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時間管理

2025.9.13

【1年間で3つの資格を取得できた時間管理術】知的労働における労働生産性の上げ方

生産性とは何か?その基本的な定義

「生産性」という言葉は、働き方改革の文脈で使用されることもあってか、近年ではかなり一般的な用語になりました。もともと製造業や建設業で普及してきた概念ですが、今や多くの業種で使われていることでしょう。

生産性とは「投入資源(INPUT)に対する付加価値(OUTPUT)」を表す概念です。投入した資源に対して、どれだけの成果や付加価値を生み出したのかという比率を測るものです。

製造業で言えば、需要の3要素と呼ばれる人(Man)・材料(Material)・機械(Machine)の3Mが投入資源(INPUT)に相当します。

一方、付加価値(OUTPUT)に相当するのは、製品のQuality(品質)、Cost(価格)、Delivery(納期)です。これらを高めることにより生産性を上げるための取り組みが、品質管理、原価管理、工程管理であり、総称して「生産管理」と呼ぶわけです。これに安全管理を加えて「四大管理」と呼ぶこともあります。

生産性を高める4つのアプローチ

生産性は分数(割り算)であるため、それを向上させるにはいくつかの方法があります。

1つ目は分子を上げるアプローチ。「同じ投入資源(INPUT)に対して、付加価値(OUTPUT)を増やす」ことです。改善活動によって工程を効率化したり、工夫を重ねて品質やコストを改善することで実現できます。

2つ目は分母を下げるアプローチ。「同じ付加価値(OUTPUT)を、より少ない投入資源(INPUT)で達成する」ことです。例えば、同じ製品を作るにしても、人員や労働時間を減らしたり、より安価な材料で効率的に生産できれば、生産性向上につながります。ちなみに、このINPUT削減アプローチのことを「効率化」と言います。

3つ目は分子を上げつつ、分母を下げるアプローチ。「投入資源(INPUT)を減らしつつ、付加価値(OUTPUT)を増やす」という理想的なケースです。これを実現するのがイノベーション。従来の延長ではない新しい方法で、従来を超える成果を得ようとする取り組みです。成功すれば大きな成果が得られる一方、失敗のリスクも大きく、通常は成功するまでに何度も失敗を繰り返します。まさにハイリスク・ハイリターンのアプローチです。

4つ目は分母を上げることにより、分子をさらにあげようとするアプローチです。「投入資源(INPUT)を増やして、付加価値(OUTPUT)を増やす」取り組みで、設備投資がこれに相当します。例えば、数十年前から使用している古い機械を、最新の工作機械に入れ替えることで、一気に生産性を上げることができます。

このように、ひとえに生産性向上といっても、業務効率化にとどまらず、改善やイノベーション、投資など複数の視点があるわけです。

知的労働における生産性の考え方

ただし、ここまでお話ししてきた生産性の考え方は「製造業の現場」の話です。付加価値の創出に直結している仕事の場合はこの考え方で通用するのですが、企画やマーケティング、営業、管理などの知的労働(この表現が適切かはわからないので、以下「オフィスワーク」と称します)においては、生産性はもう少し違う考え方が必要になります。

まず分子(OUTPUT)から考えてみましょう。製造業の現場において、仕事の成果は製品の付加価値となってダイレクトに表れます。しかし、オフィスワーカーの業務には、付加価値を直接生まない「付帯業務」が数多く存在します。社内の会議やミーティング、報告書作成をどれだけやっても、1円の請求書も書けないのです。

したがって、オフィスワークにおける生産性の分子は、付加価値の創出につながる「本来業務」に相当すると考えることができます。そして、この本来業務の量は、「すべての仕事」から「付帯業務」を差し引くことで算出できます。つまり、過剰な報告書や事務処理、不要な会議やミーティングをできる限り減らすことで、相対的に本来業務の量を上げることができるのです。これが生産性の向上につながります。

次に分母を考えてみましょう。製造業の現場における分母(INPUT)は、「人」「材料」「機械」でした。しかし、オフィスワークには「材料」がありません。製造業のように何かを組み立てたり、加工したりするわけではないのです。あえて言えば、オフィスワークの材料は「データ」と「情報」なのですが、これらは経済価値への換算が非常に困難です。したがって、材料はないものとして考えます。

では「機械」はどうでしょう。オフィスワーカーにも設備投資はしています。ただし、すぐに頭打ちになるのです。例えば、パソコン。1台20万円のパソコンを使っている人がいたとしましょう。設備投資額を2倍にして、1台40万円の超高性能パソコンを貸与したとします。しかし、だからと言って、生産性は上がるでしょうか。ほぼ変わらないでしょう。標準並みの性能があれば、それ以上は伸びにくいのです。

もう1つの例として、携帯電話があります。従来型携帯電話(ガラケー)をスマートフォンに変えて、コミュニケーションや情報共有、資料参照などに利用したとしたら、生産性は上がることでしょう。しかし、これもすぐに頭打ちになります。格安スマホでも高級スマホでも、仕事で使う程度の機能には大した差はありません。その上、パソコンやスマホを配備しているというのは、オフィスワークの前提とも言える装備であり、それによって差がつくというのは考慮に値しないのです。

ITソフトウェアに投資するなど、組織としては「機械」への資源投入の差はありますが、個人で考えるならば、オフィスワークでは「材料」も「機械」も投入資源として考える必要がないのです。となると、投入している資源は「人」に他ならないということになります。

知的労働の投入資源とは?

それでは、「人を投入する」ということを深掘りして考えてみます。労働における仕事の投入は、「能力」と「時間」に因数分解ができます。例えば、能力レベル10のベテランが1時間の労働をしたとします。仕事の投入量は10となります。

一方、能力レベル1の新人が、先輩に聞いて回ったり、マニュアルを読み込んだり、試行錯誤を繰り返して10時間働いたとします。仕事の投入量は同じく10となります。つまり、能力が高ければ少ない時間で同じ仕事ができ、能力が低くても時間をかけることによって、同じだけの仕事の投入を守ることができるのです。

そして、これこそが高度成長期からバブル時代にかけて、長時間労働が蔓延していった理由だとも言えます。「契約が取れるまで帰ってくるな」「仕事が終わるまで帰るな」今では「ブラック」と呼ばれるような職場も、見方を変えればある意味「優しい職場」なのです。

たとえ能力が低くても、時間をかけることによって、一人前の仕事をさせてもらっていた。言わば自分の能力不足を残業によってカバーさせてもらえていたのです。かつての私のように、仕事ができない人間も時間をかけることによって、なんとか仕事をさせてもらえている。その結果、次第に仕事ができるようになっていけたとも言えます、

しかし、働き方改革が進んだ現代では、時間外労働の規制が進み、能力の低さを時間でカバーすることはできなくなりました。いまの社会では、能力が高くないと十分な仕事を果たすことができません。これはある意味では残酷な社会です。労働時間を短くするとしても、仕事は楽にはならない。それどころか、仕事はより複雑に、高度になっています。もはや、優秀な人でなくては仕事はできないと言っているようなものです。

私たちは、必然的に「能力を高め続ける」ことが求められていくのです。

能力を作り出す要素とは?

それでは、「能力を高める」にはどうすれば良いのでしょうか。能力は「知識」と「経験」の掛け算で成り立っています。知識を得ることで「知る」ことができ、知ったことを実践する経験を積むことで「できる」状態に近づいていきます。つまり、知識に基づいた経験を蓄積して技術が備わった時に、能力が身についたと言うことができるのです。

例えば、車の運転で考えてみましょう。アクセルを踏めば前に進む、ブレーキを踏めば止まる、赤信号では進んではいけないといった「知識」を身につけなければ、何をどうすればいいのかわかりません。能力を身につけるには、まずは知識の習得が必要になります。

しかし、知識を身につけただけでは安全に運転できません。どれくらいのタイミングでブレーキを踏めば前方の車に追突しないか、どの程度アクセルを踏み込めばスムーズに加速できるか、どのタイミングでウインカーをだせば安全に車線変更できるかといった実務的な課題は、実際に「経験」して乗り越えることができます。

つまり「知る」だけでは不十分であり、「やる」ことを繰り返す中で経験値が積み上がり、それによって「できる」状態へと移行します。これが仕事の能力を高める基本のプロセスであり、あらゆる職場や業務で共通する原理です。

知識や経験を得るために必要なもの

では、知識を身につけるためには何が必要でしょうか。知識を得る手段は、様々なものがあります。本を読む、研修や講習を受ける、近年ではYouTubeなどの動画や音声教材も活用されています。しかし、どのツールを用いるにしても絶対に必要なものがあります。それは「時間」です。どんな形態であれ、勉強には必ず時間が必要になるのです。

そして、経験を積むためにもまた、時間が必要です。すると、ここでおかしな事実に辿り着きます。能力を得るために投入しているのは「時間」でしかないのです。能力を形成する要素である知識や経験は、いずれも時間の投入の結果として身につくものです。

オフィスワークにおける仕事の投入を「能力」×「時間」として捉え、能力は時間によって形成されると考えると、投入しているのは時間でしかないということになります。これが、「仕事は時間でできている」ということなのです。

「過去時間」と「現在時間」

しかし、厳密に考えると、「これから仕事に割り当てる時間」と「能力の形成のためにこれまで投入してきた時間」は性質が異なります。私は前者を「現在時間」、後者を「過去時間」と呼んでいます。つまり、オフィスワークにおける仕事の投入は「現在時間」×「過去時間」と言えます。

そして、時間外労働を規制するというのは、現在時間を制限することを意味します。働き方改革によって「残業するな」「早く帰れ」と労働時間を減らす動きが続いてきました。そのため、時間を増やして成果を出すという方法はもう通用しません。

現在時間を減らす中で仕事の投入を確保するためには、能力の本質である過去時間を上げる必要があります。ここで大きな矛盾に直面するのです。過去に投入した時間は増やせないではないかと。

この話のオチは何かと言うと、「明日の自分にとって、過去時間が増えたと思えるような過ごし方を今日しましょう」ということです。今日、何かしらの新しいこと、難しいことに挑み、学習や経験を積む。これは明日の自分にとって過去時間のアップです。そして、明後日また新しいことを知る、新しいことをやる。それが明後日の自分にとって過去時間のアップにつながります。

こうして、学習と経験を積み重ねることで能力が形成され、仕事の投入を確保することができるようになるのです。

このように考えると、時間の使い方こそが知的労働者にとって最大の課題であり、成長の源泉でもあると言えます。「今日の時間」は未来の自分を作るための投資なのです。新しいことを学ぶ、新しい挑戦をすることは、未来の自分がより良く仕事をしていくための土台になるのです。

能力はどう伸びていくのか?

ちなみに、能力の伸び方には特徴的なパターンがあります。最初は急速に伸びて「できるようになった」と感じますが、途中で必ず停滞や挫折を経験します。知識を少しかじっただけで「分かったつもり」になり、実力が追いつかずに失敗する。この段階を乗り越えて謙虚になり、学び直しや経験の積み直しを繰り返すことで、再び緩やかに、そして確実に力が伸びていきます。これを「ダニング・クルーガー効果」と呼びます。

このプロセスを理解していれば、一時的な挫折に落ち込むことなく、地道に継続する大切さを実感できるでしょう。継続こそが能力を大きく成長させる唯一の方法なのです。

1日15分の学習がもたらす効果

継続は力なり。千里の道も一歩から。微差が大差になる。能力開発は長い道のりを地道に進めることによって実現できます。特に、ビジネススキルや人間性などは、少し勉強したからといってすぐに身につくものではありません。本質的な能力を身につけるのは、短距離走ではなくマラソンなのです。無理のないペースで、長く続けることが重要です。

そこでご提唱したいのが、「1日の1%を自己啓発に向ける」という習慣です。1日は24時間、1時間は60分なので、1日には1,440分です。そのおよそ1%、つまり15分を学習や新しい経験に向けることで、能力開発を続ける習慣を形成することができます。

そして、なんと驚くことに、1日たった15分を自己投資にあてるだけで、日本の社会人の上位20%に相当するのです。総務省が行っている「生活実態調査」によれば、1年間で何かしらの自己啓発をしている人は全体の4割未満に過ぎません。その上、自己投資に費やしている時間は平均で1日わずか7〜8分程度なのです。毎日15分の自己投資をすることは、自己学習を行っているだけですでに全体の上位4割に入り、平均時間の2倍の時間を勉強に当てているので、上位半分に入ることになるのです。

1日15分は決して短い時間ではありません。1日15分の学習を平日5日間続ければ週に75分、1ヶ月で約300分、年間で60時間になります。60時間もあれば、簡単な資格であれば1〜2つ取得することも可能です。

実際に、私の時間管理講座を受講したあるワーキングマザーの方が、家事や育児の合間をぬって1日15分から勉強を始めたところ、1年間で3つの資格を取得したそうです。翌年に別の講座でお目にかかった際に「小松さんのおかげで資格3つも取れました。ありがとうございます。」とご報告してきてくれました。いやいや、それは私のおかげではなく、それをやり続けたあなたが素晴らしいのです。

学習を続けるための工夫

もちろん「15分で本当に効果があるのか」と疑問に思う人もいるでしょう。しかし重要なのは「毎日継続する」という点です。短い時間でも積み重なれば大きな成果につながりますし、次第に慣れていくうちに自然と15分では物足りなくなってきます。やがて、1日20分、30分、1時間と学習するのが「当たり前」になっていきます。

また、継続するためには「けじめ」をつけることが大切です。例えば、どうしてもSNSやストリーミング配信などの娯楽コンテンツを見たいのであれば、最初の15分だけはビジネス動画の視聴や電子書籍などの自己投資に充てる。そして、「やるべきことをやった」後で、好きなだけ娯楽コンテンツを楽しめば良いのです。

やるべきことをやってから、思い切り遊ぶ。そのように自分を「躾(しつけ)」することで、規律を保って習慣を形成することができます。習慣づくりの秘訣は、最初からハードルを上げ過ぎないことです。簡単なことから始めていくと良いでしょう。読書やセミナーの敷居が高い方は、スマホで動画を見るのが有効でしょう。何を見るべきかに迷ったら、まずは私のYouTubeチャンネルをご覧いただくことをお勧めします(笑)

まとめ

知的労働における生産性を高めるには、「時間の使い方」を根本から見直すことが必要です。現在時間は限られていますが、今日の取り組みが未来の自分にとっての「過去時間」となり、それが能力を底上げしてくれます。知識と経験を積み重ね、継続的に自己投資することで、長時間労働に頼らずとも高い成果を出せるようになるのです。

特に「1日15分学習する」というシンプルな習慣は、誰にでも実行可能であり、確実に成果につながります。小さな積み重ねが大きな成長を生み出すことを意識しながら、今日から行動を始めてみてください。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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