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マネジメント

2025.6.29

【部下を持ったら一番最初にやるべきこと】自分を封印する/仕事を整理する/エンパワーメント型人材育成

優秀な人ほど、マネジメントに苦戦する

長年仕事を頑張り、結果を出してきた方が晴れて管理職・監督職に昇進するというのは、とても喜ばしいことです。

これまでの成果が認められた証であり、今後はチームを率いて、より大きな目標を目指すリーダーとなるわけです。そうして新たな責任感とやる気に満ちて、「よし、これからは管理職としてチームを引っ張っていくぞ!」と気合いを入れることでしょう。ところが、意気込んでマネジメントを始めてみると、現実は想像以上に厳しいものです。

部下がなかなか自発的に動かない、必要最低限の仕事しかしない。細かく教えないと動いてくれない。ついには「もういい、自分がやる」と、リーダー自身が仕事を巻き取ってしまう。そうすると結果的に自分の業務量だけが増え、心身ともに疲弊してしまいます。

「こんなはずじゃなかった」「自分は仕事ができるから昇進したはずなのに、なぜうまくいかないのだろう」と自信を失う方も少なくありません。しかし、これはあなたが無能だからではないのです。むしろ、あなたが優秀だからこそマネジメントがうまくいかない。その残酷な現実が、最初に立ちはだかる壁なのです。

優秀な人ほどダメ上司になりやすい理由

この構造には明確な理由があります。仕事ができる人は、つい「自分と同じようにやればうまくいく」と思ってしまうからです。これは私自身の経験でもあり、まさに痛感したことでもあります。

私が初めて部下を持ったのは26歳の時。当時は派遣会社の事務部門で、データ分析やレポート作成などを担当していました。昇進し、年上の契約社員や新卒社員を含む5人チームのマネージャーとなった私は、当然ながら自信に満ちていました。

ところが、いざマネジメントを始めると、現場はギスギスし、部下は私と口もききたがらず、前任のマネージャーに相談する始末。何一つうまくいきませんでした。原因は明確です。私は「俺が一番仕事ができるのだから、俺と同じようにやれ」というスタイルで接していたのです。つまり、マネージャーとプレイヤーの違いを全く理解していなかったのです。これではうまくいくはずがありません。

自分を封印する

ここで覚えておきたいのは、管理職・監督職とは「プレイヤー(選手)」ではなく「監督」であるという点です。サッカーで言えば、監督はピッチの外から試合を見守り、采配を振るう役割。実際に走り回るのは選手たちです。

しかし、多くの新任管理職がやってしまいがちなのが、「自分が出場して試合をひっくり返そうとする」ことです。実際に自分が手を動かせば、うまくいく場面もあるかもしれません。しかし、それではチームが育ちませんし、監督としての役割を放棄することになります。

私もあるとき、仕事が忙しすぎてどうにもならず、ある方に相談したことがあります。その時に言われたのが「足を折ってやろうか」という衝撃の言葉でした。もちろん本気で言っているわけではありませんが、「お前は動くな、監督に徹しろ」という強いメッセージでした。自分が動けてしまうからこそ動いてしまい、部下の成長を阻害してしまう。この負のサイクルを断ち切るには、「自分を封印する」という覚悟が必要なのです。

仕事を分類する

とはいえ、現実にはプレイングマネージャーが大多数を占めています。つまり、自分の仕事をしながら部下の管理もするという二重の役割を担っているのです。そこで必要なのが、仕事の分類です。まず自分の全ての業務を洗い出し、以下の2軸で分類します。

  • 「権限がないとできないかどうか」
  • 「スキルや経験が必要かどうか」

この2軸を使って、次の4つの象限に仕事を分類します。

  1. 権限も必要、スキル・経験も必要 → 自分でやる
  2. 権限は不要、スキル・経験が必要 → 任せる(成長させる)
  3. 権限は必要、スキル・経験は不要 → 権限移譲して任せる
  4. 権限もスキル・経験も不要 → 自動化・外注・効率化

このように仕事を見える化すると、「どの業務を手放せるのか」「どの業務を誰に任せるのか」が明確になります。例えば、スキルは必要だが権限は不要な業務であれば、早いうちから部下に任せて経験を積んでもらう必要があります。失敗することもありますが、それこそが成長の機会なのです。

また、権限が必要な仕事であっても、その権限を移譲すれば部下に任せることができます。自分のポジションを一時的にシェアし、「責任は自分が持つ」と明言することで、部下は自信を持ってチャレンジできるようになります。

部下を育てる「エンパワーメント」の考え方

仕事を任せるだけでは、部下は育ちません。大切なのは、「エンパワーメント(Empowerment)」という考え方です。

エンパワーメントとは、単に仕事を任せるだけでなく、「力を授ける」ことを意味します。具体的には、次のようなものを部下に授けます。

  • 権限
  • 知識・スキル
  • 経験
  • 必要なリソース(人・予算・情報など)

これによって、部下は自信を持って動けるようになり、結果として成長していくのです。

エンパワーメントの6ステップ

エンパワーメントを実行するには、次の6つのステップがあります。

1.見本を見せる(モデリング)

まずはリーダー自らが「こうやるんだよ」という完成イメージを示します。モデルがなければ、部下はどう動けばいいか分かりません。ただ口頭で説明するだけでなく、実際のやり方や判断のポイントまで見せることが大切です。見て覚える、真似してみるという工程を通じて、部下に「自分にもできそうだ」というイメージを持たせることができます。

2.部分的に任せる

いきなりすべてを任せるのではなく、まずは工程の10〜20%といった簡単な部分から任せていきます。これにより、失敗のリスクを最小限に抑えながら、成功体験を積ませることができます。部下にとっては「やってみて、できた」という達成感が自信となり、次の工程へのステップアップにつながります。最初から完璧を求めず、小さな成功を積み重ねる姿勢が大切です。

3.環境を整えて任せる

マニュアルやチェックリストを整備し、部下が自力で完結できる状態を作った上で、全面的に任せていきます。ただ任せるのではなく、「どうすれば一人でやり切れるか?」という視点で仕組みを整えることが重要です。必要な情報が整っているか、手順は明確か、困った時にどうすればよいか――そうした点を事前にサポートしておくことで、任された側も安心してチャレンジできます。

4.本人の思考を言語化させる

失敗が起きた場合でも、感情的に指摘するのではなく、1on1で丁寧に問いかけます。「どこでつまずいた?」「どういう意図で行動した?」といった問いにより、本人の思考を引き出します。重要なのは、結果ではなくプロセスに目を向けることです。思考の過程を可視化することで、何が足りなかったのか、次はどうすべきかを本人が自覚できるようになっていきます。

5.内省の促進


任せた後も放置せず、継続的にフィードバックを行い、思考と行動のズレを修正するプロセスを支援します。これにより、自分で考え、自分で動く力が身についていきます。特に初期段階では、フィードバックの頻度を高めることで、迷いや不安を取り除くことができます。上司からの問いかけや振り返りの場を通じて、部下は自分の進捗や改善点を定期的に認識できるようになります。

6.挑戦の範囲を広げていく

ある程度安定して任せられるようになったら、より難易度の高い仕事や新しい課題を与えていきます。こうして任せる範囲がどんどん広がっていけば、部下もチームも大きく成長していきます。成長を実感できる経験を重ねることで、部下は「次の役割にチャレンジしてみたい」と思えるようになります。挑戦の機会を意図的に設計し、成功だけでなく失敗からの学びも支援する姿勢が、さらなる飛躍を支えていきます。

まとめ:管理職に求められる本当の仕事とは

今回は、「部下を持ったら最初にやるべき3つのこと」というテーマで、自分を封印する、仕事を分類する、部下を育てるという3つのステップをご紹介しました。

仕事ができる人ほど、「自分でやった方が早い」と思ってしまいがちです。しかし、それではチームが育たず、いずれ自分も潰れてしまいます。そうならないためには、まず自分の意識を切り替え、仕事を構造的に捉え直すこと。そして、長期的な視点で部下を育て、任せていく覚悟が求められるのです。

このプロセスは、決して一朝一夕で完結するものではありません。しかし、時間をかけて地道に積み重ねていけば、間違いなくチームは強くなっていきます。自ら考え行動する自律型人材が増えていくことは、結果として管理職自身の成長にもつながり、組織全体の可能性を押し広げてくれるでしょう。

今回の内容が、チーム運営に悩むすべての管理職の方にとって、何らかのヒントとなれば幸いです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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