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2015.2.27
前回の続きです。
ビジネスの基本的なモデルを考えた時、商品やサービスといった価値を生み出し、経営の4資源をより高いレベルに引き上げてくれる「人」の存在こそが、企業活動の要であることを述べました。
では、人はどうやったら育てられるのでしょうか。
結論から言うと、私の考えでは「人が育つ環境を作る」という一言に尽きるのではないかと思います。
企業や組織における人材開発のアプローチは、
・Teaching(教える)
・Coahing(育てる)
・Caring(大事にする)
という、大きく3つに分けられると私は考えています。
そして、この3つのアプローチが正常に作動する「システム」を構築することが、「人を育つ環境を作る」ことになるのではないでしょうか。
これらは、人材の成長段階になぞらえて考えると理解しやすいと思います。
新入社員が、若手→中堅→管理職とキャリアアップするケースで考えてみましょう。
1.できない→わかる
新入社員は、当然のことながら、会社や商品に対する理解、ビジネスの基本的な能力が形成されていない状態です。
言うならば、まだ仕事が「できない」状態です。
彼ら/彼女らが仕事ができるようになってもらうためには、まずは会社や商品、スキルについての情報・知識を習得してもらう必要があります。
すなわち、仕事について「わかる」状態に引き上げるのです。
情報や知識を習得してもらうには、研修やOJTを通じて「教える」というアプローチが有効になります。
2.わかる→できる
情報や知識を習得すると、何をしたら仕事ができるのかを理解することができます。
しかし、理解しただけで仕事はできるようになりません。
現実は頭で思い描いた通りにはならないからです。と言うより、最初はならないことの方が多いと言えるでしょう。
そのため、仕事ができるようになるためには、習得した知識と情報を現実世界で再現するための「練習」を行い、行動と結果を通じた体験学習をすることが必要になってきます。
練習させるアプローチとして、研修や訓練を通じて「教える」ことももちろん有効です。特に、事務や製造など顧客と直接接することのない組織であれば、練習用の環境を作って本番さながらの場面で「練習」を行うことができます。
しかし、営業職など顧客と直接の接点があるケースでは、お客様を練習台にするわけにはいきません。
その場合、先輩や上司が相手役となって、ロールプレイングをするなど、可能な限り本番を想定した練習を意図的に行うことが必要になってきます。
とは言え、実際にはそれだけでは不十分です。確実に成果をあげるには、本番の行動と結果を通じて、自分にはさらに何が必要なのかを追求する必要があります。
例えば、野球になぞらえるならば、いくらバッティングセンターで打撃練習をしても、試合で確実に打てるようになるわけではありません。どんなボールが飛んでくるかわからないからです。
本番の試合で結果を出せるようになるためには、練習に加えて、試合の結果を振り返るというアプローチも必要になってきます。
ビジネスでも同じことが言えます。新人の営業職が、いくら社内でロールプレイングを積み重ねて上達したとしても、本番で商談がうまくいく保証はありません。
なぜなら、相手が違うからです。営業先の会社によって、担当者によって、時期によって、状況は毎回変わってきます。
そして、こうした本番の行動と結果を振り返る上では、「教える」アプローチだけでは指導することは困難です。
上司や先輩が常に一緒に行動していれば、状況を観察できる可能性もありますが、その場合は新人一人で訪問したよりも商談の成功確率が上がってしまいます。
実際のお客様を相手にしている以上、同行していて上司や先輩が新入社員に任せきりでいっさい口を出さないことは考えられないからです。
それに加えて、
・本番がどういう状況であると捉えたのか
・自分はどういう心境だったのか
・どういう準備をしていたのか
など、本人の内部も含めた本番の状況を正確に把握しているのは、本人以外にはありえないからです。
つまりこの場合、行動と結果のプロセスから学習するためには、新入社員本人が
「自分で考える」
ことが欠かせません。
この場合には、「教える」というアプローチ以上に「コーチング(=支援し、育てる)」というアプローチが非常に有効になってきます。
人は他人から知識で習得したものよりも、経験を通じて自ら考えたことが、学習の結果として定着し、能力として備わっていきます。
直接「教える」だけではなく、いかに発見と気づきを促して「本人に考えてもらうようにするか」が、「わかる」段階から「できる」段階へステップアップする効果的なアプローチとなるのです。
次回に続きます。