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2016.12.7
モチベーションスキル化シリーズ、最終回です。
これまで、モチベーションは上がるものではなく「上げる」ものだとして、思考のコントロール、感情のコントロールについてお話をしてきました。
やる気がおきない理由を思考の面から考えると、取り組み事項の全体像と細部の具体的イメージが描けていないことが要因であり、細分化と統合(ロジカルシンキング)のプロセスで解消できるとご説明しました。
また、やる気がおきない理由を感情の面から考えると、物事の一面的、短期的な側面に焦点が当たっていることが要因であり、心理学のリフレーミングを用いて解消できるとお伝えしました。
しかし、
「そうは言っても、やる気がおきない」
ということは現実としてあるかと思います。
それに対する答えはいたってシンプルです。最後は、
「何でもいいから、とにかく動け」
です。
▼これまでの流れ▼
第1回:モチベーションは「上がらない」
http://growingtree.jp/archives/2166
第2回:「やるべきこと」は細かく砕いて積み上げる
http://growingtree.jp/archives/2179
第3回:不快な感情のコントロールがモチベーションを上げる
http://growingtree.jp/archives/2187
近年の研究で、脳の動きは身体の動きと密接に連動していることがわかってきました。
身体の動きが活発であれば、脳の動きも活発になります。
すなわち、思考と感情の動きが活発になるのです。逆に、行動が停滞すると、思考や感情も停滞してしまいます。
例えば、あなたがコールセンターで販売窓口を担当しているとして、ある日、朝から気分がすぐれず、どうにも仕事をする気が起きないといった場面があったとしましょう。
それでも、職場に行かないわけにはいきません。あなたは休みたい気持ちを抑えて、なんとか職場に向かいます。
すると、なぜかその日に限って大忙し。朝から電話が鳴りっぱなし。受注のメールやFAXも怒濤のごとく流れてくる。
次から次へとやることが増え、入ってきた仕事を片っ端からさばいていかないと一向に処理が追いつかない。
追われるがままに無我夢中で仕事に取り組んでいたら、あっという間に昼休み。状況も落ち着き、上司や同僚と「何とか乗り切ったね」と安堵の胸をなでおろします。
気づけば、朝の重い気分はどこへ行ったのやら。修羅場をくぐり抜けた達成感から、すがすがしい気分になり、快活に午後も仕事に取り組みました。
別の例も考えてみましょう。あなたは週に一回、仕事の後にフィットネスに通っているとします。(想定は、ジム、ヨガ、ダンスなど何でも良いです)
ある日、あなたは仕事で大きなミスをし、お客様から大変なお叱りを受けてしまいました。すっかり気落ちしてしまい、就業後にフィットネスに行く気もすっかり萎えてしまいました。
しかし、今日はフィットネスで知り合った友人から借りていたDVDを返す約束をしてしまっており、行かないわけにいかない。仕方がないので向かうことにし、せっかく来たのだからとレッスンも受けて帰ることにしました。
仕事のミスを忘れようと無心で身体を動かしているうちに、汗を流すのが気持ちよくなってきて、気づけば思い切り動いている自分がいることに気づきます。終わった頃には、すっかり心も晴れて、「やっぱり来て良かった」と思いながら帰路につきます。
このように身体を動かすことは、晴れない気分や暗い考えを吹き飛ばす、有効な手段となるのです。
これは「エンドルフィン」と呼ばれる脳の神経伝達物質によるものです。
エンドルフィンは別名「脳内麻薬」と呼ばれ、これが分泌されると幸福感、快感、高揚感などが喚起されます。そして、エンドルフィンの分泌は運動によって促進されます。
運動量が豊富であればエンドルフィンの分泌量も多くなりますが、分泌させるという点においては、必ずしも激しい運動が必要なわけではありません。とにかく「身体を動かす」ことが重要です。
逆説的ですが、行動する気がおきないことに対する対処法は「行動すること」だということです。
机の上でじっとしていても、いいアイデアが浮かんだり、気分が晴れたりすることは稀です。自分のやる気に火をつけたければ、まずは動いてみることです。
少し遠回りしてトイレに行ってみる。給湯室にお茶を汲みに行ってみる。別フロアの社員に書類を届けに行く。キャビネットに溜まっている書類を整理してみる・・・など、オフィスの中でも動こうと思えば動く用事は作れます。
とは言え、常にデスクから離れて動き回っているわけにはいかない状況もあるでしょう。その場合は、
「手を動かす」
ことも有効です。
私は職業上、書き物の仕事をすることも多くあります。研修やセミナーのテキスト教材やスライド、お客様への提案書、パンフレットなど広告ツールの原稿、メルマガの記事など。人前で話をしたり、ミーティングで話をしている以外の時間は、ほとんど何かを書いています。
書き物をするにあたって心がけていることは、いきなり白紙のWordやPowerPointに向き合うことはしないということです。
まずは、コピー用紙の裏紙に思いついたアイデアを、片っ端から手書きで書き殴っていきます。
そして、整理しながら何枚も手書きを重ねて、8割方完成したところでパソコンへの入力をはじめます。
一度紙に書いて、パソコンに入力し直すなんて二度手間ではないかと思われるかもしれませんが、結果的にはこの方が時間も短く、成果物の質も高くなります。
あくまで私の経験ですが、画面に向き合ってあれこれ考えていても、なかなか良いアイデアは浮かんできません。考えながらやるパソコン作業はスピードも遅いです。
どれだけキーボードの入力スキルを上げたとしても、脳の思考展開のスピードに入力のスピードはまだまだ追いつきません。少なくとも現代の技術においては、依然として手で書いた方が出力のスピードは速いと言えます。
そして、アウトプットの最終的なイメージが定まっているならば、パソコンへはただ入力をするだけです。やることが明確なので、作業のスピードも速くなります。
まずは手を動かす。動かしているうちにエンドルフィンが分泌されて、脳の動きが活発になってきます。これが、さらに行動を促進する効果を生み出してくれるのです。
私がもう一つ習慣として心がけていることは、昼食の後に散歩することです。それも、公園など緑のあるところに向かいます。
これは「グリーンエクササイズ」と呼ばれるもので、自然に触れながら動くことは心身の状態を短時間で回復する効果があるとされています。
運動することで消化を促進する効果もありますが、ほんの5分、10分歩くだけでもエンドルフィンが分泌され、午後の仕事の生産性を劇的に高めてくれることがあります。これは、パソコンをはじめとするオフィスワークには特に効果が高いです。
職場の理解を得られるならば、アイデアが煮詰まった時や、どうにもやる気がおきない時は、思い切って外に出てみるのも効果的です。
「ちょっと散歩してきます」と言って、ふらりと外に出かけて、十数分歩いて頭をリセットする。その後、デスクに戻ってからの頭の冴え具合が明らかに違うことを実感すると思います。
遊びに行っていると思われるのではないかと周囲に思われるのが怖いかもしれませんが、戻ってきた後に猛烈な勢いで仕事に取りかかっている姿を繰り返し示しておけば、そのうち誰も何も言わなくなります。
結果にフォーカスを当てるならば、これくらいの「変人ぶり」は必要ではないかと、個人的には思います。
以上、計4回にわたってモチベーションを「スキル化」するというテーマについてお話してきました。
人間は思考・感情・行動が複雑に絡み合って「気分」を作り出しています。気分を意図的にコントロールするためには、この3つがバランス良く快方に整っている状態を作り出す必要があります。
もし「やらなければならないことがあるのに、やりたくない」という気持ちになったら、それは思考・感情・行動のいずれかが停滞している証です。3つの要素を自己点検し、ご紹介した手法を用いて「自分を整えていく」ことが必要です。
自分の状態を、自分が望ましい状態に保つ。これを「自律」と言います。
企業の管理職や人事担当者の方々とお話していると、みな口を揃えておっしゃるのが「自律型人間」という言葉です。
それはすなわち、自分の状態を整えるということが高度なスキルであり、裏を返せばそれができる人は職場を問わず「求められる人」であるということです。
モチベーションをスキル化するということは、自律した自分でいるということです。
決して容易なことだとは言えませんが、周囲から望まれ、認められ、活躍できる人物像はいたってシンプルだと言えます。
このブログを機に、あなたも今日から「さらに自律した自分」になるための一歩を踏み出していただけたら、とても嬉しく思います。
私も自律型人間へのあくなき挑戦を、続けていきたいと思います。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。