スケジュールの主導権を握る

札幌で時間管理のセミナーを担当する機会をいただき、大通公園に来ています。前に来たのは12月でしたので、すっかり春めいた様子に季節の彩りを感じます。仕事の合間のわずかな時間でしたが、時にはこうして景観を楽しむ余裕を忘れないようにしたいものです。

生産性を高め、時間効率の良い仕事を行うためには、段取りやスケジュール管理といった計画が必要です。そして、計画の精度が高ければ、思い取りに仕事を進めることができ、生産性の高い仕事を実現することができます。

精度の高い計画を立てる上で必要なことは、「スケジュールの主導権を握る」ことです。

仕事のタイミングや量が他人に振り回されてしまうと、自分の思い通りに仕事を進めることが困難です。過剰な仕事量に苛まれないようにするためには、できる限り自分の計画通りに仕事を進められるよう、行動の主導権を自分で握れるように段取りを行うことが有効です。

スケジューリングは先手必勝

自分にとって都合の良いスケジューリングを行う上では、日時や期限を決定する際に、できる限り自分が先手を打つことが望ましいです。

例えば、会議や打合せの日程を決める際に、「いつにしましょうか」「都合の良い日はどこですか」などと投げかけてしまうと、主導権を相手に委ねることになってしまいます。

その場合、他の仕事の納期が差し迫っているなど、自分にとってあまり都合の良くない日時に決まってしまったとしても、調整が劣勢になってしまいます。

日時を決める際には、「○月○日の○時からはいかがでしょうか」と自分から第一声を発するようにしましょう。

相手の都合が悪い場合には断られるかもしれませんが、相手が「どこでもいい」と思ってくれている場合には、提示案がそのまま通る可能性が濃厚です。

また、具体的な日時を提示することで、他の日程では都合が悪いということを暗に示すことができます。それにより、他の仕事が立て込んでいるなど、自分の立場を主張しやすくなります。たとえその日時が相手にとって都合が悪かったとしても、できる限り当初案に近づけられるよう、協力的な調整を行ってくれる可能性が高くなるでしょう。

このように、自分にとって好ましい条件で交渉や調整が進むように、先手を打って基準を定めることを「アンカリング」と言います。会議や打合せだけでなく、文書や資料の提出締切り、問い合わせへの回答など、期日の設定が必要なことについては、自分から積極的に先手を打つことが、都合の良いスケジュールを組む上で有効です。

自分から情報を取りに行く

仕事の計画性を高めるためには、先の見通しを立てるための情報収集も効果的です。

以前、ある設備工事会社で講座を行っていた時、技術職の方から相談を受けました。

「営業から工事の依頼を受けて仕事をしているが、お客さまと話がまとまってから依頼が来るので、いつも『急ぎで対応してくれ』という状況に迫られる。工事が集中する時もあるので、労働時間が長くなりがちになる。受け身の立場なので、スケジュールがコントロールできない。」というものでした。

この場合、事前に技術の方のスケジュールを把握してから工事時期の調整をするよう、営業職の方にも配慮が必要ではありますが、技術職の方が「話が決まってから依頼を受ける」という仕事の進め方をしている限り、スケジュールの主導権を握ることは困難です。

そこで、定期的に営業職の方と連絡を取り合い、「いまどういう案件があるのか」「どういう状況にあるのか」「話が決まるとしたら、工事はいつからになりそうなのか」という情報を自分から収集してはどうかとご提案しました。

先の見通しが立たず、緊急度が高くなってから仕事に着手する状況が続けば、準備不足から生産性はますます低下します。自分から積極的に情報を集め、先のスケジュールの見通しを立てるようにしておけば、仕事を計画的、効率的に進められるようになります。

待ちの姿勢から、攻めの姿勢へ

上記の例についても言えることですが、仕事の進め方が「待ちの姿勢」になってしまうと、スケジュールが他人に振り回されることになってしまいます。いかにして自分の方から動けるようにするか。つまり「攻めの姿勢」に転じることができるかが、仕事の快適さを大きく左右します。

以前、業務効率化のセミナーで、シェアードセンターにお勤めの方から、次のような相談を受けました。

「企業の経理事務をアウトソーシングとして請け負っている。やらなければならない事務作業が多くあるが、日中は問い合わせの電話対応に追われてしまい、事務がはかどらない。電話がストップする時間外になってからようやく事務作業に着手できるので、帰りが毎晩のように遅くなる。」というものでした。

組織体制や人員配置によっては、集中して作業する時間をローテーションで設けて、電話対応をする方と事務作業をする方とをチーム内で分担する方法も考えられますが、この方の場合はそれが難しいようでした。

そうなると、いかにして「電話がかかってくる」頻度を減らすかが課題になります。かかってきた電話を受ける、つまり受け身の対応に追われないようにするためには、逆のアプローチができないかを考えることが必要です。

受け身から攻めへ。つまり、問い合わせ内容を先にこちらから回答することができれば、対応を自分の都合の良いタイミングに行うことができ、事務作業に集中する時間を確保することも可能になります。

例えば、「先月の問い合わせランキングベスト10」のような形式で、よくある問い合わせのQ&Aを定期的にこちらから発信する方法が挙げられます。

問い合わせが多岐にわたるといっても、似たような内容の問い合わせが電話の大部分を占めていることが考えられます。「全体の80%は20%の要素から構成される」とする「80:20の法則」から考えれば、頻度の高い問い合わせに対する回答をあらかじめ提示しておけば、多くの電話は防げる可能性があると言えるでしょう。同様に、「よくある質問集」としてQ&Aをウェブサイトに掲載する方法も考えられます。

それですぐに電話が減るほどの効果が出るとは限りませんが、こうした取組を地道に続けていくことで、「必要な情報を積極的に発信している」というイメージを相手に醸成することができ、「電話をする前に一度自分で調べてみよう」という意識改革を相手に促すことができるかもしれません。

まとめ

生産性の高い仕事を行う上では、スケジュールの不確定要素をできる限り排除することが望ましいです。

そのためには、日程調整の先手を打ち、必要な情報を収集して、できる限り自分の方から働きかけられるように環境を整えて、スケジュールの主導権を握ることが有効だと言えます。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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