目標達成のポイント3:測定できるものは改善できる

前々回より引き続き、目標を達成させる5つのポイントについて解説していきます。

  1. 目標達成に向けた行動を習慣化する
  2. 結果目標とプロセス目標の両方を設定する
  3. 測定できる目標を設定する
  4. 小さな変化からはじめる
  5. 自分が本当にやりたいことを目標にする

今回は3つ目となる「測定できる目標を設定する」についてご説明いたします。

これまでの記事はこちらから↓

目標達成に向けた行動を習慣化する

望む「結果」を作り出す「原因」をつくる

結果とプロセスの両方を測定する

前回の投稿では、結果の目標と併せてプロセスの目標を立てることが重要だというお話をしました。結果目標にしろ、プロセス目標にしろ、目標設定にあたっては状況を測定できるようにすることが必要です。状況を測定できないと、目標達成への道のりが順当なのか否か、行動量が十分なのか否かの判断がつかないからです。

例えば、「資格試験に合格する」といった目標を立てたとしましょう。結果目標は合格することですし、合格か不合格かのいずれかにしかならないので、結果は測定できます。

プロセスについては勉強量の目標を立てることになります。多くの場合、勉強量の目標を時間で測るようにしがちですが、これは必ずしも効果的とは言えません。時間の投入量と合格に必要な知識や回答技術のレベルは必ずしも比例しないからです。極端な話、どれだけ時間をかけて勉強したとしても、試験範囲を網羅できていなかったら合格の可能性は低くなるからです。

あるいは、テキストでの学習ができていたとしても、過去問や模擬試験を解いて試験の練習をする量が不足していれば、本番で力を発揮できなくなる恐れもあります。この場合、試験当日までの学習手順を整理して、それぞれの段階を通過する期限を設定し、各段階に必要な時間を見積もるという緻密な計画が求められます。

私が中小企業診断士試験を受験した際には、受験日までに過去問題と想定問題がすべて解答できている状態を目標とし、受験7科目それぞれについて、テキスト教材と講義動画に目を通す期限、想定問題集を解く期限、過去問を解く期限、間違えた問題に再挑戦する期限をそれぞれ設定してスケジュールを組みました。期限とボリュームが定まれば、投入すべき時間は逆算で導かれます。時間を投入するというよりも、工程の進捗を守るというプロジェクト管理的な思考が必要です。

同様に、ダイエットにしても、体重を下げるのか、体脂肪率を減らすのか、見た目をスリムにするのかによって、求める結果目標は異なりますし、それを実現する手段も異なります。プロセスとしては、食事の量や頻度、運動メニューと量などを決めていきます。これらはすべて数値的な測定が可能ですので、結果を実現するための行動量の仮説を立てられれば、後はそれを実行するだけとなります。

測定しづらい目標の測定方法

資格試験やダイエット、あるいは仕事の業績目標などは、結果もプロセスも数値的に測定しやすいです。一方で、中にはなかなか数値にできないような目標もありえます。

例えば「人間性を高める」といった目標の場合、結果を測定することも、プロセスを測定することも容易ではありません。一体どういう状態になったら「人間性が高まった」と言えるのかを客観的に評価するのは難しいからです。加えて、人間性を高めるのに上限はありません。どこまでも高めることができるはずなので、期限を設けることも、最終的な到達地点を定めることも困難です。

この場合、アプローチとしては2つ考えられます。

一つ目は、人間性が高まったと仮定した場合に得られる現象の仮説を立てて、それを追いかけるべき目標として位置づけることです。例えば、「人間性が高まったとしたら、周囲の人からお礼を言われる機会が増えるだろう」「人間性が高まったとしたら、周囲から手を差し伸べてくれる機会が増えるだろう」と仮定して、お礼を告げられる回数や、協力してくれた回数などを指標として目標を立てることが可能です。

これであれば、達成したかどうかの判断ができるようになりますし、自ら他人に協力を申し出たり、人に親切にしたりするなどして、結果が得られる原因を自ら作り出すことができるので、プロセスも管理できるようになります。

二つ目は、人間性を高めることにつながると思われる行動の仮説を立て、それを継続して実施していくということです。「最終的にどうなるかはわからないけども、少なくともこれをやっていればより良くなっていく」という行動を積み重ねていくことによって、目標に近づいていると見立てるという考え方です。

私の場合、人間性を高めるための取り組みとして「1日10回、他人にありがとうと言う」という目標を立てています。これは「人間性が高い人=周囲に感謝できる人」という仮定し、日々周囲に感謝し続けていれば人間性は高め続けていけるだろうという仮説を立てて設定した目標です。

本当に周囲に感謝していれば人間性が高くなるのかという実証は難しいですが、続けていく中で自分自身や周囲の変化を感じるようになれば、仮説は妥当だったと判断することができますし、手応えがなければ別の仮説を立てれば良いと言う話です。少なくとも周囲に謝意を伝えて困ることは何もないはずなので、自分が尊大な人間にならないような自戒として、もう何年も続けています。

なんとなく行動して、確実な結果を期待するのは無謀というものです。目標を達成させるためにどれくらいの行動量が必要なのか。実際に自分はどれだけの行動をしているのか。たとえ仮説であったとしても、これを測定できるようにして、記録し、時折振り返りをしていくことで、常に改善を図っていくことができます。

測定できるものは改善できます。何か成し遂げたいこと、得たいものがあるのであれば、その目標達成に向けた計画を、測定できるように描くことが大切です。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  

投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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