お問い合わせはこちら

コミュニケーション

2026.2.7

仕事を頼みにくい「気難しい」への対処法

管理職が抱える事務員への悩み

人材育成のコンサルティングや管理職研修を行っていると、しばしばこのような相談を受けます。

「総合職の部下についてはあまり問題がないのですが、少し厄介なのは事務員なのです。必要最低限の仕事しかしない、新しい仕事を頼もうとすると嫌そうな顔をする、周囲が忙しくても手伝おうとせず定時で帰ってしまう、チームが繁忙期でも平然と有給休暇を申請してくる。どう指導したら良いのでしょうか。」

もちろん、すべての事務員がそうではないでしょう。協力的に周囲に気を配り、手を差し伸べる方も多くいらっしゃると思います。しかし、一部にこうした対応が難しい方がいるのもまた事実です。組織のパフォーマンスを上げるためには、そのままにしておくわけにもいきません。今回はこうした方々の背景心理を踏まえた上で、どのように対処していけばよいのかを解説いたします。

気難しい態度の背景にある4つの心理

なぜこのような態度をとるのか、考えられる原因は大きく4つあります。

リスク回避と自己防衛

こうした方々も、初めからそうだったわけではないケースもあります。以前に他の人の仕事を手伝ったら、自分の仕事が終わらなくなった。一度引き受けたら、どんどん雑用が増えて便利に扱われた、といった経験があると、「安易に引き受けてはいけない」と線引きするようになります。イレギュラーな仕事を一度でも引き受けたらすべて自分の仕事にされてしまう。そうしたことから身を守るための態度である可能性もあるのです。

役割認識のズレ

「事務職というのは決められた仕事」「ルーティンワークをテキパキとこなす存在だ」という職業イメージが強すぎる場合もあります。総合職の人たちが忙しそうにしていても、それは彼らの問題であり、自分は事務職として事務の仕事に集中するという認識です。チームとしての一体感を感じていないことの現れとも言えます。ある意味ではプロ意識とも言えますが、その線引きが強すぎたり、認識そのものがずれている可能性があります。

自己重要感の不足

上司や同僚、チームメンバーから認められていない。大切にされていない。下に見られている、という感覚があると、「そういう扱いをされるのであれば、それにふさわしい仕事で済まそう」という心理が働きます。例えば、営業担当者が受注を獲得すれば褒められますが、事務スタッフは褒められることがあまりありません。ミスなく正確にやるのが当たり前だと思われているからです。一生懸命頑張っているのに誰も認めてくれない。やって当然だと思われている。そんな状況では、やる気が出ないのも当然です。それならば、余計なことはしないでおこうとなるわけです。

変化や未知への不安

単純に、新しいことをやるのが怖い、失敗したらどうしよう、責められたら困る、という恐怖心もあるでしょう。あるいは、自分のペースを乱されたくない、慣れた仕事ならキチンとできるが、不慣れなことをやって「できない人」だと思われたくないという気持ちもあるかもしれません。

いずれにしても、先天的な性格や気質の問題ではなく、さまざまなプロセスを経てこのようになった可能性があります。実際、若い事務員に対して問題を感じる方は少なく、どちらかというとベテランの方々に対して思うところがあるというケースが多いのです。長いキャリアを積んでいる間に、さまざまな経験を経て、今の状態に至ったという可能性もあるわけです。ですから、一概に悪く言うのではなく、背景や原因を考えることも必要です。

気難しい事務員への対処法:3つのステップで関係性を構築する

これらを踏まえた上で、気難しい事務員にどのように対処していくのか。大きく3つのステップがあり、この順番で進めることが重要です。

ステップ1:傾聴する―相手の話を聴く

まずはシンプルに、相手の話を聴くことです。心の扉を開き、しっかりと話ができる状況を作らなければなりません。「あれをやってほしい」「これをやってほしい」「周りを助けてほしい」と管理者が自分の要求だけをしていくと、相手からすれば「こちらにも言い分があるのだが」となるわけです。まずは、相手を理解することを優先しなければなりません。

自分のことをどのように思っているのか。自分の役割や職務内容、スキル、あるいは今後のキャリアをどのように考えているのか。それをきちんと聴かないうちから「あれをやってくれ」「これをやってくれ」と言っても、相手は反発したくなります。まずは安心感を感じてもらう必要があるのです。

「この人は話が通じる人だ」「私の気持ちも分かってくれそうだ」と思ってもらわないことには、その後の話に進めません。そのためには、まず聴く。相手を理解する。その上で自分の要求を伝えていく。こうしたコミュニケーションの取り方が必要になります。

ステップ2:承認する―日頃の貢献を認める

先ほど申し上げた通り、事務職の仕事は「完璧にできるのが前提」になっています。

ミスをした時は叱られますが、きちんとやっている時に褒められることはありません。日頃の貢献や努力に対して、「いつもありがとう」「よくやってくれているね」「おかげで助かっているよ」といった声かけを日頃からしておかないと、大切にされていないと感じてしまいます。

もっと多くのことを要求するのであれば、相手の自己重要感を高めていかなければなりません。事務員といえ、長く仕事をしているのであれば、それなりのスキルを持っています。そこには当然、自負もあります。書類の間違いをすぐに見つけられる勘、段取りを整えてテキパキと物事を進められる能力、あるいはキータッチの速さなど、そうしたものに対して自尊心を満たし、認める必要があります。

そもそも、事務員がどんな仕事をしているのか、どれくらい大変なのか、重要なのかということを、ほとんど理解しようとしない管理者の方もいらっしゃいます。私自身、バックオフィス経験も長く、総務や人事、情報システムなどを担当してきました。

その経験を踏まえても、事務職を軽視してはいけないと思っています。受注を取ってきた営業担当者と同じくらい、事務スタッフも自分のことを評価してほしい、認めてほしいという欲求があります。それをしっかりと承認することが大切です。

能力や仕事の成果はもちろんですが、その人の存在そのものを認める。「あなたはチームの一員ですよ」と認識できるような、日頃のコミュニケーションが必要です。それは挨拶であったり、雑談であったり、声かけであったり、さまざまな接触を取ることによって、「私は大切にされている」「ここにいていいんだ」という安心感を与えることができます。自尊心を満たすことができれば、少なからず警戒心が解消されていきます。相手の中にある氷や壁を取り除く努力を継続的に重ねていく。それが重要なのです。

ステップ3:期待をかける―貢献意欲を引き出す

そうした土台の上で、3番目として期待をかけます。単純に作業員や便利屋として「これやっておいて」という感じではなく、「あなただったらこれもやれると思うんだよ」と、相手への期待として仕事を依頼します。

単発で仕事を渡すのではなく、背景や目的、チームの状況などをきちんと説明した上で、「あなたの協力が必要なんだよ」という形で頼んでいるか。そうではないケースも結構あるのではないでしょうか。相手のことを丁寧に扱う。丁寧に扱われたら、それに応えようとする。期待をかけられたら、期待に応えようとする。これが人間の本来的な心理です。「誰でもいいんだけど、あなたが暇そうだからこれやっておいて」ではなく、「あなただから、お願いしているんだよ」という伝え方ができると、相手にとって印象が変わってきます。

相手が進んで協力を申し出るような状態に導いていくのが理想です。仕事の出し方にもさまざまなスタイルがあります。単に「はい、これやってください」という指示や命令の出し方もあります。しかし、これでは上から下に仕事を下ろすイメージになるため、その仕事が自分の仕事だという認識は感じにくく、「やらされ感」も強くなります。

少し違うアプローチとして、交渉取引的な仕事の出し方もあります。たとえば「これをやってくれたら評価を上げる」「こういう成果が出たら賞与を色付けする」といったやり方もできなくはありません。しかし、それでは損得感情でしか動かなくなるため、常に相手にとって得になることを提供し続けなければならなくなります。

それよりも、協力や支援のアプローチが理想的です。チームの一員としてその人の存在を認め、相手に期待をかける。そうした中から、自発的に「このチームに貢献したい」と思うような貢献意欲を引き出していく。こうしたアプローチができるのが理想です。そのために、傾聴して、承認して、期待をかけるというプロセスを経ていくわけです。

内発的動機づけの重要性

人に何かをやってもらう時には、動機づけが必要になります。動機づけには外発的動機づけと内発的動機づけがあります。外発的動機は「外からの影響によって、その人を動かしていく」アプローチです。即効性はありますが、すぐに効果が失われてしまいます。熱しやすいが冷めやすく、長続きしません。

一方、心の中から湧き上がってくる自発的な感情や欲求に基づいて動くのが内発的動機づけです。こちらの方が当然、効果は持続します。ただし、着火するまでに時間がかかります。熱しにくく冷めにくいのです。

いかにして、仕事に対して当事者意識を持ち、自分事として捉えてもらい、自分から進んでやろうと思ってもらえるか。そのためには、丁寧なコミュニケーションを取る必要があり、それを継続的にやっていくことが求められます。

よほどのことがない限り、初めから無気力な方、消極的な方というのはそれほど多くないです。「何らかの経緯があってこのようになった」というケースが多いことでしょう。ですから、その流れを変えていきたいのです。

そのためには、原理原則として、相手のことを大切に扱い、相手に期待をかけるというアプローチを、ベテランの事務スタッフに対しても取っていく必要があります。それがそうした状況を解決する鍵になっていくのです。

まとめ:日頃からの関係構築が鍵

成長したい、貢献したいというのは人間の本来的なニーズです。それは事務員の方々にも当然あるはずです。いかにそこに届くような話をしていけるか、それには段階があります。

単純に自分の要求をぶつけるだけではなく、相手の言い分を聴く。相手の存在を認める。できれば、それを評価面談などで半期に一回やるのではなく、日頃から行っていく、そうしたベースの人間関係を作っていけば、少なからずこうした状況が改善していくと考えられます。

職場の中にこうした気難しい事務員がいらっしゃる方は、まずは相手の話を聞くことから始めてみてください。丁寧なコミュニケーションの積み重ねが、必ず良い変化をもたらすはずです。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

関連サービス

関連動画

次世代リーダーや自律型人材を育成する仕組みづくりや社員教育をお考えの経営者、管理職、人事担当者の方々。下記よりお気軽にお問い合わせください。(全国対応・オンライン対応も可能です)

弊社にご関心をお持ちいただき、ありがとうございます。お気軽にお問い合わせください。

TEL.
078-600-2761