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マネジメント

2025.7.11

のんびりした社員に危機感を持たせる方法

危機感のない社員が組織にもたらす問題

危機感のない社員をどう変えていくか。

これは多くの経営者や管理職が頭を悩ませている大きなテーマです。最近、私のもとにも「危機感のない社員が増えていて困っている」「のんびり仕事をしている社員のスイッチをどう入れればいいのか」という相談が増えてきました。

皆さんの職場にも「言われたことはやるけれど、それ以上はやろうとしない」「自分の仕事だけきっちり終わらせていればいい、会社の目標や経営状況は関係ない」という社員はいませんか?

こうした社員は、日々淡々と最低限の仕事だけをこなし、会社の方針や新しい挑戦、変化に対して関心を持たず、自分のペースでのんびりと仕事を進めています。新サービスがリリースされても反応が薄い、業績に危機が迫っていても当事者意識がない。「自分の仕事さえ終わっていれば問題ない」という感覚が根強く、積極的に改善や新たなチャレンジに取り組む姿勢が見られません。

このような社員が増えていくと、組織はどうなるのでしょうか。まず間違いなく、競争力が低下します。市場の変化や競合の成長スピードに追いつけず、業績は徐々に下降線をたどります。

そして、本気で現状を打開しなければと経営陣が危機感を募らせた頃には、優秀な社員から順に「ここはもうダメだ」と見切りをつけて離職していくのです。すると、やる気のない人ばかりが会社に残り、組織の活力はさらに失われてしまいます。立て直そうにも、既に手遅れ―そんな事態にもなりかねません。

危機感は「押し付け」では生まれない

今回の動画では、「危機感がない社員」にどうスイッチを入れるか、その具体的な方法について解説しています。社員に危機感を持たせ、自ら考えて行動する「自律型組織」への転換を目指すためにはどうすればいいのか。まず最初に大事なポイントは、「危機感は押し付けても意味がない」という事実です。

「危機感が足りないんだよ」「もっと危機感を持て」と上司や経営者がいくら声を荒げても、それだけで社員が自ら危機感を持つことはありません。人は、他人から押し付けられた危機感ではなく、自分自身が「本当にヤバイ」と腹落ちした時にこそ行動を変えるものです。

そのためには、「危機感を持て」と言い続けるのではなく、社員が「危機」を自分事として実感できるような「環境」と「仕掛け」を作ることが重要です。

私自身、経営コンサルタントとして10年以上、組織マネジメントや人材育成の現場に関わってきました。数多くの企業で次世代リーダー育成や社員研修を行う中で、「危機感のない社員を動かすためのポイント」がいくつか見えてきました。今回の内容は、そうした現場経験から導き出した「即効性」と「再現性」のある方法です。

情報の透明化が危機感を生み出す

では、どうすれば社員に危機感を「自分事」として感じてもらえるのでしょうか。

その第一歩が「情報の透明化」、すなわち会社のリアルな状況を包み隠さず社員に共有することです。経営数字や業績、経営環境の変化―これらの情報を経営陣だけが知っていて、社員には伝えていない会社がいまだに少なくありません。皆さんの会社はどうでしょうか?

私自身もコンサルタントになる前、いくつかの会社で働いていましたが、売上や利益は一部の幹部だけが知っていて、現場の社員にはほとんど公開されていませんでした。経営状況や財務がどうなっているのかは知る由もなく、数字の動きを体感する機会がないまま、日々仕事をしていました。

こうした状況では、社員はなんとなく「会社は順調なんだろう」と思い込み、実際に会社が危機的状況に陥ってから慌てる―というケースが非常に多いのです。

たとえば、売上や利益がじりじりと下がり続け、いよいよ厳しいという段階で初めて「実は今、経営が苦しいんだ」と告げられても、社員はすぐには危機感を持てません。「そんなに悪かったなら、もっと早く言ってほしかった」「知らなかったから何もできなかった」と混乱や不満が広がり、会社の立て直しはより難しくなってしまいます。

社員に「自分事」として危機を感じさせる

では、どうやって「情報の透明化」を進めていけばよいのでしょうか。

まずは売上や利益などの主要な経営指標を、月次や四半期ごとにシンプルなレポートにまとめて定期的に社員と共有することが有効です。会議やイントラネット、社内SNSなど、全員がアクセスできる方法を使い、現状がどうなっているのかを「見える化」していきましょう。

また、会社の業績だけでなく、業界の動向や競合他社の取り組みについても発信していくことが大切です。たとえば、「同業他社A社は新サービスを始めて大きく成長している」「B社はDXを積極的に進めている」など、外部の変化や業界のトレンドも合わせて伝えます。自社が「何も変わっていない」「このままでは取り残される」という現実を、全員が具体的にイメージできるようにすることがポイントです。

ある会社では、毎月「競争環境レポート」を作成し、業績だけでなく業界の動向や他社の新しい取り組みを全社員で共有しているそうです。これにより、「自分たちも何かやらなければ」という空気が自然と生まれ、変化に対する感度が高まる効果が出ています。

また、「このまま売上が減り続けたら3年後、5年後はこうなる」というシミュレーションを見せることも、社員にとっては大きなインパクトになります。

情報公開は「危機感」の土台

もちろん、経営指標や数字をすべてフルオープンにする必要はありません。

ただ、売上・営業利益・原価率・財務の安全性など、主要な項目だけでも分かりやすくまとめて伝えることで、社員の意識は大きく変わります。数字だけでなく、「原材料費やエネルギーコストが上がっている」といった日々の環境変化も合わせて伝え、「今までと同じやり方では通用しない」という感覚を持ってもらうことが大切です。

こうして「経営のリアル」を社内でオープンにしていくことで、社員一人ひとりが「自分たちの会社が今どんな状況にあるのか」「このままだと本当にやばいかもしれない」と実感し始めます。これが危機感を「自分ごと」として持つための第一歩です。

目標設定を工夫して「現状維持」を打破する

危機感のない社員を変えるための第二のポイントは、「目標設定の工夫」です。

なぜ多くの社員が現状維持で満足し、のんびり仕事をしてしまうのでしょうか。その理由の一つは、「自分が何をしなければならないのか」が明確でないことです。「今まで通りやっておいて」といった曖昧な指示や、数値化できない抽象的な目標しか示されていない職場では、社員は「今までと同じでいいんだな」と受け止めてしまいます。

そもそも現状維持というのは、社会や市場が変化し続けている以上、実は「停滞」や「衰退」を意味しています。世の中が一歩ずつ進化している中で、何も新しいことをしなければ、組織は相対的に遅れていきます。ですから、危機感を生み出すためには「ストレッチの効いた具体的な目標」を設定し、「このままでは達成できない」「もうひと頑張りしないと現状維持すら難しい」と社員自身が実感できるような状況をつくることが重要です。

特に、目標を「前年比率」などの相対指標で示すのはおすすめできません。比率だけでは、実際にあとどれだけ頑張れば良いのか、社員が自分事として捉えにくくなります。営業職であれば「受注何件」「売上何万円」、バックオフィスであれば「書類処理何件」「問い合わせ対応何件」など、なるべく「実数」でカウントできる目標に変換することが効果的です。具体的な数値目標があればこそ、「このままじゃ達成できない」「ヤバイ」という危機感につながるのです。

加えて、社内の競争意識を適度に高めることも有効です。ランキングや表彰制度を導入し、成果を見える化することで「自分も負けていられない」という気持ちが芽生えます。

もちろん競争が激しすぎて殺伐とした雰囲気になるのは望ましくありませんが、適度な緊張感は組織の活性化につながります。「身近な同僚が頑張っている」「あの人には負けたくない」―そんな小さなきっかけでも、社員のやる気スイッチが入ることは多いのです。

さらに大切なのは、「目標の進捗」をリアルタイムで可視化することです。

プロジェクトの進み具合や部門ごとの業績、個人ごとの達成状況など、数字を定期的に社内で公開していくことで、社員は自分の立ち位置を意識するようになります。これがモチベーションの維持や危機感の醸成につながっていくのです。

成功事例を社内で「見える化」し、巻き込み力を高める

三つ目のポイントは、「成功事例の社内共有」です。

新しいことに挑戦した社員や、成果を出した社員のストーリーを全社員で共有する仕組みを作りましょう。これは危機感の喚起と同時に、「変化や挑戦への前向きな空気」を社内に広げていく効果があります。

なぜ社内事例が大事かというと、外部の有名企業の話や業界の成功例を紹介しても、多くの社員には「それは自分たちの話じゃない」と遠い世界のことに感じられてしまうからです。一方で、社内の身近な先輩や同僚の事例は、「自分にもできるかもしれない」「自分もやってみよう」というリアルな刺激になります。

成功事例の共有は、イントラネットや社内SNS、社内報、全体ミーティングなど、あらゆる社内メディアを活用して行いましょう。単なる業績だけでなく、「新しいプロジェクトに挑戦した」「今までになかった方法を試してみた」「失敗もあったが、そこから学んで改善につなげた」といったストーリー性のある内容が効果的です。

また、金銭的なインセンティブだけでなく、「表彰」や「称賛」の仕組みも大切です。みんなの前で「この人は挑戦した」「新しい取り組みをした」と発表されることで、「失敗しても挑戦が評価される」という前向きなカルチャーが根付きます。これにより、少しずつ「現状維持からの脱却」を目指す人が増えていき、やがて組織全体が変わり始めます。

変化を急激に押し付けることはNG

ここまで「危機感を持たせる3つの具体策」を紹介してきましたが、最後に大事な注意点があります。それは「急激に厳しくしすぎないこと」「恐怖やプレッシャーだけで変えようとしないこと」です。

今までのんびりとした空気だった職場で、いきなり「鬼軍曹」のような厳しさで改革を迫れば、必ず強い反発が起きます。人は急激な変化に抵抗しがちですし、「怒られないためにやる」「バレないようにだけやる」という消極的な行動に流れてしまう恐れもあります。恐怖や不安だけで短期的に動かしても、長続きはしませんし、組織の雰囲気は悪化するだけです。

大切なのは、「前向きなメッセージ」と「小さな成功体験の積み重ね」です。「会社がこれからもっとパワーアップしていく」「一緒に進化しよう」という未来志向の言葉を使いながら、少しずつ空気を変えていきましょう。

社員が自律し、主体的に動く組織へ

危機感のない社員にスイッチを入れ、自ら考え行動する自律型組織へと変革していくためには、「情報の透明化」「目標設定の工夫」「成功事例の共有」という三つのアプローチを、粘り強く続けていくことが不可欠です。

すぐに効果が現れるわけではありませんが、あきらめずに取り組み続ければ、必ず「自分で考え、動く」社員が増えていきます。そうなれば、会社の競争力も高まり、どんな変化や困難にも柔軟に対応できる強い組織になっていくことでしょう。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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