お問い合わせはこちら

リーダーシップ

2025.10.31

【リーダーが持つべき環境変化の認識】あなたの問題を解決する方法はすでにある!

VUCAの時代をどう捉えるか

リーダーシップを発揮していくためには、まず「環境変化」をどう捉えるかが非常に重要です。

現代は「VUCA(ブーカ)の時代」と呼ばれています。これはアメリカ空軍が2016年に提唱したとされる概念で、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとったものです。

つまり、世の中は変化が激しく、安定せず、複雑で、先が読めない—そうした時代に私たちは生きているということです。

日本でも一時期、ニュースやビジネス誌などで頻繁にこの言葉を見かけるようになりました。少子高齢化、ITの進化、グローバル化といった社会的変化が次々と押し寄せ、「今までのやり方が通用しない」と言われる時代です。

けれども私は、こうした言葉に振り回される必要はないと考えていました。「今が一番大変だ」という言葉は、いつの時代にも言われてきたからです。

例えば、バブル崩壊の時期もそうでした。「これまでのやり方は通用しない」「前例にとらわれるな」「固定観念を捨てろ」と言われていました。リーマンショックの時も同じです。「これは歴史上最大のピンチだ」「未曽有の危機だ」「イノベーションを起こせ」と叫ばれていました。

つまり、人間というのは常に「いまが一番大変だ」と感じたい生き物なのです。自分たちはこんなに頑張っていると証明したい—そういう心理が働いているのかもしれません。

しかし、そんな私自身も、2019年までは「VUCAなんて大げさだ」と思っていたものの、コロナ禍にはその考えを改めざるを得ませんでした。「やっぱり、世の中はVUCAなのかもしれない。」あの時ばかりは、社会が根底から変わったと実感せざるを得なかったからです。

コロナ禍がもたらした本当の変化

コロナの影響は確かに桁違いでした。私は当時コンサルティング会社に所属し、全国各地を飛び回って研修や講演を行っていました。ところが、2020年2月以降、出張がすべてストップ。感染拡大の影響で、上半期の仕事はほとんどキャンセルになってしまったのです。

緊急事態宣言が発令されると、4月・5月は完全に自宅待機。ほとんどの同業者が「早く収束して、また集合研修ができるようにならないか」と再開を待っている状態でした。

しかし私は情報収集を進める中で、「どうやらこの状況が2〜3年続くらしい」ということがわかり、当面の売上を立てるためにもオンライン研修の研究を始めました。MacやiPhone、iPadを並べて「独りzoom」を繰り返し行い、どうすれば自宅から効果的な研修ができるのかを一人で試行錯誤していたのです。

その後、実践で検証するべく、無料のオンラインセミナーを開催しました。企画から実施まで1週間のスピード開催。セミナー集客は数ヶ月かけてやっと10〜20人というのが当時の定説でしたし、ましてや馴染みのないオンライン開催。かなり無謀な挑戦だったと言えます。

周囲からも「そんなの誰も来ないよ」と冷ややかな目で見られていたものの、いざ始めてみると開始1分でzoomの定員100名に達してしまい、参加者を優先するために聴講社員に体質を求めるほどの結果でした。

その結果、社内での見られ方も一変しました。「オンラインで人が集まるなんてすごい」と注目され、他のコンサルタントもzoomを使ったセミナーや研修の開催に前向きになりました。その後、私だけでなく他の方々も、実践した結果や研究したノウハウを共有するようになっていきました。

こうして環境の変化への対応しようとして、実際の行動を変え、その影響を周囲に広げていく。今から振り返ると、当時の私の行動はリーダーシップと呼べるものだったと思います。

変化をに捉えた人が次の時代を作る

コロナ禍で仕事の形態が大きく変わったことで、私は「環境の変化にいち早く対応すること」がどれほど重要かを痛感しました。多くの人が動きを止めていた4月・5月の間に、私はオンライン研修の企画・制作・販売をすでに進めていたのです。少しでも売上を立てようと、無人の会議室で独り講義を収録して、ビデオ教材として販売する準備も進めていました。

緊急事態宣言が明け、6月に活動再開した頃、同僚の多くが売上ゼロの状態からスタートしていました。緊急事態宣言中に、何も準備をしていなかったからです。自分の専門領域の勉強などはしていたようですが、コロナ禍でどうやって事業を継続するかについては準備不足だったと思います。

結果として、いち早く先に動いていた私は、オンライン研修やビデオ教材の販売で6月からさっそく売上を立て、その後も実践を積みながら、他者に先行してオンラインが「上手」になっていきました。早く動いたことで、アドバンテージを得ていったのです。

さらには、仕事がオンライン化するのであれば、もはや東京に住む意味もないと考え、妻の実家(岡山)に近く、全国の主要都市へのアクセスが良い神戸に移住することを決めました。そのタイミングで、独立・起業し、自分の会社を立ち上げました。この一連の変化が、私のキャリアにおける大きな転機となりました。

しかし、ここで強調したいのは「新しい技術を使うこと」そのものが目的ではないということです。そもそも、zoomという技術はコロナ禍で生まれたものではありません。以前から存在していましたし、当時もSkypeやFaceTimeなどオンラインで会話できるツールはいくつもありました。

つまり、技術そのものはすでに存在していたのです。時代や環境の変化に合わせて、テクノロジーを使いながら「新しい仕事の形態」にシフトすることが重要なのです。

本当の問題は「気づかないこと」

では、なぜコロナ以前にはオンライン研修やセミナー、ビデオ教材に意識が行かなかったのか。それは「そんな使い方をしようと思わなかった」からです。Zoomを従業員教育に使うという「発想」自体がなかったのです。これこそが、環境変化に対応できない最大の理由だと私は考えます。

実は、私たちが抱えている多くの問題の解決策は、すでに世の中に存在しています。けれども、その解決策に気づかないのです。「新しいやり方が必要だ」と口では言いながらも、すでにその方法が存在していることに気づかない。これが実態です。大切なのは、新しいものを探すことではなく、「今あるものをどう活用できるか」に気づく力なのです。

よく「視野を広げろ」「高い視点で考えろ」と言われます。まさにそれが重要です。現状の延長線上で考えるのではなく、「新しい理想」を描き、その理想を実現するために何が必要かを考える。そのとき初めて、今まで見えていなかったチャンスや技術が目に入るようになります。

リーダーとは、この「新しい理想」「見えない未来」を先に見て動く人のことです。周囲の人には理解されないことも多いでしょう。「あなたは何をやっているの?」と言われるかもしれません。しかし、それが正解なのです。リーダーの役割は、他の人に見えていない景色を描き、そこへ向かって道を作ることだからです。

環境変化を正しく捉えるための思考法

では、ここから変化をどう分析し、次の行動につなげるかを具体的に考えてみましょう。

私たちはつい「世の中がどう変わるか」を感覚的に捉えがちです。しかし、感覚だけではリーダーとしての判断を誤る危険があります。そこで必要なのが、体系的に外部環境を分析するための「フレームワーク思考」です。これは物事を偏りなく、網羅的に考えるための「地図」のようなものです。

リーダーは、このフレームを使って自分たちの立ち位置を確認し、どのような外部要因が今後の事業やチームに影響を与えるのかを冷静に見極める必要があります。それができる人こそ、環境変化に強いリーダーなのです。

4+1の視点で環境を洞察する

外部環境を分析する代表的なフレームワークに「PEST分析」があります。PESTとは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの頭文字を取ったものです。

この4つの観点から世の中の動きを観察することで、自分の会社や事業にどんな影響が及ぶのかを予測できるようになります。さらに最近では、これに5つ目の要素として「Environment(自然環境)」を加えた「PESTE分析」や「4+1分析」という形で使われることも増えています。

1. 政治(Politics)

政治の変化とは、政府の方針や制度、法改正などを指します。たとえば最低賃金の引き上げ、労働基準法の改正、補助金や助成金制度の見直しなどです。これらは企業経営に直接的な影響を与えます。

政治を意識するということは、単にニュースを追うことではありません。政府の方向性がどの業界に追い風となり、どの領域に逆風が吹くのかを見極めることです。たとえば再生可能エネルギーへの政策支援が強まれば、それに関連する技術やサービスは需要が伸びるでしょう。

2. 経済(Economy)

次に経済の動向です。景気の循環、為替の変動、金利や物価の上昇、消費者の購買意欲など、経済の波は企業活動に大きな影響を与えます。

特にリーダーは、数字を見て状況を判断する習慣を持つことが重要です。ニュースの見出しを読むだけではなく、「この経済の変化が自社の価格設定や顧客層にどう影響するか」を考えるのです。たとえば円安が進めば、輸入コストが上がり、製品価格に転嫁しなければ利益が圧迫されるかもしれません。

3. 社会(Society)

社会の変化は、価値観・ライフスタイル・人口構成など、人々の意識や行動の変化を意味します。たとえば少子高齢化、働き方改革、ジェンダー平等、Z世代の価値観などがこれに当たります。

この社会の変化を軽視すると、いくら良い商品を作っても売れません。今の時代、若者は「モノ」より「体験」に価値を感じます。つまり、売るべきものは製品ではなく「意味」や「共感」なのです。社会の変化を読み取り、それに合った価値を提供できるかが問われています。

4. 技術(Technology)

技術の進化は、環境変化の中でも特にスピードが速い領域です。AI、IoT、ビッグデータ、生成AI、5G、ブロックチェーンなど、テクノロジーは日々更新されています。

リーダーは専門家でなくても構いませんが、「どの技術が自社に関係しそうか」を把握しておく必要があります。技術のトレンドを知るだけでなく、「この技術を使って今の課題を解決できないか?」と考える視点が重要です。私がzoomを使ってオンライン研修をいち早く実施したように、技術は「使い方次第で可能性が広がるツール」なのです。

5. 環境(Environment)

最後の要素は自然環境です。近年はESG投資やSDGsなど、環境に配慮したビジネスが強く求められるようになっています。カーボンニュートラル、水資源の保全、再生エネルギーの活用など、地球全体の課題をどう事業に取り入れるかが鍵です。

かつてのように「大量生産・大量消費」で利益を上げる時代は終わりました。これからは「地球に優しいこと」「社会に貢献できること」が企業価値の中心になっていきます。つまり、環境への意識を持つことは、もはや善意ではなく「経営戦略」なのです。

リーダーに求められる「環境感度」

この5つの視点を持つことで、自分の業界やチームがどんな外的要因に影響されるかを俯瞰できます。しかし、単に知識を得るだけでは意味がありません。大切なのは、それをもとに「自分ならどう動くか」を考えることです。

たとえば、技術の進化により業務効率が上がるなら、自社にも導入できないかを検討する。社会の価値観が変わっているなら、採用や教育の方針を見直す。環境負荷が課題になっているなら、エコな取り組みを小さく始めてみる。そうした行動の積み重ねが、VUCA時代を生き抜くリーダーシップの実践になります。

また、リーダーは「変化に振り回される側」ではなく、「変化を利用して成長する側」でなければなりません。環境の変化を嘆くのではなく、「この変化をどうチャンスに変えるか」を常に考えること。これが、リーダーとしての「環境認識力」です。

まとめ

環境変化は突然訪れるものではありません。常に兆しがあり、それをいち早く察知できるかどうかがリーダーの力量です。PESTE分析のようなフレームを活用し、政治・経済・社会・技術・環境の5つの観点から自分の事業を見つめ直すこと。そして、「すでに存在する解決策をいかに活用するか」を考えること。

それが、リーダーが持つべき「環境認識力」の本質です。どんな変化の時代でも、自ら行動を起こし、周囲に新しい道を示せる人こそ、本当の意味でのリーダーと言えるでしょう。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

関連サービス

関連動画

次世代リーダーや自律型人材を育成する仕組みづくりや社員教育をお考えの経営者、管理職、人事担当者の方々。下記よりお気軽にお問い合わせください。(全国対応・オンライン対応も可能です)

弊社にご関心をお持ちいただき、ありがとうございます。お気軽にお問い合わせください。

TEL.
078-600-2761