吉野家役員の問題発言から考える、失言回避と人間性・品格の重要性

先週、iPhoneの通知に信じられない文言のニュース記事が表示されたので、思わずすぐにサイトを開きました。

吉野家取締役が「生娘をシャブ漬け戦略」発言 会社が謝罪「極めて不適切」「到底許容できない」(J-CASTニュース)

早稲田大学の社会人向けマーケティング講座にて、吉野家の取締役が若年女性向けのマーケティング戦略を「生娘シャブ漬け戦略」と表現したとのことで、猛烈な批判を受けています。表現の仕方として、あまりにもひどいのは言うまでもありません。

あまりも反響が大きいため、同社は4月19日に予定していた新メニューとなる親子丼の会見を中止に追い込まれました。10年がかりで開発されたそうで、商品開発に携わった方の無念と失望を考えると気の毒で仕方がありません。

吉野家、幹部不適切発言で19日の親子丼会見中止 早大は講師から解任も検討(スポーツ報知)

親子丼の関係者に限らず、同社では何万人もの従業員の方が働いています。誇りを持って働いている方もいらっしゃることでしょう。私も時々、吉野家を利用します。外出時、出張時など食事をゆっくりと摂れない忙しい時には、こうしたクイックフードが重宝します。顧客の一人としても、今回の事態はとても残念です。

詳細は記事をご覧いただくこととして、今回は講師業を営む一人として、失言(というにはあまりもひどい事例ですが)がなぜ起こるのか、どのように回避できるのかを、自戒を込めて考えてみたいと思います。

失言は無意識の思考の表れ

私の仕事は、7〜8割くらいは企業での研修やセミナーです。コンサルタント・講師として、これまで575日の登壇を行ってきました。私にも失言がないわけではありません。

「生娘シャブ漬け」まで下品で不快な表現をしたことはさすがにありませんが、うっかり不適切な言葉を口にしてしまい、なぜ「あのような表現をしたのだろう」と後悔し、反省することもあります。最近はだいぶ減ってきましたが、経験が浅い駆け出しの頃には特に多かったです。

講演や講義をしている時には、登壇者自身もかなりテンションが上がります。気持ちが入れば入るほど、興奮が高まります。興奮状態になると、しゃべるスピードが思考のスピードを上回ることがあります。すると、無意識のうちに言葉が出て、それが失言につながるのです。つまり、失言とは無意識による思考の表れだと言えます。

無意識は記憶の貯蔵庫です。日頃から考えていること、感じていることなどが蓄積され、それが思考や行動の習慣を作り出します。無意識に蓄積されている情報にはイメージやビジュアルなどもありますが、言語が占めている割合も大きいです。日常の会話や、頭の中での自己対話で使用している言葉が、そのまま再生産・再利用されます。

今回の事態が、意図的にそのような発言をしたのか、無意識のうちに口をついたものなのかは計り知れませんが、いずれにせよ、自分の中から出た言葉であることに相違はありません。あまりにも品位を欠く表現ではありますが、それがこの方の「日常的な思考」なのでしょう。

無意識を「良い言葉」で満たす

人の思考や行動の95%は無意識によるものです。失言が無意識のうちに「つい口から出る」ものだとした場合、これを理性で完全に制御するのは困難です。となると、失言を防ぐ方法は一つしかありません。無意識ですらそのような発言をすることがないよう、日頃から使う言葉を改めるほかないのです。

常日頃からポジティブな言葉、品位のある言葉を意図的に選択して使用し、自分の無意識を「良い言葉」で満たすことで、「つい」「とっさに」口から出る言葉ですら、良い言葉にしていけばいいのです。

無意識は習慣を作り出し、習慣が無意識を形成します。意図的に良い言葉を選択し、それを使い続けていくことで、無意識の思考、自己対話が良い言葉を用いて行われるようになります。そうすれば、仮に自分の意図しない言葉を口にするとしても、それが心地良いものになるという道理です。

良い言葉の習慣を身につけるためには、日頃の会話で意識することも有効ですが、それに加えて日記をつけることも効果的です。会話と異なり、ペースを制御できるので、うっかり悪い言葉を使いそうになったとしても、踏みとどまることができます。それらを良い言葉に置き換えていくことで、自分自身の思考を整えていくことができます。1日の終わりをポジティブな言葉で締めくくると、自己肯定感も高くなるという効果まで得られます。

良い言葉を選択して使用することは、失言を回避するだけでなく、思考や行動の習慣を改善して、仕事や実生活をより豊かで実りあるものに変えていく効果につながります。

 

https://youtu.be/khFTa2b-6UU

人間性と品格の重要性

使用する言葉は、その人の人間性や品格を表します。4月は各所で新入社員研修を行なっていましたが、ビジネスマナーの一環として、言葉づかいについてのレクチャーは必ず行います。マナーとは、他人を不快にさせないようにすること。組織人・社会人として、仕事をしていく上での前提となる良好な人間関係を気づく上で、正しく、改まった言葉づかいが重要であることを何度も説いてきました。

ビジネスシーンにおいて人間性や品格が重要であることは、現代に限った話ではありません。はるか昔から重要であることには変わりありませんが、これからの時代はますます重要になると言えるでしょう。

情報処理技術の進化により、定型的な仕事が自動化・自律化していく中で、人間に求められるのは「人間でなくてはできない仕事」にますます集中することになります。「人間でなくてはできない仕事」を任せることになるのですから、当然ながら委ねる相手の人間性を問われることになります。

また、SNSの普及に伴い、誰もが情報を発信でき、そして誰もが監視される社会になったとも言えます。うっかり口をついた失言がまたたく間に拡散され、自力では収拾できない事態になることも稀ではありません。必ずしもSNSでの書き込みや発信でなくとも、いつどこで誰が自分を見ていて、どんなタイミングと手段で拡散されるかわかりません。

「火のないところに煙は立たない」という通り、何事も身から出た錆です。著名人であれば事実無根のことを週刊誌に書かれることもあるでしょうが、一般人であれば基本的に身に覚えのあることが拡散していきます。一度ネガティブな印象がついてしまえば、それを払拭するのは決して容易ではありません。一般人ですら、自分自身を守ることが必要な時代なのです。

そして、環境変化や時代の変化が激しい現代では、たとえ一時大きな成功を収めたとしても、それを永続的に続けていくことは困難です。常に自己研鑽を行い、変化と挑戦を繰り返していかなれば、すぐに自分が社会に通用しなくなる時が訪れます。

「実ほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉もある通り、本来、人間としての器が大きくなればなるほど、上には上がいることを思い知り、謙虚になっていくものです。中途半端な成功で尊大な態度を取るのは、自分の基準が低く、世界観が狭いことの表れですらありません。

先週も、神戸空港から仙台空港に向かう際、保安検査所で職員さんに横柄な態度を取っている人を見かけました。どうやらペットボトルが検査で引っかかったようで、中身の検査をするためペットボトルを預かる職員さんに対し「早くしろ」と恫喝していました。品性と知性のない態度と発言に辟易しました(外見もいかにもという感じの人でした)。

そもそも、液体物は検査の対象になることはしつこいくらいに通知されています。まともな人なら、持参しないか、せめて中身を消費・破棄してから保安検査に望むはずです。持ち込んだ自分が悪いと考えないのかと、見ていてうんざりした気分になりました。当然、このような人物と一緒に仕事などしたくありません。人間性と品格は、他の人を遠ざけたり、惹きつけたりするのです。

常日頃から、良い言葉を選んで使い、自分の意識と無意識をプラスのエネルギーで満たす。そうすれば、失言をすることもなくなるし、思考や行動の習慣が良くなって、自分の仕事や人生を好循環に導いてくれます。自分自身を成功に導くか、破滅に導くかは、日頃の言葉の選び方によって左右されるのではないかと考えます。

今日もこれからオンラインでのライブ研修です。品位を保った上で、情熱的に、受講者様を成長と成功に導けるようレクチャーを進めて参りたいと思います。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

小松 茂樹
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役。人材派遣会社、健康食品会社を経て、経営コンサルタントに転身。営業力強化・業務改善・生産性向上・ビジネススキル向上など幅広い範囲で、業績向上や人材育成の支援を行っている。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。

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