マネジメント
2026.1.27

目次
組織を率いるリーダーやマネージャーの方々は、業績向上や生産性改善に向けて日々さまざまな施策に取り組んでいらっしゃることと思います。
しかし、一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、なかなか思うような成果が出ないとお悩みではないでしょうか。そのような時、もしかしたら重要な観点が抜け落ちているかもしれません。それは「仕事は楽しいですか?」という問いです。
リーダーやマネージャーが果たすべき重要な仕事の一つは、「部下の仕事を楽しくさせる」ことです。仕事を楽しむことに対して、不謹慎だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。仕事は真面目にやるもの、苦労してやるもの、歯を食いしばってやるものだと考えている方もいらっしゃるでしょう。しかし、この考え方自体が、自分たちの成果を下げている可能性があるのです。
成果を上げようと思うならば、生産性を向上させようと思うならば、あるいは離職を防止しようと思うならば、まず仕事は楽しくあるべきなのです。ポジティブ心理学の研究によれば、「楽しみや喜びといったポジティブな感情が心身の健康を生み出し、それが個人の成功につながっていく」とされています。楽しみながら取り組む人は、ストレス耐性が高く、創造性が高く、問題解決力が高いという研究結果も出ています。
私自身、今の仕事がとても楽しいです。独立して意思決定を自分でできるようになったこともありますが、それだけではありません。会社員時代からコンサルタントの仕事が楽しいと感じていました。楽しいからこそ本気でやりますし、より良いものを追求しようと思います。多少無理なスケジュールで疲れ気味になっても頑張れますし、長期にわたって続けていくことができます。これらはすべて、楽しいからこそ実現できることなのです。
楽しいという感覚は、内発的動機の最たるものです。仕事が楽しければ、仕事をします。仕事をすれば、成果が出ます。やり続けていけば、生産性が上がります。そして、やっていて楽しければ、やめる必要がありません。ですから、この「仕事を楽しくする」ということは、個人の幸せにとっても大切ですし、組織を強くして成果を出すという点においても重要なのです。

仕事を楽しくするための最初の秘訣は、「本気であること」です。
中途半端に取り組んだことがうまくいっても「ふーん」という程度の感想しか持てません。ゲームでも、学生時代の部活動でも同じですが、真剣にやって負けるから悔しいと感じ、もっと頑張ろうと思うのです。真剣にやって勝つから、喜びが爆発するのです。楽しく仕事をするためには、真剣に仕事に打ち込む、本気でやるということが大切なのです。
では、なぜ本気でやれないのでしょうか。それは、その仕事が自分のためにどうなるのかも分からないし、やったところで反応も薄いという、「仕事の意味や価値」を感じにくい状態だからです。やっている仕事が自分にとっても意義があり、それが組織のためになり、組織を通じて社会のためになっていくという実感があれば、「もっとやろう」「本気でやろう」という気持ちになるはずです。
では、管理者は、部下が本気で仕事をするためにどのようなことをしていけばよいのでしょうか。
まずは「適切な目標設定」です。何のためにやっているのかよく分からないものに、人間は頑張れません。何を、いつまでに、どれだけやるのかを明確に定めます。その目標が高すぎても心が折れてしまいますし、低すぎるとやる気が出ません。「ちょっと頑張らないと達成できない」というくらいの適切な目標を、個人レベルで設定していくことが大切です。
長期的には、個人としてのキャリアビジョンにつなげていきたいところです。今やっている仕事が、自分の将来にどのように役立つのかがあまりピンとこない状態では、やはり頑張れません。経験が豊富なリーダーやマネージャーの方が「今やっている仕事にはこういう要素があって、これをやるとこういう能力が身につき、それは自分の将来に対してこう役立つだろう」という接続をしてあげることが必要です。
それと併せて、会社や組織の理念や価値観を浸透させていくことも重要です。人間が力を発揮できる時というのは、自分のためにやっている時だけでなく、他者の役に立っている時です。それをシンプルにまとめたのが「経営理念」であり、会社が重要視している「価値観」です。そこに今の仕事をしっかりと接続していけば、もっとちゃんとやろう、しっかりと向き合ってみようという気持ちになるのです。
もちろん、本気でやったことに対してリアクションがないと張り合いがなくなります。ですから、やった仕事に対してしっかりと承認や評価、フィードバックをしていくことも大切です。こうしたことを実施するために、1on1ミーティング、つまり個人面談を定期的に行っていくことが必要です。
二つ目の秘訣は「ゲーム性を持たせる」ことです。
多くの仕事は長く続けていると、基本的に同じことの繰り返しになっていきます。そうすると飽きが来て、退屈になり、楽しくなくなってしまいます。しかし、そこに「今までと違う何か」を入れていくことによって、ゲーム性を高めることができます。
具体的に言えば、仕事とは「品質や所要時間、コスパをもっと上げていくゲーム」だと思って取り組むということです。ゲームというのはシンプルに夢中になれるものです。理屈抜きで楽しいのです。ですから、仕事を楽しくするのであれば、ゲームのように仕事をすることで気持ちが前向きになりますし、成果が出るのであれば、別にゲームとしてやっても良いのではないかというのが私の考えです。
例えば、私が最初に勤めていた会社では、営業所からの報告数値を集計・分析して、レポートを制作する仕事をしていました。作業内容としては毎回やることは同じなのですが、より早くやるためにはどうすればよいか、ヒューマンエラーを回避するにはどうしたら良いか、自動化するにはどういうツールを組んだら良いかを考えながらやっていました。
Excelを使って数式を組み込み、条件付き書式でエラー判定を行い、最終的にはVBAマクロで自動化して、手作業で1時間ぐらいかかっていた仕事を5分で終わらせるようにしました。より成果を高めるために、自分なりに工夫してやったことを検証するというプロセスは楽しいのです。
マネージャーの方には、そういうゲーム性を部下にどんどん与えていっていただきたいのです。そういう意味では、自由に決められる裁量をある程度渡すことが重要です。マニュアルをがっちり作って、「これ以外のやり方をするな」「この通りにやれ」と言うのでは、ゲーム性を持てません。もっとクリエイティブにゲームをやろうと思ったら、やり方自体を自分で開発するというのが楽しいのです。
実際にそうやっていく中で、当然失敗もありますが、うまくいくことも出てきます。そうした自分の成長や業務プロセスの改善をしっかりと評価していくことで、やはり面白くなってきます。認められていく、自分のやったことが報われる、じゃあもっといい成果を出そうという好循環が生まれていくのです。

三つ目の秘訣は「人間関係を良くする」ことです。
これは非常に重要です。正直なところ、仕事が単調であったり、時に少し苦しいものであったりしても、一緒にやっている同僚との人間関係が良かったら仕事は楽しいのです。
私がとても大事だと思っているのが、挨拶、礼儀、承認といったことです。『Think Civirilty』という、礼儀や礼節と組織の生産性の関係を研究した書籍があります。副題は「礼儀正しさこそ最強の生存戦略である」というもので、無礼な人の存在は組織の生産性を下げるということを示しています。メンバーが礼儀正しく、お互いに敬意を持って接することが、良好な人間関係を築き、それが組織の成果や生産性につながっていくのです。
人間関係には返報性の法則があります。自分がやったことは、相手から返ってきます。まず自分がしっかりと挨拶をする、礼儀を守る。あるいは、相手が言ったことを否定せずに一旦受け止めることが大切です。相手がそう思ったり、そう感じたりしていることは、たとえ間違っていたとしても、それは一旦「ああ、あなたはそう思うんですね」と受け止める。これが人間関係のベースです。
管理者としては、組織の心理的安全性を高めていくことに尽きます。心理的安全性というのは、「自分が思っていることを、誰からも否定されたり拒絶されたりしないという確信を持てていて、自分が思っていることを率直に立場に関係なく言えるという状態」のことです。
この心理的安全性を高めるにあたっては、フォーマル(公式)なコミュニケーションとインフォーマル(非公式)なコミュニケーションの両方に焦点を当てる必要があります。会議では、参加している人が皆それぞれ自由に発言できるようにしていきます。よく喋る人や声の大きい人をある程度抑えつつ、なかなか自分の意見を言いにくいという方の話を引き出したりする。ここは管理者の方の重要な役割です。
インフォーマルなコミュニケーションについては、昼ご飯を一緒に食べに行く、会議中にお茶やお菓子を出すというのも有効です。食べ物があると気持ちがほぐれるのです。フォーマルな場面もインフォーマルな場面も、両方とも相手の話を肯定的に聞く、共感的に聞く、それを受容することが大切です。「受け入れ」なくてもよいのですが、「受け止める」ことによって、相手の自尊心を損なわないようにしていく。それが人間関係のベースになっていきます。
四つ目の秘訣は「十分な睡眠を取る」ことです。ベースとして、体の健康を保つことが大切なのです。かつて1980年代、90年代は、身を粉にして働く、睡眠を削ってまで頑張ることが、ある意味「美徳」とされていましたが、これはもはや科学的にはまったくナンセンス(無意味)だということが証明されています。やはり寝不足はパフォーマンスを下げるのです。
限られた時間の中でしっかり成果を出すためには、十分に睡眠を取って健康で元気な状態で仕事をすることが大切です。体がしんどいと、心が楽しくなれないのです。心と体はつながっています。
十分な睡眠を取れるように、個人としては生活リズムを整える、寝る前にあまり光を浴びない、スマホを使いすぎないといった努力が必要です。しかし、管理者としては長時間労働を是正することに真正面から向き合っていかなければなりません。一時的に残業が増えることは致し方なくても、慢性的に長時間労働にならないように、しっかりと睡眠時間が取れるような仕事の量を適切に保っていくことが大事です。
そのために管理者ができることは、とにかく無駄な仕事を極限まで減らすということです。付加価値の低い仕事を極限まで減らし、「仕事のための仕事」を減らしていって、本当に価値のあることだけをやっていく。価値があることだけをやっていけば、どんどん売上や利益が上がってきますから、それで組織が大きくなっていったり、より優秀な人を雇ったりということで、健全な状態をキープしながら成長していくのです。
私は、価値のある仕事と価値のない仕事をしっかりと分けて、価値のある仕事に集中して、価値のない仕事を極限まで減らすことを非常に重視しております。時間の使い方のマネジメントはとても重要なのです。

最後の秘訣は「笑う」ことです。
シンプルに考えれば、楽しい状態というのは「笑っている状態」です。「楽しいから笑う」というのはもちろんありますが、「笑うから楽しい」という考え方もあります。心と体は密接につながっているので、楽しくない状態でも、楽しい時に起こるはずの「笑う」という行為を先にすることによって、後から心が楽しい状態になることもあるのです。
私は、とにかく研修中によく笑います。「研修は厳しくやってください」と頼まれることもあるのですが、基本的にお断りしています。厳しくやるのは私のキャラクターではないのです。基本的に、私は学びは楽しくやることを前提にしています。
ただし、それはバカバカしく甘やかしてやるというわけではありません。本気でやることが楽しいというのも楽しさの要素の一つです。私は研修においては「厳しいことを言う」ことはありますが、「厳しく言わない」だけです。
みんな黙々と、シーンとして、険しい顔をして仕事をしている職場で、仕事が楽しいわけがありません。楽しい職場は、とにかく笑いが起きる職場です。挨拶から軽い雑談とかができるような職場であるべきだと思いますし、雑談をするぐらいの余裕が必要です。
管理職としてまず何をすべきかというと、「自分自身がよく笑う」ことです。上司が全然笑わないで険しい顔をしているのに、部下の方が笑いながら仕事ができるでしょうか。それは難しいでしょう。心理的安全性は笑顔からスタートするという側面もあります。
そこで取り入れていただきたいのが「ユーモア」です。仕事はもちろん真面目にやるのですが、そこに遊び心を入れていったり、指示や命令を出す時に少しユーモアを交えていくことで、笑いが起きます。
笑いは「ギャップ」で起きます。すごく真面目な課題に取り組んでいるのだけれど、そこにふさわしくないような例え話や言い回しが入ってくると、そのギャップが面白くなるのです。そういう知的なユーモアをどんどん交えていくことによって、真剣に仕事をしていながらも「楽しい」「面白い」という状態を作っていく。それが理想です。
その時に気をつけなければいけないのは、下品な笑いに結びつけないことです。人を小馬鹿にしたり、職場にふさわしくない性的な表現を交えたりといった発言は、さすがにやめた方がよいです。あくまでも知的なユーモアを交えていくということです。
今回は、楽しい職場を作る5つの秘訣をご説明いたしました。冒頭に申し上げた通り、とにかく仕事は楽しくないと成果が出ませんし、長続きしません。
近年、若手の離職を防止したいという話をよく耳にしますが、新入社員や若手社員は自分の先輩や上司を見ています。その人たちが楽しそうに仕事をしていなかったら、そこに夢も希望も持ちようがありません。
まずは、自分たちが仕事を楽しむことが大事ですし、仕事の楽しさを部下の方にも感じてもらえるようなことをやっていくのが、リーダーやマネージャーの重要な仕事だと思います。それは自己犠牲的に、献身的にやるものではありません。自分も楽しくてやっているのでなければ、自分自身が長続きしないのです。
まず自分が仕事を楽しくする。今回ご紹介した5つのポイントを試してみてください。特に、「笑う」は今すぐにできます。よく笑い、楽しく仕事をしようとする姿勢を保つ。これが、本当に「仕事が楽しい」状態を作り出していくと私は考えます。ぜひ、あなたの職場でもこの5つの秘訣を実践していただき、楽しく成果の出る組織を作っていきましょう。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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