環境を変えれば自分も変わる


(写真はイメージです)

一年ですっかり様変わり

先週、ある企業様の新入社員入社前研修合宿を担当してきました。2016年から講師を務めさせていただき、今年で6回目。私が企業研修の講師として登壇した最初のお仕事です。毎年この合宿会場に来ると、初心を思い出します。私にとって原点のような場所です。

昨年のこの時期は、東京オリンピックの延期や緊急事態宣言の発令が決まる前。新型コロナウィルスの感染拡大が加速し、未知の不安と恐怖に覆われていた頃だったかと思います。多くの企業や団体が新入社員研修を保留、延期する中で、こちらの企業様は集合形式での研修に踏み切りました。(オンラインへの移行が加速するのはこれより数ヶ月後のことです)

講師も受講者もみなマスクを着用。入退室時のアルコール消毒徹底。机の間隔を広げて、人との距離を確保。常時扉と窓を開けて換気。

今でこそ、どこでも行われている運用ですが、この頃はまだこうした基準が定まっておらず、これで感染対策として十分なのか、誰も自信を持てない中でリスクと背中合わせでの実施でした。半年経った頃には、この運用がほぼ標準形として定着することになったわけで、今から考えると先見の明があったのだなと、改めて先方のご判断に感服いたします。

私自身も「マスクを装着したままで終日3日間も講義をするなんて」と、内心では懸念しておりましたが、数ヶ月のうちにこれが「通常の状態」と化す結果となりました。今では、マスクをしたままで何日でもしゃべり続けても大丈夫だとすら思います。

人間は習慣の生き物です。いかにイレギュラーな対応であったとしても、特定の状況に数日身を置けば、それに順応することができます。たとえ一時的に「無理」と思うようなことであったとしても、結局のところ環境の方に人が順応していくことになるのです。

あれから一年。社会はすっかり様変わりし、今なおウィルスとの戦いが強いられていますが、一年前から比べるとだいぶ対応力が上がってきたものだと改めて感じます。今ではリモートワークはもとより、社外の方々とオンライン通話で商談したり、オンライン会議システムでセミナーや研修をすることもすっかり定着しました。少なくとも一年以上前には、到底考えられない、考えたとしても容易に合意形成には至らないようなことだったと思います。

自分を変えたければ、まずは環境を変える

2ヶ月前のことになりますが、数年ぶりにiPhoneの機種変更を行いました。そして、それを機にフリック入力への挑戦を試みることにしました。

今さら?と思うかもしれませんが、PHS時代からもう20年以上もトグル入力(テンキー連打)に慣れてしまっており、今からフリック入力に切り替えるのは正直なところかなり面倒でした。たとえ、入力スピードや正確さがフリック入力の方が優れていると論理的には理解できても、慣れ親しんだ方式を変更する心理的なハードルは決して低くはありません。従来通りのことを継続する方が、よっぽど楽です。

しかし、職業柄「変化に対応しましょう」「挑戦しましょう」「現状を打破しましょう」と人様に説く仕事をしている手前、いつまでも避け続けるわけにはいかないと思い、機種変更を機に挑むことにしました。結果としては、3週間もしないうちにフリック入力で自然に入力できるようになり、2ヶ月経った今ではもはやトグル入力に戻りたいという気持ちすら起きません。明らかに以前よりも早く入力ができ、ミスタッチも少ないです。

練習用のアプリをインストールして練習もしましたが、正直なところすぐに飽きました。スキルを習得すること自体が目的になってしまうと、私の場合どうしてもモチベーションが続きません。幸いiPhoneのキーボード設定で、入力形式をどちらかに固定するか、併用するかを設定で変更できるようになっていました。そこで、フリックでしか入力できない設定にして、日常の利用自体を練習の場にすることにしました。つまり環境を変えたのです。

最初の頃は思うように入力ができず、非常にストレスが溜まりましたが、妻へのLINE返信や仕事でのslackやメールの返信がたびたび必要になるため、イヤでもフリックで入力をせざるを得ません。時には急ぎで返事をしなければならない用件もあるため、何度も入力間違いを重ねながらもフリックで打ち続けました。次第にミスなく、早く入力ができるようになっていきました。

「そうしなければならない」という状況に身をおけば、できるようになるのです。

環境を変えることで、強制的に変わる

企業や団体でのコンサルティングや研修に携わらせていただいていると、経営者や管理職の方々からしばしば「過去の慣例から抜け出せない」「社員の意識や行動が変わらない」「危機感が足りない」と嘆く声をお聞きします。

しかし、人はみな痛みを避けて、快楽を追求する生き物です。変化するためには、労力や時間、面倒臭さなど何かしらの痛みを伴うため、避けようとするのが自然の反応です。意識や意思、気合いだけで変化しようとしても難しいです。変わろう、成長しようと思うならば、環境を変えてしまうのが手っ取り早いです。

具体的には、組織編成を変える、事務所の場所またはレイアウトを変える、使用する機器やソフトウェアを変えるなど、今までと異なることを「強制的にやらなければならない」環境に身を置く必要があります。今までと同じ組織、同じ人員、同じ空間、同じ仕事内容、同じツールで、行動だけ変えようとするのは虫が良すぎるという話です。

人はいつからでも、どのようにでも変わることができます。しかし、人間ほど直接変えることが難しい存在はないとも言えます。人を変えるにはまず環境から。当然、自分を変えるにもまずは環境から変える必要があるのです。

あなたは、自分をより一層高みに導くために、何を変えることができますか。それをいつからはじめますか。
一週間をはじめるにあたって、ぜひそれを考えてみてください。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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