マネジメント
2026.5.26

目次
あなたの職場に、このような上司はいないでしょうか。
こうした上司の姿は決して珍しいものではなく、多くの職場で見られる光景です。
そして同時に、管理職の立場にある方の中には「自分は部下にどう思われているのだろう」「ちゃんと信頼されているのだろうか」と不安を抱えている方も少なくないことでしょう。
実際のところ、部下に舐められる上司について、多くの方が誤解をされています。声が大きいか小さいか、肩書きがあるかないか、といった権威性の問題だと捉えられがちですが、本質はまったく別のところにあります。

部下から信頼され、尊敬される上司であるかどうかは、大きく言えば、
という2点に集約されます。
この記事では、「舐められる上司」と「尊敬される上司」の決定的な違いを5つのポイントに整理して解説します。あなたも、ぜひご自身と照らし合わせながら読み進めてください。
管理職の重要な仕事の一つは意思決定です。この場面における上司の振る舞いが、部下からの信頼に大きく影響します。
舐められる上司がよく口にするのは、次のような台詞です。
「うーん、そうだね。AでもいいしBでもいいんじゃないかな。まあ、状況を見て考えようか。」
一見すると部下の意見を尊重しているように聞こえますが、部下の立場から見れば「結局何も決まっていない」「どうすればいいのかわからない」という不安と混乱を招くだけです。
一方、尊敬される上司はこのように言います。「今回はAでいく。理由はお客様を最優先にするためだ。リスクはあるが、私が責任を持つ」。これだけです。
ここで重要なのは、必ずしも「正しい答え」を出すことではありません。「決める」という行為そのものが、チームへのメッセージになるのです。
曖昧な言葉を繰り返し、何も決めない上司に対して、部下は少しずつ信頼を失っていきます。「どうせまた何も決めないのだろう」と思われた瞬間から、その上司への敬意は急速に薄れていくのです。

仕事をしている上では、ミスやトラブルは避けられません。どんなに万全を期しても、不測の事態は生じてしまうものです。この時の上司の振る舞いが、部下からの信頼を大きく左右します。
舐められる上司の典型的なパターンは、次のようなものです。取引先からクレームが入ったとき、
「これは田中が確認を怠ったせいです。私には報告が上がっておりませんでした」
と述べる。
これを聞いた部下はどう感じるでしょうか。「この人の下では、失敗したら自分だけが責任を取らされる」と思った部下は、当然萎縮してしまいます。新しい挑戦をしなくなります。そして、上司への信頼は、音を立てて崩れ去っていくのです。
一方、尊敬される上司はこう答えます。
「申し訳ございません。今回の件は私の確認不足でした。田中には引き続き頑張ってもらいます。次回からはこのような仕組みで防ぎますので、どうかご安心ください。」
自分が盾となり、リスクと責任を引き受ける。この覚悟が部下からの信頼と尊敬を集めます。
部下は、上司がいざという時に逃げる人かどうかをよく見ています。そして、一度でも逃げた上司は、それ以降「結局この人は逃げる」という評価が定着してしまいます。
一貫性と覚悟という観点から言えば、ミスへの向き合い方はその人の本質が最も如実に現れる場面と言えるでしょう。
「来月の昇給の件、上に話しておくよ」
「その企画、面白いね。上に推薦しておくよ」
こうした言葉をかけられた部下が後日「どうなりましたか?」と確認すると、「ん、そんなこと言ったっけ?ちょっと状況が変わってね」という返答が来る。
部下は、上司が言った「自分に関わる発言」を驚くほど正確に記憶しています。1度や2度であれば、忘れられたり、後回しにされたりするのも「仕方ない」と思われるかもしれませんが、毎回このような対応が続けば「あの人の言葉は信じられない」という評価に変わっていきます。
尊敬される上司は、言葉に重みを持たせます。そのために実践していることは大きく二つです。
状況が変わって予定通りにできなくなった場合は、真っ先に部下に謝ることです。
品格のある上司とは、筋の通った判断と約束を守る誠実さを持つ人です。この二つが言葉に重みをもたらします。言葉に重みのない上司の発言は、部下にとってあくまでも「参考程度」のものにしかならないのです。
感情で動く上司がいます。調子の良い時は機嫌が良く、うまくいかないことがあると急に不機嫌になり、部下に辛く当たる。このような状況が続くと、部下は毎朝出勤するたびに「今日の上司の機嫌はどうか」を観察するようになります。
機嫌が悪そうであれば「今日は話しかけるのをやめよう」「この仕事の相談は明日にしよう」と判断する。その結果、業務のスピードは落ち、トラブル対応は後手に回ります。
ドイツの文豪ゲーテは「人間の最大の罪は不機嫌である」という言葉を残しています。上の立場にある人が不機嫌でいると、その職場全体の空気が凍りつき、モチベーションが著しく低下します。
機嫌の良さはスキルです。 リーダーやマネージャーは意識的に自分の機嫌を整え、良い状態を保つ努力をしなければなりません。
尊敬される上司も、感情がないわけではありません。時には怒りを感じることもあるでしょう。しかし、感情と行動を切り離し、建設的な関わり方を心がけます。
例えば、部下がミスをした時、感情的に怒鳴るのではなく「今回は何がいけなかったと思う?次にどうしたらいい?」と冷静に問いかけます。これは「厳しいことを言う」ことと「厳しく言う」ことは別物であるという考え方に基づいています。要求水準を高く持つことは構いません。しかし、荒々しく人を傷つける必要はないのです。
感情をコントロールできる上司の下で、部下は安心して仕事に取り組めます。心理的安全性が確保された職場では、創造的かつ生産的に仕事ができるようになります。
舐められる上司は、部下のことを業務をこなすためのリソースとしか見ていません。成果が出ているか、ミスがないか、業績が上がっているか。関心の対象はそれだけです。形式的に「最近どう?大丈夫?」と聞くものの、相手が答え始める前から自分の話を始めてしまう。それは関心がないからです。
一方、尊敬される上司は部下を一人の人間として扱い、関心を持って接します。
ある管理職の方の実例をご紹介します。その方は毎週月曜日の朝、部下一人ひとりに必ず声をかけます。「先週は大変だったね。大丈夫だった?」と。どんなに忙しい時でも、この声かけだけは欠かさないのです。
ある時、部下の一人が「実は最近、家族の体調が少し心配で」と話してくれました。その管理職の方は「それは心配だね。何かできることがあれば言ってくれ」と一言添えました。大したことではないかもしれません。しかし、相手に関心を持ち、その話に向き合い、自分からも言葉を返す。この積み重ねが信頼関係の土台となり、「この人の下で働きたい」という気持ちに繋がっていくのです。
こうした部下への関心や対話は、特別な制度や技術、高い報酬を必要とするものではありません。「自分のことをちゃんと見ていてくれている」という感覚と安心感が、日々のやり取りの中で積み重なっていくものです。
私は、一つ大切にしている考え方があります。「コミュニケーションは効率化できない」ということです。目先の仕事が忙しいからといって部下との会話の時間を削ったり、なるべく簡潔に済まそうとすればするほど、関係性は希薄になっていきます。そして後から、その希薄な関係のせいで仕事がより困難になるのです。
作業は効率化する。しかし部下とのコミュニケーションは効率化しない。なるべく時間を取る。 これが鉄則です。

今回は「部下に舐められる上司・尊敬される上司の決定的な違い」として、5つのポイントをお伝えしました。
改めて整理すると、
という5つです。そしてこれらに共通するのが「一貫性と覚悟」という本質です。
部下に舐められるかどうかは、権威があるかないかの問題ではありません。言っていることとやっていることを一致させること、そして逃げないこと。この積み重ねに尽きます。
カリスマ性や特別なスキルは必要ありません。当たり前のことを当たり前にやり続ける。ぶれそうになった自分を引き戻し、一貫性を保とうとする。この日々の努力が、部下だけでなく、お客様、取引先、周囲のすべての方からの信頼を積み上げていきます。
これは厳しい生き方かもしれません。しかし、誇り高く品格のある人間でいるために、一貫性を保つ努力を日々重ねていきましょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役社長。「デキる人を増やして社会をもっと快適にする」を理念に、人事・組織コンサルタントや研修講師として活動。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。
著作『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜』
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