セルフマネジメント
2026.5.31

目次
「もっと頑張らなければ」と思っていても、なかなか行動に踏み出せない。「やらなければならない」とわかっていても、長続きしない。こうした悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくありません。
特に、組織を率いるリーダーやマネージャーの方々は、自身の成果を追い求めながら部下・後輩の育成にも力を注がなければならず、「1日24時間では全然足りない」という感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
その一方で、「あの人はなぜあんなに楽そうにしているのに、着実に成果を出しているのだろう」と感じることはありませんか。
一体その差はどこから来るのでしょうか。結論から言えば、その差は才能でも根性でもありません。成果を出している人は「努力」をしているのではなく、必要な行動を「習慣」にしているだけなのです。これが今回のテーマの核心です。

「努力は夢中に勝てない」という言葉を耳にしたことはありませんか。最近、経済ニュースや経済番組でもたまに取り上げられるのですが、この言葉の出所を辿ると、孔子の論語にたどり着きます。
論語に下記のフレーズがあるそうです。
之を知る者は、之を好む者に如かず。
之を好む者はこれを楽しむ者に如かず。
つまり、知識があるだけの人は好きな人には勝てない。そして、好きな人も楽しむ人には勝てない、という意味です。これが転じて、現代では「努力をする人は夢中な人には勝てない」と用いられるようになったようです。
好きでやっていて、楽しんでいることは、ポジティブな感情を伴います。脳もクリエイティブになり、物事が長続きしていきます。
何時間もゲームに没頭している状態を「努力している」とは言いません。好きでやっているからこそ、苦にならないのです。嫌々取り組む人よりも、好きで楽しんでやっている人の方がうまくいき、長続きするのは実際その通りだと言えるでしょう。
ただし、仕事をする上では、好きなことや楽しいことばかりするわけにはいきません。得意でないことも、気が進まないことも取り組まなければならない場面は必ずあることでしょう。
では、成果を出している人はそうした苦手なことや気が進まないことをすべて遠ざけられているのかというと、決してそうではないでしょう。
うまくいっている人はどうやってそれを乗り越えているのでしょうか。その答えが「習慣」です。成果を出している人は、努力をしているのではなく、成果を出すために必要な行動を習慣にして当たり前にこなしているだけなのです。
ニューヨーク・タイムズの記者であるチャールズ・デュフィック氏が著した『習慣の力』といつ世界的なベストセラーがあります。
この本の中でデュフィック氏はこう述べています。「私たちの行動の40%以上は意思決定ではなく習慣によるものだ」と。
つまり、私たちが日々行っていることの約半分近くは、考えて行動しているわけではなく、習慣によって無意識にやっているということです。
これを仕事に応用することができれば、成果を出すために必要な行動を習慣にして、モチベーションを高めたり意志の力を振り絞ったりしなくても、何も考えずに自動的に行動できるようになります。
それが、一見楽そうに見えながらも着実に成果を上げている人の実態です。嫌々やっているのでもなく、苦しみながらやっているのでもなく、何も考えずに自然とやっている。そのような状態を作り出すことが、習慣化の本質です。
習慣とはどういうものか。それを理解するうえで、自転車に乗れるようになるプロセスがわかりやすい例となります。
最初に自転車に乗る時は、バランスを取るのに精一杯で、右に傾いたら転びそうになり、左に行き過ぎたらまた戻すという具合に、意識を集中させながら操作しなければなりません。
しかし、乗り続けていくうちに感覚が研ぎ澄まされ、だんだん慣れてきてバランスを保ったまま走れるようになります。さらにその状態を続けていくと、もう何も考えなくても乗れるようになります。
習慣とはまさにこういうことです。仕事で成果を出すために必要な行動を習慣にしてしまい、何も考えなくても自動的にやるようになれば、放っておいても結果が出るようになるのです。

デュフィック氏にれば、習慣は「きっかけ→ルーティン→報酬」という「習慣のループ」を繰り返すことによって定着していきます。
この流れを作り、繰り返していくことで、脳はそれをパターンとして認識し始めます。繰り返せば繰り返すほど、何も考えなくても自動的に反応していくようになります。
習慣形成においてとりわけ重要なのが「きっかけ」の設定です。
よくある失敗として、きっかけを時刻で決めてしまうことが挙げられます。「毎朝8時にこれをやる」と決めても、日々の状況は変わりますから、予定通りの時刻にできないことが生じます。そうするとパターンが崩れてしまうのです。
有効な方法は、行動と行動を紐づける「If-Thenルール」です。「もし〇〇をしたら、次に〇〇をやる」というルールを設定することで、前の行動が次の行動の引き金となります。
例えば、「パソコンを立ち上げたらまずメールをチェックする」「朝のコーヒーを飲んだらその日のタスクを書き出す」といった具合です。こうした行動のセットを繰り返していくことで、それがパターン化され、習慣へと変わっていきます。
習慣が定着するまでには、次の3つの段階があります。
最初の1〜2週間は、慣れない行動を意識的にしなければなりません。正直なところ、この時期は少ししんどいと感じることもあるでしょう。
しかし、習慣を作ろうとする誰もが必ず通る道ですから、ここはある程度の気合いで乗り切ることが必要です。
徐々に慣れてきたころ、ある程度定着してきたように感じる一方で、やれる日とやれない日が出てきます。ある意味、ここが最も挫折しやすいタイミングです。
この時期に大切なのは、完璧を目指さないことです。2週間続けてきたことが1日できなかったとしても、そこで心が折れてゼロに戻してしまっては、それまでの積み重ねがすべて無駄になってしまいます。
できなかった日はすっかり忘れ、何事もなかったかのように翌日から再開することが重要です。ゼロにさえしなければ、その後の繰り返しによって行動はさらに強化され、記憶が積み重なり、習慣として定着していきます。
この段階まで来ると、やらないことが気持ち悪くなってきます。歯を磨かないと落ち着かないのと同じような感覚です。
もう意志の力や気合いは必要ありません。やることが当たり前になっているため、「あ、今日まだやっていないな」という感覚で自然と行動するようになります。
習慣を作る上でのヤマ場は、開始から2週間〜2ヶ月が経つ頃です。やれない日が生じて自分を責めるような気持ちが募ると、徐々にやらなくなってしまいます。
完璧を目指さず、やれなかったらやれなかったでし仕方がないと割り切り、翌日から何事もなかったかのように続けていく。これが習慣を作る上での秘訣です。
習慣を作る上では、決まったことを決まった量・決まったタイミングで繰り返すことが重要です。
パターンを作ることが目的ですから、毎回量が違ったりタイミングが変わったりするとパターンにはなりません。「いつも通り」であることが大切です。
例えば、私の場合、手帳に1日1ページ、その日の行動記録、タスクリスト、ちょっとした日記、ルーティン行動のチェックを書き続けるという習慣があります。これはもう15年以上継続していることで、完全に自動化されています。「書くのが当たり前」になっているため、空白のままでは1日を終えられない感覚になっています。
また、YouTubeの収録も週2本というペースで継続しています。週のうちデスクにいる日のスケジュールを立てる際に、収録をまず先に入れるのが自分の中で当たり前になっています。それが習慣として定着しているから苦にならないのです。
要するに、量とタイミングを固定し、イレギュラーを作らないことが、習慣を育てる秘訣と言えます。
一度に多くのことを習慣化しようとしても長続きしません。意識的努力期を乗り越えるためには気力が必要ですから、最初は1つに絞ることが賢明です。
ここで自分に問いかけてほしい問いがあります。「仕事で成果を出すために、毎日続けると最も効果的な行動は何か?」です。
業種・業態や立場によって答えは異なりますが、例えば1日のスケジュールやタスクの処理順序を考えてから仕事を始めるという習慣は、多くのビジネスパーソンにとって有効です。
その行動をいつ・何をきっかけにやるかを決め、If-Thenルールとしてセットします。そして、習慣のループにおける「報酬」として、生産性の向上、仕事の充実感、ストレスの軽減といった手応えを実感していくことで、習慣はさらに定着していきます。
まずは3分程度でできる簡単なことから始め、それが無意識にできるようになったら次の習慣に取り組む。この繰り返しによって、やがて仕事で成果を出すために必要なあらゆる行動が自動化されていくのです。

今回の内容を整理すると、次のようになります。
仕事で成果を上げている人が楽そうに見えるのは、才能や根性ではなく、良い習慣を身につけているからです。成果に必要な行動を習慣化し、何も考えずに当たり前のようにこなしている状態を作り出すことが、継続的な成果につながります。
習慣を作るためには「きっかけ→ルーティン→報酬」の習慣のループを繰り返すことが基本です。
きっかけは時刻ではなく行動に紐づけるIf-Thenルールが有効です。最初の2ヶ月はやったりやらなかったりすることもありますが、自分を責めず、何事もなかったかのように続けることが大切です。66日を目安に安定期を目指し、ひたすら継続することが習慣化の王道です。
まずは「仕事で成果を出すために毎日続けると最も効果的な行動は何か」を考え、スモールスタートで習慣作りを始めてみてください。習慣化された行動は、努力なしに自動的に成果を生み出す、最も確実なビジネススキルとなることでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
中小企業診断士・キャリアコンサルタント。株式会社ビジネスキャリア・コンサルティング代表取締役社長。「デキる人を増やして社会をもっと快適にする」を理念に、人事・組織コンサルタントや研修講師として活動。理論的な背景と情熱的な語り口を交えた講演スタイルに定評があり、セミナーや研修で高い支持を得ている。
著作『指示待ち人間からの卒業〜自ら考えて行動する「自律型人材」になる方法〜』
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