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マネジメント

2025.8.9

計画の本質〜「こんなはずじゃなかった」という結果を防ぐために〜

「こんなはずじゃなかった」の正体を考える

ビジネスシーンに限らず、人生のさまざまな場面で誰もが一度は「こんなはずじゃなかった」と口にした経験があるのではないでしょうか。

悪い結果や思い通りにならないことが起きたとき、人はつい「予想外だった」と言いたくなります。ですが、その言葉を口にするならば、併せて考えなければならないことがあります。

「では、どんなはずだったのか?」

「こんなはずじゃなかった」と嘆くのには2つのパターンがあります。一つは、明確な計画や仮説があって、その通りに進めたものの結果が想定と異なった場合。この場合、どこを見誤ったのか、何が想定外だったのかを振り返ることで、次回以降の改善につなげることができます。

しかし、もう一つは、何も考えずに場当たり的に行動した結果、芳しくない結果を得た場合です。「こんなはずじゃなかった」と言いながら、実際には「どんなはずだったのか」を考えていないので、「こんなはず」も何もないはずなのです。

この現象は、ビジネスの世界でも広く見られます。たとえば、今期の売上目標はいくらか。どの顧客から、どれくらい売上を立てる販売計画なのか。どの商材を戦略的に売っていくのか。見込が足りない分は、どのように新規開拓をしていくのか。

こうした具体的なシナリオがほとんどないまま、「今年は売上が下がった」「思ったように利益が出なかった」と嘆く方が少なくありません。これは、天運に身を委ねておきながら、結果に不平不満を述べているに過ぎません。

現状維持ですら努力が必要な時代

市場環境は年々厳しさを増しています。今までと同じことを同じようにやっているだけでは、前年と同じ結果を出すことはどんどん難しくなっています。

現状に多少の努力を加えることでやっと現状維持ができる、というのが実態です。事業をさらに成長させたい、売上を伸ばしたいと考えるなら、従来のやり方に加えて、さらに大きな努力や工夫、挑戦が求められます。

しかし、その現実を実感できないのは、自分自身が「どうやって売上を作っていくのか」「どこを伸ばすべきか」を明確にイメージできていないからです。

ここで重要になってくるのが「計画」です。

計画とは未来の問題を解決するためのもの

Intel(インテル)社を創業したメンバーの一人であるアンドリュー・グローヴ氏が、著書『High Output Management』で記した一説が、見事に計画の本質を表しています。

今日のギャップは過去のいくつかの時点で計画したときの失敗を表している。

今日の問題を改めるのに必要な意思決定に集中することを強いられるのは、比喩的に言えば、車のガソリンが切れてしまって、慌てておたおた走り回るようなものだ。早めに満タンにしておくべきだったことは明らかである。

このような運命に陥るのを避けるために、計画するときに回答しなければならない 問いがあることを思い出そう。

それは”明日”の問題を解決するために、”今日”何をなすべきかについてである。​

もちろん、これはものの例えです。車のガソリンに限らず、あらゆるものに通用する考えであり、時間を延ばして応用することもできます。

来週の問題を解決するために、今週中に。

来月の問題を解決するために、今月中に。

来年の問題を解決するために、今年中に。

3年後、5年後、10年後、私の人生はこんなはずじゃなかった、というようにならないために、今のうちに何をしておくか。

これを考えることが計画です。

個人のキャリアを考えるにも、組織としてビジネスの計画を考えるにも、「どんなはずだったのか」を思い描き、そのために何を、どこまで、いつまでに考えることで、自分の希望を実現に近づけることができるのです。

理念や価値観と数字の現実

会社や事業を立ち上げるとき、誰しも「実現したい夢や思い」があるはずです。それを叶えるためにビジネスを始める、というのが表向きの理由でしょう。もちろんそれも本心ですが、実際のところ「稼ぎたい」という本音もあるでしょう。

しかし、「自分はお金が欲しいです」と公言するだけの人のサービスを、お客様は積極的に選んでくれるでしょうか。やはり世の中の役に立つもの、何らかの価値を感じられるものだからこそ、お客様や取引先は共感し、取引をしたい、一緒にビジネスをしたいと考えるのです。そのため、会社の「理念」や「価値観」は非常に大切です。

ただし、それだけでは現実は動きません。現時点でどんな状況にあり、何をやっていくべきか、最終的にはどの程度の成果(売上や利益)を目指すのか。計画には、理想と現実、両方を盛り込んでいく必要があります。

銀行や金融機関から融資を受ける際も、必ず事業計画の提出を求められます。「この人は本当に返済できるのか?」「どのようなビジョンと具体的な計画を持っているのか?」が厳しくチェックされるのです。数字や論理に裏打ちされた計画があってこそ、相手は信頼してお金を貸してくれるのです。

計画の甘さが招く「こんなはずじゃなかった」

私は中小企業診断士として、創業セミナーや相談会に足を運ぶこともあります。そこで実際にお会いする「これから事業を始めたい」と相談に来る人たちの中には、驚くほど「何も考えていない」方も見受けられます。

たとえば、「初年度の売上は1,000万円を見込んでいます」と話す方に、「どうやってその売上を達成するつもりなのか」と尋ねると、「Instagramでいっぱい宣伝します」と返ってくるのです。「いまフォロワーさんは何人ですか」と問うと、「今はまだ10人です。でも、事業を始めたら増えていきます。」と、本人は真面目に答えます。

もちろん、これからSNSを頑張って投稿していけば、10人のフォロワーが1,000人になる可能性はゼロではありません。しかし、仮にフォロワーが1,000人になったとしても、その全員が自分の商品を買ってくれる保証はありませんし、全員が1万円ずつ払ってくれるわけでもありません。現実はそんなに甘くはないのです。

計画が楽観的すぎたり、現実から目を背けてしまうことで、結局「こんなはずじゃなかった」という結果に陥ってしまいます。だからこそ、目標に向かってどれだけシビアに、地に足をつけて考え抜けるかが問われるのです。

具体的な計画こそが未来を変える

本当の意味で「計画を立てる」とは、ただ数字やスローガンを掲げることではありません。理想や夢だけでなく、現実的な数字や行動計画を徹底的に洗い出し、「どこにリスクがあるのか」「どこに改善の余地があるのか」を細かく検討していくことが求められます。

そして、将来の「こんなはずじゃなかった」を防ぐには、「今この瞬間にできること」に目を向けることです。1年後、3年後、5年後、どんな未来を実現したいのか、そのためには今日・今月・今年、どんな準備が必要なのかを一つひとつ考え、計画に落とし込む。それが計画の本質です。

また、計画は一度立てて終わりではありません。実際の進捗や結果に応じて見直し、修正していく柔軟さも欠かせません。予測不能な事態や環境の変化があったとしても、元から何も考えていなかった人と、計画を立てていた人の差は歴然です。環境や状況の変化に応じて、臨機応変に対する。そのためのベースがあるか/ないかが、「こんなはずではなかった」の回避に繋がるのです。

まとめ:計画の本質とは何か

「こんなはずじゃなかった」という後悔を防ぐためには、現実をしっかり見つめ、シビアに計画を立てることが大切です。理念やビジョン、価値観と併せて、現実的な数字や行動計画を持つこと。理想と現実を行き来しながら、目標達成のために「今できること」に集中する姿勢が、ビジネスや人生において成果を生み出します。

計画とは未来の問題を未然に防ぐための「今日の行動」そのものです。思い通りにならないことも多い世の中だからこそ、「計画の本質」を理解し、「やることを決める」「決めたことをやる」を愚直に実践し続けることが、望む未来への最善の道となるのです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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