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2016.10.21

言ってることは言葉では伝わらない

「目は口ほどに物を言う」という言葉がありますが、これはあまり正確とは言えません。

正しくは「目は口よりもはるかに物を言う」のではないでしょうか。

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コミュニケーションのセミナーや研修をする時によくする話ですが、人と人とが話をする時、実際のところ、自分の言いたいことの半分以上はお互い相手に届いていないと考えるくらいでちょうど良いです。

というのも、人は相手の話を聞く際に、話している内容以上の情報を

その人自身

から受け取っているからです。

 

「メラビアンの法則」と呼ばれる、コミュニケーションについての研究から導かれた有名な法則があります。

人の「話の内容(言語情報)」「話し方(音声情報)」「話している様子(視覚情報)」のすべてが食い違っている時、聴き手は「どの情報を頼りにするのか?」を調査したものです。

 

その結果、人は話を聞く時に、

  • 視覚情報(話している様子):55%
  • 言語情報(話の内容):38%
  • 音声情報(話し方):7%

の割合で情報を受け取っているということが明らかになったそうです。

つまり、話の内容そのもの以上に、話し方や話している様子が、相手に情報を伝達しているということです。

 

例えば、どんなに明るく楽しい内容の話をしていても、言っている本人の表情が暗くてどんよりしていれば、聞いている相手は「楽しい」話とは受け取りません。

あるいは、どれだけ口で「大丈夫です。自信があります。信じてください」と訴えかけたところで、言っている本人が自信なさげでオドオドしていたら、聞いている相手はとてもその話を信じられないのです。

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逆に、たとえ話の内容に自信がなかったとしても、それを自信満々の表情と口調で伝えれば、聞いている相手はその話を信じ込んでしまいます。これが「ハッタリ」です。

詐欺や悪徳商法は、これを悪用したケースとも言えましょう。ウソの話をさも真実であるかのように、自信に満ちあふれて話すことによって、相手に信じさせてしまうのです。

 

全身で伝えなければ、伝わらない

とは言え、よほど訓練を積まない限り(あるいは、たとえ訓練したとしても)、自分が心の中でどう思っているかは、表情や話し方に如実に現れます。

「目が笑ってない」というのはまさにこのことで、どれだけ隠そうとしても人間の心理は表に現れてしまうものです。

というのも、人間はすべての神経や筋肉を自分でコントロールすることはできないからです。

 

人間の表情は主に「大頬骨筋(唇の周囲を覆う筋肉)」と「眼輪筋(目の周囲を覆う筋肉)」の2種類の筋肉で構成されます。

大頬骨筋は比較的トレーニングが容易で、意図的に操作しやすい筋肉ですが、

眼輪筋は感情を司る脳の部位と密接につながっているため、意識で操作することが困難で、自分の心理状態がハッキリと表れてしまいます。つまり、心が笑わないと、目が笑えないのです。

 

そして、どれだけ取り繕ったとしても、一瞬の不安や迷い、ぎこちなさを聞いている相手は見逃しません。心理状態と発言内容のズレを違和感として感じ取り、真実味を疑いはじめるのです。

 

したがって、相手に何かを伝えたいと思ったら、

言っていること=思っていること

を一致させる必要があるのです。

 

例えば、私がプレゼンテーションの講義で、人に話を伝える技術をどれだけ説いたところで、実際に私自身がそれが本当に効果的だと思っていなければ、それは受講されている方々には伝わりません。

そして、それに以上に、そもそも説明している内容を自分自身がやっていなければ、説得力がありません。説明している内容も大事ではありますが、それを実際にやっているところを見て、体感することで、それが効果的であることを「身をもって」知っていただくのです。

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また、キャリアの研修をする時にも、自分自身の職業人生に納得と誇りを持っていなければ伝わりませんし、

業務改善や時間管理の研修にしても、自分が実践し、効果的であることを身をもって実感していなければ、やはりそれは伝わらないのです。

 

「何を言うか」よりも「どういう人であるか」が大事

つまり、本当に相手に何かを伝えたいと思うならば、話をする本人が

言っていること=思っていること=やっていること

となるように、自己の一貫性を保ち続けている必要があるのです。

「何を言うか」ということ以上に、話し手が「どういう人であるか」ということが、はるかに雄弁に物語るのです。

 

そして、これができる人が、強い自信を持ち、周囲からの信用と信頼を得て、説得力や影響力を発揮していくのです。

自分の話を聞いてもらいたい、理解してもらいたいと思うならば、話の内容はもちろんのこと、それ以上に「話している自分自身がどういう人間であるか」に焦点をあて、自己矛盾を可能な限り是正していくことが求められます。

 

もちろん、人は不完全な存在です。自己矛盾を完全に解消することはとても大変なことだと言えましょう。

私自身も、一貫性を保つよう挑戦の毎日ですし、それは生涯続くとも思っています。

しかし、発言・思考・行動のズレを少しでも一致させられるよう、日々努めていくその姿勢こそが、話の内容以上に相手に届くのではないかと思います。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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