時間管理
2025.9.16
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時間管理と聞くと「1分1秒を惜しみなく使い切り、徹底的に効率化すること」とイメージする方も多いでしょう。しかし、これは大きな誤解なのです。実際にそうした生き方を続ければ、常に時間に追われて心身ともに疲弊してしまいます。
なぜ長時間労働が慢性化してしまうのか。その背景には「全ての仕事を丁寧にやらなければならない」という思い込みがあります。すべてに完璧を求め、すべてをキチンとこなそうとするからこそ、時間がいくらあっても足りず、労働時間が膨張していくのです。しかし、本当に仕事ができる人はこの逆の発想を持っています。
仕事ができる人は「時間ありき」で考えます。まず自分が使える時間を基準に置き、その中に収まるように仕事の方を調整するのです。これが時間管理の本質であり、重要な発想の転換です。
「仕事に時間を割り当てる」のではなく、「時間に仕事を割り当てる」のです。この違いは非常に大きいです。限られた時間を基準に考えると、自ずと優先順位をつけ、不要な仕事を削り、必要な成果を得るための工夫が生まれます。
しかし、この方法は一見シンプルに見えて実際には難しいのも事実です。なぜなら、納期を交渉したり、成果物の水準を調整してもらったり、人にお願いしたりと、コミュニケーションが不可欠だからです。これらは気を遣うし、手間もかかります。高度なコミュニケーションスキルが必要なのです。
そのため、多くの人は自分の労働時間を増やす方向に逃げてしまいがちです。残業をしてしまえば、面倒な交渉、折衝、調整をしなくて済む。自分の精神的なコストを逃れるべく、時間的なコストを許容してしまっているのです。
けれども、それでは私生活の時間が削られてしまいます。趣味の時間や家族との時間、休養の時間が確保できなくなり、気づけば常に仕事に追われている状態になります。果たして、それが本当に幸せな状態なのか。
だからこそ、発想を変えて「仕事に時間を割り当てる」のではなく、「時間に仕事を割り当てる」思考を持つことが重要なのです。
改めて強調したいのは「時間管理は1分1秒をフル活用することではない」ということです。
猛烈に働いても、それが付加価値を生まない「付帯業務」に費やされているなら意味がありません。時間管理の本質は、「大事なことを確実に行う」ことにあります。
そのためには、まず不要な仕事を可能な限り減らす必要があります。すべての仕事が重要だと錯覚してしまうと、スケジュールはすぐにパンパンになってしまいます。月曜の朝から金曜の夜まで予定がぎっしり埋まっている状態では、突発的な出来事に対応する余裕がありません。
私たちは未来を予測できる存在ではありません。大抵の場合、自分が予期せぬイレギュラーに計画を狂わされてしまうものです。お客様からの緊急連絡や納品トラブル、上司から突然の依頼、意味の分からない会議への招集など、予定を狂わせる出来事は避けられないのです。
時間管理で重要なのは、こうしたイレギュラーに「すぐに動ける状態」を整えておくことです。問題解決は初動の速さが命です。
例えばクレーム対応なら、発生した直後に訪問して謝罪すれば「すぐに来てくれたから許そう」と収まることもあります。しかし「予定が詰まっていて3日後になります」と答えれば、顧客の怒りは倍増し、問題はさらに大きくなってしまうのです。
だからこそ余計な仕事を削り、時間に少し余裕を持たせておく必要があります。そうすることでイレギュラーが発生しても、その場で対処でき、しかも予定通りに業務を終えて「お先に失礼します」と帰ることが可能になります。これは理想的な時間管理の姿です。
「そんなの無理だよ」と思う方もいるかもしれません。しかし、それは「やろうとしていないから無理」に見えるだけです。完璧にできなくても良いので、まずは実践してみることが大切です。少なくとも、今よりは状況が改善されていくはずです。
それでは、「余裕を持つ」とは具体的にどのくらいの時間を空けておけば良いのでしょうか。一つの目安として、「1日の働く時間のうちおよそ2割」を余裕として確保しておくことを推奨する考え方があります。例えば1日8時間勤務の場合、1時間から1時間半程度を、意図的に予定を入れずに空けておくのです。
「そんなに時間を空けられるわけがない」と思う人も多いでしょう。しかし実際には、どうせ何かしらのイレギュラーは発生しています。緊急の対応や予期せぬ依頼が必ず入るのです。したがって、計画的か無計画かは別として、みな日頃からやっていることなのです。
もし、その余裕の時間に何も入らなければ、その時間を自己学習や業務改善に充てれば良いだけのことです。要は「空けておいても損をしない時間」になるのです。
余裕を作らずにスケジュールを埋め尽くしてしまうと、イレギュラーに直面したときに必ず予定が破綻します。そして遅れを取り戻すために残業に頼らざるを得なくなり、慢性的な長時間労働のループに入ってしまうのです。だからこそ「予定を入れすぎない勇気」が求められます。
時間管理の本質は「時間を削って詰め込むこと」ではなく「余裕をあらかじめ組み込んだスケジュールを作ること」にあります。そのためには日々の思考習慣を変える必要があります。
「まず余裕を取る」「不要な業務は削る」「残りの時間で成果を出す」
この思考を繰り返すことで、やがて自然と時間に追われずに働けるようになります。筆者自身、14年間この考え方を心がけてきた結果、少なくとも以前に比べたら十分に余裕を持った仕事の進め方ができるようになってきたと思います。年収は3倍近くになっているにもかかわらずです。
多くの人が「そんなの無理だ」と感じるのは、やったことがないからです。完璧にできなくても構いません。まずは試してみること。そうすることで初めて「余裕を持ちながら成果を出す働き方」が実感できるのです。
時間管理とは、1分1秒を余さず使い切ることではありません。むしろ余裕を残し、突発的な出来事にすぐ対応できるように準備することが本質です。余裕を確保することで、イレギュラーな仕事へ即座に対応でき、問題を未然防止することによって、長時間労働から抜け出すことができます。そして、その余裕を学習や業務改善に活かせば、長期的な成長にもつながります。
大切なのは「仕事に時間を割り当てる」のではなく「時間に仕事を割り当てる」思考への転換です。ぜひ今日から意識して、余裕ある時間管理を実践してみてください。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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