リーダーとしての「自信」の作り方

先週末、あるお客様先でリーダー層の合宿研修を行ってきました。じっくりと時間をかけて、リーダーとしての役割や行動、皆が共通して望む未来のシナリオについて議論を交わしていただきました。

リーダーとは、必ずしも役職者を指すのではありません。目指すゴールを決め、そこに向けて周囲を巻き込みながら率先して行動できる人のことです。どのような立場の人もリーダーになることができます。周囲に影響を与えられる人はみなリーダーなのです。

メンバー全員がリーダーシップを発揮することができるチームが強いチームです。リーダーの役割は強いチームを作るために、自らが率先してリーダーシップを発揮し、メンバーのリーダーシップが開発されるよう働きかけることだと言えます。

リーダーシップの役割は、変化に対処すること

ハーバードビジネススクールのジョン・コッター教授によれば、リーダーシップの役割は「変化に対処すること」です。

ビジネスの環境変化や競争が激しさを増し、日々スピードが求められる現代においては、向かうべき方向性を定め、人々の心をひとつにまとめ、動機づけを行うことのできるリーダーの存在は、今後ますます求められていくことになるでしょう。

環境変化への対応策は「自らも変化すること」です。

時代の流れとともに、顧客や競合、社会の状況が変わっていくとしても、それと合わせて自分も変化できるのであれば、変化は決して脅威ではありません。むしろ、周囲が変化しているのに、自分だけが変わらずに現状維持になっていることの方がはるかに脅威なのです。

現状維持バイアスを外す

変化を恐れてしまう要因の一つに「現状維持バイアス」があります。

現状維持バイアスとは、大きな変化や未知なものを避けて現状を維持したくなる心理作用のことです。バイアスとは先入観や固定観念のことを指します。

人は本能的に変化することを嫌います。新しいことを行うにあたって、”何かを得られるメリット”よりも”何かを失うデメリット”の方が大きいと判断してしまう「損失回避性」が働いてしまうからです。

現状維持バイアスは誰しもが持っています。「何事もなく」「無難に」「安定して」物事を済ませてしまいたいと考え、変化や挑戦を避けるように考えることは、極めて自然なことなのです。

多くの組織において、誰もがおかしいと思っているのに依然として変わらないルールや制度、仕事の進め方が存在します。業務改善や組織改革のプロジェクトが何度も立ち上がっては、何も変わらずに頓挫してしまうのは、現状維持バイアスが働いて、何かをしようとしながらも結局元に戻ってしまう結果であると言えます。

したがって、リーダーには易きに流れてしまわないよう自らを律して、変化を起こせるよう周囲に働きかけ続けることが求められます。リーダーの役割とは「変化に対処するために、変化を起こすこと」なのです。

毎日、小さな変化を自分に課す

現状維持バイアスを外すためには、「変化に慣れる」必要があります。

何事もなく安定している状態が通常だと捉えているから、変化を怖がってしまうのです。「変化していることが通常」という感覚になれば、変化は決してリスクにも脅威にもならなくなります。

変化に慣れるための効果的な方法は、どんなに小さな事でも良いので、毎日何か新しいこと(Something New)を行うことです。

いつもと違う道を通ってみる、いつもと違う店に入ってみる、いつもと違うものを食べてみる、、、など、些細なことで構いません。それでも毎日「新しい何か」が自分の中に取り入れられるようになると、変化への耐性がつきます。自分が変わり続けることが「当たりまえ」の状態になるのです。

自分自身に対して「躾」を行う

とはいえ、新しい何かを毎日行っていくことは決して容易ではありません。特に、就労環境がほとんど変わらない内勤の仕事や、忙しすぎて時間や心に余裕がない場合などは、つい「いつも通り」になろうとしてしまいます。

自分が決めたことをやり続けるためには、強い意志はもちろん、習慣化の仕組みが必要です。手帳に記録をつけたり、ToDoリストを作成するなどして、自分の行動を適切に管理し、決めたことを確実に成し遂げられるよう、自分自身を導いていく必要があります。

周囲を巻き込み、牽引していくためには、リーダーは周囲からの信頼を得ることが不可欠です。他人から信頼されるためには、有言実行であること、誠実であること、一貫性があることなどが求められます。

そして何より、自分自身が自分を信頼していなければ、他人からの信頼を得ることはできません。リーダーは、誰よりも自分自身を強く信頼している必要があるのです。自らを信じること、これを「自信」と言います。

自信を高める秘訣は、「自分との約束を守る」ことです。つまり、自分がやると決めたことを、決めた通りに実行することです。そのためには、自分自身に対する「躾(しつけ)」が必要です。

自分自身に毎日変化することを課し、それを確実にやり続ける。その積み重ねによって自信が生まれます。そして、溢れる自信が強いリーダーシップとなって周囲を引きつけ、環境変化に対応するための組織変革を実現できる影響力を発揮するようになるのです。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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