リーダーシップ
2025.12.12

目次
組織を率いるリーダーが、人を動かし、周囲に影響を与える存在になる上で、決して欠かすことができないのが「自分が何をやっていくのかを、自分の頭で考え、自分で決めて、その決めたことを実行していく」というセルフマネジメントです。
そして、その出発点になるのが、「個人としての将来ビジョン」を設定することです。会社や組織としてのビジョンも大切ですが、同じくらい個人としてのビジョンも重要です。
3年後、5年後、10年後に自分はどうなっていたいのか。どんな人でありたいのか。どんな能力を身につけていたいのか。人事異動などで職場は変わるかもしれませんが、もし今の職場にいたとしたら、自分のチームをどうしていたいのか、部下や若手をどこまで引き上げていたいのか。こうしたことを、少し妄想に近いくらい自由に思い描くのが「ビジョン」です。
ビジョンを掲げると、当然ながら今の自分とのギャップが見えてきます。そこでまず取り組まなければいけないのが「顕在的な課題」です。今の段階で明らかに、理想と現実、目標と実態がずれている部分があって、「これはさすがに何とかしないとまずい」という課題があります。これは比較的、短期で解決したい目標となります。
ただし、それだけを追いかけていると、どうしても目先のことだけに追われてしまいます。そこで大事なのが、「今すぐではないけれど、このまま放っておくと3年後・5年後に確実に困る」というテーマを、あえて長期目標として設定することです。短期で取り組む課題と、中長期で取り組む課題。この二本柱で目標を立てていく必要があるのです。

ここで重要になってくるのが、目標と計画の関係です。
目標を達成させる上では、計画を緻密に立てる必要があります。『7つの習慣』というベストセラーの自己啓発書の中に、「すべてのものは二度つくられる」という有名なフレーズがあります。物事は「知的創造」と「物的創造」という2つの段階で作られていくという考え方です。
知的創造とは、頭の中で先にイメージを組み立てることです。物的創造とは、そのイメージを現実の世界で形にすることです。例えば、立派なビルが建っているとします。これは、適当に部材を集めて適当に組み上げた結果、たまたまその形になったわけではありません。必ず先に、設計士が頭の中で一度緻密に組み立て、設計図として描いています。
頭の中で「この構造ならちゃんと建つ」というイメージをつくり、設計図を描き、その図面に基づいて必要な部材を調達し、施工計画を立てて現場で再現する。だからこそ、ビルは倒れずに完成します。つまり、必ず「知的創造」が「物的創造」に先立っているのです。
この考え方は、建築に限った話ではありません。私たちの行動や成長、目標達成のプロセスも、すべてこの「二度つくられる」構造になっています。例えば、ダイエットを考えてみましょう。痩せたいと思ったとき、最初に必要なのは「痩せた自分」のイメージです。ただ痩せた姿を妄想するだけではなく、「何をすればそこに到達できるのか」を理にかなった形で考えることが大事です。
運動を増やすのか、食事を整えるのか、ストレスを減らすのか。さらに、どれくらいの頻度で、どんな運動をするのか、どの程度の食事改善をするのか。こうした具体策を頭の中で組み立て、「これならいけそうだ」という感覚が持てて初めて、その行動を現実のものにできます。
同じように、3年後の自分の姿を思い描くときも、「どんな知識を身につけていたいか」「どんな能力を伸ばしたいか」「どんな意識やスタンスで仕事をしていたいか」を一度頭の中で描きます。その上で、「ではそのために、今からどんな行動をどれくらいやるのか」を考えていく。これが、目標と計画の関係なのです。
意識や能力は、行動の積み重ねから「後付けで」変容すると私は考えます。だからこそ、「理にかなった行動」を設定し、それを自分のスケジュールの中にどう落とし込むのかを考えることが重要なのです。
ここで、長期目標を考えるときにとても役立つのが「101%の法則」です。これは、青山学院大学の駅伝の原監督がインタビューの中で紹介したとされ、有名になった考え方です。内容はとてもシンプルで、「塵も積もれば山となる」「微差が大差になる」という話を、数字で示したものです。
今日の自分の状態を100%だとします。ここから「今日だけ、ほんの1%だけプラスアルファの努力をする」と考えてみてください。新しいことを1つやってみる、少しだけレベルの高いことに挑戦する、いつもより丁寧に取り組む。何でも構いませんが、とにかく「プラス1%」を上乗せして終えるイメージです。
そうすると、その日の自分は101%で一日を終えることになります。翌日、101%になった自分が、さらに1%プラスの努力をすると、今度は「101%の2乗」になり、約102.01%になります。同じように、3日目、4日目と「昨日の自分に1%上乗せする」ことを続けていくと、数学的には「101%の365乗」という計算になり、1年後には約3778%、つまり38倍程度の成長につながるのです。
最初のうちは、ほとんど変化を実感できないでしょう。グラフで表すと、しばらくはほぼ横ばいに見えます。しかし、一定のポイントを越えたあたりから、グッと伸び始める地点が出てきます。これが、いわゆる「ブレークスルーポイント」です。地味な努力を積み重ねていた人が、ある瞬間から急に成果を出し始めるのは、このためです。
一方で、「今日は何もしない」という選択をするとどうなるでしょうか。多くの人は、「何もしない=100%のままキープ」と考えがちですが、実際にはそうではありません。世の中は毎日少しずつ前進しており、環境も技術も価値観も変化しています。
もし世の中全体が毎日1歩ずつ前に進んでいるのに、自分だけがその場に立ち止まっていたら、相対的には「1歩後ろに下がっている」のと同じことになります。これを数字で表すと、何もしない自分はマイナス1%、つまり99%と同じ扱いになってしまうわけです。この99%の状態を365日続けると、今度は「99%の365乗」という計算になり、約2.5%、つまり40分の1まで落ち込むことになるのです。
つまり、「たった1%」の差が、長期ではとてつもない違いを生むということです。本当は、プラス1%では現状維持がやっとで、世の中の変化を考えればもっと頑張らないと追いつかないかもしれません。ただ、それでも「何もしない」のと「少しだけでも前に進む」のでは、長い目で見たときに雲泥の差が開きます。

短期の目標達成は、短距離走のようなものです。時間やエネルギーを一点に集中して、一気にゴールを目指します。例えば、資格試験などはその典型です。数年間にわたり、毎日何時間も集中して勉強を持続するのは、極めて困難です。「試験までの数ヶ月間は集中してやる」と期間を決めて、一気に追い込みをかけます。これはこれで、とても有効な戦い方です。
一方で、「美意識を高める」「当事者意識を身につける」「前向きな思考習慣を身につける」「コミュニケーション能力を高める」といったテーマは、短距離走のようにはいきません。たかだか数週間、数ヶ月の取り組みで到達できる目標ではないし、そもそもゴールが明確に定められるものでもありません。数年単位でコツコツと積み重ねていく領域なのです。
こうしたテーマは、マラソンのような長距離走型の目標です。長期的な視点で、「今日の1%」を積み上げていく意識が必要になります。地味で、成果が見えにくく、途中でやめてしまいたくなることも多いのですが、その「微差の積み重ね」がいつか「大きな差」になると信じて、やるべきことをコツコツと、淡々と続けていくことが求められます。
結局のところ、セルフマネジメントとは「やることを決めて、決めたことをやる」という、ごくシンプルで単調で退屈な営みの繰り返しです。しかし、そのシンプルなことを、長い時間をかけて続けられるかどうかが、リーダーとしての成長や、変革を推進する力を大きく左右します。リーダーには長期的な目標を達成させる力が求められるのです。
では、やると決めた目標を達成させるためには、具体的にどのようにセルフマネジメントを行っていけば良いのでしょうか。
多くの場合、「意思を強く持つ」「モチベーションを保つ」「気合を入れ続ける」などマインド的なアプローチで考えがちです。しかし、人間誰しも心身に好不調の波があります。物事を継続的に行っていく上で、マインドだけでマネジメントしようとするには無理があります。
そのため、好調不調にかかわらず、物事を続けていける「しくみ」をつくることも併せて考える必要になります。しくみというと大層なシステムを構築しなければならないように思うかもしれませんが、たった2つの要素を整えるだけでしくみは機能します。それは「ルール」と「ツール」です。
まず必要なのは、長期の目標に向かって、自分が「いつ」「何を」「どれだけ」行うのかを明確に「ルール」として定めることです。そして、そのルールに沿って必要な行動を、必要なタイミングで、必要な量だけやれているかを記録し、可視化するために必要なのが「ツール」です。
ルールとは、いちいちその場で迷わないようにするための「行動基準」です。例えば、「1日10分は本を読む」「週に2回は筋トレをする」「月に1回は自分のキャリアについて棚卸しをする」といった形で、やるべきことのタイミングやボリュームを事前に決めるのです。
その場その場で「今日はどうしようかな」と考えているようだと、それだけで時間とエネルギーを浪費してしまい、物事が前に進みにくくなります。なるべくワンパターンにして、「何も考えなくても、慣れでできる」状態を目指していくのです。
例えば、筋トレで考えてみましょう。「時間があるときにやろう」ではなく、「週に2回、仕事から帰ったらスクワット・腕立て・腹筋を10回ずつ2セットやる」とタイミングとメニューを決めておく。こうしておくと、やるべきことを迷わずできるようになります。これがルールです。
一方、ツールとは、そのルールを守れているかどうかを管理するための「記録媒体」です。
紙の手帳やノートでも構いませんし、Excelでもスマホアプリでも構いません。大事なのは、「自分がやると決めたことを、決めた通りにできているのか」を目に見える形で記録しておくことです。やった日にはチェックマークをつける、できなかった日には空欄のままにしておく、それだけでも効果があります。計画に対する進捗が確認できるのです。

参考までに、私自身がどのようにセルフマネジメントをしているかをお伝えします。私は朝起きたら、まず最初に手帳の1ページ目を開きます。そこには、自分の会社のミッションとビジョン、2029年までの経営目標、そして今年の仕事とプライベートの目標が書いてあります。それを毎朝確認することを、モーニングルーティンにしているのです。
なぜそんなことをしているかと言うと、人はすぐに目標を忘れてしまうからです。目標を達成できない最大の理由は、「能力不足」ではなく「忘れてしまうこと」だと私は思っています。年初に「今年こそダイエットする」「今年こそ資格を取る」と決めても、日常が始まると目の前の仕事に追われて、気がつけばその目標のことを考えなくなってしまう。そして、年が明けるたびに同じことを繰り返すわけです。
だからこそ、「自分は何を目指しているのか」を毎日思い出すための儀式が必要になります。私はその儀式として、毎朝手帳の最初のページを開き、自分のビジョンと目標を読み返すことを続けています。これによって、その日の行動が「何のためなのか」とつながりやすくなりますし、長期目標を頭の片隅に置きながら日々を過ごすことができます。
次に、年間の計画です。私は、年初にその年の目標を数値や行動レベルに落とし込み、「何をもって前進とみなすか」という指標、いわゆるKPIを決めます。そして、そのKPIが月ごとにどうなっているかを集計して、手帳に記録していきます。さすがにこれは毎日は見ませんが、定期的に見返して「予定どおり進んでいるか」「遅れているか」を確認します。
当然ながら、計画どおりにいかないこともたくさんあります。全部が順調に進んでいるわけではありませんし、「これは全然できていないな」と反省する項目もあります。それでも、うまくいっていないことを「ちゃんと可視化しておく」ことが大事なのです。記録していないと、自分がうまくいっていないことにすら気づかないまま時間だけが過ぎていきます。
問題解決は「現状を測ること」から始まります。うまくいっているのか、いっていないのか。どのくらいギャップがあるのか。その認識がない限り、改善のしようがありません。だからこそ、年間目標に対する進捗を記録するというシンプルな作業が、とても重要なセルフマネジメントになるのです。
年間の目標とKPIを決めたら、次にやるべきは「月の計画」です。私は、この月間計画にかなり力を入れています。私の仕事はスケジュール商売で、少ない月でも10本、多い月だと15〜16本の登壇があります。つまり、常に複数の案件が並行して動いている状態です。
ある週はセミナーや研修が2日だけということもあれば、月曜から金曜までフルで登壇していることもあります。その裏側では、教材や配布資料を事前に作成し、印刷の手配なども行わなければなりません。「どの案件を、いつまでに仕上げないと事故になるのか」を把握しておかないと、あっという間に締め切りに追われてパンクしてしまいます。
そこで私は、毎月の初めに「今月はこの順番で、この仕事をこのタイミングまでに進める」というシナリオをざっくり組みます。とはいえ、デスクワークだけしていれば良いわけではありません。
月に4〜5日ほどしかまとまったデスクワークの日がない月もあり、その中に打ち合わせや訪問予定などがぎっしり入ってきます。デスクワークの時間を確保するのは、隙間をかき集めるような作業です。だからこそ、「どの日に、どこまで進めるか」を前もって考えておかないと、とても回りません。
月間計画が決まったら、次は週間の計画です。最近は以前ほど細かくは作っていませんが、それでも「今週やるべきこと」をいつやるのかという目処を立てるために、1週間の流れを計画します。動かせない予定、つまり登壇や会議などを先にスケジュールに書き込み、そのうえで空いている時間に「今週やるべきタスク」を割り当てていきます。そのときに、「本当に今週中に終えられるのか」という現実性もチェックします。
そして最後に、週間の計画に基づいて「今日1日をどう過ごすか」を決めていくわけです。 ここまで聞くと、「そんなに細かくやるのは大変そうだ」と感じるかもしれません。確かに、ここまで緻密にやる必要はないかもしれません。ただ、考え方として「頭の中で実現できないことは、現実でも実現できない」ということだけは押さえておきましょう。物的創造の前には、必ず知的創造が先立つのです。
セルフマネジメントとは、突き詰めると「やることを決めて、決めたことをやる」これを繰り返すだけです。しかし、その「決めたこと」を現実のスケジュールに落とし込めないと、結局は絵に描いた餅になってしまいます。だからこそ、長期のビジョンから年間・月間・週間・日次の計画へと、段階的につないでいくことが大切なのです。

セルフマネジメントを計画的に進めていく上で、最初に必要となるのが目標設定です。これまでの話を踏まえて、短期・長期の両方の視点で目標を設定することで、喫緊の課題と将来的な課題の両方に目を向けた活動ができるようになります。具体的には、3ヶ月後と3年後の自分の姿、「成し遂げたいこと」や「ありたい姿」を決めましょう。
その上で、「その姿に近づくために、どんな課題に取り組むのか」「何を」「どれだけ」「いつまでに」やるのかを、できる限り明確に、具体的に描き出します。
例えば、目標が「資格を取る」だとします。この場合、資格に合格するという結果が目標になります。それを実現するためには、「テキストを読む」「問題集を解く」などの課題に取り組む必要があります。
さらにそれを、「テキストを1日10ページずつ読み、3ヶ月で1冊終える」といった形で、「何を」「どれだけ」「いつまでに」という具体的な行動に落とし込むことで、日々のスケジュールに組み込めるようになります。
多くの人がつまずくのは、この「落とし込み」の部分です。目標を立てること自体は比較的簡単ですし、「何をやればよさそうか」という大枠のイメージも持てる人は多いです。しかし、それを自分の1日や1週間の時間の中にどう組み込むかという段階で、思考が止まってしまうことがよくあります。ここには、「イメージする力」と「必要な知識」の両方が求められます。
組織を率いるリーダー・マネージャーの仕事においては、これは非常に重要な能力です。会社から業績目標が降りてきて、それを自分のチームのメンバーにどう割り振るかを考える場面をイメージしてみましょう。どのプロジェクトを誰に任せ、どのくらいのペースで進めれば期限に間に合うのか。「何を」「どれだけ」「いつまでに」やる必要があるのかを逆算して考える力がなければ、マネジメントは機能しません。
同じことが、自分自身の成長にも当てはまります。目標だけ立てて満足するのではなく、「その目標を現実にするために、どんな行動を、どんな順番で、どのくらいの期間続けるのか」を具体的に描いていく。このプロセスこそが、セルフマネジメントであり、リーダーとしての自己成長計画そのものです。
変革を推進するリーダーにとって、すべての道は「Lead the self」から始まります。自分を導けない人は、他人を導くことも、組織を変えることもできません。
だからこそ、長期のビジョンを描き、短期と長期の目標を二本柱で立て、やることを決めて決めたことをやる。そのためのルールとツールを整え、日々の行動に落とし込んでいく。この地道なセルフマネジメントの積み重ねが、やがて大きな変革を生み出す原動力になることでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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