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ブログ

2020.3.30

いま、自分にできることを考える

明日で3月も終わり。新型コロナウィルスの影響により、この1ヶ月間で人命の面でも、経済の面でも世界中が大打撃を受けました。改めて、何気ない日常の日々がどれだけ尊いかを思い知ります。そして、その日常が一人ひとりの日々の「普通の生活」の上に成り立っていることを痛感します。

4月に入ってからも、まだ影響は続く見通しとなりました。オリンピックの延期も決まり、観光業は今年度の経営計画の大幅な見直しが迫られるでしょう。外出自粛が続いて娯楽業や外食産業が苦しい状況も続くでしょうし、人やモノのグローバルな移動が制限されるようになって製造業や流通業も苦戦を強いられています。

私自身も、集合形式の研修やセミナーが4月以降も中止・延期になるケースが少なくありません。影響の余波は大きく、あらゆる業種・業態に試練が続いていると言えるでしょう。

大変に厳しい状況ですが、みながこの状況をなんとか耐え抜けることを祈っていますし、いち早く事態が収束することを切に願うばかりです。

働き方改革には追い風

この一ヶ月の間に、仕事をめぐる環境は大きく変化しました。

不要不急の移動を避けるため、在宅勤務をはじめとするテレワークや時差通勤が推奨され、「時間や場所を問わない働き方」に向けて、大きく社会が動きはじめました。

政府が働き方改革を打ち出してからすでに4年。実態としてなかなか進まなかった労働環境の変化が、たった1ヶ月で大きく進んだ点を見ても、コロナウィルスが与える影響がとてつもなく強大であることが窺えます。

テレワークを導入した企業の方々の声を聞いてみると、一番大きく変わったと言われるのが会議。ビデオ通話のシステムなどを使って実際に会議をやってみると、ある程度の少人数であれば、対面でやっているのとほとんど遜色なく話し合いができることを実感した声が多いです。

会議室を抑える必要がないため「○○時まで行う」という制約が取り払いやすいです。加えて、オンライン通話は通常の対面よりも集中力が必要になるため、無意識のうちに「早く終わらせたい」という心理が参加者に働きます。

そのため、話の脱線や後戻りが発生しにくくなり、結果として短時間で効果的な会議ができるようになったという感想も少なくありません。いかに今まで、非効率で目的意識の低い会議に時間を奪われていたのかを思い知る機会となったようです。

また、オフィスにいないため、紙の帳票を使った情報処理ができなくなります。印刷するためにはプリンタが必要になりますが、在宅勤務をしているすべての社員が自宅にプリンタを備えているわけではありませんし、会社のパソコンと自宅のプリンタを接続できるわけではありません。

必然的に、メールやグループウェアなど、オンラインで完結するしくみで報告や連絡などの情報発信がなされることになります。印刷の必要もなく、ハンコを押す必要もありません。ペーパーレスは、今までみなが不要だと思いながらもなかなか改善が進まなかった領域の一つですが、結局、やろうと思えばいつでもオンラインに転換できたことを露呈しています。

そして何より、通勤をしなくて済むようになった効果は大きいです。片道1時間かけて通勤していたとして、往復2時間。この分がそのまま仕事に充てられるようになれば、仕事に伴う「拘束時間」が2時間削減できることになります。

その分を生活の時間や、自分の趣味・娯楽の時間に使うことができますし、家族全員で夕食を取れるようになるかもしれません。何より、満員電車に乗らないで済むだけで、ストレスも軽減され、より意欲的・生産的に仕事ができるようになります。単に拘束時間を短縮する以上の効果を与えてくれます。

もちろん、店舗や工場など物理的な設備や集客の必要性から、通勤をしなければ事業として成り立たない業態もあります。そのため、働くすべての人がテレワークにできるわけではありませんが、今回の騒動が収束した後も、オンライン会議、紙からの脱却、在宅勤務など今回の経験を活かして、テレワークが継続し、さらに普及していくことを期待しています。

夫婦共働きが前提になった現代においては、家事や育児とのバランスで常に時間との戦いが求められます。シニア世代にとっては、親の介護などの問題もあります。全員が同じ場所で、同じ時間帯で働くことを前提とした労働環境は、現代にはあまりにも窮屈です。

通勤をしなくて済むだけで、暮らしがずいぶんと楽になります。家庭の状況に合わせて、仕事をする時間帯や日程を選べるようになるだけでも、両立はしやすくなるでしょう。

労働時間管理や成果の評価方法など、法律や制度面での課題は残りますが、現代社会でのワークライフバランスを実現する上で、テレワークの普及は大きな一歩になったように思います。

仕事は与えられるものではなく、つくるもの

ただし、テレワークが導入できる前提として、各人が主体的・自律的に仕事ができていることが必要です。テレワークで仕事を行うためには、自己管理能力が求められます。

家にいると、仕事以外にもいろいろとできることがあるため、つい他のことに手を出したくなる誘惑に駆られます。周囲の目を気にする必要もないので、サボろうと思えばいくらでもサボれてしまいます。

加えて、主体的に仕事をする意識の乏しい方は、上司の指示・命令がないと何もしようとしなくなってしまいます。在宅勤務が「仕事をしなくていい」かのように捉えられてしまい、実態として単なる自宅待機のようになってしまうケースもあるようです。

もちろん、こうした状況に陥らないよう、在宅勤務であってもマネジメント層が適度に介入することは必要で、始業時に当日の目標や計画を確認し、中間や終業後に進捗確認とフィードバックを行うことが求められます。とはいえ、四六時中監視するわけにもいかず、介入するにも限度があります。

自分で動機づけを行い、規律を保てる方でないと、テレワークはかえって生産性の低下を招くことになってしまいます。時間と場所を選ばずに仕事をするためには、自己管理ができることが前提条件だと言えます。

そして、自己管理ができるか/できないかを左右する根本的な要素は、仕事に対する取組姿勢や意識にあります。「仕事は与えられるもの」という受け身の姿勢で仕事をしている人は、上司からの具体的な指示・命令や周囲の監視の目がなければ、仕事がはかどりません。仕事をすることに自分の意思がないからです。

今後、RPA(事務処理自動化)や人工知能をはじめとする技術が労働環境に深く入ってくるようになると、こうした方々に任せられる仕事が大きく減っていきます。与えられた仕事を指示通りに行うことは、コンピュータが最も得意とするところだからです。

それどころか、コンピュータは24時間365日働いても体調を崩すことはなく、メンタルヘルスを悪化させることもありません。人間関係でトラブルを起こすこともありません。事業を経営する立場からすれば、受動的にやってもらう仕事はコンピュータに任せる方がはるかに安心だし経済的です。

また、コンピュータ技術による仕事の自動化が進むようになると、確実に「労働(=Job)」の価値が下がります。仕事を与えられ、指示されるのを待っているという姿勢でいられることは、本人にとっても、事業主になっても非常に困る事態なのです。

一方で、主体的・積極的に仕事に取り組む姿勢がある人は、自ら仕事を創り出すことができます。たとえ上司から指示・命令がなくても、自分の仕事の役割や目標から、いま自分が何をするべきかを自分で考え、考えたことを実行に移すことができます。これが自律です。

加えて、自分の仕事に目的や意味を持っている人は、周囲の目がなくても、自分の意思で仕事を進めることができます。言われたからやるのではなく、自分がやりたいからやる。やるべきことだからやる。それが仕事(=Career)だからです。

こういう姿勢でなければ、価値を生み出すことができないですし、コンピュータで代わりがきかない存在になることもできません。だからこそ、現代のビジネスパーソンには自律性と独自のキャリア観が求められるのです。

いま、自分にできることはないか

不要不急の外出を控えざるをえず、上司の指示・命令や周囲の目がない、いまの環境で自分にできることがないかを考えましょう。自分の仕事の目的や役割、自分自身の将来像や目標があれば、いまのうちにやっておきたいこと、やっておくべきことが見えてくるはずです。

私自身は、3月に入ってからの集合スタイルの研修案件が軒並み延期や凍結になってしまい、スケジュールがガラ空きになりました。残ったのは、ごく少数の方とのミーティングやデスクワークで済むコンサルティング案件です。

準備していた仕事がなくなったり先送りになったりしたことは残念ではありましたが、一方でようやくまとまった時間ができたと安堵した面もありました。日頃から時間がなくて手つかずになっていたことが山積していたからです。

まず、日頃なかなかお目にかかれず、メールのやりとりだけになってしまっているお客様に対して、連絡をとりました。ちょうど年度終わりだということもあって、次年度の企画などお話したいことはいくらでもあったからです。

ただし、お客様も出勤自粛、テレワークになっている例も少なくなく、直接お会いできた方は思っていたほど多くはありませんでした。それでも、オンライン会議などのシステムを使って画面越しに会っていただける方もいて、いろいろなお話をすることができました。当初の予定どおり研修案件が続いていたら、設けることのできなかった機会です。

お客様とオンライン会議で話ができるようになると、こうしたツールをコンサルティングや研修に活用できないかというアイデアが生まれるようになります。対象者が遠隔地に散っているケース、短時間勤務や出張・外出が多く時間に制約があるケースなど、従来では無意識のうちに制限を設けていた領域にも提供できることが発見でき、それが次の提案につながります。

お客様と話をすればするほど提案したい企画が生まれ、それを書面に落とし込んでいるうちに、あっという間に1ヶ月が経ちました。騒動が収束した後を見越して、すぐに動き出せるように着実にスケジュールが埋まっています。

読書の時間も増えました。専門領域をさらに掘り下げたり、守備範囲を広げたりと、自分が対応できることの幅も広がっています。これが次のチャンスを創り出してくれます。

また、副次的には、出張が激減したことで家族と過ごす時間も増えました。時間管理でよく言われる「緊急ではないが重要なこと」に配分できる時間が増えて、非常に充実した1ヶ月だったように思います。

いま、自分にできることは何か。

これを考え続けることが、明日の仕事、来年の仕事を創ることにつながります。こうした姿勢でいる限り、少子高齢化であろうが、グローバル経済であろうが、人工知能が来ようが、しっかりと稼ぎ、生き抜いていくことができるだろうと私は考えます。

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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