日、私は経営コンサルタントとして丸10年を迎えました。

10年前の2015年5月7日、株式会社日本コンサルタントグループにコンサルタントとして採用されたのが出発点です。その後、5年9ヶ月勤務し、2021年2月に独立。同年7月に神戸に移住し、8月には会社を設立しました。現在に至るまで、本当に多種多様な仕事を経験させていただきました。

私が歩んだ10年の軌跡

調査・分析・レポート作成といった「ザ・コンサル」的な仕事から、制度設計、業務改善、採用支援、会議のファシリテーション、1on1の面談支援まで、幅広い仕事に携わらせていただきました。

中でも一番多かったのは「講師業」です。講演会・セミナー・企業研修の講師として、多くの現場に登壇してきました。

  • 担当した案件数:786件
  • 登壇日数:929日
  • 延べ受講者数:15,632名

目標は「10年で1000日登壇」でしたが、最初の1〜2年は仕事が少なかったこともあり、その後追い上げるも届かなかったのが悔しいところです。それでも、これだけ多くの方の前で話す機会を得られたことに、深く感謝しています。

登壇場面を作っていただいた経営者の方々、管理職の方々、人事部門の方々、パートナー企業の方々、そして何より受講者の皆さま。この場を借りて、改めて心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

10年間で感じた6つの本音

今回は、10周年記念として「この10年で強く感じたこと」を6つのポイントにまとめてみました。自分自身の振り返りではありますが、職業観・仕事観として何かヒントになる部分があれば嬉しく思います。

1. コンサルタントもピンからキリまでいる

いきなり刺激的な見出しで恐縮ですが、これはこの10年で痛感したことの一つです。

「コンサルタント=優秀な人」というイメージを持つ方も多いでしょう。私自身、未経験からこの業界に飛び込んだとき、「コンサルタントってすごい人たちの集まりなんだろうな」と思っていました。

しかし、実際に中に入ってみると・・・当然ながら、

  • 優秀な人
  • 普通の人
  • そうでもない人

が、どの業界にもいるのと同じように、コンサル業界にも存在していました。

名乗れば誰でも「コンサルタント」

そもそもコンサルタントという肩書きに資格は不要です。名刺に「〇〇コンサルタント」と書いてしまえば、それで通ってしまう。つまり「言ったもん勝ち」なんです。

もちろん、実力を裏付けるものとして、中小企業診断士の資格やMBAなどの学位はあります。けれど、それらを持っているからといって、必ずしも現場での実力があるわけではありません。

逆に、資格や肩書きがなくても、地道な経験を積み重ねてきた方には、本当に実力があるケースも多い。要は「実力=資格や経歴」ではないということです。だからこそ、クライアントがコンサルタントを選ぶときには、響きや肩書きだけで判断せず、「人となり」や「仕事ぶり」をしっかり見て欲しいなと感じます。

2. 仕事があるのは当たり前じゃない

これは特に最初の1〜2年、身にしみて感じた現実です。私がこの業界に入った当初は、実績ゼロの新人。業界経験もなく、実績も人脈もない状態。当然ながら、仕事なんて簡単には回ってきませんでした。

最初の1年はほぼ待機

入社して最初の1年は、ほとんど仕事がありませんでした。

  • 会議室で一人、三脚にカメラを立てて自分の話し方を録画
  • それを見直して修正
  • 空いている時間に企画書を書き続ける

ひたすら、地味な練習と準備の毎日でした。その後、2年目になった頃に、私のOJT担当だった先輩が部門長に昇進され、彼のやっていた仕事を少しずつ分けてもらえるようになりました。それでもスケジュールはスカスカ。給料に見合う仕事ができていない「給料泥棒」ではないかと、自分の存在価値に疑問を抱く時間を過ごしました。

「自分は何の役にも立っていない」

そんな自己否定感に苛まれながら、早く仕事がしたいと切に願っていました。

与えられた仕事は選ばない

だからこそ、「どんな案件でもとにかく受ける。選り好みはしない。」これが当時の私のスタンスでした。

  • 遠方の案件でも断らない
  • 手間がかかるものも引き受ける
  • 単価が低くてもありがたく引き受ける

「先輩が断った案件の寄せ集め」のような内容でしたが、それでも一つ一つ必死にこなしました。

そして気づいたのです。たとえ一度きりの案件でも、やったことがあれば「経験者」として名乗れる。二度目の仕事が来たとき、「やったことありますよ」と堂々と言える。この積み重ねが、やがて大きな強みに変わっていくのだと。

3. まず引き受けて、それから何とかする

ただでさえ仕事が少ない。仕事を選んでいる状況じゃない。巡ってきた機会はすべてものにする。そういう心構えでしたので、「自信がないから断る」という選択肢は、最初から存在しませんでした。

「やるか、やらないか。」それを迷っている時点で「できる可能性がある」ということです。そしてそのチャンスを逃せば、次はもう来ないかもしれないからです。

迷ったら「やる」を選ぶ

依頼された仕事が、たとえ自分の得意分野でなくても、それどころか聞いたことがない内容でも、「できます」と答える以外の選択肢はありませんでした。実際は「できるかどうか分からない」にもかかわらずです。

でも、だからこそ必死になります。

  • 方法を知っている人に教えを請う
  • 専門書を買って徹底的に勉強する
  • 時にはお金を払って、外部の力を借りる

そうやって「何とかしてきた」経験の積み重ねが、今の自分を作ってくれました。「やったことがある」と言えるようになることが、どれだけ大きな資産になるか。 だからこそ、「できるかどうか」ではなく「やる前提」で考える。

この思考回路が身についたことが、この10年での私の大きな財産だと思っています。

チャンスは準備ができてから来るわけではない

「後からなんとかするなんて無責任だ」「もう少し準備してから挑戦したい」という声も聞こえてきそうですが、現実にはそんなに都合よく順番は回ってきません。必ずしも、準備が整ってからチャンスが来るわけではないのです。準備ができていようが、できていまいが、チャンスは突然やってきます。

まずはチャンスが来る。そのチャンスを掴めるかどうかで、その先の未来が変わる。だから私は、「準備万端になったら」ではなく「チャンスが来たらまず受ける」。その後で必死に準備すればいい、という姿勢を貫いてきました。

もちろん、物理的にどうしても無理な案件はお断りします。日程が埋まっているなど、明らかに無理なものは無理なので、それはさすがにお断りをせざるを得ません。しかし、物理的には対応可能で、難易度だけが問題である場合は、迷わず「やる方」を選ぶのです。

「できるかどうか分からない」と迷うということは、できないかもしれないが、できるかもしれないということです。つまり、できる可能性があることの裏返し。ならば、やる価値は十分にあるわけです。そして、それを乗り越えようとするプロセスが自分を成長させ、加えて実績も積めることになるのです。

4. 相手との前提知識を揃えるのが礼儀

経営コンサルタントとして多くの業種と接してきましたが、そこで直面した大きな壁が「業界知識」でした。私の仕事は、特定の業界に特化するのではなく、人材育成や経営全般のテーマが多いため、製造業・建設業・医療・介護・不動産・物流・金融・保険など、さまざまな分野のお客様と向き合う必要があります。

専門用語がわからないと、会話にならない

当たり前のことですが、業界特有の用語や慣習がわからなければ、相手の話を理解したり、相手のニーズを把握したりすることすら叶いません。そこで私がやってきたのは、新しいご縁ができるたびに「業界の基本知識を身につける」ことでした。

  • 物流業界のしくみ
  • 旅行業界の基本
  • 介護ビジネスの構造

など、業界知識を学ぶ書籍を書き、顧客の話を聞くための知識をゼロから学ぶ。つまり、コンサルタントとして相手と接するだけの素地を整えるとこから、仕事がはじまるのです。

具体的な行動は「業界知識を得る」ことですが、これが本質的に示すものは「相手を理解しようと務める」ことです。

知識よりも理解しようとする姿勢が信頼を生む

もちろん、自分が実際に体験していない業界のことを完璧に理解するなんて不可能です。ただ、それでも「相手の視点で物事を見ようとする」その姿勢があるかどうかで、信頼感は大きく変わります。

逆に、売り手の都合だけを押し付けるようなアプローチでは、絶対に相手に響きません。たとえば私のもとにも、毎日のように営業メールやDMが届きますが、

  • 明らかに自社のことを調べていない
  • 汎用的なテンプレート文
  • 明らかに不要なサービスの売り込み

こうしたメッセージに、こちらが興味を持つわけがありません。一方で、「ちゃんと見てくれているな」「うちの課題を理解しようとしてくれているな」と感じるものには、つい目を通してしまう。相手のことを知ろうとする努力こそが、「仕事のスタートライン」だと私は思います。

5. 知識や技術よりも「想い」が大切

「なんだ、きれいごとじゃないか」と思われるかもしれません。でも、10年間、コンサルティングや研修の現場で人に接してきた中で、確信していることがあります。それは、「人を動かすのは理屈ではなく熱」だということです。

情熱は伝わる

私自身、知識も技術も特別優れているとは思っていません。でも、「目の前の人の成長や成功を心から願う気持ち」だけは、誰にも負けないという自負があります。

これは、セミナーや研修など、人前に立つ仕事では特に重要です。どれだけ論理的で正しい話をしても、そこに熱がなければ、相手の心には届きません。逆に、少々たどたどしくても、情熱を込めて話せば、伝わるものがあります。

私はこれまで900日以上、講師として現場に立ってきましたが、本当に効果が出たと感じる研修は、いつも「心が動いた」瞬間に生まれていました。

スマートよりも、真摯であれ

初期のころの私は、うまく話そう、綺麗に進行しようとばかり考えていました。でも、それでは受講者の反応はイマイチ。退屈そうな表情が並ぶことも珍しくありませんでした。ところが、自分の言葉で、自分の思いを乗せて話すようになってから、明らかに空気が変わったのです。

  • 相手の反応を見ながら、言葉を選び
  • 本当に伝えたいことを、自分の声で届ける

その結果、参加者の反応が変わり、研修後の行動変容も起きるようになってきました。結局、伝えるスキルよりも、「伝えたいと思う気持ち」が原点であり、最大の武器なのだと思います。

6. 「先生」になってはいけない

最後に、もっとも大事にしていることをお伝えします。それは、「自分を偉いと思わない」ということです。お客様や受講者の方から「小松先生」と呼んでいただくことがあります。
でも、私はなるべく「先生とは呼ばないでください」とお願いしています。

もちろん、呼び名をどうこう言いたいわけではありません。大事なのは、「先生」という言葉に甘えてしまう自分を戒めるためです。「先生」と呼ばれることに慣れると、つい自分が偉くなったような錯覚に陥ってしまいます。まるで、自分が上で、相手が下であるかのような、上下関係があるかのようにです。

でも、それは絶対に違います。コンサルタントとクライアントの関係、講師と受講者の関係に上下はありません。あくまでも対等な中で、役割が違うだけなのです。

コンサルタントは「役割」にすぎない

私は経営コンサルタントという仕事に誇りを持っています。ですが、それはあくまで社会にある無数の職業の1つでしかありません。製造も、建設も、福祉・介護も、物流も、接客も、清掃も、あらゆる仕事はみんな、必ず誰かの役に立っています。

職業に貴賤はありません。役割が違うだけです。だから、コンサルタントは偉いわけではまったくありません。ただの役割です。

どの職業にも尊さがあります。だからこそ、私はどんな仕事の方に対しても敬意を持ちたいし、同じように接していたいと思っています。「先生」として持ち上げられて、その気になってしまった瞬間から、 人としても、仕事人としても、下り坂が始まる。その怖さを、私は常に心のどこかで意識しています。

コンサルタントは「先生」ではありません。顧客の成長と成功を心から願い、そのための情報提供や支援を行うことは、役割に基づく活動なのです。

おわりに:11年目も、謙虚に、熱く

というわけで、今回は「経営コンサルタントを10年やって思うこと」と題し、私自身の10年間の仕事を通じて感じたことを6つのポイントに分けてお話してきました。

  • コンサルタントにもピンキリがある
  • 仕事があるのは当たり前ではない
  • まず引き受けて、そこから考える
  • 前提知識を揃えるのが礼儀
  • 知識や技術よりも「想い」が大切
  • 「先生」になってはいけない

この10年、たくさんの人に支えられ、育てていただきました。そしてこれからも、まだまだ学び、挑戦し、より多くの方々に貢献していきたいと思っています。11年目の今年も、初心を忘れず、情熱を持って仕事に取り組んでまいります。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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