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リーダーシップ

2025.7.31

信用を積み上げるには長い時間がかかるが、失うのは一瞬

最近、世間を騒がせた有名配信者や著名人の話題がニュースで取り上げられていますが、そこから改めて「信用」「信頼」という言葉の重みについて考えさせられます。

たとえば、表舞台に突然姿を見せなくなった著名人の中には、一度のコンプライアンス違反をきっかけに一瞬で信用と信頼を失い、長年かけて築いてきたキャリアを失ってしまった人もいます。これらの事例は芸能界や大企業だけの話ではなく、私たちが日常のビジネスの中でも無関係ではありません。

そもそも、「信用」と「信頼」は似ているようでいて、意味に違いがあります。信用は過去の実績に対する評価です。たとえば銀行や信用金庫が行う「信用調査」は、これまでその人が約束を守ってきたか、きちんと返済をしてきたかどうか、過去の取引実績を見て評価を下します。

一方で「信頼」とは未来への期待値であり、「この人なら大丈夫だろう」「きっと約束を守ってくれるだろう」といった、これから先に向けた期待が込められているのです。

私たちが仕事をするうえで、この「信用」を少しずつ積み重ねていくことは非常に大切です。初めて取引をする相手は、まだ信用がありません。そのため、大きな案件をいきなり任されることはなく、「本当に大丈夫だろうか」「納品はきちんとされるだろうか」と、相手も慎重になります。

最初は小さな案件や少額の取引からスタートし、しっかりと約束を守り続けていくことで、「この人なら信じられる」と評価され、次第に大きな取引やより重要な仕事を任されるようになっていきます。

信用の積み重ねがビジネスの信頼につながる

たとえば、私自身もいきなり大きな仕事を任されることはありません。最初は20万円、30万円程度の単発の研修やセミナーからスタートし、その納品や実施内容に満足していただけることで、次は2本、3本と案件を依頼されるようになります。

そして、さらに信用を積み重ねていくと、やがて「うちの研修全体をお願いします」と、より大きなプロジェクトを任されるようになります。このように信用は少しずつ積み重なり、重ねるごとに大きくなっていくものです。

やがて信用が十分に積み重なると、「この人ならさらに大きな案件を任せても安心だろう」と、未来への期待、すなわち「信頼」につながっていきます。

信頼されると、そのお付き合いが継続されるだけでなく、より大きな取引や新たなビジネスチャンスが巡ってきたり、自分の知り合いに紹介されたり、口コミで評判が広がるなど、良い循環が生まれます。

一方で、信用を失うのは本当に一瞬です。何ヶ月、何年もかけて積み上げてきた信用も、不適切な言動やたった一度の失敗で一気に崩れ去ることがあります。

たとえば飲食店で食中毒が発生した場合、そのお店にはお客さんがぱったり来なくなるといったケースがまさにその例です。商売において信用を失えば仕事が来なくなりますし、取引停止や悪い評判が広まるなど、再起が難しくなるほどの大きな損失につながります。

信用を守るための基準は高く持つべき

信用を失わないためには、明らかな違反行為はもちろん、グレーな言動にも注意しなければなりません。世間のコンプライアンス意識が年々高まる中、「これぐらいは大丈夫だろう」という油断や慢心が大きなトラブルの火種になることがあります。

私の場合、講師業をする中で「使ってはいけない言葉」というものがあります。例えば、一般的に「話の内容に納得がいく」「腑に落ちる」という意味で用いる「腹落ち」という言葉も、負のイメージを連想させることもあり、避けるのが望ましいとされています。決して明確にNGではなくても、ハードルを高く設定し、常に基準を高めに設定しておくことでリスク回避につながります。

改めて「コンプライアンス」について考えてみましょう。本来は「命令や要求に従うこと」を意味し、日本では「法令順守」として訳されることが多い言葉です。例えば、お酒を飲んだら車に乗ってはいけない、18歳未満と交際してはいけないなど、法律で明確に定められていることは当然守らなければなりません。しかし、問題は法律に触れていないからといって何をしても良いわけではない、ということです。

世間を賑わせた著名人の事例でも、「法律違反ではないが倫理に反していた」というケースが多々見受けられます。加えて、社会規範や会社の就業規則など、法令よりもさらに細かいルールも存在します。法律的にはセーフでも、会社としてアウトとされるケースも少なくありません。社会や組織の中で信頼を集め続けるには、こうした規範やルールをしっかり意識し、自らを律していくことが求められるのです。

コンプライアンス意識が自分と組織を守る

ビジネスを長く続けていくためには、信用と信頼を損なうことなく、常に正しい行動を意識する必要があります。それは単に自分のブランドやビジネス価値を守るためだけでなく、雇用されている社員やスタッフの働く環境を守るためでもあります。たとえばパワハラやセクハラ問題などは、個人の信用を一瞬で失わせるだけでなく、会社全体の評判や存続にも大きく影響します。

また、信用や信頼を損なえば、最悪の場合には社会的制裁や法的リスクを負うことにもなりかねません。会社員であれば、信頼を失うことで職場に居づらくなったり、昇進や昇給のチャンスを失ったりする可能性もあります。自営業者や経営者であれば、一度の失敗が事業の継続に直結する場合も多いのです。

だからこそ、自分の基準を常に高く持ち、法令だけでなく倫理や社会規範も守る意識が欠かせません。「少しくらい大丈夫だろう」「誰も見ていないから」といった甘えや油断を捨て、どんなときも誠実な姿勢を貫くことが、長い目で見たときに一番大きなリターンをもたらします。

信用を守るために今日からできること

では、具体的にどんなことを意識すればいいのでしょうか。まず、自分の行動や言葉のひとつひとつが「信用を積み上げるか」「信用を失うか」に直結していると自覚することです。

納期や約束は必ず守る、できない約束は絶対にしない、不明点やトラブルがあれば早めに報告・相談する、社内外問わず相手に誠実な対応を心がけるなど、これらはいずれも特別な能力やスキルがなくても今すぐ始められることばかりです。

また、社内であれば「自分の会社の信用を守る」「お客様に信頼される仕事をする」という視点を持つことで、自分の行動基準もより高くなります。自営業者や経営者であれば、会社全体のブランドイメージや従業員の働く環境にも影響を及ぼすため、なおさら日頃の姿勢が大切です。お互いを信頼し合える空気ができれば、組織全体のモチベーションや成果も高まっていきます。

最後に、信用や信頼は「小さな積み重ね」が大切だということを、ぜひ心に留めましょう。今日の一つひとつの行動、何気ないやりとりが、未来の大きな信用につながります。急がず焦らず、誠実さを忘れずに毎日を積み重ねていくこと。それが最終的には、自分自身の最大の資産になるのです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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